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12話 レオンハルト様、それは・・・
しおりを挟む・・・今、なんて言った?
「君のことが好きなんだ 」
相変わらず頬杖をつきながら優しい眼差しでもう一度繰り返すレオンハルト様。
ちょっと待って、これは一体どういう状況?
「またまたご冗談を、からかわないでくださいよ 」
なんだかよく分からないけど、この状況はまずい。イケメンにこんなこと言われたら勘違いしそうになるけど、こんな簡単に好きって言っちゃうとか、絶対あちこちでそんなこと言ってるんだわ。言い慣れてる感じだもの。
それに、私はあなたに関わる気は無いのよ。
とはいえ、突然の告白に動揺してあたふたと挙動不審な動作を取ってしまう。
そんな私を見て、レオンハルト様はくすくすと笑う。
「ごめん、冗談だよ 」
「は? 」
また思いもよらない発言に、私の思考は暫く停止する。
・・・・・・冗談? からかったって事?
思考が回復するとレオンハルト様の言葉を冷静に解析している自分がいた。
時間にしてわずかな時間だったと思うけれど、レオンハルト様を見ると、相変わらずの柔らかな笑顔で私を見つめている。
「ごめんね、君があまりにも面白くて・・・じゃなかった、可愛くて 」
レオンハルト様・・・面白いって本音言っちゃってますよ。これは怒っていい所よね!
「面白いってどういう事ですか! 」
「ぷっ、いや、ごめん、つい 」
また笑った、ついって何!?
「レオンハルト様! 」
「ああ、ごめん、本題に入るよ 」
「本題? 」
レオンハルト様は目尻に溜まった涙を細くて長い綺麗な指で拭いながら真顔に戻る。
涙が出るほど笑われた私って・・・
「エリシア嬢は本を読むのが好きだよね 」
「ええ 」
レオンハルト様が、何故それを知ってるのか少し気になるけど、多分お兄様にでも聞いたんでしょうね。
「閲覧禁止区域の本は面白かった? 」
「はい、まだまだ読みたいものが沢山ありますわ 」
「そんなに読みたいものが沢山あった? 」
「ええ、この部屋の本を全て読んでみたいと思いましたけど、今日一日では全然足りませんでしたわ 」
本の話をされてつい浮かれてそう言った後で気が付いた。これって、なんか誘導されてる?
何となくそんな気がしてレオンハルト様を見ると、レオンハルト様は意味ありげにくすっと笑う。
「じゃあ、明日も来ていいよ 」
「え? 本当ですか? 」
私は思わず立ち上がってレオンハルト様に詰め寄っていた。
「うん、なんならフリーパスをあげようか? 」
フリーパス? なんていい響き!
「本当ですか? 嬉しいです!・・・・・・けど、そんな美味しい物を前にぶら下げる理由は何ですか?何かあるんですよね? 」
めちゃくちゃ嬉しいけど、そんな美味しい話がそうそう転がってる訳が無い。
思わず浮かれてしまったけれど、何か裏があるに違いない。そう思ってレオンハルト様を疑いの眼差しで見る。
「ふふっ、エリシア嬢のそういう所好きだよ 」
「は? 」
またこの人は何を言っているのかしら・・・
「エリシア嬢の勘のいい所、好きだな 」
「・・・てことは、やっぱり何かあるんですね? 」
「うん、何時でもここに来て好きなだけ本を読んでもらっていい代わりに、私のお願いを聞いて欲しいんだ 」
お願い・・・とても嫌な予感しかしない。聞くべきじゃない。
「お願い・・・とは? 」
「実は近々隣のディアルド王国の第三王子の結婚式に国の代表として出席することになっているんだ 」
「まぁ、そうなんですね 」
それと何か関係があるのかしら?
「そこでこのフリーパスと引き換えにお願いなんだけど、エリシア嬢にも私と一緒にディアルド王国に行って欲しいんだ 」
そう来たか、でも、一緒にって事は侍女が足りないのかしら? それくらいなら・・・いやいや、それでもレオンハルト様の近くに居ることには変わりないのよ、クリスティーナ様になんと言われるか、せっかく仲良くなったのに、疑われる行動は避けなくちゃ。
「レオンハルト様、申し訳ございません。そのお申し出はお受け出来ません 」
ここの本を自由に読めるのはとっても魅力的なんだけど、私の人生と天秤にかけたらどっちが優先かなんて分かりきってる。・・・とってもとっても後ろ髪引かれるんだけど、最後にギャフンされるのは嫌だもの。
危険には近寄らないのが一番なのよ!
「これ、特別に作ったからエリシア嬢に限りここの本を持ち出す権利も加えてあるんだけどな・・・ 」
「え? 持ち出してもいいのですか? 他な方が見るかもしれませんよ? 」
「エリシア嬢はそんな事はしない。真面目な性格だって私は知ってるよ、それに、大切な知識を軽々しくひけらかしたり、言いふらしたりする人じゃないと思ってる。だからここの閲覧も許可したんだよ 」
レオンハルト様のその私への信頼は何なのかしら、信用してもらえるのは嬉しいし、持ち出しもいいと言われると、ますます欲しい・・・
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