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婚約破棄だなんて
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ここにきて婚約破棄なんて許せませんわ。絶対にあの女だけは許しませんわ。
側近の同い年の同じ学園に通う執事に聞く。
「ねぇ、あなたは知っているの?」
「…………」
「んぐっ!?」
目の前で主食が喉に詰まった。
あわてて紅茶を飲む。
「っはぁ…………さぁ? 知るかよ」
「……まぁ、そうでしょうね」
何かを知っている風な口ぶりだ。
もしかして犯人は誰か知っているのかしら?
「なんでだよ」
「だって、あなたはわたくしの味方でしょう?」
「……は?」
彼の間の抜けた声が出た。
今なんて言ったこの男?
「ですから、あなたはわたくしの味方でしょう? 違うのですか?」
「……何でそう思ったんだよ」
「だって、貴方は私の味方ではないですか。四年も一緒なんですもの。それくらい分かりますわ」
「はぁあぁ!?」
執事らしからぬ驚きの声を出した。
「まさか、俺の気持ちに気が付いてないのか?」
「え? あなたの?」
「はぁ……いや、何も」
彼は呆れた表情で紅茶を飲んだ。
何ですの! わたくしは何か間違ったことを言ったかしら!? わたくしも紅茶を飲む。
少し冷めたせいでおいしさが薄れてしまった気がするわ。
「なぁ、お嬢様」
「なんですの?」
またこの男は『お嬢様』と呼ぶのね。
わたくしとの仲なのだから『様』付けなんてしなくてもいいのに。
「婚約破棄、ほんとにするのか?」
「……どういうことですの?」
「そのままの意味だ」
彼はまっすぐな目をわたくしに向ける。
本当になんなのかしら?
「わたくしはしたいですわ。あんな方と一生を過ごすくらいなら死んだ方がましですわ」
「そうか……」
彼の意図は分からないが、とりあえず質問に答える。
執事は納得したのか、そのまま黙ってしまった。
「お嬢様、少し失礼いたします」
「えぇ」
メイドの一人が話しかけてきた。
わたくしは彼女に対応を任せると、執事を見る。
執事は未だに何かを考えている様子だった。
そして、小さくつぶやく。
「……成功するといいけどな」
わたくしは紅茶を飲みながらそのつぶやきに耳を傾けるのだった。
側近の同い年の同じ学園に通う執事に聞く。
「ねぇ、あなたは知っているの?」
「…………」
「んぐっ!?」
目の前で主食が喉に詰まった。
あわてて紅茶を飲む。
「っはぁ…………さぁ? 知るかよ」
「……まぁ、そうでしょうね」
何かを知っている風な口ぶりだ。
もしかして犯人は誰か知っているのかしら?
「なんでだよ」
「だって、あなたはわたくしの味方でしょう?」
「……は?」
彼の間の抜けた声が出た。
今なんて言ったこの男?
「ですから、あなたはわたくしの味方でしょう? 違うのですか?」
「……何でそう思ったんだよ」
「だって、貴方は私の味方ではないですか。四年も一緒なんですもの。それくらい分かりますわ」
「はぁあぁ!?」
執事らしからぬ驚きの声を出した。
「まさか、俺の気持ちに気が付いてないのか?」
「え? あなたの?」
「はぁ……いや、何も」
彼は呆れた表情で紅茶を飲んだ。
何ですの! わたくしは何か間違ったことを言ったかしら!? わたくしも紅茶を飲む。
少し冷めたせいでおいしさが薄れてしまった気がするわ。
「なぁ、お嬢様」
「なんですの?」
またこの男は『お嬢様』と呼ぶのね。
わたくしとの仲なのだから『様』付けなんてしなくてもいいのに。
「婚約破棄、ほんとにするのか?」
「……どういうことですの?」
「そのままの意味だ」
彼はまっすぐな目をわたくしに向ける。
本当になんなのかしら?
「わたくしはしたいですわ。あんな方と一生を過ごすくらいなら死んだ方がましですわ」
「そうか……」
彼の意図は分からないが、とりあえず質問に答える。
執事は納得したのか、そのまま黙ってしまった。
「お嬢様、少し失礼いたします」
「えぇ」
メイドの一人が話しかけてきた。
わたくしは彼女に対応を任せると、執事を見る。
執事は未だに何かを考えている様子だった。
そして、小さくつぶやく。
「……成功するといいけどな」
わたくしは紅茶を飲みながらそのつぶやきに耳を傾けるのだった。
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