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2章「冒険者になろう!」

19話 クラン登録

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「――リラ・レーヴェ。貴女を冒険者として認める」
「……まさかおじいさんがギルド長だったとは、驚いたわ」

 試験から数時間後、わたしはギルド長から合格証を受け取っていた。
 世界最年少での冒険者登録。おまけに適性職種は「魔剣士ナイト・ソーサラー」――異例も異例の新米ルーキーの誕生だった。

「そしてこれが君を冒険者と認める紋章エンブレムだ。無くさないように」

 胸に龍の模様が彫られた小さな紋章をつけられた。
 キラキラと輝く金色の紋章。見ているだけでテンションが上がる。

「この紋章には魔法がかかっている。各拠点のギルドにある水晶にそれを翳せば、君のランク・資産・クエスト経歴など全てがわかることになっている」
「ふぅん……この世界も便利なものね」

 こんな小さなエンブレムにそれだけの情報が詰まっているのか――まるでマイクロチップみたいだなあ、なんて思いながらそれをつつく。

「とにもかくにも、これから君は一人前の冒険者だ。例え子供とて危険なクエストに挑むこととなるだろう」
「もちろん、承知のうえよ!」

 にっこりと笑った。
 これはゲームではない。下手をすれば死んでしまう。リトライはないだろう。
 でも、だからこそ……心が躍るというものだ。それに、ようやく父様を裏切ったやつらと同じ土俵に立てた。これがスタート地点だ。

「――で、どうするんだ?」

 所謂、チュートリアルイベントが終わりギルド長はだらんと気を緩めた。

「どうするって?」
「このままクラン登録していくのか?」
「あ……そうか」

 あの男たちから父の領地――つまりはクランを取り戻すには、クランを組み、そしてクランのランクを上げなければならない。

「一人では難しいものなの?」
「一匹狼は稀だな。基本的にクエストは大勢でしていくものだからな」

 ソロプレイ一人はこの世界では生きるのに難しいらしい。

「登録するっていっても……仲間がいないしなあ」
「ここにいるじゃないですか」

 隣でにこりとリオンが微笑んでいた。

「え、リオン? あれ……冒険者……じゃなかったよね。クラン入ってないし」
「うん。元冒険者だよ。でも、登録だけは残してあるんだ」

 微笑んだままリオンがポケットから古い紋章を取り出した。

「本当だ……」
「……正気か?」

 呆れたようにギルド長は頬杖をつく。

「なにかマズイの?」
「いやあ……だって、リオンだぞ?」

 含みのある視線でギルド長はリオンを見る。

「嬢ちゃん。クランを組むってことはつまり、会社を経営していくってことだ。クランに入った仲間にはそれ相応の報酬が必要になる」
「……わ、わかってる。そのために沢山クエストをこなしていけばいいんだよね!」
「……そうだけどよお。リオンだけはやめておいた方がいいぞ」

 さっきからなんなんだ。
 ギルド長は引いているし、リオンは笑顔のまま固まっている。

「私は別にいいんですよ。どちらかといえば、リラが冒険者になることにはあまり賛成ではないので」
「でもでも……せっかく冒険者になれたんだから。他のクランに入るなら、自分でクランを経営したい!」
「じゃ……リオンを加入して、一先ず二人でクラン申請していいんだな?」
「はい! お願いします!」

 ということでギルド長が手続きに入る。
 水晶にわたしの紋章とリオンの紋章を翳していく。

《リラ・レーヴェ――Fランク クラン開設承認 クランマスターとして認めます》
《リオン・レオヴァルド――SSランク クラン加入を認めます》
「――は?」

 一瞬聞き間違えたのかと思った。
 ゆっくりとリオンを見ると、彼はまだ笑顔のままだ。

「え? 今SSとか聞こえたんだけど」
「こいつ。元冒険者とはいえ、あのノエルの右腕だぞ? 弱いわけあるか」

 愕然とした。
 え、つまりSSランクっていうことは、一番上のランク。つまりはお給料も高い――。

「え……どうしよう、リオン……え」

 そこでようやくリオンはわたしを見た。

「悪い人材ではないですよ。お給料は出世払いでお願いしますね、マスター」
「…………やる気でやったなあ!」

 こうして前途多難のクラン経営+冒険者ライフがはじまったのであった。
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