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1話 さらわれた僕
しおりを挟む僕はクリストファー・ルイズウェル。7歳。
ルイズウェル侯爵家の長男として生まれた。
僕には双子の姉、レティシアがいる。
レティシアは活発で明るく、ちょっと鈍感で怖がりなところはあるけど、いつも僕を守ってくれる存在だ。
僕はそんなレティシアが大好きで、お喋りが苦手で引っ込み思案な僕は、レティシアを陰ながら守っていこうと心に決めていた。
そんなある日、レティシアの提案でお互いの服を入れ替えて、いつ気が付かれるか、ゲームをすることになった。
僕達は本当にそっくりな双子だったので、服を入れ替えると、自分でも鏡を見ているようだった。
ちょっとしたドキドキと、ワクワクに、くすくすと笑い合う2人を引き裂く出来事は、突然起こった。
魔物が現れ、レティシアを襲おうとしていたのだ。
僕は咄嗟にレティシアの前に出た。
魔物は前に出た僕を大きな手ではじき飛ばした。
僕は衝撃で飛ばされ、木にぶつかってダメージを受けた。
そんな僕を、魔物は拾い上げ、脇に抱えると走り去ってしまった。
そこで僕はあまりの痛みに気を失ってしまった。
薄れゆく意識の中で、レティシアの叫び声が聞こえていた。
レティシアが無事で良かった・・・
次に気が付くと、僕は魔物に抱えられたまま、魔物はまだ移動していた。
そして、洞窟へと入って行く。
・・・巣の中に連れ込まれたら僕はもう終わりだ・・・
成すすべもなく、力なく抱えられていると、魔物が立ち止まった。
とうとう、巣の中に到着してしまった・・・そう思った時、声が聞こえた。
「グリフ、その脇に抱えているものはなんだ? 」
人の声?
僕は顔を上げてその声の方を見た。
そこに居たのは、青い肌、尖った耳、赤い瞳の魔族だった。
グリフと呼ばれた魔物は、魔族に対して威嚇して吠える。
その叫び声に、僕は怖くなって声を出した。
「・・・たすけて・・・」
力なく発した言葉だったけど、僕の小さな声を聞き逃さず、助けてくれた手があった。
グリフの唸り声と、閃光が走った後、グリフは地面に倒れた。
僕はグリフが倒れる直前に、別の手に抱き抱えられていた。
何が起こったのか分からず、振り向くと、グリフは真っ二つになって転がっていた。
そして、僕を抱える腕は青い。
恐る恐る顔を上げて、手の主を見ると、肌は青いけど、白銀の髪に赤い、引き込まれそうな瞳、一目でイケメンだと分かる整った顔立ち、そして、とても背が高い。
年は・・・魔族はよくわからないけど、15~16くらいかな・・・まだ若そう。
だけど、魔物を一撃で倒した。
物凄く強いのかも・・・
「お前は・・・人間か? 」
その人は抱えた僕をじっと見て問いかけてきた。
「・・・うん」
僕は魔物から、今度は魔族に捕まってしまった。
僕はどうなるんだろう・・・
そう考えながら、極度の緊張と、魔物にやられた傷の痛みと、疲労から、また気を失ってしまった・・・
後で思うと、僕を抱える優しい手に、安心したのもあったんだろう・・・
気が付くと、僕はベッドに寝ていた。
「・・・ここは・・・どこだろう・・・」
起き上がると、傷の手当がしてあるのに気が付いた。
誰かが手当てしてくれてる。
・・・・・・誰?
僕が考えていると、ドアが開いて一人の人が入って来た。人・・・魔族だ。
この人は・・・僕を魔物から助けてくれた人?
「気が付いたか、気分はどうだ? 」
優しい声で話しかけてくる人に、僕は頷いた。
「ここは・・・?」
ここは何処だろう?
「ここは魔王城の中だ」
魔王城?
僕はもしかして魔族の住む世界に連れてこられたの?
でも、なんでお城の中にいるの?
「俺はレイグランド、レイでいい、傷は大丈夫か? 」
そう言われて、腕と肩から胸にかけて包帯が巻かれているのを見る。
「これは・・・レイが手当してくれたの? 」
魔物の手で弾かれた時に、爪で傷を負っていた。最初は吹き飛ばされて木にぶち当たった衝撃もあって、気を失ってたから痛みは感じなかったけど、一度気がついた時に、痛みでズキズキしてた。
「ああ、長い間放置されてたみたいで、ちゃんと治るかわかないが、とりあえず、消毒をして塗り薬は塗ってある。・・・お前は?」
レイは僕がいるベッドに腰掛けて優しく話しかけてくる。
魔族って怖いとばかり思っていたけど、この人は全然怖くない。
「僕は・・・クリストファー、クリスと呼んで、僕はどうなるの? 」
見たところ、監禁されてるようでもないし、縛られてもいない。
「クリスか、別にどうもしない。ただ、俺は魔族だ。人間のいる場所にお前を連れて行ってやることは出来ない」
「ここは・・・もしかしてだけど、あの洞窟を抜けた先? 」
レイが洞窟の奥から現れたってことは、洞窟は行き止まりではなく、どこかに抜けてたんじゃないか?
「そうだ、あの洞窟にはそこそこ強い魔物がいるから、お前では抜けることは出来ない」
・・・という事は・・・僕はレティシア達の元に戻れないの?
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