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①悪役令嬢
しおりを挟む「貴方、わたくしを誰だと思っていらっしゃるの?子爵令嬢の分際で、侯爵令嬢で婚約者のこのわたくしを差し置いてヘンリー様とお話ししようなど、身の程をわきまえなさい!」
ビシッと伸ばした手を子爵令嬢へ向けて指差す。
背筋をピンと張りスラリと伸びた細身の長身から見下すように冷たく見つめる令嬢。
彼女はイルザンド王国第一王子、ヘンリー・ディ・イルザンドの現婚約者で侯爵令嬢のレイラ・グレイシス。
彼女の周りには取り巻きが陣取り、子爵令嬢のリサ・クラウディアを囲う。
「そうよ、レイラ様を差し置いて何様かしら。」
取り巻きの一人が蔑む。
「そ、そんな・・・私はそのような事していません。」
リサがおどおどと答える。
「何を言っているか聞こえませんわ!そこ邪魔なのでどいてちょうだい。」
別の取り巻きが肩を押すとリサはよろめき後ろにあった噴水の中へと尻もちをついた。
「ぷっ、何それ、ダッサ!」
肩を押した取り巻きが冷めた目で見つめると、みんながクスクス笑い出す。
「皆さん、こんな田舎者に構っていられませんわ。パーティへ戻りましょう。」
レイラはそう言うと取り巻きを連れて会場へと戻っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫かい?何があったの?」
レイラ達がいなくなった後、呆然とするリサに声をかけたのはたまたま通りががったヘンリー王子だった。
ヘンリーに助けあげられるリサの姿は誰も見ていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「皆様、わたくし今日は気分が優れませんの。わたくし今日はこれで失礼致しますわ。」
レイラはそう告げるとエントランスへと向かった。
エントランスにつく頃にはグレイシス家の馬車が待機していた。
レイラは無言のまま馬車へと乗り込むと、馬車はその場を後にしたーーー
「ねぇ、ミカ!わたくしの声震えていなかった?」
レイラが話しかけたのはレイラが馬車に乗り込むのを手伝うと自身も乗り込んだレイラ付き執事権ボディガードのミカエルだ。
「ええ、レイラお嬢様、完璧でした。」
ミカエルがそう応えるとレイラは少し安堵の表情を浮かべる。
「良かった。ちゃんと悪役令嬢出来ていたのね、でも、ミカ!今日はリサ様が噴水の中に落ちてしまったの!酷いことをしてしまったわ。お怪我はなかったかしら、お風邪を召されないかしら・・・とても心配だわ。」
涙目になりながらミカエルに訴える。
「レイラお嬢様、あの後リサ様はヘンリー様に助け出されていらっしゃいましたので大丈夫でしょう。風邪を召されてはレイラお嬢様がご心配なさるので、既に身体の温まるお茶をクラウディア家へ届けさせました。もちろん、侯爵家の名は出さず、辺境伯の名を出しております。」
淡々と答えるミカエル。
「そうなの?さすがミカね、ありがとう。」
そう言うとほんわりと柔らかな笑顔を向ける。
腰まで真っ直ぐ伸びた白銀の髪に紫の大きな瞳がキラキラと輝くようにレイラの笑顔を煌めかせる。
その笑顔を向けられたミカエルもニコリと返した後、そっと目を伏せる。
「レイラお嬢様の笑顔は本当に宝石のようですね、眩しすぎて直視できません。」
「もう、何を言っているのかしら、ミカは何時も私を喜ばせてくれるわね。」
頬を紅く染めながらミカエルを見る。
「レイラお嬢様、おみ足は大丈夫ですか?」
ミカエルがそっと気遣うように告げる。
「ミカはなんでもお見通しね、正直限界だったのよ。」
そう言ってレイラはドレスの裾を少し上げる。
華奢な足に履かれているのは高さ十五センチはありそうな高いヒールのパンプスだった。
「失礼します。」
ミカエルはそう言うとレイラの足から高いヒールを外して低いパンプスへと履き替えさせる。
レイラはミカエルの様子をじっと見ながらされるままにしていた。
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