26 / 59
SS 『とある世界』での旅
国護りし聖女
しおりを挟む
『大結界祭』まで、あと3日。クリスタルとルーグは、大通りの賑わいを少し遠めから眺める。王都の大通りに、護衛に守られた『聖女』が現れ、来ている皆に手を振り返す。
『聖女』は18歳ほどの見た目の女性で、淡い黄色の髪を長く後ろに伸ばしている。見目も良く愛嬌のある顔立ちをしており、着ている白透明感のある服が、それを一層美しくさせる。『聖女』を見つめるルーグに、クリスタルがちょっかいを出す。
「お前、ああいう可愛い子がタイプだったのか? 意外~!」
「何が『意外』なんだ。それと別にタイプではない。」
「え? じゃあ美人系がお好みで?」
「何で俺の好みばっかり聞くんだよ。 それに、俺が見てるのは聖女の『眼』だ。」
言われてクリスタルも聖女の『眼』を見る。確かに聖女は笑顔でいるものの、その瞳は何処か曇っている。
「『訳アリ』ってやつだな。ああいうの、よくあるよな。本人は望んで役目を負っていないパターン。」
「だろうな。何かあるかもしれないぞ?」
大通りの近くに寄ろうとすると、突然男性達に道を塞がれた。よく見れば、昨日質屋で見かけたハンター達だ。
「そこのお嬢さん。ちょっと聞きたい事があるんだが、」
「断る。どうせ、ろくでもない事だろ?」
「まぁまぁ、そう言わずに。『フリーズドラゴン』は、何処でどう出会ったんだ? それだけ教えてくれよ。」
「ほら見た事か、やっぱり金儲けの話だ。だから人間はドラゴンに嫌われるんだっての。」
クリスタルが不快に顔を歪めるが、ハンター達は気にも留めない。一方のルーグはジャンプをしてハンター達を飛び越し、音も立てずにハンター達の最後尾に着地する。誰もそれに気がつく様子はない。
「頼むよ、お嬢さん。情報料は渡すからよ? 銀貨5枚だ。」
「断る。さっさと何処か行け。不快だ。」
「いいから、な? 鱗を売るくらいには金に困っているんだろ? それともその体で金貰ってんのか?」
クリスタルは表情のない顔で吐き捨てるかのように言う。
「最終警告だ。去れ。」
「威勢はいいなぁ?せっかくだし、俺が体で分からせて情報を貰おうか?」
その発言を最後に、ハンターの後ろから耳障りな音がする。振り返れば、もう遅い。
ハンター達全員の首は、在らぬ方向へ捻じ曲げられる。その中に立っているのは、ルーグただ一人。
「さっすが仕事早いな!」
「『最終警告』を破ったからな。ご退場は早く済ませるべきだろう?」
「だな! さて、俺達はここでは目立つようだし、他の所でも見ようぜ。屋台行きたい。」
「はいはい。」
二人は何事も無かったかのようにその場を後にする。幸か不幸か、惨劇が人目に付く様子はない。ただ一人を除いて。
__________
深夜。二人が宿屋で寝ていると、ノックの音が響く。ルーグが起きて、警戒のために刃物を隠し持ちながら、ドアを開ける。
「夜分遅くに申し訳ありません。こちらは『オールメイト』の方達のお部屋で御間違いないでしょうか?」
やってきたのは、今日の昼間に大通りを歩いていた人物だ。
「これは聖女様。こんな夜更けに護衛も無しでここへ何をしにいらっしゃいましたか?」
聖女は室内に入り、被っていた茶色のローブを取り頭を下げて挨拶する。クリスタルも来客が来たことで起きて、脚を組んでベッドサイドに座る。
「まずはご挨拶をさせて下さい。私は『アリア』。この国で『聖女』という役割を請け負っています。」
「それはそれは。ご足労をおかけしました。何か我々に御用でしょうか?」
「町中で貴方達を見ました。あっという間に我が国の腕の立つハンターを倒してしまうところを見て、貴方達が『不老不死の集団』であることを御見受けしました。そこでお話を聞いて頂きたく参りました。」
『アリア』と名乗る聖女は、二人に再度頭を下げる。
「そうですか。ですが、我々はそういう集団ではないですので、」
「ですが、周りの者に話を伺いましたところ、『フリーズドラゴンの鱗』をお持ちだったとか。この世界には『フリーズドラゴン』の住める場所は、もうないはずです。それでも持っていたとなると、『不老不死の集団』だとしか思えません! どうか、お話を聞いてはもらえませんでしょうか!?」
涙声で説得するアリアに、クリスタルは問う。
「仮に俺達が『オールメイト』だったとしよう。何が望みだ?」
アリアは真っすぐな眼で、告げる。
「私を、『聖女』の役目から解き放って頂きたいのです。」
『聖女』は18歳ほどの見た目の女性で、淡い黄色の髪を長く後ろに伸ばしている。見目も良く愛嬌のある顔立ちをしており、着ている白透明感のある服が、それを一層美しくさせる。『聖女』を見つめるルーグに、クリスタルがちょっかいを出す。
「お前、ああいう可愛い子がタイプだったのか? 意外~!」
「何が『意外』なんだ。それと別にタイプではない。」
「え? じゃあ美人系がお好みで?」
「何で俺の好みばっかり聞くんだよ。 それに、俺が見てるのは聖女の『眼』だ。」
言われてクリスタルも聖女の『眼』を見る。確かに聖女は笑顔でいるものの、その瞳は何処か曇っている。
「『訳アリ』ってやつだな。ああいうの、よくあるよな。本人は望んで役目を負っていないパターン。」
「だろうな。何かあるかもしれないぞ?」
大通りの近くに寄ろうとすると、突然男性達に道を塞がれた。よく見れば、昨日質屋で見かけたハンター達だ。
「そこのお嬢さん。ちょっと聞きたい事があるんだが、」
「断る。どうせ、ろくでもない事だろ?」
「まぁまぁ、そう言わずに。『フリーズドラゴン』は、何処でどう出会ったんだ? それだけ教えてくれよ。」
「ほら見た事か、やっぱり金儲けの話だ。だから人間はドラゴンに嫌われるんだっての。」
クリスタルが不快に顔を歪めるが、ハンター達は気にも留めない。一方のルーグはジャンプをしてハンター達を飛び越し、音も立てずにハンター達の最後尾に着地する。誰もそれに気がつく様子はない。
「頼むよ、お嬢さん。情報料は渡すからよ? 銀貨5枚だ。」
「断る。さっさと何処か行け。不快だ。」
「いいから、な? 鱗を売るくらいには金に困っているんだろ? それともその体で金貰ってんのか?」
クリスタルは表情のない顔で吐き捨てるかのように言う。
「最終警告だ。去れ。」
「威勢はいいなぁ?せっかくだし、俺が体で分からせて情報を貰おうか?」
その発言を最後に、ハンターの後ろから耳障りな音がする。振り返れば、もう遅い。
ハンター達全員の首は、在らぬ方向へ捻じ曲げられる。その中に立っているのは、ルーグただ一人。
「さっすが仕事早いな!」
「『最終警告』を破ったからな。ご退場は早く済ませるべきだろう?」
「だな! さて、俺達はここでは目立つようだし、他の所でも見ようぜ。屋台行きたい。」
「はいはい。」
二人は何事も無かったかのようにその場を後にする。幸か不幸か、惨劇が人目に付く様子はない。ただ一人を除いて。
__________
深夜。二人が宿屋で寝ていると、ノックの音が響く。ルーグが起きて、警戒のために刃物を隠し持ちながら、ドアを開ける。
「夜分遅くに申し訳ありません。こちらは『オールメイト』の方達のお部屋で御間違いないでしょうか?」
やってきたのは、今日の昼間に大通りを歩いていた人物だ。
「これは聖女様。こんな夜更けに護衛も無しでここへ何をしにいらっしゃいましたか?」
聖女は室内に入り、被っていた茶色のローブを取り頭を下げて挨拶する。クリスタルも来客が来たことで起きて、脚を組んでベッドサイドに座る。
「まずはご挨拶をさせて下さい。私は『アリア』。この国で『聖女』という役割を請け負っています。」
「それはそれは。ご足労をおかけしました。何か我々に御用でしょうか?」
「町中で貴方達を見ました。あっという間に我が国の腕の立つハンターを倒してしまうところを見て、貴方達が『不老不死の集団』であることを御見受けしました。そこでお話を聞いて頂きたく参りました。」
『アリア』と名乗る聖女は、二人に再度頭を下げる。
「そうですか。ですが、我々はそういう集団ではないですので、」
「ですが、周りの者に話を伺いましたところ、『フリーズドラゴンの鱗』をお持ちだったとか。この世界には『フリーズドラゴン』の住める場所は、もうないはずです。それでも持っていたとなると、『不老不死の集団』だとしか思えません! どうか、お話を聞いてはもらえませんでしょうか!?」
涙声で説得するアリアに、クリスタルは問う。
「仮に俺達が『オールメイト』だったとしよう。何が望みだ?」
アリアは真っすぐな眼で、告げる。
「私を、『聖女』の役目から解き放って頂きたいのです。」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる