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【連載版】俺の部屋に「ただいま」と言いながら入ってくるクズ男のはなし

7.

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「お前、今日のなに」

 透が家に帰ってきたのは俺が帰宅してから10分ほど後。授業は透の方が早く終わったはずなのに、このタイムラグは何だ。
 手を洗って冷蔵庫から水を取り出していた透は、「きょとん」と音がしそうな顔で首を傾げている。
 繰り返しになるが、これまで透が俺に学校で話しかけてきたことは、小中高大と全てにおいて一度もない。すれ違っても、たとえ目の前にいたとしても、これまで一度たりとも透は俺に話しかけてきたことはなかった。まぁ俺もしかりなんだが。
 だから、俺としては不自然極まりない行動なのだが、透の中では取り立てて意味のないことだったのだろう。

「俺の噂、聞いた?」

 だからつい、聞いてしまったのだが。口から出したあとに、余計なことを言ったなと、舌を打つ。どうせ、人の噂に興味なんてないんだから聞くだけ無駄。透にとって俺はその程度の存在だ。そう思ったのに。

「うん。バカみたいだよね、祐也が風俗とかパパ活なんて」

 それはあれか。俺みたいに地味なやつが、風俗やらパパ活で稼げるわけないって言いたいのか? その通りだろうよ。その通りなんだけど、人にそう言われるのはなんでかむかつくな。やっぱり聞くんじゃなかった。

 写真の話もしなくて正解だ。絶対に馬鹿にされて終わりだろ。
 例の写真の入った封筒は今日もポストに入っていた。消印がないから今日もまたわざわざご丁寧に直接投函しに来たのだろう。
 中身は、透が学校で女の子と腕を組んで歩いている写真とか、お店から女性と出てくる写真とか。あとは、教室で男に迫られているやつもあったな。こういうのが三日おきくらいに入っていて、今日で5回目だ。
 目的はさっぱりだが、初回以降は俺の写真がないところを見ると、やっぱり俺のことが気に入らない透のストーカーっていう線が強いんじゃないかな。
 俺がバイトにいる最中にポストに入れてるっぽいから、俺の行動も筒抜けだろう。エスカレートする前に何とかしないととは思うが、実際問題打つ手がない。警察にもっていったところで、この程度ではきっと相手にしてもらえない。
 もうしばらくは様子見かな。
 ため息をついていたら、もうすぐ風呂が沸くという音声が聞こえてきた。
 透が帰ってきてから手を洗うついでに準備したんだろう。このくそ暑いのに、なんでわざわざ湯船に入らないといけないんだとは思うが、やっぱり湯船に入った日の方が寝つきがいいんだよなぁ。

「祐也、お風呂入るよ~」
「あとで行くから先入ってて」

 俺の大学進学が決まった後、父親が海外転勤になって、あれよあれよといううちに母親もついて行くことになって。入学直前に契約したこのマンションの決め手は、風呂トイレが別だったことだ。部屋は狭くていい。収納もそれほどいらない。でも、風呂とトイレは別じゃないとだめだ。正確に言うと、トイレが個室でなければならないのだ。じゃないと、『準備』と称して風呂で透にひどい目にあわされる可能性が高い。
 初めて『準備』をされたとき、まだ初心だった俺は自宅の風呂で宇宙を見た。壮大な宇宙においては俺の尊厳なんて塵芥にも満たないからな。つまりはそう思わないと死にそうになるほどのひどい目にあったのだ。
 一緒に風呂に入らなければいいじゃん、と思うかもしれないが、それも無理だ。何度か抵抗したことはあるが、そのあと余計にひどい目に合う。目隠し拘束プレイはマジで趣味じゃないんだよ。あと、おもちゃな。あれはほんと最悪。だってやってるほうは疲れないんだぜ? ひたすらこっちが泣かされるだけ。過ぎた快感は苦痛でしかないなんてこと知りたくなかった。
 だから、風呂に入る前にある程度トイレで先に自分で準備してしまうのが最適解であると俺は学んだ。透もさすがにこの程度なら黙認してくれるしな。

 もう今となっては手慣れた準備を済ませて風呂場に向かうと、透はすでに湯船に沈んでいた。暢気なもんだよ。
 俺は立ったまま頭を洗い、ちゃちゃっと体も洗おうとしたら、そこで捕まった。

「洗ってあげる」
「いらん」

 一応抵抗はしてみるものの、もうお察しの通り。俺に拒否権はない。
 透は俺が持っていた泡だったボディタオルを後ろから奪うと、ものすごーくソフトタッチで背中を洗い始めた。

「もっと強くしてほしいんだが?」
「だめだよ、お肌が傷ついちゃう」

 俺の肌なんてどうでもいいだろうと思うが、まぁ触る方からしてみれば、ガサガサしているよりは、すべすべの方がいいのかもしれない。
 だからなのか、風呂場の横にある洗面所には透が買ってきた保湿クリームがあり、それを毎日塗るよう言いつけられている。塗り忘れるとやっぱり手触りが悪くなるから、効果があるんだろう。俺はそのクリームをばーっと全身に塗るだけだが、透はもっと顔は顔用、体は体って感じでちゃんと使い分けている。もともと透は天然物のイケメンではあるが、こういうところもぬかりない。美は一日にしてならずとはこういうことだ。

 優しく洗われるのはまぁいい。でも、絶対それだけじゃ終わらないんだよなぁ。
 背中を洗っていたボディタオルはいつの間にか前に回り、ゆっくりと円を描くように胸を撫でている。しかも指先は的確に乳首ををかすめていく。そのたびにピクリと体が跳ねてしまう。ぎろりと後ろを睨んでも、相変わらずのイケメンスマイルを返されるだけ。
 ボディタオルを持つ右手が乳首を集中攻撃している間に、左手は胸元から、脇腹を辿り、今は太ももで泡を広げている。
 触り方がもう完全に痴漢のそれ ――本当にされたことはないけれども――。太ももの表面から鼠径部のギリギリを通り、太ももの裏側へ、いやらしいとしか言いようがない撫で方をしていく。それを何往復も繰り返されたら俺の息子殿がどうなるか。言うまでもない。

「勃っちゃったね、洗ってただけなのに」

 耳元でくすくすと笑い声が聞こえてくるが、いつの間にか俺の背中には透の胸が密着していて、尻には固くて熱いものががっつりと押し付けられている。完全におまいう案件。尻の間に息子様をこすりつけるのやめろ。
 だって、俺の尻孔はもう準備済みなわけで。日ごろから透にならされているせいで慎ましさなんてものもない。ご立派な透の息子様も簡単に呑み込んでしまう。

「挿れるよ」

 上半身を抱きしめるように固定されても後ろから貫かれる衝撃には耐えきれない。咄嗟に両手を壁につけられる広さでよかったなって? こんな使い方を想定して風呂場の広さ決めてないだろうよ。
 風呂場の何がだめって、狭い密閉空間のせいで声が響くことだ。おまけに、マンションの通路側に面しているから、下手したら外に声が漏れる。単身者向けマンションに防音なんて期待しちゃいけない。現に、外の通路を歩く人の足音が聞こえてくる。
 声を出さないように唇を噛んで耐えるけど、容赦ない突き上げにくぐもった声がどうしても漏れてしまう。ベッドの上ならまだ枕とかで抑えられるのに。やっぱり、風呂でヤるのはだめだ。

「っん、とお、る、ベッドに、」
「うん、あとでそっちでもしようね」

 そういうことじゃないんだよ‼ って突っ込める余裕は今の俺にはない。
 俺の尻に透の体がぶつかる音が響くくらい激しく突かれているうえに、「噛んじゃだめ」なんて言われて、口の中に指を突っ込まれているもんだから、声も抑えられない。最悪だ。ご近所からクレームが来たらどうしてくれる。
 それでも、体は与えられる快感に正直で。透の息子様が中のしこりを擦るたびに全身に電流が迸って、触ってもいないのに俺の息子殿はだらしなくよだれをたらしている。
 たまらなく気持ちよくて、ほんとに嫌になる。これはもうさっさとイって終わらせるのが一番だ。

「もぅ、イクっ、いっ?!」

 俺が驚いた声を上げたのは、出る、というタイミングで透が俺の息子殿を握ったからだ。そのせいで、吐き出すことのできなかった快感が体の内側でスパークして、目の前に星が飛んでいる。

「うぁ、なん、で」
「まだダメ。一緒に、ね」

 ふざけんな。ぶん殴ってやりたいのに、急所を握られたまま奥をぐりぐりと押されたら、抵抗なんてできない。全身が痙攣しながら己の危機を知らせてくる。それでも透が容赦なんてしてくれるはずもなく。好き勝手に腰を振りたくられ、俺はもう喘ぐだけ。その声が外に響いていないことを祈る余裕もない。

「あー、イク」

 一際奥に突き立てられると同時に俺の息子殿も解放された。勢いよく吹き出した精液が壁を汚している。爆発的な快感に俺の意識は一瞬飛んでいたかもしれない。膝ががくりと落ちかけたところを透に抱き留められた。

「祐也の中、ほんときもちい」

 うっとりとした声が耳に流しこまれ、怯えるようにゾクゾクと背が粟立つ。
 何が怖いってさ。俺を背後から抱えたまま出したものを塗り広げるように俺の中をゆっくりと掻き回している透の息子様がまだ固いままなんだよ。膝に力が入らなくて立ってるのもしんどいのに、このまま二回戦はマジで勘弁してくれ。

「とりあえず、抜け」
「えぇ~まだしたい」
「俺まだ風呂に浸かってない」
「じゃーお風呂の中でしよっか」
「……せめてベッドにしてくれ」

 できればもうこれで終わりにしたい。でも、そうやって抵抗すると100%またここでヤられる。だから妥協案でのベッドだったんだけれども。
 結局俺は湯船に浸かることのないまま、バスタオルにくるまれてベッドに担いで運ばれた。その後、ベッドで三回もされるわけだが、それならば風呂でもう一回しておいた方がまだましだっただろうか。
 誰か、正解を教えてくれ。
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