18 / 36
1章
旭日昇天 第3話
しおりを挟む
「あんな。お前の歌を聞いて分かったんや。俺が探しとったんは、お前や。人違いやない。何度も聞いた歌声や。絶対にお前や。お前がゆめや。」
御籐という彼は、私の肩を掴み真剣な目で話す。その言葉に私もパニックになる。じゃあ、この人が私がずっと探していた人なの?
「たしかに私は親しい人からは、ゆめって呼ばれています。でも私の会ったことのある貴方そっくりの方には、名前は伝えていないはずなんです。私も、名前を存じませんし……。」
私の言葉に御籐は明らかに動揺する。
「そんなわけないやんか!ずっと一緒に生活しとった!4年くらい前の話や。なんで覚えてないんや!」
粗暴に見える御籐の目は潤んでいるように見える。
「四年前……?私が、彼と会ったのは、もっとずっと前です。」
その言葉に御籐は明らかに落ち込んだ顔をする。
「嘘や……。おい、もしかして俺の知らんとこで、何かあったのか。記憶喪失とか……。でも、俺もおかしいとは思うんや。四年以上経ってるのにお前は歳取るどころか、若返ってんねんもんな。あり得ん話や。」
御籐は、頭を抱え独り言のように呟く。
御籐は確かに、私の初恋の彼にそっくりだ。けれど目の前の御籐も同一人物にしては若すぎる気はしている。しかも、記憶の中の彼は、こんなに粗暴な雰囲気であっただろうか。たしかに極道ではあったかもしれないが、もっと実直そうな佇まいでなかっただろうか。私も目の前の彼と同じく考え込んでしまう。
「……まぁ。そんなんはどうでもええ。たとえ、全部忘れとっても、ゆめはゆめや。俺は、ずっとお前を……ゆめを探しとった。ゆめ、やっと見つけたで。」御籐という男は、優しく私を抱きしめた。こんなに乱暴そうな人なのに私を扱うその手はとても優しかった。私が動揺していると、彼も私の様子に気づく。
「お前が俺を知らんでもええ。初恋でなくてもええ。お前が俺を好きやないなら、ま一遍惚れさすだけや。」
彼は、優しい瞳で私の頬を撫でる。どうして優しい瞳までそっくりなの。思わず私の胸は、高鳴った。
春先でも夕暮れは気温が下がる。彼は、私の頬が冷えてきたことに気づき、またすぐ来る、と言い残し姿を消した。
御籐という彼は、私の肩を掴み真剣な目で話す。その言葉に私もパニックになる。じゃあ、この人が私がずっと探していた人なの?
「たしかに私は親しい人からは、ゆめって呼ばれています。でも私の会ったことのある貴方そっくりの方には、名前は伝えていないはずなんです。私も、名前を存じませんし……。」
私の言葉に御籐は明らかに動揺する。
「そんなわけないやんか!ずっと一緒に生活しとった!4年くらい前の話や。なんで覚えてないんや!」
粗暴に見える御籐の目は潤んでいるように見える。
「四年前……?私が、彼と会ったのは、もっとずっと前です。」
その言葉に御籐は明らかに落ち込んだ顔をする。
「嘘や……。おい、もしかして俺の知らんとこで、何かあったのか。記憶喪失とか……。でも、俺もおかしいとは思うんや。四年以上経ってるのにお前は歳取るどころか、若返ってんねんもんな。あり得ん話や。」
御籐は、頭を抱え独り言のように呟く。
御籐は確かに、私の初恋の彼にそっくりだ。けれど目の前の御籐も同一人物にしては若すぎる気はしている。しかも、記憶の中の彼は、こんなに粗暴な雰囲気であっただろうか。たしかに極道ではあったかもしれないが、もっと実直そうな佇まいでなかっただろうか。私も目の前の彼と同じく考え込んでしまう。
「……まぁ。そんなんはどうでもええ。たとえ、全部忘れとっても、ゆめはゆめや。俺は、ずっとお前を……ゆめを探しとった。ゆめ、やっと見つけたで。」御籐という男は、優しく私を抱きしめた。こんなに乱暴そうな人なのに私を扱うその手はとても優しかった。私が動揺していると、彼も私の様子に気づく。
「お前が俺を知らんでもええ。初恋でなくてもええ。お前が俺を好きやないなら、ま一遍惚れさすだけや。」
彼は、優しい瞳で私の頬を撫でる。どうして優しい瞳までそっくりなの。思わず私の胸は、高鳴った。
春先でも夕暮れは気温が下がる。彼は、私の頬が冷えてきたことに気づき、またすぐ来る、と言い残し姿を消した。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
好きすぎて、壊れるまで抱きたい。
すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。
「はぁ・・はぁ・・・」
「ちょっと待ってろよ?」
息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。
「どこいった?」
また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。
「幽霊だったりして・・・。」
そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。
だめだと思っていても・・・想いは加速していく。
俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。
※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。
※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。
※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。
いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる