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⑪準備

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「シンラ、本当にすみません。貴方に頼るしかないのが申し訳ない。」

ユリアンさんが悲しそうに俺を見る。

「もういいよ、ユリアンさんも、俺がどうなるか知ってたから俺の事を、命令に背いてまでずっと匿ってくれてくれてたんでしょ?俺がいることでユリアンさんはずっと苦しんでたんでしょ?」

俺の言葉に、ユリアンさんは目を見開いて息を飲む。

「なら、ユリアンさんが謝ることない。ユリアンさんは俺を守ろうとしてくれたんだもん。」

そう言って、ユリアンさんを見てにっこり微笑む。

「ありがとう。」

「シンラ・・・貴方は聡い子ですね。私の気持ちまで汲んでくれるとは・・・」

そう言ってユリアンさんは俺の頭を撫でる。

わーい。賢いって褒められた。
ユリアンさん、本当にお兄ちゃんみたい。

「シンラ、この事は謝らせてください。シンラの気持ちも考えず、勝手に明日の朝行くと決めてしまった事、申し訳ございません。」

改めてユリアンさんが頭を下げる。

「そんな事いいよ。俺も決めたら早く行動しないと、決心が鈍りそうだし。今なら魔王をぶっ飛ばしてやる!って勢いで行けそうなんだ!」

マジぶっ飛ばしてやりたい。
魔王の奴、女の子をなんだと思ってるんだ!酷すぎる!

「ふっ、シンラは強いですね。」

ユリアンさんが和やかな表情になる。

「それよりも、ユリアンさんまで行く必要ないのに、どうして行くなんて言ったの?」

「私がシンラの為に行きたいと思ったからです。気にしないでください。」

なんか吹っ切れたように微笑むユリアンさん。決心は固いようです。

「分かった。ユリアンさんが居てくれた方が俺も心強い。ユリアンさん、俺、お腹空いた。」

「そうですね、食事にしましょう。食べたら湯船にゆっくり浸かって、明日のために早く寝ましょう。寝不足気味では魔王も吹っ飛ばせませんからね。」

ユリアンさんがウインクしながらクスクスと笑う。

「うん、そうだね!」

ここの食事はめちゃくちゃ美味しいけど、魔族のご飯はどんななんだろう?不味いとやだなー。
今のうちにたくさん味わっとこう。

沢山食べて、その後お風呂を用意してもらって、メイドさん達に手伝ってもらってお風呂に入った。
湯船に浸かりながら、ふと自分の体を見る。華奢な体。胸もほどほど。
詐欺師の神様・・・どうせならボンキュッボンにしてくれても良かったのに・・・と冗談っぽく想像する。
こんな身体じゃ魔王も襲ってこないかもね。
それはそれで良かったのか!
と、華奢な身体に何故か納得してしまった。

長湯して部屋に戻ると、1度出て行ったユリアンさんが戻って来ていた。
服を着替えてるし、髪がサラサラになってるからユリアンさんもお風呂に入ってきたのかな?

「シンラ、今夜は眠れそうですか?」

ユリアンさん、ひょっとして、俺の事心配して戻ってきてくれたのかな?

「うん、大丈夫だよ。」

ちょっと怖いけど、ユリアンさんが一緒に来てくれるって思うと安心出来る。

「では、おやすみなさい。また明日。」

「うん、おやすみなさい。」

ユリアンさんは俺の顔を見てほっとしたのか、にっこり微笑んでから出て行った。


明日の朝になると、魔王の元へ向けて出発だ。ユリアンさんが匿ってくれていたおかげで、魔法の練習も出来た。実践をやった事がないのは不安だけど、俺の結界は他の魔法を弾く効果もあるって分かった。
ある意味、この世界に来てから十日間猶予を貰ったことで、魔王に対する準備が出来たのかもしれない。
そのまま何も分からず連れていかれてたら本当に魔王の餌食になってた可能性だってある。

ユリアンさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいだよ。











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