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1章
旭日昇天 第2話
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会談の部屋には、怖い顔をしたヤクザのおじさん達が、大勢揃っていた。叔父が私を連れて部屋に入ったことに驚いたのか、私の顔をヤクザ達は、私の顔を睨みつけながらざわついている。
「今日は、皆に私の姪を紹介したい、涼明だ。十六になった。私のシノギの事務所から歌手としてデビューする。デビュー前に挨拶させておこうと思ってな。涼明、前へ。」
私は、叔父さんに促され、前へ出る。
「か、風波 夕涼明ですっ……。」
変わった名前であることを我ながら恨みたい。緊張で咬みかけた。私の顔は、真っ赤になっていることだろう。私の初恋のそっくりさん、御籐という男も、荒々しく自分の席に戻り、私を食い入るように見ていた。よく見ると、仲澤のおじちゃんもすぐそばに座っていた。仲澤のおじちゃんは、私を見ており、目が合うと緊張している私を頷いて励ましてくれる。
「挨拶ついでに、涼明に歌わせたい、皆も聞いてくれ。」
叔父さんの合図で、準備していたバックバンドの人たちが演奏を始める。
私が歌いだすと、ざわついていた室内は静かになった。少しの沈黙の後、おおっと感嘆の声が漏れるのが聞こえた。こんな小娘の歌なんてまるで期待していなかったのに、まさか、というように。
歌は大好きだ。自分の歌だけは、何よりも自信があった。だって彼が褒めてくれた歌だから。今まで、彼の言葉と歌が辛い時も私を励ましてくれた。
歌い終わると、室内は拍手喝采に包まれた。
「えぐい!これはえぐいで!これで白明会は大儲けや!」
「今度、ウチの集会でも歌ってもらおか!組の奴らにも聞かせてやりたいわ!」
歌い終わり、私は冷静になると、大のヤクザ達が大騒ぎしており、すごい迫力である。
気になっていた御籐の方を見ると、御籐は椅子に座り込んだまま、何かを考えているようであった。
「ゆめ!お疲れ様、堂々とした素晴らしい歌だったよ。」
「涼明、見ない間にずいぶん大きくなったな。これは、俺からほんの気持ちだ。」
控えの部屋に叔父さんと仲澤のおじちゃんが入ってきてねぎらいの言葉をくれた。
「叔父さん。仲澤のおじちゃんも、わざわざありがとう。」
私は、仲澤のおじちゃんからプレゼントを受け取る。
「それにしても、さっきは大丈夫だったか。御籐の餓鬼め。突然、あんな野蛮なのに会って驚いただろう。」
叔父さんはさっきの私と御籐という男とのやりとりを心配してくれていたようだ。
大丈夫と言いかけたところで、部屋の扉が、コンコンとノックされる。
「何の用だ。」
「岩倉です。会長と仲澤の親父さんに少しお話が……。」
男の人が扉から顔を出す。
「悪いなゆめ。少し席を外す。」
叔父さん達は、部屋を出ていった。
すると今度は中庭がある窓側から同じくコンコンと音が聞こえる。外に誰かいるようだ。私は、気になり窓を開けてみる。すると、すごい力で身体ごと窓から引き出される。驚いて、きゃあ!と声をあげようとするも、騒ぐ前に口をふさがれてしまい敵わない。
「落ち着け。俺や。」
中庭に隠れていたのは、さっきの御籐という男であった。こんなことしなくてもと、反論しようとするも、口は塞がれたままだ。
「お前のおっかないおっさんが、素直に俺をお前に会わせんと思ってな。手荒で悪いのぅ。」
たしかに、さっきの叔父さんの言いぶりからして、かなりこの男を警戒しているようだ。私も、初恋の人についてもう一度話を聞きたいと思っていたし、ちょうどいい機会だと思い、抵抗するのをやめた。
「今日は、皆に私の姪を紹介したい、涼明だ。十六になった。私のシノギの事務所から歌手としてデビューする。デビュー前に挨拶させておこうと思ってな。涼明、前へ。」
私は、叔父さんに促され、前へ出る。
「か、風波 夕涼明ですっ……。」
変わった名前であることを我ながら恨みたい。緊張で咬みかけた。私の顔は、真っ赤になっていることだろう。私の初恋のそっくりさん、御籐という男も、荒々しく自分の席に戻り、私を食い入るように見ていた。よく見ると、仲澤のおじちゃんもすぐそばに座っていた。仲澤のおじちゃんは、私を見ており、目が合うと緊張している私を頷いて励ましてくれる。
「挨拶ついでに、涼明に歌わせたい、皆も聞いてくれ。」
叔父さんの合図で、準備していたバックバンドの人たちが演奏を始める。
私が歌いだすと、ざわついていた室内は静かになった。少しの沈黙の後、おおっと感嘆の声が漏れるのが聞こえた。こんな小娘の歌なんてまるで期待していなかったのに、まさか、というように。
歌は大好きだ。自分の歌だけは、何よりも自信があった。だって彼が褒めてくれた歌だから。今まで、彼の言葉と歌が辛い時も私を励ましてくれた。
歌い終わると、室内は拍手喝采に包まれた。
「えぐい!これはえぐいで!これで白明会は大儲けや!」
「今度、ウチの集会でも歌ってもらおか!組の奴らにも聞かせてやりたいわ!」
歌い終わり、私は冷静になると、大のヤクザ達が大騒ぎしており、すごい迫力である。
気になっていた御籐の方を見ると、御籐は椅子に座り込んだまま、何かを考えているようであった。
「ゆめ!お疲れ様、堂々とした素晴らしい歌だったよ。」
「涼明、見ない間にずいぶん大きくなったな。これは、俺からほんの気持ちだ。」
控えの部屋に叔父さんと仲澤のおじちゃんが入ってきてねぎらいの言葉をくれた。
「叔父さん。仲澤のおじちゃんも、わざわざありがとう。」
私は、仲澤のおじちゃんからプレゼントを受け取る。
「それにしても、さっきは大丈夫だったか。御籐の餓鬼め。突然、あんな野蛮なのに会って驚いただろう。」
叔父さんはさっきの私と御籐という男とのやりとりを心配してくれていたようだ。
大丈夫と言いかけたところで、部屋の扉が、コンコンとノックされる。
「何の用だ。」
「岩倉です。会長と仲澤の親父さんに少しお話が……。」
男の人が扉から顔を出す。
「悪いなゆめ。少し席を外す。」
叔父さん達は、部屋を出ていった。
すると今度は中庭がある窓側から同じくコンコンと音が聞こえる。外に誰かいるようだ。私は、気になり窓を開けてみる。すると、すごい力で身体ごと窓から引き出される。驚いて、きゃあ!と声をあげようとするも、騒ぐ前に口をふさがれてしまい敵わない。
「落ち着け。俺や。」
中庭に隠れていたのは、さっきの御籐という男であった。こんなことしなくてもと、反論しようとするも、口は塞がれたままだ。
「お前のおっかないおっさんが、素直に俺をお前に会わせんと思ってな。手荒で悪いのぅ。」
たしかに、さっきの叔父さんの言いぶりからして、かなりこの男を警戒しているようだ。私も、初恋の人についてもう一度話を聞きたいと思っていたし、ちょうどいい機会だと思い、抵抗するのをやめた。
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