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17話 飛竜
しおりを挟む「ちょっと! 俺が言っても足でまといになるだけだよ! 」
魔術も使えない俺が行っても殺られるのがオチだ。
先を行くイリヤに訴えかけたけど、俺の言葉は聞き入れて貰えない。
「居ないよりマシでしょ、なんかの役に立つかもしれないじゃない、とりあえず急ぐわよ! 」
山に向かって飛ぶ飛竜を追いかけて馬に鞭打つイリヤには俺が魔術の使えない能無しだって分かってないようだ。
旅の間にその話はしたんだけどな・・・
だんだんと近づく山を見ると、あちこちに飛竜が飛んでいる。
完全に飛竜の巣だな、こんな所に3人で突っ込むとか、無謀すぎるだろ。俺ここで死んだな。
そんな事を思いながら山を登り始めると、俺たちに気づいた何頭かが向かってくる。
イリヤはそれを事も無げに撃ち落としながら、スピードを緩めることなく進んでいく。
後ろから見てて改めて思う。
イリヤはめちゃくちゃ強い。
弓の腕は世界一なんじゃないだろうかと言うくらいに全てが当たる。
「イリヤ、凄いな 」
「ちょっ、こんな所で褒めても何も出ないわよ! 」
俺の何気ない言葉に、イリヤは顔をほころばせながらも眉間にはシワを寄せて叫ぶ。
うん、嬉しかったんだ。だけど褒められ慣れてないんだな。面白い。
「何ニヤニヤしてるのよ! 」
イリヤの新しい一面を見て顔をほころばせていると、イリヤがまた照れ隠しに叫ぶ。
「うん、イリヤって可愛いなって思って 」
「にゃ、にゃに言ってんの! 大人をからかうんじゃないわよ! 」
にゃ?イリヤがどんどん真っ赤になって空回りして行く。
飛竜を射る矢に力が入らず落ちる・・・・・・と思ったら矢は途中で勢いを取り戻して飛竜目掛けて飛んで行く。
え? 何今の。そう思ってマリンを見ると、俺と目が合ってにっこり微笑んだ。
・・・あー、なるほど、矢をコントロールしてるのはマリンだったのか。
「マリンも凄いんだね 」
思った事を素直に言うと、マリンも顔を赤らめて目を伏せてモゴモゴと呟く。
「あ、ありがとうございます 」
うーん、みんな褒められ慣れてないのか?
ちょっと反応が面白い。
「カインも凄いわね 」
お返しと言わんばかりにマリンが社交辞令をくれる。だけど何が凄いのかさっぱり分からない。
「何が? 」
問い返す俺にマリンは柔らかな微笑みで返す。
「足でまといになるだけだって言いながらもちゃんと来てくれたわ。途中で引き返す事だって出来たのに 」
「そりゃ、俺だって戻れるなら戻りたいよ! だけどイリヤとマリンだけを行かせる訳には行かないだろ? 」
正直実力のある2人に付いて行くのは余計邪魔になるけもしれないけど、俺だけ途中で引き返すなんて、そんな事出来るわけない。
「優しいのね 」
「優しいと無謀は違うと思うけどね 」
くすくすと笑うマリンに釣られてイリヤも笑う。
まぁ、ここまで来たんだ。1匹くらいは倒してやるさ。
3人の間で和やかな空気が流れる中、本拠地に到着した。
来る途中から何匹もイリヤが射落としていたけど、ざっと見てまだ100匹以上いる。
正直足が竦むけど、飛竜の足元に人がいるのが見えて足が前に出た。
あれは多分さらわれた村の人達だ。まだ生きてる。
「カイン、マリン、行くわよ! 」
その光景を見てイリヤも歩を進める。
向こうも俺達に気がついて襲いかかってくるのを迎え撃つ。
イリヤは弓に強化呪文を掛けると早打ちで弓を連打するので、あっと言う間に飛竜の数が減って行く。
「凄い・・・ 」
「カイン! あの人達を助けて! 」
イリヤの凄さに圧倒されているとイリヤが叫ぶ。その声に前を見ると捕まっていた人達が俺たちに気を取られた飛竜から逃げ出して来ていて、その後を飛竜が追っている。
俺はイリヤが開けてくれた隙を通って村人達の元へ駆けつける。
「みんな、こっちです! 俺の後ろへ早く!」
俺に気が付いて向かって来る村人達とは逆の方向に向かって走って行って村人達の最後尾で飛竜に立ち向かった。
無謀だとか考える余裕もないくらいにがむしゃらに飛竜に剣を振るった。だけど、やっぱり俺一人では限界だ。俺を掴まえようとする脚は振り払えても致命傷を与える事が出来ない。
ダメだ。このままじゃ殺られてしまう。
そう思った時、横からの攻撃に気付くのが遅れて蹴り飛ばされた。俺は転がりながらも体勢を立て直して立ち上がる。当たった飛竜の足の爪が肉を割いて左腕から血が流れていた。だけどそんなこと構っていられない。そう思った刹那。
「カイン!! 」
イリヤが叫ぶのと、飛竜にもう一度蹴り飛ばされるのが同時だった。
そして大きく飛ばされた俺はその先にあった穴の中へ落ちて行った。
ーーー最悪だ。俺の人生ここで終わりかよ。
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