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1章
揺れる日暈 第1話
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デビューしてから私の歌は、飛ぶように売れていった。私のメディアへの露出も増え、学校に通う間も無くなり、多忙を極めていた。少し外を歩くとすぐに歌手であることがバレてしまい、満足に外出できることも減った。そんな時に、こっそり彼が風波の屋敷に来て、私を連れ出してくれるのが恒例になっていた。
「御籐様、今までのご無礼、大変申し訳ありませんでした!」今日の出会い頭、そんな彼に私は頭を下げていた。出会いのこともあるせいか、彼の若さ故だろうか、私はつい先日まで知らなかったのだが、彼は白明会で自分の組を持つ組長、かつ、闘技の大スター選手でもあったのだ。叔父の部下からそう話を聞いたとき、私は今までの自分の態度に肝が冷えた。その程度のことを彼が気にしているとは思わないが、一度改めて謝罪はしておきたかった。
「なんや、突然謝り出して。誰かになんか吹き込まれたんかい。」
案の定、御籐様はあまり気にしていないご様子だ。御籐様は、いつものようによっ、と私を抱き上げ、庭の裏口から出て、御籐組の組員さんの運転する車に一緒に乗り込む。毎度のことながら、御籐様との近すぎる距離に私はドキドキしっぱなしだ。
「いえ、つい先日、御籐様が組長さんだったことを知ったばかりで、今までとんだご無礼をしてしまって……。」
叔父は白明会の会長といえど、私はたかが姪だ。しかも、御籐組はもうすぐ直系にまで上がってくるという白明会の中でも精鋭とされる組。その上、御籐様は闘技のトップ選手。この国では、闘技は他の何よりも人気で、国の一大産業だ。それ故、スター選手は、出自関係なしに超上流階級の世界の一員となり、扱いも相応となる。私のような駆け出しの歌手とは住む世界の違うお人なのだ。
「あぁ?そんなん、ゆめちゃんは気にせんでええねん!本当はもっと親しみを持ってほしいくらいや!堅っ苦しいのは嫌いやねん!な?」
御籐様は、私の肩から腕を回し、べったりと私にくっつく。真っ赤な羽織に、派手なアクセサリーをつけ野蛮な見た目とは裏腹に、猫のように顔を私の頭に擦り付けてくるのがなんとも可愛らしい。
「そ、そのような訳には、参りません!親しき仲にも礼儀あり!ですよ。」
私は、御籐様のお顔の前に指を差し出す。
「ほぉん。やっと親しみをもってくれたんかぁ。通いつめとる甲斐があったわぁ。」
御籐様は、少し悪そうなニヒルな笑みを浮かべるので、つい赤面してしまう。だ、だって私が寂しい時、必ず来てくれるし、疲れてるときは励ましてくれるし、遊びたいときには連れ出してくれるし、話だって愚痴だって優しく聞いてくれる……。荒々しい見た目なのに、よく見ると端正なお顔立ちだし、大人の色気だってすごいし……。あぁもう!御籐様はとっても狡い人ってことなの。
なんて御籐様とやり取りしながら、自問自答していると車は、あるお店の前で停まった。
「ほれ、ゆめ!こういう可愛いの好きやろ!どれでも好きなもん、なんでも買うたるからな!好きなの選び!」
御籐様は、可愛らしい店の商品を手に取り、私に満面の笑みを見せてくれる。……そう、沢山の可愛いテディベアが並んでいる店でだ。確かに、ピンクやレモンイエロー、ミルクティブラウンなどのテディベアはとっても可愛いけど!私すごく子ども扱いされてない!?そりゃあ、御籐様から見たら八つも年下だけど……。御籐様は上機嫌にどれがいい?これか?なんて私に色々なテディベアを渡すので、結局一番気にいったオーソドックスなブラウンのテディベアを買ってもらった。よし、この子は今日からシンちゃんと名付けよう。……御籐様には内緒だ。
その後は、御籐様御用達の個室の料亭で食事をごちそうになった。お腹もいっぱいになり、町を歩いていると、私は少し油断していただろうか、誰かが私たちの存在に気づき、近寄ってくる。御籐さんは、スッと自身の身体で私の顔を隠した。
「御籐様、今までのご無礼、大変申し訳ありませんでした!」今日の出会い頭、そんな彼に私は頭を下げていた。出会いのこともあるせいか、彼の若さ故だろうか、私はつい先日まで知らなかったのだが、彼は白明会で自分の組を持つ組長、かつ、闘技の大スター選手でもあったのだ。叔父の部下からそう話を聞いたとき、私は今までの自分の態度に肝が冷えた。その程度のことを彼が気にしているとは思わないが、一度改めて謝罪はしておきたかった。
「なんや、突然謝り出して。誰かになんか吹き込まれたんかい。」
案の定、御籐様はあまり気にしていないご様子だ。御籐様は、いつものようによっ、と私を抱き上げ、庭の裏口から出て、御籐組の組員さんの運転する車に一緒に乗り込む。毎度のことながら、御籐様との近すぎる距離に私はドキドキしっぱなしだ。
「いえ、つい先日、御籐様が組長さんだったことを知ったばかりで、今までとんだご無礼をしてしまって……。」
叔父は白明会の会長といえど、私はたかが姪だ。しかも、御籐組はもうすぐ直系にまで上がってくるという白明会の中でも精鋭とされる組。その上、御籐様は闘技のトップ選手。この国では、闘技は他の何よりも人気で、国の一大産業だ。それ故、スター選手は、出自関係なしに超上流階級の世界の一員となり、扱いも相応となる。私のような駆け出しの歌手とは住む世界の違うお人なのだ。
「あぁ?そんなん、ゆめちゃんは気にせんでええねん!本当はもっと親しみを持ってほしいくらいや!堅っ苦しいのは嫌いやねん!な?」
御籐様は、私の肩から腕を回し、べったりと私にくっつく。真っ赤な羽織に、派手なアクセサリーをつけ野蛮な見た目とは裏腹に、猫のように顔を私の頭に擦り付けてくるのがなんとも可愛らしい。
「そ、そのような訳には、参りません!親しき仲にも礼儀あり!ですよ。」
私は、御籐様のお顔の前に指を差し出す。
「ほぉん。やっと親しみをもってくれたんかぁ。通いつめとる甲斐があったわぁ。」
御籐様は、少し悪そうなニヒルな笑みを浮かべるので、つい赤面してしまう。だ、だって私が寂しい時、必ず来てくれるし、疲れてるときは励ましてくれるし、遊びたいときには連れ出してくれるし、話だって愚痴だって優しく聞いてくれる……。荒々しい見た目なのに、よく見ると端正なお顔立ちだし、大人の色気だってすごいし……。あぁもう!御籐様はとっても狡い人ってことなの。
なんて御籐様とやり取りしながら、自問自答していると車は、あるお店の前で停まった。
「ほれ、ゆめ!こういう可愛いの好きやろ!どれでも好きなもん、なんでも買うたるからな!好きなの選び!」
御籐様は、可愛らしい店の商品を手に取り、私に満面の笑みを見せてくれる。……そう、沢山の可愛いテディベアが並んでいる店でだ。確かに、ピンクやレモンイエロー、ミルクティブラウンなどのテディベアはとっても可愛いけど!私すごく子ども扱いされてない!?そりゃあ、御籐様から見たら八つも年下だけど……。御籐様は上機嫌にどれがいい?これか?なんて私に色々なテディベアを渡すので、結局一番気にいったオーソドックスなブラウンのテディベアを買ってもらった。よし、この子は今日からシンちゃんと名付けよう。……御籐様には内緒だ。
その後は、御籐様御用達の個室の料亭で食事をごちそうになった。お腹もいっぱいになり、町を歩いていると、私は少し油断していただろうか、誰かが私たちの存在に気づき、近寄ってくる。御籐さんは、スッと自身の身体で私の顔を隠した。
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