1 / 1
入れ替わりですわ!
しおりを挟む
わたくしは、聖女様と入れ替わりました。
「え……」
聖女様は、わたくしを見て絶句します。
それはそうでしょう。だって、わたくしの姿かたちは、今は、かつての聖女様と同じなのですから。
「な……なにをしているの? 一体……」
「ようやく、貴女とお話することができますね」
わたくしはにっこりと笑います。
このチャンスを逃すわけにはいきません。
「ごめんなさいね」
わたくしは、聖女様に謝りました。
「わたくしは、貴女からすべてを奪います」
「え……な……なにを言っているの……?」
「今のわたくしは、もう貴女が聖女ではないことを知っているのです。貴女は偽物なのです」
「……!?」
聖女様の顔が驚愕に染まります。
「そして、本物の聖女様は、わたくしです」
わたくしははっきりと告げます。
「な……何を馬鹿なことを……」
聖女様が首を振ります。
「わたくしは、貴女のすべてを奪いました。聖女の力はもちろん、立場も名誉もすべてです」
「……」
聖女様は沈黙します。
「貴女がどんな気持ちで聖女を演じていたか、わたくしにはわかっているつもりです」
「…………」
「貴女は、大変な苦労をして聖女の座についたのでしょう? ですが、もう安心してください。わたくしが代わりに務めを果たさせていただきますので」
「……ふざけないで!」
聖女様が激昂します。
「こんなことがあってはいけないのよ。」
わたくしは令嬢とはいえ、聖女様の耳にも一度は入る程に悪評を流されているわけですから抵抗があるのでしょうね。「貴女にわたくしの代わりなんて務まるはずないじゃない!」
「……ええ、そうですね」
わたくしは頷きます。
「だから、貴女はご令嬢失格なのですよ?」
「……」
わたくしは言い返せずにいました。
「貴女は偽物なの。本物の聖女はわたくしだけなのよ」
「……そうかもしれませんわね」
わたくしは否定せずに同意します。
「ですが、これが現実ですわ」
わたくしの言葉に、聖女様は黙り込んでしまいます。少しすると、
「きっと後悔しますわよ。」とだけ言って去っていきました。
わたくしは元聖女様の後ろ姿を見送りながら、聖女様のことが少し可哀想だと思いました。
聖女様が去った後、入れ替わりでアリシアさんが現れました。
「どうだった?」
「首尾よく騙せましたわ」
わたくしが答えると、黒魔法使いのアリシアさんは満足そうに頷きました。
「これで彼女と貴方の人生は転機を迎えるでしょう」
「ええ、ありがとうございます」
わたくしは頭を下げます。
「それにしても、聖女様って、意外と弱かったのですね」
「それは違うよ。彼女が弱かったんじゃない。貴方が強すぎたんだよ」
「あら……」
わたくしは自分の顔を撫でながら言いました。
「嬉しいことをおっしゃるのね」
「彼女から聖女の力を奪ったのだから当然だよ」
アリシアさんは平然と答えます。
「これで、貴女が本物の聖女になるんだから」
「ええ、頑張りますわ」
わたくしは頷きました。
わたくし達は喜びました。これでもう、あんな屈辱的な思いをすることはありませんから。
「貴方のおかげです」
わたくしは改めてアリシアさんに感謝しました。「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとう」
アリシアさんは微笑んでくれました。
「これで、貴女は本物の聖女になれるよ」
「……はい」
わたくしは頷きます。しかし、その表情に曇りがあるのをアリシアさんは見逃さなかったようでした。「どうかした?」
「いえ、その……本当にわたくしなんかが聖女でいいのかしらって……」
わたくしは躊躇いがちに打ち明けました。
「私は今までずっと煙たがられてそれが嫌だったから、貴女が封印を解いて救ってくれたように、今度は私が誰かを救う番だと思ったんだ」
「アリシアさん……」
わたくしの胸が熱くなります。この人はなんて優しい人なのでしょう。
「だから、気に病むことはないよ」
「……ありがとう」
わたくしは泣きそうになるのを堪えて微笑みました。
「私は貴女の力になりたいんだ」
アリシアさんはそう言ってくれました。「貴女が望むなら、なんだってするよ」
「本当に?」
「ああ、約束するよ」
アリシアさんは力強く頷いてくれます。
「それじゃあ……」
わたくしは少し考えてから、こう言いました。
「わたくしに忠誠を誓ってくださいませんこと?」
「……」
アリシアさんは面食らったような表情を浮かべましたが、すぐに笑顔になりました。
「わかった」
そう言って、跪き、手の甲に口づけをしてくれました。
「貴女の盾となり剣となることを誓います」
アリシアさんはそう言って微笑みました。その笑顔はとても素敵で、わたくしは胸が高鳴るのを感じました。
「ありがとう……」
わたくしは自然と涙を流していました。嬉しかったのです。誰かに信頼されるということはこんなにも心が暖かくなるものなのだと知りましたから。「さあ、参りましょう」
わたくしはアリシアさんを連れて聖堂に向かいます。
聖女様とわたくし、どちらの方が幸せになれるのか。人生を賭けたたたかいですわ。
「え……」
聖女様は、わたくしを見て絶句します。
それはそうでしょう。だって、わたくしの姿かたちは、今は、かつての聖女様と同じなのですから。
「な……なにをしているの? 一体……」
「ようやく、貴女とお話することができますね」
わたくしはにっこりと笑います。
このチャンスを逃すわけにはいきません。
「ごめんなさいね」
わたくしは、聖女様に謝りました。
「わたくしは、貴女からすべてを奪います」
「え……な……なにを言っているの……?」
「今のわたくしは、もう貴女が聖女ではないことを知っているのです。貴女は偽物なのです」
「……!?」
聖女様の顔が驚愕に染まります。
「そして、本物の聖女様は、わたくしです」
わたくしははっきりと告げます。
「な……何を馬鹿なことを……」
聖女様が首を振ります。
「わたくしは、貴女のすべてを奪いました。聖女の力はもちろん、立場も名誉もすべてです」
「……」
聖女様は沈黙します。
「貴女がどんな気持ちで聖女を演じていたか、わたくしにはわかっているつもりです」
「…………」
「貴女は、大変な苦労をして聖女の座についたのでしょう? ですが、もう安心してください。わたくしが代わりに務めを果たさせていただきますので」
「……ふざけないで!」
聖女様が激昂します。
「こんなことがあってはいけないのよ。」
わたくしは令嬢とはいえ、聖女様の耳にも一度は入る程に悪評を流されているわけですから抵抗があるのでしょうね。「貴女にわたくしの代わりなんて務まるはずないじゃない!」
「……ええ、そうですね」
わたくしは頷きます。
「だから、貴女はご令嬢失格なのですよ?」
「……」
わたくしは言い返せずにいました。
「貴女は偽物なの。本物の聖女はわたくしだけなのよ」
「……そうかもしれませんわね」
わたくしは否定せずに同意します。
「ですが、これが現実ですわ」
わたくしの言葉に、聖女様は黙り込んでしまいます。少しすると、
「きっと後悔しますわよ。」とだけ言って去っていきました。
わたくしは元聖女様の後ろ姿を見送りながら、聖女様のことが少し可哀想だと思いました。
聖女様が去った後、入れ替わりでアリシアさんが現れました。
「どうだった?」
「首尾よく騙せましたわ」
わたくしが答えると、黒魔法使いのアリシアさんは満足そうに頷きました。
「これで彼女と貴方の人生は転機を迎えるでしょう」
「ええ、ありがとうございます」
わたくしは頭を下げます。
「それにしても、聖女様って、意外と弱かったのですね」
「それは違うよ。彼女が弱かったんじゃない。貴方が強すぎたんだよ」
「あら……」
わたくしは自分の顔を撫でながら言いました。
「嬉しいことをおっしゃるのね」
「彼女から聖女の力を奪ったのだから当然だよ」
アリシアさんは平然と答えます。
「これで、貴女が本物の聖女になるんだから」
「ええ、頑張りますわ」
わたくしは頷きました。
わたくし達は喜びました。これでもう、あんな屈辱的な思いをすることはありませんから。
「貴方のおかげです」
わたくしは改めてアリシアさんに感謝しました。「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとう」
アリシアさんは微笑んでくれました。
「これで、貴女は本物の聖女になれるよ」
「……はい」
わたくしは頷きます。しかし、その表情に曇りがあるのをアリシアさんは見逃さなかったようでした。「どうかした?」
「いえ、その……本当にわたくしなんかが聖女でいいのかしらって……」
わたくしは躊躇いがちに打ち明けました。
「私は今までずっと煙たがられてそれが嫌だったから、貴女が封印を解いて救ってくれたように、今度は私が誰かを救う番だと思ったんだ」
「アリシアさん……」
わたくしの胸が熱くなります。この人はなんて優しい人なのでしょう。
「だから、気に病むことはないよ」
「……ありがとう」
わたくしは泣きそうになるのを堪えて微笑みました。
「私は貴女の力になりたいんだ」
アリシアさんはそう言ってくれました。「貴女が望むなら、なんだってするよ」
「本当に?」
「ああ、約束するよ」
アリシアさんは力強く頷いてくれます。
「それじゃあ……」
わたくしは少し考えてから、こう言いました。
「わたくしに忠誠を誓ってくださいませんこと?」
「……」
アリシアさんは面食らったような表情を浮かべましたが、すぐに笑顔になりました。
「わかった」
そう言って、跪き、手の甲に口づけをしてくれました。
「貴女の盾となり剣となることを誓います」
アリシアさんはそう言って微笑みました。その笑顔はとても素敵で、わたくしは胸が高鳴るのを感じました。
「ありがとう……」
わたくしは自然と涙を流していました。嬉しかったのです。誰かに信頼されるということはこんなにも心が暖かくなるものなのだと知りましたから。「さあ、参りましょう」
わたくしはアリシアさんを連れて聖堂に向かいます。
聖女様とわたくし、どちらの方が幸せになれるのか。人生を賭けたたたかいですわ。
0
お気に入りに追加
27
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
婚約破棄された悪役令嬢は、満面の笑みで旅立ち最強パーティーを結成しました!?
アトハ
恋愛
「リリアンヌ公爵令嬢! 私は貴様の罪をここで明らかにし、婚約を破棄することを宣言する!」
突き付けられた言葉を前に、私――リリアンヌは内心でガッツポーズ!
なぜなら、庶民として冒険者ギルドに登録してクエストを受けて旅をする、そんな自由な世界に羽ばたくのが念願の夢だったから!
すべては計画どおり。完璧な計画。
その計画をぶち壊すのは、あろうことかメインヒロインだった!?
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
ざまぁでちゅね〜ムカつく婚約者をぶっ倒す私は、そんなに悪役令嬢でしょうか?〜
ぬこまる
恋愛
王立魔法学園の全校集会で、パシュレミオン公爵家長子ナルシェから婚約破棄されたメルル。さらに悪役令嬢だといじられ懺悔させられることに‼︎ そして教会の捨て子窓口にいた赤ちゃんを抱っこしたら、なんと神のお告げが……。
『あなたに前世の記憶と加護を与えました。神の赤ちゃんを育ててください』
こうして無双魔力と乙女ゲームオタクだった前世の記憶を手に入れたメルルは、国を乱す悪者たちをこらしめていく! するとバカ公爵ナルシェが復縁を求めてくるから、さあ大変!? そして彼女は、とんでもないことを口にした──ざまぁでちゅね 悪役令嬢が最強おかあさんに!? バブみを感じる最高に尊い恋愛ファンタジー!
登場人物
メルル・アクティオス(17)
光の神ポースの加護をもつ“ざまぁ“大好きな男爵令嬢。
神の赤ちゃんを抱っこしたら、無双の魔力と乙女ゲームオタクだった前世の記憶を手に入れる。
イヴ(推定生後八か月)
創造神ルギアの赤ちゃん。ある理由で、メルルが育てることに。
アルト(18)
魔道具開発をするメルルの先輩。ぐるぐるメガネの平民男子だが本当は!?
クリス・アクティオス(18)
メルルの兄。土の神オロスの加護をもち、学園で一番強い。
ティオ・エポナール(18)
風の神アモネスの加護をもつエポナ公爵家の長子。全校生徒から大人気の生徒会長。
ジアス(15)
獣人族の少年で、猫耳のモフモフ。奴隷商人に捕まっていたが、メルルに助けられる。
ナルシェ・パシュレミオン(17)
パシュレミオン公爵家の長子。メルルを婚約破棄していじめる同級生。剣術が得意。
モニカ(16)
メルルの婚約者ナルシェをたぶらかし、婚約破棄させた新入生。水の神の加護をもち、絵を描く芸術家。
イリース(17)
メルルの親友。ふつうに可愛いお嬢様。
パイザック(25)
極悪非道の奴隷商人。闇の神スキアの加護をもち、魔族との繋がりがありそう──?
アクティオス男爵家の人々
ポロン(36)
メルルの父。魔道具開発の経営者で、鉱山を所有している影の実力者。
テミス(32)
メルルの母。優しくて可愛い。驚くと失神してしまう。
アルソス(56)
先代から伯爵家に仕えているベテラン執事。
婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!
白雪みなと
恋愛
王子に婚約破棄され、没落してしまった元公爵令嬢のリタ・ホーリィ。
その瞬間、自分が乙女ゲームの世界にいて、なおかつ悪役令嬢であることを思い出すリタ。
でも、リタにはゲームにはないはずの聖女の能力を宿しており――?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!
夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。
そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。
※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様
※小説家になろう様にも掲載しています
【完結】聖女様は聖くない
当麻リコ
恋愛
異世界から召喚された聖女に婚約者の心を奪われてしまったヨハンナ。
彼女は学園の卒業パーティーで王太子である婚約者から、婚約破棄を言い渡されてしまう。
彼の心はもう自分にはないと知ったヨハンナ。
何もかも諦め婚約破棄を受け入れることにしたヨハンナの代わりに、切れたのは何故か聖女であるカレンだった――。
※短めのお話です。
愛するお嬢様を傷付けられた少年、本人が部屋に閉じこもって泣き暮らしている間に復讐の準備を完璧に整える
下菊みこと
恋愛
捨てられた少年の恋のお話。
少年は両親から捨てられた。なんとか生きてきたがスラム街からも追い出された。もうダメかと思っていたが、救いの手が差し伸べられた。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる