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悪役令嬢の家庭教師になった理由それは
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「マリー様、お勉強の時間でございますよ」
「もうそんな時間ですの……。わたくしは疲れてしまいましたわ。今日はただお茶を飲んで、本を読むだけの一日にしたいのですが。」
「なりません。そのようなことをすれば、マリー様はまた以前のように逃げ出してしまわれるでしょう?」
「ケチ」
「はいはい、ケチで結構ですわ。さあ、お勉強のお時間ですわよ」
「はあ……。ねえ、ロザリンダ」
「なんでしょう?」
「わたくし、勉強なんかよりももっとやりたいことがありますの。聞いてくださる?」
「……わかりましたわ。ただし、そのお話はお勉強が終わってからですわよ」
「ええ!わかっていますわ!」
わたくしがそう言うと、マリー様は満面の笑みを浮かべて、ご自分のベッドに飛び込んだ。
「聞いてくださいまし、ロザリンダ!先日のお茶会でお会いした王太子殿下、それはそれは素敵な方でしたの!」
「お茶会というと……、ああ、あの不愉快な女の主催したお茶会ですのね」
「ええ、そうですわ。あのような者の主催したお茶会など出席したくもないのですけれど……。でも仕方がありませんものね?」
「マリー様、王太子殿下にお会いしたのですか?」
「そうなんですのよ!わたくし、その方のことが頭から離れなくなってしまって……。それでお母様に相談したのですけれど、それもこれも、すべてあの令嬢が悪いんですわ!そうですわよね、ロザリンダ?」
「マリー様……」
「ですからわたくし、その令嬢をお茶会に招こうと思ったのですわ。そしてその方に『王太子殿下と婚約するのはわたくしですのよ』と直接申し上げようと思うのです」
「マリー様、それはいけませんわ!」
「なぜですの?」
「だってそんなことをしたら……」
「でもこのままでは、あの忌々しい女が次期王妃になってしまいますわ」
「それは……」
「あんな女に負けてはいけませんわ!」
マリー様は拳を握って力説された。
「……わかりましたわ、マリー様」
わたくしはため息をついてから、マリー様に言った。
「ただし!一つだけ条件があります」
「なんですの?」
「王太子殿下にお会いするときには、わたくしも連れて行ってくださいな。わたくしだってマリー様が王太子殿下にお会いするところを見てみたいですわ」
「わかりましたわ!ロザリンダがそうおっしゃるのでしたら、一緒に参りましょう」
「ありがとうございます」
「うふふふふふふふふ。早くあの令嬢に招待状を送らないといけませんわね!」
わたくしの言葉にマリー様はご満悦な表情をされた。
◇ ◆ ◇
「ようこそいらっしゃいましたマリー様」
王太子殿下はにこやかに微笑まれた。
「このたびはお招きいただきまして……。あっ!こちらがわたくしの友人のロザリンダです」
「お初にお目にかかります。ロザリンダ・ケールでございます」
わたくしは丁寧に礼をした。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、ロザリンダ嬢」
王太子殿下は優雅な動作で礼を返してくださった。
「マリー様からお話を伺って以来、お会いできる日を心待ちにしておりました。実は私も貴女に会えるのを楽しみにしていたのですよ」
そう言って王太子殿下はマリー様の手を取った。
「まあ、王太子殿下。お上手ですこと」
マリー様は恥ずかしそうに微笑んだ。
「では、立ち話もなんですから、席におつきください」
わたくしたちが席に着くと、さっそくお茶会が始まった。
◇ ◆ ◇
「本日は天気も良くて何よりでしたね」
王太子殿下がマリー様に話しかけた。
「本当ですわね。わたくし、雨があまり好きではありませんの」
「私もですよ」
マリー様と王太子殿下は楽しそうに会話されている。
「そうそう、マリー様。私と一緒にダンスの練習をしませんか?一度、ゆっくりお話がしたいと思っていたのです」
「まあ!嬉しいですわ!ぜひお願いいたします」
王太子殿下に誘われたマリー様は嬉しそうだ。
「ロザリンダ嬢はいかがですか?」
「わたくしは見学させていただけますの?」
「もちろんですよ」
「ありがとうございます。それでは喜んでご一緒させていただきますわ」
◇ ◆ ◇
お茶会がお開きになり、わたくしたちは馬車に乗り込んだ。
「楽しかったですわね」
「ええ、本当に」
マリー様とわたくしを乗せた馬車は王都の大通りを走った。
「王太子殿下と一緒にダンスの練習ができるなんて夢みたいですわ」
「マリー様ったら……。浮かれすぎですわよ?」
「だって嬉しいんですもの!」
マリー様は無邪気に笑った。
◇ ◆ ◇
王城に到着すると、マリー様は早速王太子殿下に会いに行った。「王太子殿下、本日はお招きいただきましてありがとうございます」
「よく来てくださいました、マリー嬢」
わたくしも一緒に挨拶をする。
「ご機嫌麗しゅう存じます。王太子殿下」
「ロザリンダ嬢も。よく来てくれましたね」
王太子殿下は笑顔を向けてくださった。
それからしばらく三人でお話しした。
◇ ◆ ◇
その後、お屋敷に戻り身支度を済ませるとわたくしはマリー様の部屋へ向かった。
「ねえ、ロザリンダ!今日はなんて素敵な一日でしたの?わたくし、王太子殿下とお会いすることができましたわ!ああ……、本当に夢のようでしたわね」
マリー様はベッドの上で足をバタバタさせている。
「それはようございましたわね。でも、はしゃぎすぎはいけませんわよ?」
「わかっていますわよ」
そう言いながらも、マリー様はずっと浮かれた様子だった。
「ロザリンダ、王太子殿下のお声って素敵ですわよね?」
「そうですわね」
わたくしは適当に相槌を打つ。
「それに、わたくしを見る時のあの優しい眼差し……。ああ、本当に素敵なお方ですこと」
「そうですね」
わたくしは適当に相槌を打つ。
「あら?ロザリンダ、どうかいたしまして?」
「何がですか?」
「なんだか元気がないようですけれど」
マリー様はわたくしの顔を覗き込んできた。
「そんなことありませんわ」
わたくしは微笑んだ。すると、マリー様は心配そうに言った。
「ロザリンダ……。まさかあなた……」
そこで言葉を止めると、マリー様はハッとした表情をした。
「まさかあなた、王太子殿下のことを……」
わたくしは一瞬ギクッとしたが、すぐに平静を装って否定した。
「いいえ、違いますわ。わたくしはただ単に王太子殿下が素敵なお方だと思っただけですもの」
「そっ……、そうよね?」
マリー様はホッとした顔をした。
◇ ◆ ◇
お茶会の日がやってきた。本日はマリー様が王太子殿下にお会いする日だ。わたくしはマリー様を王太子殿下のもとへ送り届けた。
そうして、時間になったので迎えに行きました。
「こんにちは、ロザリンダ嬢」
「ご機嫌よう、王太子殿下」
わたくしたちは挨拶を交わすと、すぐにダンスの練習が止まった。
「それではマリー様、お勉強の時間ですわ」
そう言ってわたくしはマリー様の手を取った。
「もう!またですの?」
マリー様は不満げに頬を膨らませる。その仕草がとても可愛らしいと思った。
◇ ◆ ◇
「もうそんな時間ですの……。わたくしは疲れてしまいましたわ。今日はただお茶を飲んで、本を読むだけの一日にしたいのですが。」
「なりません。そのようなことをすれば、マリー様はまた以前のように逃げ出してしまわれるでしょう?」
「ケチ」
「はいはい、ケチで結構ですわ。さあ、お勉強のお時間ですわよ」
「はあ……。ねえ、ロザリンダ」
「なんでしょう?」
「わたくし、勉強なんかよりももっとやりたいことがありますの。聞いてくださる?」
「……わかりましたわ。ただし、そのお話はお勉強が終わってからですわよ」
「ええ!わかっていますわ!」
わたくしがそう言うと、マリー様は満面の笑みを浮かべて、ご自分のベッドに飛び込んだ。
「聞いてくださいまし、ロザリンダ!先日のお茶会でお会いした王太子殿下、それはそれは素敵な方でしたの!」
「お茶会というと……、ああ、あの不愉快な女の主催したお茶会ですのね」
「ええ、そうですわ。あのような者の主催したお茶会など出席したくもないのですけれど……。でも仕方がありませんものね?」
「マリー様、王太子殿下にお会いしたのですか?」
「そうなんですのよ!わたくし、その方のことが頭から離れなくなってしまって……。それでお母様に相談したのですけれど、それもこれも、すべてあの令嬢が悪いんですわ!そうですわよね、ロザリンダ?」
「マリー様……」
「ですからわたくし、その令嬢をお茶会に招こうと思ったのですわ。そしてその方に『王太子殿下と婚約するのはわたくしですのよ』と直接申し上げようと思うのです」
「マリー様、それはいけませんわ!」
「なぜですの?」
「だってそんなことをしたら……」
「でもこのままでは、あの忌々しい女が次期王妃になってしまいますわ」
「それは……」
「あんな女に負けてはいけませんわ!」
マリー様は拳を握って力説された。
「……わかりましたわ、マリー様」
わたくしはため息をついてから、マリー様に言った。
「ただし!一つだけ条件があります」
「なんですの?」
「王太子殿下にお会いするときには、わたくしも連れて行ってくださいな。わたくしだってマリー様が王太子殿下にお会いするところを見てみたいですわ」
「わかりましたわ!ロザリンダがそうおっしゃるのでしたら、一緒に参りましょう」
「ありがとうございます」
「うふふふふふふふふ。早くあの令嬢に招待状を送らないといけませんわね!」
わたくしの言葉にマリー様はご満悦な表情をされた。
◇ ◆ ◇
「ようこそいらっしゃいましたマリー様」
王太子殿下はにこやかに微笑まれた。
「このたびはお招きいただきまして……。あっ!こちらがわたくしの友人のロザリンダです」
「お初にお目にかかります。ロザリンダ・ケールでございます」
わたくしは丁寧に礼をした。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、ロザリンダ嬢」
王太子殿下は優雅な動作で礼を返してくださった。
「マリー様からお話を伺って以来、お会いできる日を心待ちにしておりました。実は私も貴女に会えるのを楽しみにしていたのですよ」
そう言って王太子殿下はマリー様の手を取った。
「まあ、王太子殿下。お上手ですこと」
マリー様は恥ずかしそうに微笑んだ。
「では、立ち話もなんですから、席におつきください」
わたくしたちが席に着くと、さっそくお茶会が始まった。
◇ ◆ ◇
「本日は天気も良くて何よりでしたね」
王太子殿下がマリー様に話しかけた。
「本当ですわね。わたくし、雨があまり好きではありませんの」
「私もですよ」
マリー様と王太子殿下は楽しそうに会話されている。
「そうそう、マリー様。私と一緒にダンスの練習をしませんか?一度、ゆっくりお話がしたいと思っていたのです」
「まあ!嬉しいですわ!ぜひお願いいたします」
王太子殿下に誘われたマリー様は嬉しそうだ。
「ロザリンダ嬢はいかがですか?」
「わたくしは見学させていただけますの?」
「もちろんですよ」
「ありがとうございます。それでは喜んでご一緒させていただきますわ」
◇ ◆ ◇
お茶会がお開きになり、わたくしたちは馬車に乗り込んだ。
「楽しかったですわね」
「ええ、本当に」
マリー様とわたくしを乗せた馬車は王都の大通りを走った。
「王太子殿下と一緒にダンスの練習ができるなんて夢みたいですわ」
「マリー様ったら……。浮かれすぎですわよ?」
「だって嬉しいんですもの!」
マリー様は無邪気に笑った。
◇ ◆ ◇
王城に到着すると、マリー様は早速王太子殿下に会いに行った。「王太子殿下、本日はお招きいただきましてありがとうございます」
「よく来てくださいました、マリー嬢」
わたくしも一緒に挨拶をする。
「ご機嫌麗しゅう存じます。王太子殿下」
「ロザリンダ嬢も。よく来てくれましたね」
王太子殿下は笑顔を向けてくださった。
それからしばらく三人でお話しした。
◇ ◆ ◇
その後、お屋敷に戻り身支度を済ませるとわたくしはマリー様の部屋へ向かった。
「ねえ、ロザリンダ!今日はなんて素敵な一日でしたの?わたくし、王太子殿下とお会いすることができましたわ!ああ……、本当に夢のようでしたわね」
マリー様はベッドの上で足をバタバタさせている。
「それはようございましたわね。でも、はしゃぎすぎはいけませんわよ?」
「わかっていますわよ」
そう言いながらも、マリー様はずっと浮かれた様子だった。
「ロザリンダ、王太子殿下のお声って素敵ですわよね?」
「そうですわね」
わたくしは適当に相槌を打つ。
「それに、わたくしを見る時のあの優しい眼差し……。ああ、本当に素敵なお方ですこと」
「そうですね」
わたくしは適当に相槌を打つ。
「あら?ロザリンダ、どうかいたしまして?」
「何がですか?」
「なんだか元気がないようですけれど」
マリー様はわたくしの顔を覗き込んできた。
「そんなことありませんわ」
わたくしは微笑んだ。すると、マリー様は心配そうに言った。
「ロザリンダ……。まさかあなた……」
そこで言葉を止めると、マリー様はハッとした表情をした。
「まさかあなた、王太子殿下のことを……」
わたくしは一瞬ギクッとしたが、すぐに平静を装って否定した。
「いいえ、違いますわ。わたくしはただ単に王太子殿下が素敵なお方だと思っただけですもの」
「そっ……、そうよね?」
マリー様はホッとした顔をした。
◇ ◆ ◇
お茶会の日がやってきた。本日はマリー様が王太子殿下にお会いする日だ。わたくしはマリー様を王太子殿下のもとへ送り届けた。
そうして、時間になったので迎えに行きました。
「こんにちは、ロザリンダ嬢」
「ご機嫌よう、王太子殿下」
わたくしたちは挨拶を交わすと、すぐにダンスの練習が止まった。
「それではマリー様、お勉強の時間ですわ」
そう言ってわたくしはマリー様の手を取った。
「もう!またですの?」
マリー様は不満げに頬を膨らませる。その仕草がとても可愛らしいと思った。
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