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70話 クリス倒れる
しおりを挟む僕はギルに、ギルが居なくなってからのことを話した。
どうやって一度戻ったのかとか話すと、ずっと一緒に居てくれたクラウス様の事を話すことになったんだけど、何も言わずに聞いてくれた。
「クラウス様・・・シアをずっと独り占めしてたのか・・・本当に何も無かったのか? 」
何度も聞くギルに、僕は何度も答える。
「うん、大丈夫、何も無かったよ。」
「俺が落ちなければ・・・」
「もう過ぎたことを悔やまないで、こうやってもう一度会えたんだから、クラウス様に感謝しないと。」
「・・・そうだな、シアを守ってくれたことは感謝しかないな。」
そう言って僕の頭を撫でながら僕に微笑む。
やっぱり、ギルは僕の頭を撫でるの好きだな。
そんで、いつの間にかギルに頭を撫でられることに慣れて、僕も好きになってたみたい。
ギルに頭を撫でられると嬉しい。
嬉しくて、恥ずかしくて、ハニカミながらギルを見ると目が合った。
するとギルはまた僕に軽くキスをする。
そして、僕を見つめて囁いた。
「俺のレティシア。」
ギルの言葉にキュンとなる。
何? ギルどうしたの? 想いが通じあった途端、メロメロ? 甘々なんだけど!
僕の心臓持たないよ!
「・・・動けないのがもどかしいな・・・」
そういうギルに、僕は今ギルが動けなくて良かったと少し思ってしまう。
これ以上ギルに甘々な事言われたり、されたりすると、本当に僕の心臓持たないよ・・・
「照れてるシア、可愛いな。」
ギルは金色色の瞳を細めて微笑む。
「ギル! 僕をキュン死させる気?! そんなにいっぱい甘いこと言われると、僕死んじゃう! 」
僕は真っ赤になって訴えてるのに、ギルは平然と僕を見る。
・・・なんか負けてる気がして悔しい・・・
「それは困るな・・・でも、今までずっと我慢してたんだ、もう遠慮しない。」
ギル、その言葉がもう無理なんだけど・・・!
そんなやり取りをしていると、ドアが鳴った。
「クリスが迎えに来てくれたのかな? 」
僕がドアを開けるとやっぱりクリスが立っていた。
「2人でお楽しみのところごめんね、そろそろ時間なんだけど、大丈夫? 」
クリスはそう言いながら部屋に入ってきた。
「クリス、俺をもう少し動けるようにしてくれないか? 」
クリスが入ってきたのを見て、ギルがクリスに言う。
動けるようにする? クリスに出来るの?
「・・・ギルは今はそれでいいんじゃない? シアを抱こうなんてまだ早いからね! 」
「なっ! 何言ってんの?! 」
ギルがそんな事するわけないじゃん!
クリスってば、なんて恥ずかしいことを言ってくれるんだ!
「ちっ、クリスにはお見通しか。」
え? ギル、今なんて言った?
なんかぼそっと呟かなかった??
「ギルはそのまま動けない方がシアの為には良さそうだよね。」
そう言いながらクリスはギルに近づくと、ギルの足に手を置いた。
「とは言え、もう少し動けるようにならないと可哀想だから、僕の魔力の限界まで力を使ってあげる。」
「それは助かるけど・・・お前大丈夫なのか? 」
「うん、もう少ししたらレイが来るから、レイから魔力を貰えば大丈夫だよ。」
クリスはにっこり笑いながらギルの足に手を置いたまま黙り込んだ。
さっきからなんの話しをしてるんだろう?
「あの・・・クリスは何してるの? 」
「ああ、クリスに治癒魔法を掛けてもらってるんだ。少しずつしか治らないけど、随分良くなったんだ、クリスは凄いな。」
「え? 治癒魔法? クリスそんな事出来るんだ。本当に凄い! 」
「・・・そんなに褒めても何にもないよ、僕ももっと早くギルを治してあげられたらいいんだけど、僕の力じゃ少しずつが限界。・・・とりあえず、シアの為に限界まで魔力使ったから、レイが来るまで待っててね・・・」
そう言うと、クリスはそのままベッドに倒れ込んだ。
「クリス?! 」
ベッドに倒れ込んだクリスを見ると、意識を失っている。とても顔色が悪い。
魔力を限界まで使った?
「え? ・・・クリスはどうなったの? 大丈夫なの?? 」
心配でギルに尋ねる。
「うん、クリス、無理させてごめんな、おかげで随分足が動くようになった。」
ギルは気を失ったクリスに謝ってから僕の方を見る。
「シア、クリスが、レイがすぐに来るって言ってたから、クリスは大丈夫だ。前にも一度、俺に魔力を使いすぎてこうなった事がある。あの時はすぐにレイが来なかったから焦ったけど、今は大丈夫だ。」
ギルがそう言うなら大丈夫なんだと思うけど・・・レイってクリスの恋人だよね?
レイが来ると大丈夫なの?
何でだろう?
「シア、クリスは足りない魔力をレイに貰ってるらしいんだ。」
僕の疑問を察知したのか、ギルが疑問に答えてくれる。
「そうなんだ、魔力って分け与えることができるんだね。」
それはわかったけど、クリスの顔色は悪い。
レイ、早く来てくれないかな・・・
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