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⑨だからにえって何?
しおりを挟む「ユリアンさんはそんなことをする人じゃない!」
「マジか、こんな可愛い子を目の前にして我慢できるとか、ユリアン大丈夫か?」
そこ!なんの心配してるんだ?
お前が頭ん中おかしいんだろ!
「とにかく来てもらわないとダメなんだ。ユリアンが帰ってくる前に来てくれないとヤバい。」
兄が焦ったように急かす。
ああ、そっかー。ユリアンさん、負けたことないって言ってたもんね。
「そうだな、早くしないと帰って来ちまうな。」
チャラ男も我に返ったのか、また俺に手を伸ばしてくる。
「さあ、おいで!」
「嫌だよ!」
俺はまた手を交わしてソファーの後ろに逃げた。
「なんで行かなきゃ行けないの?」
俺の問いかけに、二人は顔を見合わせる。
「お城で偉い人が君を呼んでるんだ。来て貰えないか?」
「なんで?」
「君は選ばれた人間なんだよ。」
うん、そうだよ。だって神様に使命与えられてここに来たんだから。
それにしても、さっきから後ろで兄は何ブツブツ言ってんだろ?
「ユリアンさんが帰ってきて、行ってもいいか聞いてから考える。」
「そのユリアンが君を隠してたから困ってるんだ。」
ああ、そっかー、ユリアンさん俺の事知ってたのかー。でも何で隠してたのかな?外には悪い奴が居るって言ってたけど、それがこの人達なんかな?
そういえば、日に日にユリアンさんが困ったように俺を見てたのは俺を隠してたから?
何でそんなことしてたんだろう?
ユリアンさんが困るなら俺の事なんて隠さなくていいのに。
「キャプチャー!」
俺が考え事をしてるといきなり兄が手を俺に向けて叫んだ。
「ん?」
何かが結界に当たった気がした。
「今何かしたの?」
俺が首を傾げて兄を見ると、兄は信じられないという表情で俺を見ている。
「なぜ捕縛が効かない!」
あ、なんか俺を捕まえようとしてたっぽい。さっきからブツブツ言ってたのは呪文を編んでたんだ。なるほど!
あぶね、良かった。さっきこっそり俺の周りに結界張っといて。
「コイツ!いてっ!」
チャラ男も俺に飛びかかってきたけど、結界に弾き飛ばされた。
「なんだコイツ、何かしてやがる。」
何かって、結界だけど。知らないの?
「シンラ!!」
その時、ユリアンさんが部屋に駆け込んで来た。
「兄さん、ジョシュア!どういう事だ!私に仕事がやたらと回ってくると思ったら二人の仕業か!」
そう言いながら素早く俺の所にかけて来て俺の前に立ち塞がってくれる。
俺はユリアンさんが来る前に結界を解いた。
「シンラ、酷いことをされませんでしたか?」
「うん、大丈夫。」
俺はユリアンさんの顔を見てほっとしてふにゃりと微笑んだ。
その時、兄とチャラ男の頭からモワッと黒い何かが出て消えた気がした。
ん?なんだろう?気のせいかな?
「ユリアン、その子を連れていかないとどうなるか分かってるだろう?」
兄が話しかける。さっきの怖い顔が少し穏やかに見える。
「兄さん・・・分かっているんだけど、私にはどうしても出来ない!」
ユリアンさんが訴えかける。
なにが出来ないのかな?ユリアンさん辛そうなんだけど・・・
「それでも贄はこの世界の平穏の為に必要なんだ。大人しく渡してくれ。」
兄がまたにえって言う。にえってひょっとして俺の事?
「ねぇ、にえって俺の事?」
俺は誰に問うでもなくここにいる3人に問いかけてみた。
すると、ユリアンさんが顔を青ざめて俺を抱きしめる。
「シンラにそんな事はさせません!」
「なぁ、やっぱりユリアンそいつとヤッたのか?贄に手を出すとどうなるか分かってるよな?」
チャラ男が俺達を見て問いかけてくる。
「そんなことしてない!」
「じゃあ、何でそこまで庇うの?これ見つかったらユリアンは謹慎、降格間違いない。それだけで済めばいいけど、もっと重い刑の可能性もある。処刑かもしれないんだぞ?」
「それでも、私はシンラを守りたいのです。」
処刑?ユリアンさん、俺を庇ったら処刑されるかもなの?
そんな事俺やだよ!
「ユリアンさん、俺行くよ。ユリアンさんが処刑になるなんて嫌だ。」
俺が素直に行けばユリアンさんは助かるんだよね?どうせ魔王の所には行かないといけないんだし、生贄だろうが関係ない。俺は魔王と互角で戦えるはず。
「シンラ!それはダメです!」
ユリアンさんが力いっぱい反対する。
何で?俺をそこまで何で守ろうとするの?
「どうして?」
俺の言葉に、ユリアンさんは言葉をぐっと飲み込む。
なんか言えない事なの?
「あんたもユリアンを処刑にしたくないんだろ?なら俺達と来い。」
「ダメです!」
チャラ男の言葉に、ユリアンさんが即反応して、さらに俺をぎゅっと抱きしめる。
俺、どうしたらいいの?
「ユリアンは言いたくないようだけど、俺がユリアンが拒んでる理由を教えてやるよ。その代わり、どんな理由でも来るか?」
「シンラ!聞く必要はありません!」
そう言ってユリアンさんは俺の耳に両手を当てて聞こえないようにする。けど、聴こえるよ・・・
ユリアンさんがここまでして俺を守ろうとしてくれる理由、知りたい。
俺は耳を塞がれたままこくりと頷く。
「あんたは魔王に捧げる生贄だ。生贄となる女性は純潔が条件。だからあんたとユリアンが関係を持っちまうと、贄として使えなくなるんだよ。ユリアンもここまで大事なら自分のもんにしちまえばよかったのにな。どうせヤッてないんだろ?」
ヤッてるヤッてないって!俺そんな事一生する気ないし!俺は一生独身で生きてくんだからね!何でそんな下世話な話になるの?
そう思いながらも、俺はこくりと頷く。
ユリアンさんは紳士だからそんな事しないんだよ!
「シンラ、私と逃げましょう。」
チャラ男に話しの続きを促そうとしたらユリアンさんがこっそり小声で話しかけて来た。
「純潔なら条件は満たしてる。あんたは魔王に捧げられて、魔王の性奴隷になるんだよ。自分の身と、ユリアンの処刑、どっちを取る?」
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