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「…え!?会長様だ…!かっこいい~……」

「こんな所に何の用なのかな??…ていうか、あの新聞見た?」


「みたみた、会長様と委員長様の熱愛でしょ!…でも、ぼくは違うと思うけどなあ…あのときその場にいたんでしょ?どうだったの実際」



「…んー、遠くてあんまりよく見えなかったんだけど…んー、いつもの口喧嘩っぽくはなかったけど…まあ、新聞は誇張して書くでしょ?」


「まあ、そうだよねえ、だってアルファ同士の恋人なんて聞いたことないし…でもさ、最近生徒会いい噂聞かないし、会長様お一人で仕事してるって聞いたよ?…もしかしたらだけど、委員長様に慰めてもらってたとか?」


「あーそうなのかなぁ?会長様最近ずっと生徒会室に引きこもっているもんね?生徒会室にお気に入りの親衛隊の子達を呼んでストレス解消してるんだって…!僕もお呼ばれしたいよぉ~…」


「聞いた聞いた!…はぁ、いいよなぁ…でも君みたいなちんちくりんじゃ無理だね。」


「な!お前だって会長様のお相手なんて天地がひっくり返っても………………」






全部聞こえてるけどな!!!!


あいつらの頭の中にはコソコソ話っていう言葉は辞書にないのか?

でも、新聞の内容を鵜呑みにしていなくてよかった、があのチワワみたいなやつらの会話しか聞いてないから実際は信じている奴もいるんだろうけど。

そう考えるとますます気落ちするし胃がキリキリする。

ちび二人組以外も俺を見てこそこそと話しているがもうこれ以上話を入れないよう耳を完全にシャットアウトする。
早足でそいつらを横切り、目的の教室に早足で向かう。




あいつは、確かc組だよな?


教室の扉が開いていたので中を覗くと、ギョッとしたように固まる教室の中の生徒達。


その中で、急に静かになったことに気が付いた男がこちらを見て、また視線を机の上の本に下げた。
矢野はどうやら居ないみたいだが、まともに話せる奴はいたな…俺の苦手な奴が。



「…おい」

「…」


無視、この俺に無視。
ほんといつ会ってもむかつくな、こいつ。



この学園で俺にキャーキャー言わない数少ない人間の一人であるこいつは佐藤という平凡な名字に相応しい姿のザ平凡の男だ。


見た目、は。

「…おいって、聞こえてんだろ、佐藤。」


「………なんすか?位の高い会長様に話しかけられるとあとで周りの奴らに嫉妬で殺されるんで話しかけないでもらえます?」


これだ

大概の人間は俺の家柄と血筋、アルファ性に恐れて下手にくるのに、…こいつの図太い神経には正直脱帽だ、ほんとに。

「…要件が済んだら俺もすぐにここを出る。簡潔に聞くが矢野はどこだ。」


「しらねっすよ、じゃ、お帰りくださ~い。」


頬杖をついてページをめくりながら、こちらをちらりとも見ずにそう言い放つ男に俺は胃がキリキリとさっきより悲鳴を立てているのを感じ取る。



「…お前がしらねぇわけねえだろ……矢野の親衛隊長だろ…」


そう、こいつは矢野の隊長で、しかも同じクラスなのだ。


だからしらねぇはずねえってのに!こいつ!ほんとむかつく!


「別に俺は好きで隊長やってるわけじゃないし、矢野に頼まれただけだから、」


「だとしても、同じクラスなら場所ぐらい知ってんだろが!」


つい大きな声で威嚇してしまい、ただでさえ遠巻きで見ている周りの生徒達がビクついて俺と佐藤から離れていく。


当の言われた本人は何食わぬ顔で、でも本をめくっている手を止めようやくこちらを見て、こういった。


「知ってますよ?でも…タダで教えるわけないっすよね…会長様?」



そう言ってにこやかに笑った相手に俺はイライラで震える手を抑えた、

これはこいつのいつもの常套句だ、分かってただろ、抑えろ九条雫。

「……顔貸せ。」


「いいネタくださいよ~」


こいつの言うネタというのは、こいつが矢野の親衛隊隊長を務めると共にこいつが新聞部部長だからだ。


あのふざけた記事もこいつが書いたっていうのに…!俺はまた新たなネタ提供をしなくちゃならねぇのかよ!


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