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序章
暁闇の前刻 第3話
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御籐が着替えて風呂場を出ると、少女は台所で料理をしているようであった。
「お粥作ってるんだけど、食べられそう?」
少女は、鍋をかき混ぜながら、御籐に尋ねた。
「いや、悪いけど、食欲ないわ。ちゅうか、お前名前は?どこのモンや?もうお家帰り」
御籐は、少女の助けはありがたいと思っていたが、これ以上関わる気は無かった。極道の世といっても、本来、堅気と極道が積極的に関わるものではない。ましては御籐は特に堅気に対して区別する気持ちが強かった。
「ゆめっていうの。でも、まだ顔色悪そうだし……。その、心配なの。」
なんとも歯切れの悪い返事であった。事実、御籐の体調が悪いのは事実である。先ほどから、感じたことのない悪寒がしているが、御籐は完全に強がっていた。
「とりあえず、少しでも食べて、横になって!えっと……「御籐や。御籐 信治郎」御籐さん。」
御籐は、ゆめに言いたいことは散々あったが、痛む頭のせいで、名前を伝えるのがやっとであった。ゆめは、素直になった御籐に粥を食べさせ、布団に横にならせた。御籐の久々の食事は、今まで味わったことのない程、優しい味であった。
「嫌や、寝たないねん俺……」
御籐は、布団に入り、目をつぶったと思ったが、すぐに汗をかき、魘されはじめた。ゆめは、タオルを冷やし、御籐の汗を拭う。
「頼む!俺を寝かせんといてくれ!」
御籐は、必死でゆめの腕を掴み訴えた。
「でも少し寝ないと……。身体が持たないよ。」
ゆめは、起き上がろうとする御籐をなんとか、布団へ押し戻す。
「嫌や、あの時のこと、夢に見るんや……もうあんな目に遭いたない……」
御籐は、熱に浮かされ、ゆめに縋りながら、涙ながらに呟く。
「そんなに辛い思いをしてきたのね。もう大丈夫。ここには怖い人はいないから……。安心して寝られるように子守唄を歌ってあげるね……。」
ゆめは、縋りつく御籐の頭を抱きしめながら、昔懐かしい子守唄を歌った。
しばらくすると御籐は、ゆっくりと眠りについた。
「お粥作ってるんだけど、食べられそう?」
少女は、鍋をかき混ぜながら、御籐に尋ねた。
「いや、悪いけど、食欲ないわ。ちゅうか、お前名前は?どこのモンや?もうお家帰り」
御籐は、少女の助けはありがたいと思っていたが、これ以上関わる気は無かった。極道の世といっても、本来、堅気と極道が積極的に関わるものではない。ましては御籐は特に堅気に対して区別する気持ちが強かった。
「ゆめっていうの。でも、まだ顔色悪そうだし……。その、心配なの。」
なんとも歯切れの悪い返事であった。事実、御籐の体調が悪いのは事実である。先ほどから、感じたことのない悪寒がしているが、御籐は完全に強がっていた。
「とりあえず、少しでも食べて、横になって!えっと……「御籐や。御籐 信治郎」御籐さん。」
御籐は、ゆめに言いたいことは散々あったが、痛む頭のせいで、名前を伝えるのがやっとであった。ゆめは、素直になった御籐に粥を食べさせ、布団に横にならせた。御籐の久々の食事は、今まで味わったことのない程、優しい味であった。
「嫌や、寝たないねん俺……」
御籐は、布団に入り、目をつぶったと思ったが、すぐに汗をかき、魘されはじめた。ゆめは、タオルを冷やし、御籐の汗を拭う。
「頼む!俺を寝かせんといてくれ!」
御籐は、必死でゆめの腕を掴み訴えた。
「でも少し寝ないと……。身体が持たないよ。」
ゆめは、起き上がろうとする御籐をなんとか、布団へ押し戻す。
「嫌や、あの時のこと、夢に見るんや……もうあんな目に遭いたない……」
御籐は、熱に浮かされ、ゆめに縋りながら、涙ながらに呟く。
「そんなに辛い思いをしてきたのね。もう大丈夫。ここには怖い人はいないから……。安心して寝られるように子守唄を歌ってあげるね……。」
ゆめは、縋りつく御籐の頭を抱きしめながら、昔懐かしい子守唄を歌った。
しばらくすると御籐は、ゆっくりと眠りについた。
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