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⑯ラルフ様のお姉様

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エントランスまでの道すがら、ラルフ様が何故お客様が分かったのか説明してくださった。
道中はまた私の手を繋いだまま・・・

お客様が来たのがわかったのは、どうやら、ラルフ様はこの家の敷地に結界を張っているかららしい。自分が張った結界なので、結界を誰かが通り過ぎるとわかる仕組みみたい。
しかも、結界を主の許可なく通り抜けられるのは正面のみで、木々の間から入ろうとしても入れないような設定になってるとか。

そのカモフラージュの為にもこのお屋敷が木々で囲われているみたい。

「やって来たのは俺の姉だよ。」

「お姉様?」

そう言えば、ラルフ様には確か上にお二人のお姉様がいらっしゃったわね。

「二番目の姉が俺にやたらと執着しててね・・・」

ラルフ様はそう言いながらため息をつく。

「お姉様は確か、宰相を務めていらっしゃるコーデリア侯爵様の元に嫁がれたのでは?」

「うん、そうなんだけどね、なんかあると俺の所に転がり込んでくるんだよ・・・また侯爵となんかあったな・・・」

ラルフ様は嘆息して申し訳なさそうに私を見る。

「面倒事に巻き込んでしまうかもしれない。ごめんね。」

「私はラルフ様の妻ですのよ。気になさらないでください。」

私は真顔で答える。
そんな私を見てラルフ様は私を抱き寄せた。

「ラ、ラルフ様?」

「リリアーナ、ありがとう。」

そう言ってラルフ様は私の額にキスをした。

びっくりする私をよそに、また手を繋いで歩き出すラルフ様。

ラルフ様はいつもスマートで、こういった事もさらりとこなしてしまう方だと思っていたのに、斜め後ろから見えるラルフ様の横顔は少し赤くなっていた。
照れていらっしゃるの?



お屋敷のエントランスに着いた頃、ちょうど馬車が到着して、ラルフ様のお姉様が馬車から降りられるところだった。

「ラルフレッド!久しぶりね!」

ラルフ様に気付いて、お姉様がこちらを見る。

「姉上、お久しぶりです。今日は突然のお越しですね。」

「急に来ちゃってごめんね、エリオット様がまた女遊びをされていたのよ!腹が立って家を飛び出して来ちゃった!しばらく置いてね。」

お姉様は明るく元気な笑顔で話される。そして、ラルフ様の後ろにいる私に気付く。

ラルフ様はまだ私の手を繋いだままです。
離してくれないのかしら。

「あれ?その子は?誰?」

そして、私とラルフ様が手を繋いでいるのを見つけたようで、じーっと見つめる。

「ふーん?ラルフレッドもとうとう女を囲うようになったの?」

ちょっと・・・かなり面白くなさそうに私を見る。

「姉上、失礼な事を言わないでくれ、彼女は俺の妻だ。」

ラルフ様の言葉を聞いてお姉様が驚いたように目を見開いてラルフ様を見る。

「は?・・・妻?」

お姉様がしばらく固まって私を上から下まで撫でるように見る。

「ラルフレッドの妻?私そんなの聞いてないわよ?どういう事?」

お姉様は怒ったようにラルフ様に詰寄る。

「今から紹介しようと思ってたのに、姉上が勘違いするからだよ。」

熱くなっているお姉様と比べて温度の低いラルフ様。
めんどくさそうにお姉様を見る。

「俺の妻のリリアーナだ。リリアーナ、姉のセリーヌだよ。」

「セリーヌ様、初めてお目にかかります。リリアーナと申します。どうぞよろしくお願い致します。」

私はラルフ様に紹介されて挨拶をしたけれど、やっぱり緊張して顔が強ばってしまう。

「リリアーナ?・・・その表情、ひょっとして仮面令嬢の?」

セリーヌ様の言葉にドキッとする。
お姉様も知っているのね・・・

「姉上、それはリリアーナの本当の姿じゃない。リリアーナに失礼なことを言うのはやめてくれ!」

ラルフ様は私のために怒ってくれる。

「どうしてラルフレッドが仮面令嬢を妻にしてるの?ラルフレッドなら他にも沢山いい子が手に入るのに、よりによって婚約破棄されたような子を貰うなんて、信じられないわ!」

「姉上、それ以上酷いことを言うならもう帰ってくれ。」

ラルフ様が静かに怒りを表している。

「ラルフ様、本当の事ですので、私は大丈夫です!」

姉弟喧嘩の元が私になるなんて申し訳ないわ。
私はラルフ様が居てくれるだけで救われてるので、他の方から何を言われても気にしない。

「リリアーナ・・・」

ラルフ様が申し訳なさそうに私を見つめる。

「なによ、ラルフレッドは私のものだったのに!わかったわ、もう言わないからしばらく置いてもらえる?」

セリーヌ様はまだ納得いっていないようだったけれど、渋々承諾する。

「姉上、俺は姉上のものになった覚えは無いです。とりあえず中に入りましょう。」

ラルフ様はセリーヌ様に冷たい目を向けられていた。


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