上 下
23 / 35

肉の戦場

しおりを挟む
 各々自由行動をとった後、俺、浩二、女性達でバーベキューの下ごしらえをする事にした。祥と剛は予約しているバーベキュー会場に予約の確認と席の確保、食器類などの荷物を持って行く手筈だ。俺は肉を適量に切り分け、下ごしらえをする。フォークで肉を柔らかくし、胡椒で味を馴染ませる。

「啓くん、料理上手だったりするかしら?」

「家でいつもやってるからな。たまに祥にやって貰ってるけれど。」

「へー! 料理男子ってヤツね!」

「啓! 俺の玉ねぎが切る前に分解されていくんだ! 助けてくれ!」

「はいはい、少し貸してくれ。」

 浩二から包丁と分解寸前の玉ねぎを任せられる。ズレない様に玉ねぎを固定して切っていく。無事1個目の玉ねぎが処理し終わり、浩二に包丁を返す。隣に立って、空中で玉ねぎを切る真似をする。

「こんな感じに、玉ねぎを押さえつつだな……。」

「こう、か? 料理なんてしないから、見様見真似だけど……。」

「そうそう、そんな感じ。さっきよりいいぞ。」

 そう会話していると、女子の目線が俺に向いてるのに気が付く。

「啓くん、私達より女子力あるわね。」

「ちょっと分けて! 女子力分けて!」

「フフッ。だって、啓くん? 分けてあげたら?」

「そもそも俺は女子じゃない!」



 第23話 肉の戦場



 食材を切り分け、下ごしらえが済んだところで祥からLIMEが入る。

『荷物も席も確保したよ! そっちはどう?』

「祥からだ。向こうは準備できたって。」

「なら『今から向かう』って返信お願いね。」

「そうだな。」

 俺はLIMEで祥に連絡を入れる。
 
『こっちも準備できた。今から行く。』

 直ぐに『OK』の可愛らしいスタンプが送られてくる。それを確認した後、俺達は食材にラップをかけてバーベキュー会場へ向かうことにした。

 ______

 時期も相まって人で混雑している中、8人用のバーベキューセットのあるテーブルに案内される。祥と剛が目を輝かせている。

「早くバーベキューしよっ!」

「待ちわびたぜ!」

「お前ら、めっちゃ腹減ってるだろ。」
 
 一先ず食材をテーブルに置き、スタッフに金網の下の炭に火をつけて貰う。パチパチと火が弾ける音と、炭の香りが漂う。

「祥、割りばしと皿を皆に回せ。」

「了解! あ、兄ちゃんの席は俺の隣だからね!」

「はいはい。俺の分はそこに置いてくれ。俺は野菜焼く準備するから。」

 俺は鉄板と金網に油をひいて、温まるのを待つ。他の皆は持って来たタレや冷や飯の配膳をする。皆に均等に冷や飯が行き渡り、タレも準備出来たところで鉄板と金網は熱くなっていた。

「そろそろ焼こうか。俺は野菜焼くから、誰か肉焼いてくれ。」

「じゃあ俺がやろう。啓くんには玉ねぎの件でお世話になったから、ここは任せてくれ。」

「浩二、此処は俺にやらせろ!」

「剛、その心は?」

「俺が肉奉行になりたい!」

「……浩二くん、肉焼くの任せた。」

「了解です、啓くん!」

 俺と浩二くんで野菜と肉を分担して焼く。祥を始めとした他の皆は据え膳状態だ。食べ盛りが二人に、カロリーを気にしてか程々に食べる女性陣。俺と浩二も隙を見て自分の分を食べるが、如何せん人数の関係で焼くペースが速い。特にカルビを始めとした肉を次々と剛が平らげていく。そんな時、隣から声がかかる。

「兄ちゃん、俺が焼くの変わるよ。」

「大丈夫だ。それより腹はいっぱいになったか?」

「まだ食べられるけど、兄ちゃん全然食べられてないじゃん! 浩二もだけどさ。」

「うーん……。お前がお腹一杯になったら変わってくれるか?」

「やだ! それに早く食べないと、剛が全部肉食べちゃうよ?」

 それを聞き俺は祥にニヤリと笑う。

「大丈夫だ。秘儀があるから。」

「秘儀?」

 祥が首を傾げる。周りもあたまにハテナが浮かんでいる。浩二以外は。

「皆がお腹いっぱいになってから、肉を焼く際に出そうと思っていた代物があるんですよ……。」

「何々!? 教えろよ!」

「それは、コレだぁ!」

 浩二が取り出したのは、こっそり買っておいた『お徳用ソーセージ』と『ホッケの一夜干し』だ。皆が息を呑む。

「……これは、炭火で焼くと異常に美味いモノの代表格!」

「でもここでわざわざ食べるモノ? 家でも食べられるじゃん。」

「美香、分かってないよ! 俺炭火焼のホッケ食べてから、焼き魚嫌いを克服したんだから!」

 祥が美香と剛に胸を張る。

「フフッ、祥くん、焼き魚苦手だったんだ。なんかイメージ通りかも。」

「あ! 朔夜今笑ったでしょ!? 今は焼き魚好きだから良いんですぅー!」

「あら、ごめんなさいね。それじゃあ早速焼いてもらおうかしら?」

「まっかせなさーい!」

 祥は俺からトングを受け取ると、ホッケを金網にそっと置く。ソーセージもホッケの横に添える様に置いて焼く。

「ちなみに兄ちゃん、何でこれが『秘儀』なの?」

「そうよね。そこまで大それたものかしら?」

 祥と里美が聞いてくるので、俺は祥が取っておいてくれた肉と野菜を食べながら答える。

「最初に浩二が焼いたのは、剛が一番希望していたカルビだったよな?」

「そうね……。殆ど剛に食べられちゃったけど。」

「そのすぐ後、ホルモンを大量に焼いたよな?」

「ああ、あの特大サイズの味噌ホルモンね……。油がきつかったわ。」

「そう、カルビとホルモンは『油がキツイ』んだ。それを大量に食べて野菜を食わなかった結果が、今の剛だ。」

 皆が剛を見る。剛は胃を押さえ、吐きそうになっている。

「一番食う奴に数の限りがあるソーセージやホッケを全部食べられるのは、喧嘩になりそうだったからな。ちょっと対策を、な。」

「くっそぉ……。ソーセージも食いてぇよぉ……。」

「皆のカルビとホルモン、殆ど食べちゃったんだ。自業自得だよ。」

「く……ッ! 一生の不覚……ッ!」

「……そこまで炭火焼きのソーセージって美味しいの?」

「金網で焼くと油が落ちるから、そこまでこってりしないはずだ。ホッケもそうだな。」

「じゃあ、剛以外の皆でつまむとしますか!」

「ちょ! 俺の分も残せよーォ!」

 結果、ソーセージとホッケはタンパク質に飢えた皆が食べつくし、剛の口には入らなかった。
 肉の恨み、凄まじい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

処理中です...