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39話 クリスティーナ様と私
しおりを挟む「失礼致します。クリスティーナ様、お久しぶりです。お待ち頂いていたとの事、大変お待たせ致しまして申し訳ございません 」
私は部屋に入るとまず、深々と頭を下げて待たせたことへの謝罪の言葉を述べた。
「待ったことはいいのよ、突然押しかけたのは私なのだし、でも、私がなぜここへ来たのかお分かりよね? 」
クリスティーナ様の言葉遣いは丁寧だけれど、声のトーンが低い。怒ってるわよね・・・
「はい、その件も合わせて詳しくお話をさせて頂きたいのですが、差し支えなければ私の部屋でゆっくりとお茶をしながらお話をさせていただけませんか? 」
「お話を楽しむ気分では無いのだけど、あなたも今帰った所ですものね、分かりました。部屋へ案内してくださいな 」
「ええ、どうぞこちらへ 」
私はクリスティーナ様を自室に案内してテーブルセットに腰掛けるよう促した。
「クリスティーナ様、少しだけお待ち頂いてもろよしいでしょうか? 旅の衣装のままですので、着替えをさせて頂きたいのです 」
「ええ、いいですわ、疲れておいでなのに申し訳ないわね 」
クリスティーナ様は優雅に答えているけれど、何処か剣のある声色だわ。やっぱり怒ってるわよね・・・
「ありがとうございます。ではしばらくおくつろぎください 」
私は隣の部屋で着替える為に部屋を移った。
しばらくして部屋に戻ると、クリスティーナ様は椅子に腰かけて出されたをお茶を飲んでいた。
「クリスティーナ様、お待たせ致しました 」
「いいのよ、それよりも、私が何故ここに来たのか、分かっていらっしゃるわよね? 」
「はい・・・エミリー、席を外してちょうだい 」
私は話しやすいよう、二人になる為、エミリーを部屋から追いだした。
エミリーが、部屋を出たのを確認してからクリスティーナ様に向き直る。
「これで話しやすくなりました。クリスティーナ様、私の話を聞いてください 」
「ええ、そのつもりだけど、私も先に言いたいわ、今回はレオンハルト様とご旅行に出かけていたそうじゃない、どういう事? 」
「クリスティーナ様、本当にごめんなさい、でも、私とレオンハルト様は疑われるような関係ではありません 」
私はクリスティーナ様の前まで行って深く頭を下げて謝罪した。
「ふーん? 何も無いのに二人で旅行なんて行くかしら、私に協力するって言ってたのは嘘なんでしょ? 」
そう思われても当然のことをしたのだから何を言っても言い訳にしか聞こえないのは分かってる。私がクリスティーナ様ならそう思うもの。
「本当に、何も無いんです。私はレオンハルト様の事は好きにはなりませんから安心してください 」
「そう言われて信じられる訳無いじゃない 」
「そうよね・・・どうしたら信じてもらえるかしら 」
怒ってるクリスティーナ様を見ると、クリスティーナ様は視線を逸らす。
「・・・私も、これじゃあゲームの中のクリスティーナになってしまうからあまり言いたくはないのよ 」
気まずそうに、少し声のトーンを落として話し出すクリスティーナ様。
そうか、クリスティーナ様は元々ゲームの中ではヒロイン(私)を虐めて断罪される立場。この世界では結末を知ってるクリスティーナ様が私を虐めない事でレオンハルト様と結ばれるのに、私に酷いことを言えば虐めてる事になっちゃうのね、クリスティーナ様もどうしていいか分からないんだわ。
「クリスティーナ様はレオンハルト様の事が本当に好きなのね 」
ふと漏れた私の言葉に、反応してクリスティーナ様は俯く。
「・・・私も、レオンハルト様とそんなに話したことは無いんだけど、前世からレオンハルト様の事は好きで、こんな物語の主人公になれたらいいなって思ってたの。それがまさか転生という夢のような出来事で叶うなんて、期待するわよね? 小説のイメージでレオンハルト様と一緒になれるのだと思っていたのよ、だけど全然上手くいかないじゃない? 私があなたに詰めよればゲームの中の悪役令嬢になってしまうし・・・私はどうすればレオンハルト様に認めてもらえるのかしら・・・ 」
独り言のように思いを語るクリスティーナ様に自分を重ねてしまう。
「私も同じことを思ってたわ。私はクリスティーナ様やレオンハルト様に関わらず生きていきたかったのに、結局関わることになってしまって、この世界はゲームの世界なのか、小説の世界なのか分からなくなっていたの。どっちにしても、メインキャラにかかわらなければ安全だと思ってたのに、レオンハルト様と旅行をするなんて、私もつい釣られたとはいえ、馬鹿な事をしてしまったと後悔してるの 」
「釣られた? 」
私の言葉に食いついて私を見る。
「ええ、私の好きな物を目の前にぶら下げられて、条件として出されたのがディアルド行きだったの 」
「それ、どういう事? 」
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