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9. 移ろう季節
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朝日が差し込むオスマンサス公爵家で、この家の当主、ラインハルトは横でかわいらしく寝息を立てる世界樹の客人、蓮見 咲玖の寝顔をじいっと見つめていた。髪に触れてもよいものかとかれこれもう何十分、下手したら数時間思案している。
触れたせいで起こしては忍びない。でも夜の闇には溶け、朝の光には美しく艶めくこの黒髪に触れたい。こんな様子で、結局またほとんど眠れず一夜を明かした。
昨夜、部屋に響いたノック音が廊下側のドアではなく、咲玖の私室とつながる部屋の中のドアからのものだと理解するまでにしばらく時間がかかった。
一度目のノックは自分の都合の良い空耳なのではないかと思って全く反応ができなかった。二度目のノックを咲玖がしてくれなかったら、おそらく一世一代のチャンスを完全に棒に振っていただろう。
今、横に咲玖が眠っているのだから、昨夜のことはラインハルトの妄想でないことは間違いない。でもどこからどこまでが現実だったのかあいまいになるほどに、衝撃的なことがありすぎた。
咲玖が元居た世界で咲玖が経験したことはあまりにも衝撃的で、『なぜ』という気持ちと、やるせなさで胸が詰まった。
“ケーキ”と呼ばれる存在に生まれたために咲玖は苦労を重ねていた。それなのに、突然異世界に飛ばされ、そこで出会ったラインハルトが、最も恐れる存在である“フォーク”だと知ったときの絶望はいかほどだっただろう。
今思い返せば、咲玖に「甘い香りがする」と言った時の驚いた顔と、味覚がないことを伝えた時の静かな反応はラインハルトがフォークであることを疑い、悟ったせいだったのだろう。
咲玖は「ひどい態度を取った」と謝っていたが、自分の命を脅かすかもしれない相手なのだ。もっとあからさまに避けたり、拒絶されたりしてもおかしくはなかったはずだ。
それなのに、一緒に食事をとったり、話をしたり、街に出かけたり、咲玖は十分ラインハルトとの時間を大切にしてくれていた。それを“距離を取られている”などとみっともなく落ち込んでいた自分が恥ずかしい。
咲玖のことを大切に想ってきたつもりが、実はラインハルトの方が咲玖に大切に想いやってもらっていた。その事実に、胸が熱くなる。
“愛しい”とはこういう感情のことを言うのだろう。
溢れかえるほど沸き上がる咲玖への想いを噛みしめていると、長い睫毛がふわりと揺れ、ゆっくりと瞼が開いた。
「おはよう、サク」
「ん……おはよう、ライ」
名を呼ばれただけで浮かび上がりそうなほどの高揚に身悶えそうになる。そう呼んでほしいとずっと願っていたが、実際に呼ばれてみると想像以上にくすぐったい。だが、それ以上に嬉しくて、心が温くなる。その温もりに表情筋がほぐされすぎていることに気が付き、慌てて顔を取り繕うと咲玖にクスッと笑われてしまった。きっとだらしない顔をしていたのだろう。
ラインハルトはごまかすように咳払いをして体を起こした。
「よく眠れたかい?」
「うん。甘えちゃってごめんね」
昨夜、そろそろ休もうと言ったラインハルトに、咲玖は一人で部屋にいるのは怖いと「一緒に寝てもいい?」と堪らなくかわいらしい上目遣いでそうねだった。
もちろん断るという選択肢はなかったが、想いが通じ合い、キスを交わした直後なだけに、つい“キスの先”を想像してしまった。
おそらく、いや、絶対に咲玖は本当に“一人で寝るのが怖いだけ”で、そんなつもりは毛頭なかっただろう。そうは思っても、期待せずにはいられないのが男の性というものだ――咲玖だって男ではあるのだが――。
もちろんラインハルトもいい年であるから、そう多い方ではないにしても、経験はある。それなのに、本当に好いた相手にはこんなにも勝手が違うものなのかと飛び出そうなほど高鳴る心臓を必死で収め、平静を装いながらベッドに入ったが、案の定、咲玖はあっという間に寝息を立て始めた。
そのかわいらしい寝顔を見ながら、少しだけがっかりもしたが、正直、ホッとしたところもあった。
愛おしくて、触れたい。
おいしそうで、食べてしまいたい。
咲玖を前にすると腹の底から湧き上がってくる情動を、これまではどうにか押し込めていた。
でも、許されてしまった。触れることも、味わうことも。
止水版が外れた欲望は体中の中で勢いを増すだけでは飽き足らず、意識の外へとあふれ出そうとしている。
愛おしと思う気持ちも、フォークの本能も、決して咲玖を脅かすものになってはいけない。そう思っているのに、すぐそばで寝転がったままの咲玖に触れたいと今にも手が勝手に動き出しそうになる。漂う甘い香りに、自然と唾液が溜まっていく。抑えきれない欲望が自分でも恐ろしい。
――それでも、もう手放せない。
己を律することができるのは己だけだ。
欲望に負けない強い意志を持たなければならないとをグッと腹に力を入れ、努めて優しい手つきで咲玖の髪に手を伸ばした。
「もっと甘えてくれていいんだよ。それに、こんなかわいい“お願い”ならいつでも大歓迎だ」
「うん、ありがとう。ライは本当に優しいね。そう言うところ、大好き」
「ぐっ……!」
心臓を鷲掴みにされるというのはこういうことなんだろう。さっき自分を律さねばと思ったばかりなのに、咲玖の愛らしさは想像を軽く超えてくる。ラインハルトは胸を掴みながら思わず前かがみになった。
「えっ、だ、大丈夫??」
「いや、ダメだ」
「えぇ?!」
驚いた様子でガバっと起き上がった咲玖を向かい合うように抱き寄せ、そっと額にキスをする。
「私の恋人があまりにもかわいいものだから、身が持たないよ」
「こ、恋人……?!」
「おや、違ったかな?」
「……違わない」
ぼんっと爆発したように赤らめた顔を隠すようにラインハルトの胸にうずめた咲玖の髪を撫でながらまた一人身もだえていると、咲玖は何かに気が付いたようにハッとした顔を上げ、グイッとラインハルトの胸元の服を引いた。
「で、でも俺、男だし、ライは公爵様だし……」
「ん? そうだね?」
何を言わんとしているのかわからず思わず首をかしげると、咲玖は『えっ』と少し戸惑った顔をした。
「公爵様の恋人が男なのはまずいんじゃ……俺、子供産めないし……」
突然どうしたのかと思っていたが、その言葉にピンときた。
おそらく咲玖は『自分は男だから、公爵家の跡継ぎが産めないがいいのか』というようなことが言いたいのだ。
あまりの愛らしさに叫びただしそうなのを必死に我慢して口を押さえていると、どうやら笑っていると咲玖は勘違いをしたようで、唇をムッと尖らせ少し拗ねた表情をするから、もうどうしようもない想いが口から漏れた。
「あぁ、かわいい……本当に堪らない……」
「もう! 俺は真剣に言ってるんだよ!」
「すまない、からかうつもりはないんだ。私とのこと、真剣に考えてくれて嬉しいよ。でも、子供のことなら私はもとより持つつもりはなかったから心配することはない」
「えっそう、なんだ。……でも、跡継ぎとかはいいの?」
「あぁ、問題ない。親族から養子をとるつもりだからね」
「そっか。……子供のことは……やっぱりフォークだから…?」
「そうだね。この体質をもし子が引き継いでしまったらと思うと、どうしても恐ろしい」
両親の親族の中でラインハルトと同じ体質の人はないし、侍医のローマンも味覚を完全に失うような症例は他に聞いたことがないと言っていた。
“味覚がない”ことは直接的に生命へ危険を及ぼすわけではないが、それでも何を食べても満足ができず、常に飢えを感じる。それは十分すぎるほどに精神を抉った。この体質のせいで諦めたものもある。
自分の経験してきたことを、もし自分の子が味わうことになったらと考えると、どうしても『子を持ちたい』とは思えなかった。だから、両親にも爵位を継承する際にこの考えを伝えており、了承も得ている。
子を作るつもりもないのに結婚をする必要も感じず、特別に想う相手もいなかったこともあって、未婚のままというわけだ。
「そっか、そうだね。俺もわかるよ……」
「そう思うと、やはり私たちは互いに伴侶としてとてもよい相手だね」
「は、伴侶って……男同士だし……」
「男同士だと何か問題があるのかい?」
再びラインハルトがきょとんとすると、咲玖のいた国は同性同士の結婚が認められておらず、同性同士のカップルはマイノリティと位置付けられ、関係を公けにする人も少ないという。
ベラーブル王国ではそのような決まりはないし、貴族間でも同性婚はままある。そう話すと、咲玖はほっとした顔をして再びラインハルトの胸にこてんと頭をもたれさせた。
「それならよかった。俺がライの邪魔になるようなことだけはしたくないから……」
「邪魔になることなんて絶対にない。もし、この国が同性婚を禁じていたとしても、私は咲玖を愛したよ」
相手が男であれ女であれ、人を愛し、愛されることを国が制限するなどバカげた話だとは思うが、国が違えば常識も違うのは当然のことだ。
それでも惹かれ合うことも、求め合うことも止められるものではない。
ラインハルトがそっと咲玖の頬に触れ、キスを交わそうとしたその時、廊下側から強くドアを叩く音が聞こえた。
そのけたたましさにまた何かあったのかと、「どうした」と声を掛けながらドアを開けると、咲玖の専属メイドであるアルマとエリーゼが泣きそうな顔で立っていた。
「旦那様!! サク様のお部屋に伺ったのですが、お返事がないのです! またどこかへ、あっ!!」
「えぇ?!」
二人ともこれまで取り乱すようなところなど見たことのない優秀なメイドだが、昨夜、咲玖が行方不明になったばかりで気が動転していたのだろう。話している最中に咲玖がラインハルトのベッドの上にいることに気が付き、驚きの声を上げた後、絵に描いたように言葉を失っている。この状況は全く想定していなかったようだ。
「あっ二人ともごめんね。昨日は公爵様にわがまま言ってこっちで寝かせてもらったんだ」
咲玖の言葉に二人は顔を見合わせたが、すぐにいつもの“優秀なメイド”の顔に戻り、ニッコリと笑って見せた。ところが、ラインハルトはそんな二人の反応よりも咲玖がまた『公爵様』とラインハルトを呼んだことの方が気になる。ここ数日で目の当たりにした自分の狭量さにほとほとうんざりする。
「左様でございましたか。大変失礼いたしました。朝のお支度はどうされますか?」
「もう朝ごはんの時間だよね? 部屋に戻って準備するよ」
「畏まりました。では先にお部屋でお待ちしております」
ラインハルトが一人モヤモヤとしているうちに、二人は一礼をしてラインハルトの部屋を出て行った。すると、咲玖がラインハルトの側へとやってきておもむろにぎゅっと抱き着いた。
「ライ、また来てもいい?」
「……そう呼んでくれるのは二人の時だけなのかな?」
「えっ、あっ……うん、照れちゃうから……」
――ああぁぁぁ、かわいい……!
目を伏せ、恥じらった顔でそう言った咲玖のあまりのかわいさに射抜かれ、さっきまでのもやもやなど簡単に吹き飛んでいく。何と単純なのかとは思うが、それほどまでに咲玖の一挙手一投足に影響されてしまう。そして、そんな初めての感覚も悪くないものだと、そう思える。恋とは不思議なものだ。
まだもぞもぞと恥じらいながらラインハルトの胸に顔をうずめる咲玖をぎゅっと抱きしめ返し、髪にそっとキスをした。
「いつでもおいで。待っているよ」
さっきお預けをくらったキスを誘うように再度咲玖の頬に触れると、咲玖もそれを察して触れた手に頬を摺り寄せ、ほんのりと熱を含んだ笑顔でラインハルトを見つめた。
「ライ、だいすき」
重ねた唇からはやはり、金木犀の砂糖漬けの味がした。
「なんや、締まりのない顔しとんな」
昼前に従者を伴ってラインハルトの執務室を訪ねてきたユーリは、明らかに不機嫌な顔でドカッと執務室にあるソファに腰を掛けた。
先ほどまで咲玖と話をしていたらしいから、この様子ではユーリの望んだ結果は得られなかったのだろう。昨日の不始末の償いについて話をしに来たはずなのに、変わらず不遜な態度にラインハルトは思わずため息を吐く。するとそれに気が付いたユーリの従者が胸に手を当てラインハルトに向けて深く礼をした。
「オスマンサス公爵閣下、この度の件、わたくしからも改めてお詫び申し上げます」
「カイが謝る必要はない。きみは昨日まで王都にいたんだから止められなくて当然だ」
ユーリの従者である赤茶色の長い髪を一つに束ねた長身の男、カイ・ウィローは幼い頃からずっとユーリに付き従っているため、ラインハルトとも以前から面識がある。
現在でもユーリと共に世界を回っており、昨日までは王都でユーリの代行として商談にあたっていたらしい。昨日の件を聞いて急いで王都を発ち、今朝公爵家に到着したばかりだ。王都からバーデルンまでの移動は通常一泊二日の行程で移動するため、相当に急いだのだろう。
カイの父親はフォレド王国の現国王、つまりユーリの父親の弟で、ユーリとカイはいとこにあたる。カイの父親がシン国の出身であるカイの母親の家に婿入りをし、王位継承権を放棄したため、カイ自身も王位継承権も爵位も持っていないが、優美な見目も相まって、その立ち居振る舞いや言葉遣いなど、どれをとってもユーリよりよほど貴族らしい。
「いえ、お側を離れたわたくしの落ち度でございます。数日程度なら大人しくしていてくださると思っていたわたくしが間違っていました」
「もういい加減、愛想も尽きたんじゃないのか? あぁそうだ。償いにカイが私のところへ来るというのはどうだ?」
「おい! あほなこと言いなや! サクだけじゃなくてカイまで手中に収めようなんて、なんちゅうがめつい奴や!」
「きみだって私からサクを奪おうとしただろう?」
「どうせフラれたっちゅうねん」
「ユーリウス様」
イライラした様子で悪態をつくユーリにカイが冷気を含んだ三白眼を細めてにっこりと笑って見せると、ユーリはビクッと肩を震わせ姿勢を正した。
普段は自由奔放なユーリにカイが振り回されているように見えるが、実のところユーリはカイに逆らえない。そんな場面を幼い頃から何度か目にした。
普段のカイは穏やかそのものだが、ここぞというときの迫力や存在感は目を見張るものがある。ユーリが商人として成功しているのは、もちろん本人の手腕によるところがほとんどではあるだろうが、こうして陰日向にユーリをうまく“操縦”しているカイの存在は相当に大きいのだろう。そういうものも見込んで、公爵家にぜひ招きたい人材だ。
そう思って何度か声を掛けてはいるが、答えは決まって「No」。きっと今回もそうだろう。
「閣下、ご存じの通りわたくしはユーリウス様に忠誠を誓っておりますゆえ、お言葉だけありがたく頂戴いたします」
ほらね、と誰に言うでもなく心の中でやれやれとため息をつく。
「まぁそう言うだろうと思っていたよ」
「申し訳ございません。その代わりとなるかはわかりませんが、この度の償い、ウィロー家とのコネクション、と言うのはいかがでしょうか」
カイの実家であるウィロー家はシン国の上級官吏を代々務めてる家柄で、ベラーブル王国で言うところの貴族階級に当たる。
現在、ベラーブル王国とシン国は個人商人の出入りがある程度の交易しかないが、今後正式に国交を結びたい考えがあることをラインハルトも耳にしていた。
カイからの提案は、つまり、互いに王家に近しいウィロー家とオスマンサス公爵家の間で交流をもてば国交樹立のよい足掛かりになるし、その立役者となれば公爵家の存在感を高めることができる、と言うことだ。
「悪くない話だ。それに、ベラーブル王国とシン国が正式に国交を結べば、きみたちの商売もよりはかどるだろうしね」
そうラインハルトが少し含みを持たせて笑顔を作ると、カイはにっこりと笑顔を返した。
公爵家への利点を強調しながらも、奥に自分たちの利益を含ませる強かさが商人らしい。
「取引が増えれば、公爵領の収入も上がりますでしょう?」
「ハハッ、その通りだ。具体的にはどうするつもりだ?」
「もともとこの件がなくとも、ウィロー家から閣下とのご縁談を進めたいと言われておりましたので、まずはそちらのお話からと思っていたのですが、残念ながらこの話は先を望めそうにありませんね」
「あぁ、そうだな」
確かに家のつながりを持つために姻戚関係を結ぶのは一番簡単な方法ではある。
以前、口頭レベルで縁談を持ちかけられたことがあったが、その際にも断りを入れているし、昨日“初恋”が叶ったばかりのラインハルトは当然その気などない。
ラインハルトの答えにユーリがまたケッと悪態をついているが、やぶへびになるのは嫌なので、見て見ぬふりをすることにした。
「承知いたしました。あちらは乗り気だったのですが、こればかりは仕方のない話ですね」
「面識もないのに『乗り気』も何もあるのか?」
「閣下のお美しさはシン国でも評判ですから」
「どんな噂が立っているのか逆に恐ろしいね」
「とんでもございません。あちらはきっと気を落としますよ」
「それはそれは、謝罪に出向かねばならないかな?」
「いいえ、それには及びません。このお屋敷にウィロー家当主をお連れしたいと考えておりますのでその際にでも」
シン国からベラーブル王国までは陸路で三カ月、海路でも一カ月近くかかる。その遠路を国の要職を務めるウィロー家当主を動かすとなれば並大抵の話ではない。きっと昨日の件とは関係なく、以前からもうこの話は動いていたのだろう。その周到さに思わず感嘆のため息を吐きそうになった。
「全く、きみは本当に惜しい人材だよ」
「ありがとうございます」
「細かい話は後ほど詰めるとして、もうこんな時間だ。咲玖も誘って昼食にしよう」
部屋を出て咲玖のいる中庭へと向かう途中、高くなった日差しを浴びる整えられた木々が、段々と寒さを帯びてきた空気に揺れている。もう香る時期を終えた金木犀の生け垣の向こうに覗く黒髪が眩しい。その光に目を少し細め、立ち止まると、こちらに気が付いた咲玖は晩秋の空が温もるような柔らかい笑顔で手を振った。
触れたせいで起こしては忍びない。でも夜の闇には溶け、朝の光には美しく艶めくこの黒髪に触れたい。こんな様子で、結局またほとんど眠れず一夜を明かした。
昨夜、部屋に響いたノック音が廊下側のドアではなく、咲玖の私室とつながる部屋の中のドアからのものだと理解するまでにしばらく時間がかかった。
一度目のノックは自分の都合の良い空耳なのではないかと思って全く反応ができなかった。二度目のノックを咲玖がしてくれなかったら、おそらく一世一代のチャンスを完全に棒に振っていただろう。
今、横に咲玖が眠っているのだから、昨夜のことはラインハルトの妄想でないことは間違いない。でもどこからどこまでが現実だったのかあいまいになるほどに、衝撃的なことがありすぎた。
咲玖が元居た世界で咲玖が経験したことはあまりにも衝撃的で、『なぜ』という気持ちと、やるせなさで胸が詰まった。
“ケーキ”と呼ばれる存在に生まれたために咲玖は苦労を重ねていた。それなのに、突然異世界に飛ばされ、そこで出会ったラインハルトが、最も恐れる存在である“フォーク”だと知ったときの絶望はいかほどだっただろう。
今思い返せば、咲玖に「甘い香りがする」と言った時の驚いた顔と、味覚がないことを伝えた時の静かな反応はラインハルトがフォークであることを疑い、悟ったせいだったのだろう。
咲玖は「ひどい態度を取った」と謝っていたが、自分の命を脅かすかもしれない相手なのだ。もっとあからさまに避けたり、拒絶されたりしてもおかしくはなかったはずだ。
それなのに、一緒に食事をとったり、話をしたり、街に出かけたり、咲玖は十分ラインハルトとの時間を大切にしてくれていた。それを“距離を取られている”などとみっともなく落ち込んでいた自分が恥ずかしい。
咲玖のことを大切に想ってきたつもりが、実はラインハルトの方が咲玖に大切に想いやってもらっていた。その事実に、胸が熱くなる。
“愛しい”とはこういう感情のことを言うのだろう。
溢れかえるほど沸き上がる咲玖への想いを噛みしめていると、長い睫毛がふわりと揺れ、ゆっくりと瞼が開いた。
「おはよう、サク」
「ん……おはよう、ライ」
名を呼ばれただけで浮かび上がりそうなほどの高揚に身悶えそうになる。そう呼んでほしいとずっと願っていたが、実際に呼ばれてみると想像以上にくすぐったい。だが、それ以上に嬉しくて、心が温くなる。その温もりに表情筋がほぐされすぎていることに気が付き、慌てて顔を取り繕うと咲玖にクスッと笑われてしまった。きっとだらしない顔をしていたのだろう。
ラインハルトはごまかすように咳払いをして体を起こした。
「よく眠れたかい?」
「うん。甘えちゃってごめんね」
昨夜、そろそろ休もうと言ったラインハルトに、咲玖は一人で部屋にいるのは怖いと「一緒に寝てもいい?」と堪らなくかわいらしい上目遣いでそうねだった。
もちろん断るという選択肢はなかったが、想いが通じ合い、キスを交わした直後なだけに、つい“キスの先”を想像してしまった。
おそらく、いや、絶対に咲玖は本当に“一人で寝るのが怖いだけ”で、そんなつもりは毛頭なかっただろう。そうは思っても、期待せずにはいられないのが男の性というものだ――咲玖だって男ではあるのだが――。
もちろんラインハルトもいい年であるから、そう多い方ではないにしても、経験はある。それなのに、本当に好いた相手にはこんなにも勝手が違うものなのかと飛び出そうなほど高鳴る心臓を必死で収め、平静を装いながらベッドに入ったが、案の定、咲玖はあっという間に寝息を立て始めた。
そのかわいらしい寝顔を見ながら、少しだけがっかりもしたが、正直、ホッとしたところもあった。
愛おしくて、触れたい。
おいしそうで、食べてしまいたい。
咲玖を前にすると腹の底から湧き上がってくる情動を、これまではどうにか押し込めていた。
でも、許されてしまった。触れることも、味わうことも。
止水版が外れた欲望は体中の中で勢いを増すだけでは飽き足らず、意識の外へとあふれ出そうとしている。
愛おしと思う気持ちも、フォークの本能も、決して咲玖を脅かすものになってはいけない。そう思っているのに、すぐそばで寝転がったままの咲玖に触れたいと今にも手が勝手に動き出しそうになる。漂う甘い香りに、自然と唾液が溜まっていく。抑えきれない欲望が自分でも恐ろしい。
――それでも、もう手放せない。
己を律することができるのは己だけだ。
欲望に負けない強い意志を持たなければならないとをグッと腹に力を入れ、努めて優しい手つきで咲玖の髪に手を伸ばした。
「もっと甘えてくれていいんだよ。それに、こんなかわいい“お願い”ならいつでも大歓迎だ」
「うん、ありがとう。ライは本当に優しいね。そう言うところ、大好き」
「ぐっ……!」
心臓を鷲掴みにされるというのはこういうことなんだろう。さっき自分を律さねばと思ったばかりなのに、咲玖の愛らしさは想像を軽く超えてくる。ラインハルトは胸を掴みながら思わず前かがみになった。
「えっ、だ、大丈夫??」
「いや、ダメだ」
「えぇ?!」
驚いた様子でガバっと起き上がった咲玖を向かい合うように抱き寄せ、そっと額にキスをする。
「私の恋人があまりにもかわいいものだから、身が持たないよ」
「こ、恋人……?!」
「おや、違ったかな?」
「……違わない」
ぼんっと爆発したように赤らめた顔を隠すようにラインハルトの胸にうずめた咲玖の髪を撫でながらまた一人身もだえていると、咲玖は何かに気が付いたようにハッとした顔を上げ、グイッとラインハルトの胸元の服を引いた。
「で、でも俺、男だし、ライは公爵様だし……」
「ん? そうだね?」
何を言わんとしているのかわからず思わず首をかしげると、咲玖は『えっ』と少し戸惑った顔をした。
「公爵様の恋人が男なのはまずいんじゃ……俺、子供産めないし……」
突然どうしたのかと思っていたが、その言葉にピンときた。
おそらく咲玖は『自分は男だから、公爵家の跡継ぎが産めないがいいのか』というようなことが言いたいのだ。
あまりの愛らしさに叫びただしそうなのを必死に我慢して口を押さえていると、どうやら笑っていると咲玖は勘違いをしたようで、唇をムッと尖らせ少し拗ねた表情をするから、もうどうしようもない想いが口から漏れた。
「あぁ、かわいい……本当に堪らない……」
「もう! 俺は真剣に言ってるんだよ!」
「すまない、からかうつもりはないんだ。私とのこと、真剣に考えてくれて嬉しいよ。でも、子供のことなら私はもとより持つつもりはなかったから心配することはない」
「えっそう、なんだ。……でも、跡継ぎとかはいいの?」
「あぁ、問題ない。親族から養子をとるつもりだからね」
「そっか。……子供のことは……やっぱりフォークだから…?」
「そうだね。この体質をもし子が引き継いでしまったらと思うと、どうしても恐ろしい」
両親の親族の中でラインハルトと同じ体質の人はないし、侍医のローマンも味覚を完全に失うような症例は他に聞いたことがないと言っていた。
“味覚がない”ことは直接的に生命へ危険を及ぼすわけではないが、それでも何を食べても満足ができず、常に飢えを感じる。それは十分すぎるほどに精神を抉った。この体質のせいで諦めたものもある。
自分の経験してきたことを、もし自分の子が味わうことになったらと考えると、どうしても『子を持ちたい』とは思えなかった。だから、両親にも爵位を継承する際にこの考えを伝えており、了承も得ている。
子を作るつもりもないのに結婚をする必要も感じず、特別に想う相手もいなかったこともあって、未婚のままというわけだ。
「そっか、そうだね。俺もわかるよ……」
「そう思うと、やはり私たちは互いに伴侶としてとてもよい相手だね」
「は、伴侶って……男同士だし……」
「男同士だと何か問題があるのかい?」
再びラインハルトがきょとんとすると、咲玖のいた国は同性同士の結婚が認められておらず、同性同士のカップルはマイノリティと位置付けられ、関係を公けにする人も少ないという。
ベラーブル王国ではそのような決まりはないし、貴族間でも同性婚はままある。そう話すと、咲玖はほっとした顔をして再びラインハルトの胸にこてんと頭をもたれさせた。
「それならよかった。俺がライの邪魔になるようなことだけはしたくないから……」
「邪魔になることなんて絶対にない。もし、この国が同性婚を禁じていたとしても、私は咲玖を愛したよ」
相手が男であれ女であれ、人を愛し、愛されることを国が制限するなどバカげた話だとは思うが、国が違えば常識も違うのは当然のことだ。
それでも惹かれ合うことも、求め合うことも止められるものではない。
ラインハルトがそっと咲玖の頬に触れ、キスを交わそうとしたその時、廊下側から強くドアを叩く音が聞こえた。
そのけたたましさにまた何かあったのかと、「どうした」と声を掛けながらドアを開けると、咲玖の専属メイドであるアルマとエリーゼが泣きそうな顔で立っていた。
「旦那様!! サク様のお部屋に伺ったのですが、お返事がないのです! またどこかへ、あっ!!」
「えぇ?!」
二人ともこれまで取り乱すようなところなど見たことのない優秀なメイドだが、昨夜、咲玖が行方不明になったばかりで気が動転していたのだろう。話している最中に咲玖がラインハルトのベッドの上にいることに気が付き、驚きの声を上げた後、絵に描いたように言葉を失っている。この状況は全く想定していなかったようだ。
「あっ二人ともごめんね。昨日は公爵様にわがまま言ってこっちで寝かせてもらったんだ」
咲玖の言葉に二人は顔を見合わせたが、すぐにいつもの“優秀なメイド”の顔に戻り、ニッコリと笑って見せた。ところが、ラインハルトはそんな二人の反応よりも咲玖がまた『公爵様』とラインハルトを呼んだことの方が気になる。ここ数日で目の当たりにした自分の狭量さにほとほとうんざりする。
「左様でございましたか。大変失礼いたしました。朝のお支度はどうされますか?」
「もう朝ごはんの時間だよね? 部屋に戻って準備するよ」
「畏まりました。では先にお部屋でお待ちしております」
ラインハルトが一人モヤモヤとしているうちに、二人は一礼をしてラインハルトの部屋を出て行った。すると、咲玖がラインハルトの側へとやってきておもむろにぎゅっと抱き着いた。
「ライ、また来てもいい?」
「……そう呼んでくれるのは二人の時だけなのかな?」
「えっ、あっ……うん、照れちゃうから……」
――ああぁぁぁ、かわいい……!
目を伏せ、恥じらった顔でそう言った咲玖のあまりのかわいさに射抜かれ、さっきまでのもやもやなど簡単に吹き飛んでいく。何と単純なのかとは思うが、それほどまでに咲玖の一挙手一投足に影響されてしまう。そして、そんな初めての感覚も悪くないものだと、そう思える。恋とは不思議なものだ。
まだもぞもぞと恥じらいながらラインハルトの胸に顔をうずめる咲玖をぎゅっと抱きしめ返し、髪にそっとキスをした。
「いつでもおいで。待っているよ」
さっきお預けをくらったキスを誘うように再度咲玖の頬に触れると、咲玖もそれを察して触れた手に頬を摺り寄せ、ほんのりと熱を含んだ笑顔でラインハルトを見つめた。
「ライ、だいすき」
重ねた唇からはやはり、金木犀の砂糖漬けの味がした。
「なんや、締まりのない顔しとんな」
昼前に従者を伴ってラインハルトの執務室を訪ねてきたユーリは、明らかに不機嫌な顔でドカッと執務室にあるソファに腰を掛けた。
先ほどまで咲玖と話をしていたらしいから、この様子ではユーリの望んだ結果は得られなかったのだろう。昨日の不始末の償いについて話をしに来たはずなのに、変わらず不遜な態度にラインハルトは思わずため息を吐く。するとそれに気が付いたユーリの従者が胸に手を当てラインハルトに向けて深く礼をした。
「オスマンサス公爵閣下、この度の件、わたくしからも改めてお詫び申し上げます」
「カイが謝る必要はない。きみは昨日まで王都にいたんだから止められなくて当然だ」
ユーリの従者である赤茶色の長い髪を一つに束ねた長身の男、カイ・ウィローは幼い頃からずっとユーリに付き従っているため、ラインハルトとも以前から面識がある。
現在でもユーリと共に世界を回っており、昨日までは王都でユーリの代行として商談にあたっていたらしい。昨日の件を聞いて急いで王都を発ち、今朝公爵家に到着したばかりだ。王都からバーデルンまでの移動は通常一泊二日の行程で移動するため、相当に急いだのだろう。
カイの父親はフォレド王国の現国王、つまりユーリの父親の弟で、ユーリとカイはいとこにあたる。カイの父親がシン国の出身であるカイの母親の家に婿入りをし、王位継承権を放棄したため、カイ自身も王位継承権も爵位も持っていないが、優美な見目も相まって、その立ち居振る舞いや言葉遣いなど、どれをとってもユーリよりよほど貴族らしい。
「いえ、お側を離れたわたくしの落ち度でございます。数日程度なら大人しくしていてくださると思っていたわたくしが間違っていました」
「もういい加減、愛想も尽きたんじゃないのか? あぁそうだ。償いにカイが私のところへ来るというのはどうだ?」
「おい! あほなこと言いなや! サクだけじゃなくてカイまで手中に収めようなんて、なんちゅうがめつい奴や!」
「きみだって私からサクを奪おうとしただろう?」
「どうせフラれたっちゅうねん」
「ユーリウス様」
イライラした様子で悪態をつくユーリにカイが冷気を含んだ三白眼を細めてにっこりと笑って見せると、ユーリはビクッと肩を震わせ姿勢を正した。
普段は自由奔放なユーリにカイが振り回されているように見えるが、実のところユーリはカイに逆らえない。そんな場面を幼い頃から何度か目にした。
普段のカイは穏やかそのものだが、ここぞというときの迫力や存在感は目を見張るものがある。ユーリが商人として成功しているのは、もちろん本人の手腕によるところがほとんどではあるだろうが、こうして陰日向にユーリをうまく“操縦”しているカイの存在は相当に大きいのだろう。そういうものも見込んで、公爵家にぜひ招きたい人材だ。
そう思って何度か声を掛けてはいるが、答えは決まって「No」。きっと今回もそうだろう。
「閣下、ご存じの通りわたくしはユーリウス様に忠誠を誓っておりますゆえ、お言葉だけありがたく頂戴いたします」
ほらね、と誰に言うでもなく心の中でやれやれとため息をつく。
「まぁそう言うだろうと思っていたよ」
「申し訳ございません。その代わりとなるかはわかりませんが、この度の償い、ウィロー家とのコネクション、と言うのはいかがでしょうか」
カイの実家であるウィロー家はシン国の上級官吏を代々務めてる家柄で、ベラーブル王国で言うところの貴族階級に当たる。
現在、ベラーブル王国とシン国は個人商人の出入りがある程度の交易しかないが、今後正式に国交を結びたい考えがあることをラインハルトも耳にしていた。
カイからの提案は、つまり、互いに王家に近しいウィロー家とオスマンサス公爵家の間で交流をもてば国交樹立のよい足掛かりになるし、その立役者となれば公爵家の存在感を高めることができる、と言うことだ。
「悪くない話だ。それに、ベラーブル王国とシン国が正式に国交を結べば、きみたちの商売もよりはかどるだろうしね」
そうラインハルトが少し含みを持たせて笑顔を作ると、カイはにっこりと笑顔を返した。
公爵家への利点を強調しながらも、奥に自分たちの利益を含ませる強かさが商人らしい。
「取引が増えれば、公爵領の収入も上がりますでしょう?」
「ハハッ、その通りだ。具体的にはどうするつもりだ?」
「もともとこの件がなくとも、ウィロー家から閣下とのご縁談を進めたいと言われておりましたので、まずはそちらのお話からと思っていたのですが、残念ながらこの話は先を望めそうにありませんね」
「あぁ、そうだな」
確かに家のつながりを持つために姻戚関係を結ぶのは一番簡単な方法ではある。
以前、口頭レベルで縁談を持ちかけられたことがあったが、その際にも断りを入れているし、昨日“初恋”が叶ったばかりのラインハルトは当然その気などない。
ラインハルトの答えにユーリがまたケッと悪態をついているが、やぶへびになるのは嫌なので、見て見ぬふりをすることにした。
「承知いたしました。あちらは乗り気だったのですが、こればかりは仕方のない話ですね」
「面識もないのに『乗り気』も何もあるのか?」
「閣下のお美しさはシン国でも評判ですから」
「どんな噂が立っているのか逆に恐ろしいね」
「とんでもございません。あちらはきっと気を落としますよ」
「それはそれは、謝罪に出向かねばならないかな?」
「いいえ、それには及びません。このお屋敷にウィロー家当主をお連れしたいと考えておりますのでその際にでも」
シン国からベラーブル王国までは陸路で三カ月、海路でも一カ月近くかかる。その遠路を国の要職を務めるウィロー家当主を動かすとなれば並大抵の話ではない。きっと昨日の件とは関係なく、以前からもうこの話は動いていたのだろう。その周到さに思わず感嘆のため息を吐きそうになった。
「全く、きみは本当に惜しい人材だよ」
「ありがとうございます」
「細かい話は後ほど詰めるとして、もうこんな時間だ。咲玖も誘って昼食にしよう」
部屋を出て咲玖のいる中庭へと向かう途中、高くなった日差しを浴びる整えられた木々が、段々と寒さを帯びてきた空気に揺れている。もう香る時期を終えた金木犀の生け垣の向こうに覗く黒髪が眩しい。その光に目を少し細め、立ち止まると、こちらに気が付いた咲玖は晩秋の空が温もるような柔らかい笑顔で手を振った。
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