悪役令嬢をざまぁしたら、王子とか国とか色々ついてきた。

公爵 麗子

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悪役令嬢なんてざまぁされればいいんですわ

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悪役令嬢を処刑しようとしたら……元婚約者である平民の男性に婚約破棄をされました。

もとい、アリシャの魅力に抗えなかったというわけでその後は王子に求婚され、今日は結婚式当日だ。
式が終わり、お色直しのために控え室へ移動する途中、私は教会の外の庭園に人影を見たような気がした。
この結婚式は私にとって不本意なものだったが、親友であるアリシャは王子と結婚することを心から喜んでくれている。だから私も彼女に最高の笑顔で微笑みかけた。
「アテナ、愛している」
「ええ、私もよ」
そして、彼女の唇に優しく口づけをした後、私は庭園に向かった。
庭園には誰もいないようだ。気のせいだったのだろうか? だが、ふと視線を横にやると人影を見つけた。私は思わず目を疑った。
そこには王妃がいたのだ。彼女はゆっくりとこちらに向かってきた。
「おめでとう、アテナちゃん。美しい花嫁さんね」
「王妃様!?」
私が驚いて固まっていると、王妃は口元に手をあてて笑った。
「あらあら、そんなに驚かなくてもいいじゃない。あなたの結婚式を祝いに来たのよ」
「王妃様。ありがとうございます」
アテナも王妃にお辞儀をした。彼女は満面の笑みを浮かべている。
アリシャは警戒しながら尋ねた。
「失礼ですが、なぜこちらにおいでになったのですか?」
「あら? 花嫁さんを祝福しに来たのよ? おめでたいことなんだから良いじゃない」
「それはそうですが……」
その言葉を聞いた王妃は眉を寄せた。
「ねぇアテナちゃん。もう少し王女らしく振る舞えないかしら? まあ、無理よね。だって、あなたは……」
「母上! それ以上は言わないでください」
その言葉を遮ってアリシャが叫んだ。私は驚いて彼女を見た。
すると、彼女は悲しげに微笑んでいた。一体どうしたというのだろう? 私が困惑していると、王妃が口を開いた。
「アテナちゃん。今日はあなたに祝福を授けに来たのよ」
「……祝福ですか?」
私が聞き返すと王妃はうなずいた。
「そうよ。あなたに魔法を授けましょう」
「……魔法?」
私は困惑した。彼女は一体何を言っているのだろう? 私が困惑していると、王妃は優しく微笑んだ。
「アテナちゃん、よく聞きなさいね。あなたはこの国の王妃になるのよ」
「……は?」
突然の言葉に私の頭は混乱した。今この女性は何を言ったのだろうか? 私の聞き間違いでなければ、この国で一番偉い人物になると聞こえたのだが……。
私が戸惑っていると、王妃はゆっくりと語りだした。
「あなたは特別な存在なの。だからこそ、この国を治める権利があるのよ」
「私は……そんな……」
私が否定しようとすると、王妃は首を横に振った。そして、彼女は優しく微笑んだ。
「あなたは選ばれたの。だから、あなたがこの国を統治する義務があるのよ」
「……そんなことできませんわ!」
私は叫んだ。こんな人に私の気持ちがわかるはずがない! 私は普通の女の子なのだ! それなのに、いきなり国を統治しろだなんて……! だが、王妃は笑顔を浮かべたままだった。
「あなたは国を守るのよ。それがあなたの使命なのよ」
「なぜですか? 私はただの令嬢でしたのに!それなのに……」
私が叫ぶと、王妃はクスクスと笑った。そして、私に近づいてきた。
「ねぇアテナちゃん。あなたは王子を愛しているんでしょう?」
「……もちろんです!」

私はそう答えたが、王妃は首を横に振った。
「違うわ。あなたが愛しているのは王子じゃない。自分よ」
「……自分……?」
私が不思議そうに言うと、王妃はゆっくりとうなずいた。「そう。あなたは自分を愛していたの。だから、あなたは王子と結婚したのよ」
「そんなことはありません!」私は必死になって否定したが、王妃は首を横に振った。
「いいえ。あなたは自分を愛していたわ」
「違う……私は……」
私が口ごもると、王妃は微笑んだまま言葉を続けた。
「あなたは自分のステータスにコンプレックスを抱いていたんでしょう? だから、王子と結婚したの」
「……っ!」
(それは嘘です!)と言いたいが言葉が出てこなかった……いや、それは嘘だ。私は本当に王子を愛しているのだ……。
しかし、王妃は私を見て嘲笑した。
「ほらね? あなたは自分を愛していたのよ」
「……」
何も言い返せない私に、優しい口調で言った。
「アテナちゃん、よく聞きなさいね。あなたは特別なの。だから、この国を治める義務があるの」
「……っ!」
(そんな……)
私は絶句してしまった。だが、そんな私を王妃は抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫よあなたならきっとできるわ。だって、あなたはこの国で一番強いんだもの」
「私が……この国で一番強い?」
私が聞き返すと、王妃は笑顔でうなずいた。
「ええそうよ。だからあなたはこの国の王になるべきなのよ」
「……どうしてですか?」私は震えながら尋ねた。すると王妃は笑顔のまま答えた。
「それはあなたが強いからよ。誰よりも強い力を持っているの。だからこそ、みんなあなたに期待しているのよ」
「……っ!」
(そんな……)私は言葉を失った。
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