56 / 71
56話 ジャスタの提案(レオンハルト)
しおりを挟むエリシアが役に立つからそばに置いているのか、そう聞かれて少し返答に困った。
俺がエリシアをそばに置いているのは、俺がエリシアを好きだからだ。
だけどその為にエリシアの知識を利用してるのも確か、エリシアを好きだと言うことはジャスタに話したくない。
あ、ジャスタはエリシアを俺の婚約者だと思ったままか?
「・・・そうだな、彼女は使えるし、見目もいいからな 」
俺はとりあえずエリシアの事は便利なコマと思ってるふうに答えた。
なのに、ジャスタは見透かすように覗き込む。
「あれ? 本気でそんなこと言ってる? 」
「・・・なんだよ? 」
「俺にはレオンハルトはエリシアを大事に思ってるように見えたけど? 」
「また、お前の先見の目かよ、さぁな、どうだろうな 」
ディアルドではエリシアを婚約者だと偽っていたからそう見るのが当たり前だろうけど、ジャスタは本質を見抜く奴だから、何となく違うだろうなと思われてると思ってた。現に、エリシアをめちゃくちゃ気に入ってたみたいだし、婚約者だと言ってる俺が居るのに遠慮がなかった。
あれは俺が本物じゃないと見抜かれていたんだと思う。
なのにちゃんと本質は見抜かれてたって訳だ。本当にジャスタの目は侮れない。
嘘が通じないんだから面倒臭い相手だ。
「ふーん、俺の能力を分かっててその反応をするんならそれでもいいけどさ 」
「なんだよ、その含みを持った言い方は 」
「レオンハルトがはっきりしないなら俺が貰っても問題ないよな? 」
「な、ある! 」
思わず力いっぱい否定すると、ジャスタはクスクスと笑う。
「やっぱりエリシアは特別なんだろ? 」
可笑しそうに笑うジャスタに、乗せられたと自覚する。普段なら絶対冷静に対処するのに、1つ年上のジャスタは俺を崩すのが上手い。だから、留学してる間も余り関わらないようにしてたのにな。
こいつが皇帝になったら凄い事になりそうだ。みんな掌で転がされるんじゃないだろうか。
「・・・・・・俺がそう思ってるだけで彼女は知らない 」
「だろうな、じゃないとあんな顔はしない・・・ 」
「あんな顔? 」
「いや、こっちの話だ、それより提案がある 」
「提案とは? 」
何か意味深な事を言った気がするけど、提案と言われるとそっちに乗らない訳には行かない。
上手くそらされたな・・・
「うちとディアルドとお前んとこで三国同盟を結ばないか? 」
またサラッととんでもないことを言ってくれる。
「理由は? 」
「さっきも言ったけど、なんか企んでるだろ、それもディアルドと共同で、そこに俺も噛ませろ 」
ジャスタはさも当然のように言うけど、何を言ってんだ。
「エリシアの計画が分かってるから来たのか、これはアイスバーグとディアルド間の事業だ、まだ成功もしていない 」
「ああ、分かってる。けどそのまだ成功もしていないものに対してあいつらは警戒しているんだろ? エリシアも可哀想に・・・ 」
「ちょっと待て、何でそこでエリシアが出てくるんだ? 」
何でそこでエリシアが可哀想だという展開になるのか、こいつはどこまで知ってるんだ?
「エリシアが狙われてるのは知ってる。つい一昨日も危ない目にあった所だろ 」
「・・・何でそんなことまで知ってるんだよ 」
ジャスタが今日のこの時間、夕刻ここに到着したのなら昨日は移動中だったはず。
何処でそんな情報を手に入れたんだ? それとも一昨日にはすでに王都に入っていて俺たちの事を探っていたのか?
「エリシアの兄のジルフレアが血相変えて城に飛び込んで行く姿を見たらなんかあったと思うだろ 」
口角を上げてにやりと笑いながら話すジャスタ。
「見てたのかよ 」
「ああ、俺の密偵がな、今この城の中に居るのも知ってるぞ 」
「優秀な密偵を持ってるな 」
嫌味も込めて褒めたのに、ジャスタは余裕の表情で俺を見る。
「お前もな 」
「どういう事だ? 」
「一昨日のエリシア誘拐の犯人、もう掴んでるんだろ? 」
「・・・・・・ジャスタは俺の周辺の事、何処まで掴んでるんだよ 」
何でも知られていそうで怖い。
「エリシアを誘拐したのはラグマドルだって事くらいしか知らないぞ 」
なるほど、だいたいジャスタの思惑が読めてきた。
エリシアが誘拐されたのは偶然だろうけど、それを好機として俺のところに来たのは間違いない。
このタイミングの良さももしかして先見の目の能力か?
0
お気に入りに追加
1,425
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】転生したらモブ顔の癖にと隠語で罵られていたので婚約破棄します。
佐倉えび
恋愛
義妹と婚約者の浮気現場を見てしまい、そのショックから前世を思い出したニコル。
そのおかげで婚約者がやたらと口にする『モブ顔』という言葉の意味を理解した。
平凡な、どこにでもいる、印象に残らない、その他大勢の顔で、フェリクス様のお目汚しとなったこと、心よりお詫び申し上げますわ――
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
悪役令嬢の残した毒が回る時
水月 潮
恋愛
その日、一人の公爵令嬢が処刑された。
処刑されたのはエレオノール・ブロワ公爵令嬢。
彼女はシモン王太子殿下の婚約者だ。
エレオノールの処刑後、様々なものが動き出す。
※設定は緩いです。物語として見て下さい
※ストーリー上、処刑が出てくるので苦手な方は閲覧注意
(血飛沫や身体切断などの残虐な描写は一切なしです)
※ストーリーの矛盾点が発生するかもしれませんが、多めに見て下さい
*HOTランキング4位(2021.9.13)
読んで下さった方ありがとうございます(*´ ˘ `*)♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる