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1章
旭日昇天 第3話
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「あんな。お前の歌を聞いて分かったんや。俺が探しとったんは、お前や。人違いやない。何度も聞いた歌声や。絶対にお前や。お前がゆめや。」
御籐という彼は、私の肩を掴み真剣な目で話す。その言葉に私もパニックになる。じゃあ、この人が私がずっと探していた人なの?
「たしかに私は親しい人からは、ゆめって呼ばれています。でも私の会ったことのある貴方そっくりの方には、名前は伝えていないはずなんです。私も、名前を存じませんし……。」
私の言葉に御籐は明らかに動揺する。
「そんなわけないやんか!ずっと一緒に生活しとった!4年くらい前の話や。なんで覚えてないんや!」
粗暴に見える御籐の目は潤んでいるように見える。
「四年前……?私が、彼と会ったのは、もっとずっと前です。」
その言葉に御籐は明らかに落ち込んだ顔をする。
「嘘や……。おい、もしかして俺の知らんとこで、何かあったのか。記憶喪失とか……。でも、俺もおかしいとは思うんや。四年以上経ってるのにお前は歳取るどころか、若返ってんねんもんな。あり得ん話や。」
御籐は、頭を抱え独り言のように呟く。
御籐は確かに、私の初恋の彼にそっくりだ。けれど目の前の御籐も同一人物にしては若すぎる気はしている。しかも、記憶の中の彼は、こんなに粗暴な雰囲気であっただろうか。たしかに極道ではあったかもしれないが、もっと実直そうな佇まいでなかっただろうか。私も目の前の彼と同じく考え込んでしまう。
「……まぁ。そんなんはどうでもええ。たとえ、全部忘れとっても、ゆめはゆめや。俺は、ずっとお前を……ゆめを探しとった。ゆめ、やっと見つけたで。」御籐という男は、優しく私を抱きしめた。こんなに乱暴そうな人なのに私を扱うその手はとても優しかった。私が動揺していると、彼も私の様子に気づく。
「お前が俺を知らんでもええ。初恋でなくてもええ。お前が俺を好きやないなら、ま一遍惚れさすだけや。」
彼は、優しい瞳で私の頬を撫でる。どうして優しい瞳までそっくりなの。思わず私の胸は、高鳴った。
春先でも夕暮れは気温が下がる。彼は、私の頬が冷えてきたことに気づき、またすぐ来る、と言い残し姿を消した。
御籐という彼は、私の肩を掴み真剣な目で話す。その言葉に私もパニックになる。じゃあ、この人が私がずっと探していた人なの?
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私の言葉に御籐は明らかに動揺する。
「そんなわけないやんか!ずっと一緒に生活しとった!4年くらい前の話や。なんで覚えてないんや!」
粗暴に見える御籐の目は潤んでいるように見える。
「四年前……?私が、彼と会ったのは、もっとずっと前です。」
その言葉に御籐は明らかに落ち込んだ顔をする。
「嘘や……。おい、もしかして俺の知らんとこで、何かあったのか。記憶喪失とか……。でも、俺もおかしいとは思うんや。四年以上経ってるのにお前は歳取るどころか、若返ってんねんもんな。あり得ん話や。」
御籐は、頭を抱え独り言のように呟く。
御籐は確かに、私の初恋の彼にそっくりだ。けれど目の前の御籐も同一人物にしては若すぎる気はしている。しかも、記憶の中の彼は、こんなに粗暴な雰囲気であっただろうか。たしかに極道ではあったかもしれないが、もっと実直そうな佇まいでなかっただろうか。私も目の前の彼と同じく考え込んでしまう。
「……まぁ。そんなんはどうでもええ。たとえ、全部忘れとっても、ゆめはゆめや。俺は、ずっとお前を……ゆめを探しとった。ゆめ、やっと見つけたで。」御籐という男は、優しく私を抱きしめた。こんなに乱暴そうな人なのに私を扱うその手はとても優しかった。私が動揺していると、彼も私の様子に気づく。
「お前が俺を知らんでもええ。初恋でなくてもええ。お前が俺を好きやないなら、ま一遍惚れさすだけや。」
彼は、優しい瞳で私の頬を撫でる。どうして優しい瞳までそっくりなの。思わず私の胸は、高鳴った。
春先でも夕暮れは気温が下がる。彼は、私の頬が冷えてきたことに気づき、またすぐ来る、と言い残し姿を消した。
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