代理聖女様は辞めたい!

公爵 麗子

文字の大きさ
上 下
1 / 1

やめたいのに!

しおりを挟む
もううんざりですわ!と叫び、私はベッドから飛び下りた。
「俺はもう帰る」
「じゃあ俺も……」
王子たちは帰ろうとしている。
「あ、ちょっと待ってください! もうすこし……」
私は引き留めようとしたが、その隙にさっさと玄関に向かってしまった。
王子たちは私を置いて、とっとと帰ってしまったのだ。
「もうっ! 何で帰っちゃうのよ!」
私はぼすんっとベッドに倒れ込んだ。
もう嫌だ。この人たちとはやっていけないわ。
だけど今さらそんなこと言えないし……。
あ~、誰か助けて~!と心の中で叫んでいたそのとき――。
ドドドッ!と馬の蹄が駆ける音が聞こえてきて、私は思わずベッドから飛び下りた。
(馬?)
一階から階段を駆けあがってくる音がして、ドアがバアンと開いた。
「メリッサ様!」
現れたのは、なんとノーラだった。
ノーラはぜえはあと息を切らし、私の姿を見つけるなり、その場に崩れ落ちた。
「本当にごめんなさい……っ! わ、私はただ……っ」
ノーラが真っ青な顔で何度も謝るので、私は慌てて駆け寄った。
「どうしたの!? 何かあったの!?」
ノーラは悲しげな瞳で私を見た。
「……ミレーネ様が……このお屋敷から出ていってしまいました……」
ノーラによると、ミレーネは夜のうちに荷物を纏めて、メリッサの部屋を出ていくと、そのままこの屋敷を出て行ってしまったらしい。
(な、何ですって……!?)
「ど、どうして!?」
「……きっと私が皆さんのお邪魔をしたせいで……」
ノーラはぎゅっと唇を噛んだ。
私は急いで階段を駆け下りると、玄関を覗いた。本当にミレーネの荷物はなくなっていて、馬の蹄が地面を蹴ったような足跡だけが残されていた。
(なんてことなの……)
私は茫然とその場に立ち尽くした。
まさかミレーネがこんなことをするなんて……。
「メリッサ様、どうしましょう……」
ノーラが青い顔で聞いてきた。
「一体、何があったの?」
私が尋ねると、ノーラは言いにくそうに口ごもった。
「それが……実はミレーネ様が夜中にこっそりと私のところにいらして……」
ノーラによると、私が眠ったあとの深夜に突然ミレーネが現れて、メリッサの部屋に案内するように命じたらしい。
(一体どういうつもりなのかしら……?)
私は首を傾げた。
ミレーネが何を考えているのかさっぱり分からないわ……。
妹が本物の聖女様なのに、私が代役をしている間にまさか逃げられてしまうとは…。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)

白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」 ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。 少女の名前は篠原 真莉愛(16) 【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。 そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。 何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。 「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」 そうよ! だったら逆ハーをすればいいじゃない! 逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。 その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。 これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。 思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。 いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。

処理中です...