25 / 33
㉕ユリアンさんの決断
しおりを挟む「今日はあまり食べないんだな。」
朝食を食べながらグレンが俺を見て尋ねる。
そういうグレンは相変わらず何も食べてないんだけどね。
「お菓子沢山もらったのがあるから食べ切りたいし、ご飯は控えようと思って。」
俺が答えると、グレンは肘を肘掛に乗せて手を顎を乗せるお決まりのポーズで俺を見る。
「両方腹いっぱい食べればいいじゃないか。」
「そんなに食べたら太るじゃん!」
「シンラは痩せすぎだ。もう少し太れ。」
「えー?ヤだよ!」
「もう少し肉付きがいい方が俺の好みだ。」
そう言ってグレンは俺の胸あたりを眺める。
このエロ魔王!
「酷い!それってセクハラ発言!」
「セクハラ?何だそれは?」
その世界にはセクハラって言葉は無いのか?
「言葉の暴力!てか、俺グレンとそういうことする気ないからね!関係ないじゃん!」
グレンってば、また俺抱くとか言い出しそう。
「じゃあ、俺とユリアン、どっちとならいい?」
このエロ魔王は朝から何を言ってるんだ。
「俺はどっちにも抱かれる気は無いの!」
もう、ユリアンさんも困ってるじゃん!ってユリアンさんを見ると、少し寂しげな表情をしてる。
どうしたのかな?
「ほら、ユリアンも寂しそうだろ?ユリアンならシンラの初めてを譲ってやってもいいぞ?」
俺が、ユリアンさんの表情を見て心配していると、グレンが横から話す。
「何でそんな話になるんだよ!俺とユリアンさんはそんな関係じゃないよ!」
もう!グレンの頭の中はそれしかないの?
やっぱりエロ魔王だ。
「魔王陛下が譲って下さると言うなら喜んで受けますが、本当にいいのですか?」
いやいや、ユリアンさんまで何乗っちゃってるの!そこ乗らなくていいから!
「冗談ですよ。シンラは本当に可愛いですね。」
俺がじーっとユリアンさんを睨むと、ユリアンさんはにっこり笑って返す。
そんな冗談言わなくていいから!
見ると、二人はくすくすと笑っている。
楽しいなら良いんだけどさ、俺そんなにからかいやすいのかな。
「ねぇ、ユリアンさん、俺ってからかいやすい?」
食事の後、部屋に向かいながらユリアンさんに尋ねる。
すると、ユリアンさんはくすくすと、笑いながら俺の頭をなでる。
「そうですね、シンラはいつも真剣に返してくれるので楽しいです。」
そう言ったあと、また少し寂しそうな顔をする。
「ユリアンさん?どうかした?」
俺が覗き込むと、ユリアンさんは足を止めて俺に向き直る。
「シンラ、私はそろそろ家に戻ろうと思います。」
「ん?仕事?送ってけばいい?」
「いえ、送って頂いたあと、迎えは要りません。」
俺はユリアンさんの言葉の意味が飲み込めず、しばらく首を傾げて固まる。
「え?どういう事?」
「シンラが心配で付いてきてしまいましたが、魔王陛下も悪い人ではなさそうですし、シンラを任せても、シンラを泣かせるようなことはしない。大丈夫だと判断しました。なので、私はそろそろ家に帰ろうと思うのです。」
ユリアンさんの言葉を聞いて、俺はユリアンさんの胸にしがみついていた。
「ヤダ!ユリアンさんと離れるなんて嫌だ!ずっとそばにいてよ。」
「シンラ・・・」
ユリアンさんは俺を優しく抱きしめる。
「シンラ、兄はいつかは妹離れをしなくてはならないんですよ。」
そう言われて、ふと気がつく。そうだ、ここにユリアンさんを縛り付けてたら、ユリアンさんが幸せになれない。
恋愛も、結婚も、俺が奪っていいはずない。
「シンラの不安が消えるまで、もうしばらくは居ますが、いずれ居なくなることは分かっていてくださいね。」
ユリアンさんの諭すような言葉に、納得出来ない俺と、受け入れようとする俺とが頭の中で戦っているようだった。
しばらくして、俺は頭だけをこくりと下げて分かったと表した。
それを見てなのか、ユリアンさんはぎゅっときつく俺を抱きしめた。
0
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる