11 / 33
⑪準備
しおりを挟む「シンラ、本当にすみません。貴方に頼るしかないのが申し訳ない。」
ユリアンさんが悲しそうに俺を見る。
「もういいよ、ユリアンさんも、俺がどうなるか知ってたから俺の事を、命令に背いてまでずっと匿ってくれてくれてたんでしょ?俺がいることでユリアンさんはずっと苦しんでたんでしょ?」
俺の言葉に、ユリアンさんは目を見開いて息を飲む。
「なら、ユリアンさんが謝ることない。ユリアンさんは俺を守ろうとしてくれたんだもん。」
そう言って、ユリアンさんを見てにっこり微笑む。
「ありがとう。」
「シンラ・・・貴方は聡い子ですね。私の気持ちまで汲んでくれるとは・・・」
そう言ってユリアンさんは俺の頭を撫でる。
わーい。賢いって褒められた。
ユリアンさん、本当にお兄ちゃんみたい。
「シンラ、この事は謝らせてください。シンラの気持ちも考えず、勝手に明日の朝行くと決めてしまった事、申し訳ございません。」
改めてユリアンさんが頭を下げる。
「そんな事いいよ。俺も決めたら早く行動しないと、決心が鈍りそうだし。今なら魔王をぶっ飛ばしてやる!って勢いで行けそうなんだ!」
マジぶっ飛ばしてやりたい。
魔王の奴、女の子をなんだと思ってるんだ!酷すぎる!
「ふっ、シンラは強いですね。」
ユリアンさんが和やかな表情になる。
「それよりも、ユリアンさんまで行く必要ないのに、どうして行くなんて言ったの?」
「私がシンラの為に行きたいと思ったからです。気にしないでください。」
なんか吹っ切れたように微笑むユリアンさん。決心は固いようです。
「分かった。ユリアンさんが居てくれた方が俺も心強い。ユリアンさん、俺、お腹空いた。」
「そうですね、食事にしましょう。食べたら湯船にゆっくり浸かって、明日のために早く寝ましょう。寝不足気味では魔王も吹っ飛ばせませんからね。」
ユリアンさんがウインクしながらクスクスと笑う。
「うん、そうだね!」
ここの食事はめちゃくちゃ美味しいけど、魔族のご飯はどんななんだろう?不味いとやだなー。
今のうちにたくさん味わっとこう。
沢山食べて、その後お風呂を用意してもらって、メイドさん達に手伝ってもらってお風呂に入った。
湯船に浸かりながら、ふと自分の体を見る。華奢な体。胸もほどほど。
詐欺師の神様・・・どうせならボンキュッボンにしてくれても良かったのに・・・と冗談っぽく想像する。
こんな身体じゃ魔王も襲ってこないかもね。
それはそれで良かったのか!
と、華奢な身体に何故か納得してしまった。
長湯して部屋に戻ると、1度出て行ったユリアンさんが戻って来ていた。
服を着替えてるし、髪がサラサラになってるからユリアンさんもお風呂に入ってきたのかな?
「シンラ、今夜は眠れそうですか?」
ユリアンさん、ひょっとして、俺の事心配して戻ってきてくれたのかな?
「うん、大丈夫だよ。」
ちょっと怖いけど、ユリアンさんが一緒に来てくれるって思うと安心出来る。
「では、おやすみなさい。また明日。」
「うん、おやすみなさい。」
ユリアンさんは俺の顔を見てほっとしたのか、にっこり微笑んでから出て行った。
明日の朝になると、魔王の元へ向けて出発だ。ユリアンさんが匿ってくれていたおかげで、魔法の練習も出来た。実践をやった事がないのは不安だけど、俺の結界は他の魔法を弾く効果もあるって分かった。
ある意味、この世界に来てから十日間猶予を貰ったことで、魔王に対する準備が出来たのかもしれない。
そのまま何も分からず連れていかれてたら本当に魔王の餌食になってた可能性だってある。
ユリアンさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいだよ。
0
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる