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裏切り者め…!
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私は、偽りの悪役令嬢である。
そしてラフィネ様は真の悪役令嬢である。
お互いに『転生者』という事情は把握した。
しかし、ここからが本番である。
まず確認すべきことは――、
「単刀直入にお尋ねいたしますわ。あなた……その乙女ゲーム? とかいう物語について、どれくらい覚えていますの?」
そう尋ねた私に、ラフィネ様は形の良い唇を引き結ぶと、幼い声でつらつらと述べ始めた。
「そうですね……。大まかに言えば、私の役回りは悪役令嬢でして……ヒロインに数々の嫌がらせを繰り返しては断罪、追放されます。いわゆる『ざまぁ』ですね。そして攻略対象の男性キャラクターに庇ってもらいつつ、第二の人生を歩み出す……と言ったところでしょうか」
「なるほど、よく分かりましたわ」
「え? もうですか?」
「はい。あなたの知っているゲームの情報が、完全に私と同じであると確認できましたので……」
そう言うとラフィネ様の顔は、ぱあっと輝いた。
「それはつまり……、これで私達は同じゲームへの『転生者』という裏が取れたと言うことですね!?」
「ええ……。それからもうひとつ……」
私はゲームの内容についてラフィネ様から聞き終えると、また口を開いた。
「……おそらくあなたは勘違いしていますわ」
「勘違い……?」
きょとんした顔のラフィネ様に、私は力強く頷いて見せた。
「そうです! 悪役令嬢が追放されてから始まるのは第二の人生ではありません。むしろそこからが本番なのですわ」
「ええ……!? そうなんですか!?」
「そうです! 悪役令嬢に転生したのなら、やることはひとつでしょう!」
「……それは、なんでしょうか?」
「ヒロインと攻略対象の男性キャラクターをくっつけますのよ!!」
「はっ……! なるほど……!!」
ラフィネ様は目を見開いて、ごくりと唾を飲み込んだ。
そう……つまりはそういうことなのだ。
私こと侯爵令嬢アダールタークは、乙女ゲームの攻略対象である騎士団長との恋愛を夢見ているのである。
その障害となる悪役令嬢ラフィネには、なんとしても婚約破棄をしてもらわなければならないのだ。
そしてそれは即ち――、
「私が騎士団長ルートに乗っかりつつ、この人生を謳歌するため……ひいては私の将来のためにも! 私とあなたの利害は一致していますのよ!」
「つまり私達は、目的を同じくする仲間ということですね……!」
そう述べたラフィネ様は、私の両手を握ってきた。
「ええ。そうですわ」
私もその手を握り返した。
それから私達は、友情の証に固く握手をしたのである。
……しかしこの時、私はまだ気付いていなかったのだ。
ラフィネ様が『乙女ゲーム』について語ったことが、事実と異なっているということに……。
* * *
「騎士団長様……!」
教室から足早に立ち去る騎士団長の背中を追って、私は廊下を駆けた。そして階段の踊り場でようやく追いつき、その背中に声を掛ける。
「……侯爵令嬢アダールターク……!」
「どうして、無視なさるのです……?」
騎士団長は面倒くさそうに舌打ちをすると、私を睨み付けてきた。
「……お嬢様には関わりのないことだ。いいから放っておいてくれ」
そう告げてさっさと立ち去ろうとする彼の腕を、私は咄嗟に摑んだ。
「いいえ! そんなことはできませんわ!」
「……離せよ」
「嫌です! 話してくださるまで離しません……!」
私がきっぱりと告げると、騎士団長は観念したように息を吐いた。そして腕から手を離させると、ゆっくりと口を開く。
「俺は……ラフィネと婚約中の身なんだ。だから放っておいてくれ」
それだけ告げると彼は再び歩き出そうとし、私はその腕をまた摑んだ。
「いいえ! そんなことはできませんわ!」
「……離せよ」
「嫌です! 話してくださるまで離しません……!」
(そして攻略対象達とのイベントをいっぱい起こしてやりますのよ……!!)
* * *
「さて、これからどうしましょう……」
ラフィネ様への説明を終えた私は、寮内の自室のベッドに仰向けで寝転んだ。
まず、ラフィネ様が『乙女ゲーム』について語ったことが事実と異なることには気付いた。
『悪役令嬢は追放されてから始まる』と言ったが、悪役令嬢には追放前の人生もきちんと存在したのだ。そしてそこから新たな人生が始まる……という描写だった。
しかし先ほど私が話した通り、その裏にあったのは『追放先で攻略対象の男性キャラクターと恋仲になって第二の人生を歩む』というシナリオである。
そしてラフィネ様が語った『ヒロインと攻略対象の男性キャラクターをくっつける』ということにも、当然ながら裏がある。
それはもちろん、悪役令嬢にはヒロインをいじめる役目は回ってこないということである。むしろその逆で、いじめてくる悪役令嬢に手を差し伸べてくれるのが攻略対象の男性キャラクターなのだ。
つまりここで重要なのは、ラフィネ様が語っていた内容には間違いがあったということだ。
ラフィネ様が語った『乙女ゲーム』というのは、『悪役令嬢がいじめない乙女ゲーム』だったということなのである。
……もちろんただひとつ訂正しておくと、『攻略対象の男性キャラクターと恋仲になって第二の人生を歩む』というシナリオは正しい。それは間違いないのだ。
「ただ私が騎士団長ルートに入りたいだけなのですけれど……」
(しかしそれを実現させるためにも、まず悪役令嬢たるラフィネ様との友情を築き上げなくては……!)私はぐっと拳を握りしめ、決意を新たにしたのだった。
「ラフィネ様! おはようございます!」
学園へと向かう通学路で見つけたラフィネ様に声を掛けると、彼女は驚いたように目をぱちぱちとさせた。それから私の顔を見るなり、恐る恐るといった様子で口を開いた。
「……アダールターク様……何か良いことでもありましたか?」
(おっと……私としたことが……!)
そう尋ねられるまで気づかないとは失態である。
悪役令嬢たる彼女に媚びを売るような態度は禁物なのだ。
なぜなら、悪役令嬢たる彼女のライバルとなるのは、ヒロインなのだから。
「いえ……特にございませんわ」
私はそう答えつつ、軽く髪を払った。
そしてラフィネ様を見つめて微笑むと、彼女は少しだけ表情を緩ませた。
「……そうですか……」
「それよりラフィネ様はどうなさったんですの?」
今度は私の方が尋ねると、彼女は少し上ずった声で答えてくれた。
「……今日は天気がいいので早めに登校したのですけれど……」
(なるほど……つまりは私を待っていたということですのね!)
そう思うと、なんだか少し心がくすぐったい気持ちになった。
「そうなんですの……」
「はい……。そうです……」
((きまずい……っ!!))
そんな私達を包み込むように、穏やかな風が通り過ぎていく。
そのままふたりして沈黙してしまったが、私はこの気まずさを打破するためにも口を開いた。
「あの……ラフィネ様、今日はお昼ご一緒にいかが?」
「……よろしいのですか? 私なんかと一緒で……」
(ええ。もちろんですわ!)
そんな気持ちを込めて、私は大きく首を縦に振った。
「もちろんですわ!」
「……そうですか」
((きまずい……っ!!))
再びふたりして沈黙してしまったが、ラフィネ様が口を開いた。
「あの……アダールターク様、よかったらこれからお友達になっていただけませんか?」
「……喜んで!」
「……よかった。よろしくお願いします」
こうして私達は、クラスメイトとしての第一歩を踏み出したのだった。
* * *
「アダールターク様! 聞いてくださいまし……!」
昼食を終えた放課後の教室で、ラフィネ様は目をキラキラと輝かせながら私に話しかけてきてくれた。
(まあ……! そんなに目をキラキラさせて……っ!)
彼女が『乙女ゲーム』について語ったことが事実と異なることに気が付いた私は、ラフィネ様と仲を深めようと画策した。
つまりは彼女と積極的に会話し、彼女の好きなものや趣味を共有することによって好感度を上げようと考えたのだ。
……しかしラフィネ様の好きなものをリサーチするうちに、私は新たな事実に気が付いたのである。
(まさか……ラフィネ様が攻略対象の男性キャラクターとの恋愛そっちのけで『恋愛小説』にのめり込んでいるなんて……っ!!)
これは由々しき事態である。
なにしろ私自身も攻略対象の男性キャラクターとの恋愛イベントを起こさなければ、悪役令嬢としての道を歩むことになってしまうのだから……! そんな訳で私はラフィネ様に対して『恋愛小説』好きを公言し、それを彼女にも伝えたのだ。そして彼女自身も嬉々として『恋愛小説』について語り始めたのである。
(でもまあ……仲を深めるためにも、これでいいわよね……)
私はそう結論付けると、ラフィネ様との恋愛小説話に花を咲かせたのだった。
* * *
「アダールターク様、実は折り入ってご相談がありますの」
学園からの帰り道、ラフィネ様はそんな風に切り出した。
(まさか……攻略対象の男性キャラクターが見つかったのかしら……!?)
そんな期待を胸に秘めつつ、私は彼女の言葉に耳を澄ませた。
「実は私、剣術に興味がありまして……」
(なるほど……!)
ラフィネ様が口にした言葉に、私は大きく頷いた。
(そうか……! つまり彼女は剣術の稽古をしたいのね……っ!!)
これはまさに朗報である。
なぜなら剣術を習うことで、乙女ゲームとは違ったイベントが発生するかもしれないからだ。そしてそれは私と騎士団長様の好感度を上げる絶好の機会にもなるだろう……!
(さすがは悪役令嬢……素晴らしいアドバイスですわ……!!)
「ラフィネ様、私とぜひとも剣のお稽古をいたしましょう……っ!!」
「ええ。よろしくお願いしますね」
私は内心で彼女の聡明さに感服すると、彼女と固く握手を交わしたのだった。
* * *
そんなラフィネが裏切ってくるなんて思ってもいなかったのですわ。
そしてラフィネ様は真の悪役令嬢である。
お互いに『転生者』という事情は把握した。
しかし、ここからが本番である。
まず確認すべきことは――、
「単刀直入にお尋ねいたしますわ。あなた……その乙女ゲーム? とかいう物語について、どれくらい覚えていますの?」
そう尋ねた私に、ラフィネ様は形の良い唇を引き結ぶと、幼い声でつらつらと述べ始めた。
「そうですね……。大まかに言えば、私の役回りは悪役令嬢でして……ヒロインに数々の嫌がらせを繰り返しては断罪、追放されます。いわゆる『ざまぁ』ですね。そして攻略対象の男性キャラクターに庇ってもらいつつ、第二の人生を歩み出す……と言ったところでしょうか」
「なるほど、よく分かりましたわ」
「え? もうですか?」
「はい。あなたの知っているゲームの情報が、完全に私と同じであると確認できましたので……」
そう言うとラフィネ様の顔は、ぱあっと輝いた。
「それはつまり……、これで私達は同じゲームへの『転生者』という裏が取れたと言うことですね!?」
「ええ……。それからもうひとつ……」
私はゲームの内容についてラフィネ様から聞き終えると、また口を開いた。
「……おそらくあなたは勘違いしていますわ」
「勘違い……?」
きょとんした顔のラフィネ様に、私は力強く頷いて見せた。
「そうです! 悪役令嬢が追放されてから始まるのは第二の人生ではありません。むしろそこからが本番なのですわ」
「ええ……!? そうなんですか!?」
「そうです! 悪役令嬢に転生したのなら、やることはひとつでしょう!」
「……それは、なんでしょうか?」
「ヒロインと攻略対象の男性キャラクターをくっつけますのよ!!」
「はっ……! なるほど……!!」
ラフィネ様は目を見開いて、ごくりと唾を飲み込んだ。
そう……つまりはそういうことなのだ。
私こと侯爵令嬢アダールタークは、乙女ゲームの攻略対象である騎士団長との恋愛を夢見ているのである。
その障害となる悪役令嬢ラフィネには、なんとしても婚約破棄をしてもらわなければならないのだ。
そしてそれは即ち――、
「私が騎士団長ルートに乗っかりつつ、この人生を謳歌するため……ひいては私の将来のためにも! 私とあなたの利害は一致していますのよ!」
「つまり私達は、目的を同じくする仲間ということですね……!」
そう述べたラフィネ様は、私の両手を握ってきた。
「ええ。そうですわ」
私もその手を握り返した。
それから私達は、友情の証に固く握手をしたのである。
……しかしこの時、私はまだ気付いていなかったのだ。
ラフィネ様が『乙女ゲーム』について語ったことが、事実と異なっているということに……。
* * *
「騎士団長様……!」
教室から足早に立ち去る騎士団長の背中を追って、私は廊下を駆けた。そして階段の踊り場でようやく追いつき、その背中に声を掛ける。
「……侯爵令嬢アダールターク……!」
「どうして、無視なさるのです……?」
騎士団長は面倒くさそうに舌打ちをすると、私を睨み付けてきた。
「……お嬢様には関わりのないことだ。いいから放っておいてくれ」
そう告げてさっさと立ち去ろうとする彼の腕を、私は咄嗟に摑んだ。
「いいえ! そんなことはできませんわ!」
「……離せよ」
「嫌です! 話してくださるまで離しません……!」
私がきっぱりと告げると、騎士団長は観念したように息を吐いた。そして腕から手を離させると、ゆっくりと口を開く。
「俺は……ラフィネと婚約中の身なんだ。だから放っておいてくれ」
それだけ告げると彼は再び歩き出そうとし、私はその腕をまた摑んだ。
「いいえ! そんなことはできませんわ!」
「……離せよ」
「嫌です! 話してくださるまで離しません……!」
(そして攻略対象達とのイベントをいっぱい起こしてやりますのよ……!!)
* * *
「さて、これからどうしましょう……」
ラフィネ様への説明を終えた私は、寮内の自室のベッドに仰向けで寝転んだ。
まず、ラフィネ様が『乙女ゲーム』について語ったことが事実と異なることには気付いた。
『悪役令嬢は追放されてから始まる』と言ったが、悪役令嬢には追放前の人生もきちんと存在したのだ。そしてそこから新たな人生が始まる……という描写だった。
しかし先ほど私が話した通り、その裏にあったのは『追放先で攻略対象の男性キャラクターと恋仲になって第二の人生を歩む』というシナリオである。
そしてラフィネ様が語った『ヒロインと攻略対象の男性キャラクターをくっつける』ということにも、当然ながら裏がある。
それはもちろん、悪役令嬢にはヒロインをいじめる役目は回ってこないということである。むしろその逆で、いじめてくる悪役令嬢に手を差し伸べてくれるのが攻略対象の男性キャラクターなのだ。
つまりここで重要なのは、ラフィネ様が語っていた内容には間違いがあったということだ。
ラフィネ様が語った『乙女ゲーム』というのは、『悪役令嬢がいじめない乙女ゲーム』だったということなのである。
……もちろんただひとつ訂正しておくと、『攻略対象の男性キャラクターと恋仲になって第二の人生を歩む』というシナリオは正しい。それは間違いないのだ。
「ただ私が騎士団長ルートに入りたいだけなのですけれど……」
(しかしそれを実現させるためにも、まず悪役令嬢たるラフィネ様との友情を築き上げなくては……!)私はぐっと拳を握りしめ、決意を新たにしたのだった。
「ラフィネ様! おはようございます!」
学園へと向かう通学路で見つけたラフィネ様に声を掛けると、彼女は驚いたように目をぱちぱちとさせた。それから私の顔を見るなり、恐る恐るといった様子で口を開いた。
「……アダールターク様……何か良いことでもありましたか?」
(おっと……私としたことが……!)
そう尋ねられるまで気づかないとは失態である。
悪役令嬢たる彼女に媚びを売るような態度は禁物なのだ。
なぜなら、悪役令嬢たる彼女のライバルとなるのは、ヒロインなのだから。
「いえ……特にございませんわ」
私はそう答えつつ、軽く髪を払った。
そしてラフィネ様を見つめて微笑むと、彼女は少しだけ表情を緩ませた。
「……そうですか……」
「それよりラフィネ様はどうなさったんですの?」
今度は私の方が尋ねると、彼女は少し上ずった声で答えてくれた。
「……今日は天気がいいので早めに登校したのですけれど……」
(なるほど……つまりは私を待っていたということですのね!)
そう思うと、なんだか少し心がくすぐったい気持ちになった。
「そうなんですの……」
「はい……。そうです……」
((きまずい……っ!!))
そんな私達を包み込むように、穏やかな風が通り過ぎていく。
そのままふたりして沈黙してしまったが、私はこの気まずさを打破するためにも口を開いた。
「あの……ラフィネ様、今日はお昼ご一緒にいかが?」
「……よろしいのですか? 私なんかと一緒で……」
(ええ。もちろんですわ!)
そんな気持ちを込めて、私は大きく首を縦に振った。
「もちろんですわ!」
「……そうですか」
((きまずい……っ!!))
再びふたりして沈黙してしまったが、ラフィネ様が口を開いた。
「あの……アダールターク様、よかったらこれからお友達になっていただけませんか?」
「……喜んで!」
「……よかった。よろしくお願いします」
こうして私達は、クラスメイトとしての第一歩を踏み出したのだった。
* * *
「アダールターク様! 聞いてくださいまし……!」
昼食を終えた放課後の教室で、ラフィネ様は目をキラキラと輝かせながら私に話しかけてきてくれた。
(まあ……! そんなに目をキラキラさせて……っ!)
彼女が『乙女ゲーム』について語ったことが事実と異なることに気が付いた私は、ラフィネ様と仲を深めようと画策した。
つまりは彼女と積極的に会話し、彼女の好きなものや趣味を共有することによって好感度を上げようと考えたのだ。
……しかしラフィネ様の好きなものをリサーチするうちに、私は新たな事実に気が付いたのである。
(まさか……ラフィネ様が攻略対象の男性キャラクターとの恋愛そっちのけで『恋愛小説』にのめり込んでいるなんて……っ!!)
これは由々しき事態である。
なにしろ私自身も攻略対象の男性キャラクターとの恋愛イベントを起こさなければ、悪役令嬢としての道を歩むことになってしまうのだから……! そんな訳で私はラフィネ様に対して『恋愛小説』好きを公言し、それを彼女にも伝えたのだ。そして彼女自身も嬉々として『恋愛小説』について語り始めたのである。
(でもまあ……仲を深めるためにも、これでいいわよね……)
私はそう結論付けると、ラフィネ様との恋愛小説話に花を咲かせたのだった。
* * *
「アダールターク様、実は折り入ってご相談がありますの」
学園からの帰り道、ラフィネ様はそんな風に切り出した。
(まさか……攻略対象の男性キャラクターが見つかったのかしら……!?)
そんな期待を胸に秘めつつ、私は彼女の言葉に耳を澄ませた。
「実は私、剣術に興味がありまして……」
(なるほど……!)
ラフィネ様が口にした言葉に、私は大きく頷いた。
(そうか……! つまり彼女は剣術の稽古をしたいのね……っ!!)
これはまさに朗報である。
なぜなら剣術を習うことで、乙女ゲームとは違ったイベントが発生するかもしれないからだ。そしてそれは私と騎士団長様の好感度を上げる絶好の機会にもなるだろう……!
(さすがは悪役令嬢……素晴らしいアドバイスですわ……!!)
「ラフィネ様、私とぜひとも剣のお稽古をいたしましょう……っ!!」
「ええ。よろしくお願いしますね」
私は内心で彼女の聡明さに感服すると、彼女と固く握手を交わしたのだった。
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そんなラフィネが裏切ってくるなんて思ってもいなかったのですわ。
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