20 / 20
2章「冒険者になろう!」
19話 クラン登録
しおりを挟む
「――リラ・レーヴェ。貴女を冒険者として認める」
「……まさかおじいさんがギルド長だったとは、驚いたわ」
試験から数時間後、わたしはギルド長から合格証を受け取っていた。
世界最年少での冒険者登録。おまけに適性職種は「魔剣士」――異例も異例の新米ルーキーの誕生だった。
「そしてこれが君を冒険者と認める紋章だ。無くさないように」
胸に龍の模様が彫られた小さな紋章をつけられた。
キラキラと輝く金色の紋章。見ているだけでテンションが上がる。
「この紋章には魔法がかかっている。各拠点のギルドにある水晶にそれを翳せば、君のランク・資産・クエスト経歴など全てがわかることになっている」
「ふぅん……この世界も便利なものね」
こんな小さなエンブレムにそれだけの情報が詰まっているのか――まるでマイクロチップみたいだなあ、なんて思いながらそれをつつく。
「とにもかくにも、これから君は一人前の冒険者だ。例え子供とて危険なクエストに挑むこととなるだろう」
「もちろん、承知のうえよ!」
にっこりと笑った。
これはゲームではない。下手をすれば死んでしまう。リトライはないだろう。
でも、だからこそ……心が躍るというものだ。それに、ようやく父様を裏切ったやつらと同じ土俵に立てた。これがスタート地点だ。
「――で、どうするんだ?」
所謂、チュートリアルイベントが終わりギルド長はだらんと気を緩めた。
「どうするって?」
「このままクラン登録していくのか?」
「あ……そうか」
あの男たちから父の領地――つまりはクランを取り戻すには、クランを組み、そしてクランのランクを上げなければならない。
「一人では難しいものなの?」
「一匹狼は稀だな。基本的にクエストは大勢でしていくものだからな」
ソロプレイはこの世界では生きるのに難しいらしい。
「登録するっていっても……仲間がいないしなあ」
「ここにいるじゃないですか」
隣でにこりとリオンが微笑んでいた。
「え、リオン? あれ……冒険者……じゃなかったよね。クラン入ってないし」
「うん。元冒険者だよ。でも、登録だけは残してあるんだ」
微笑んだままリオンがポケットから古い紋章を取り出した。
「本当だ……」
「……正気か?」
呆れたようにギルド長は頬杖をつく。
「なにかマズイの?」
「いやあ……だって、リオンだぞ?」
含みのある視線でギルド長はリオンを見る。
「嬢ちゃん。クランを組むってことはつまり、会社を経営していくってことだ。クランに入った仲間にはそれ相応の報酬が必要になる」
「……わ、わかってる。そのために沢山クエストをこなしていけばいいんだよね!」
「……そうだけどよお。リオンだけはやめておいた方がいいぞ」
さっきからなんなんだ。
ギルド長は引いているし、リオンは笑顔のまま固まっている。
「私は別にいいんですよ。どちらかといえば、リラが冒険者になることにはあまり賛成ではないので」
「でもでも……せっかく冒険者になれたんだから。他のクランに入るなら、自分でクランを経営したい!」
「じゃ……リオンを加入して、一先ず二人でクラン申請していいんだな?」
「はい! お願いします!」
ということでギルド長が手続きに入る。
水晶にわたしの紋章とリオンの紋章を翳していく。
《リラ・レーヴェ――Fランク クラン開設承認 クランマスターとして認めます》
《リオン・レオヴァルド――SSランク クラン加入を認めます》
「――は?」
一瞬聞き間違えたのかと思った。
ゆっくりとリオンを見ると、彼はまだ笑顔のままだ。
「え? 今SSとか聞こえたんだけど」
「こいつ。元冒険者とはいえ、あのノエルの右腕だぞ? 弱いわけあるか」
愕然とした。
え、つまりSSランクっていうことは、一番上のランク。つまりはお給料も高い――。
「え……どうしよう、リオン……え」
そこでようやくリオンはわたしを見た。
「悪い人材ではないですよ。お給料は出世払いでお願いしますね、マスター」
「…………やる気でやったなあ!」
こうして前途多難のクラン経営+冒険者ライフがはじまったのであった。
「……まさかおじいさんがギルド長だったとは、驚いたわ」
試験から数時間後、わたしはギルド長から合格証を受け取っていた。
世界最年少での冒険者登録。おまけに適性職種は「魔剣士」――異例も異例の新米ルーキーの誕生だった。
「そしてこれが君を冒険者と認める紋章だ。無くさないように」
胸に龍の模様が彫られた小さな紋章をつけられた。
キラキラと輝く金色の紋章。見ているだけでテンションが上がる。
「この紋章には魔法がかかっている。各拠点のギルドにある水晶にそれを翳せば、君のランク・資産・クエスト経歴など全てがわかることになっている」
「ふぅん……この世界も便利なものね」
こんな小さなエンブレムにそれだけの情報が詰まっているのか――まるでマイクロチップみたいだなあ、なんて思いながらそれをつつく。
「とにもかくにも、これから君は一人前の冒険者だ。例え子供とて危険なクエストに挑むこととなるだろう」
「もちろん、承知のうえよ!」
にっこりと笑った。
これはゲームではない。下手をすれば死んでしまう。リトライはないだろう。
でも、だからこそ……心が躍るというものだ。それに、ようやく父様を裏切ったやつらと同じ土俵に立てた。これがスタート地点だ。
「――で、どうするんだ?」
所謂、チュートリアルイベントが終わりギルド長はだらんと気を緩めた。
「どうするって?」
「このままクラン登録していくのか?」
「あ……そうか」
あの男たちから父の領地――つまりはクランを取り戻すには、クランを組み、そしてクランのランクを上げなければならない。
「一人では難しいものなの?」
「一匹狼は稀だな。基本的にクエストは大勢でしていくものだからな」
ソロプレイはこの世界では生きるのに難しいらしい。
「登録するっていっても……仲間がいないしなあ」
「ここにいるじゃないですか」
隣でにこりとリオンが微笑んでいた。
「え、リオン? あれ……冒険者……じゃなかったよね。クラン入ってないし」
「うん。元冒険者だよ。でも、登録だけは残してあるんだ」
微笑んだままリオンがポケットから古い紋章を取り出した。
「本当だ……」
「……正気か?」
呆れたようにギルド長は頬杖をつく。
「なにかマズイの?」
「いやあ……だって、リオンだぞ?」
含みのある視線でギルド長はリオンを見る。
「嬢ちゃん。クランを組むってことはつまり、会社を経営していくってことだ。クランに入った仲間にはそれ相応の報酬が必要になる」
「……わ、わかってる。そのために沢山クエストをこなしていけばいいんだよね!」
「……そうだけどよお。リオンだけはやめておいた方がいいぞ」
さっきからなんなんだ。
ギルド長は引いているし、リオンは笑顔のまま固まっている。
「私は別にいいんですよ。どちらかといえば、リラが冒険者になることにはあまり賛成ではないので」
「でもでも……せっかく冒険者になれたんだから。他のクランに入るなら、自分でクランを経営したい!」
「じゃ……リオンを加入して、一先ず二人でクラン申請していいんだな?」
「はい! お願いします!」
ということでギルド長が手続きに入る。
水晶にわたしの紋章とリオンの紋章を翳していく。
《リラ・レーヴェ――Fランク クラン開設承認 クランマスターとして認めます》
《リオン・レオヴァルド――SSランク クラン加入を認めます》
「――は?」
一瞬聞き間違えたのかと思った。
ゆっくりとリオンを見ると、彼はまだ笑顔のままだ。
「え? 今SSとか聞こえたんだけど」
「こいつ。元冒険者とはいえ、あのノエルの右腕だぞ? 弱いわけあるか」
愕然とした。
え、つまりSSランクっていうことは、一番上のランク。つまりはお給料も高い――。
「え……どうしよう、リオン……え」
そこでようやくリオンはわたしを見た。
「悪い人材ではないですよ。お給料は出世払いでお願いしますね、マスター」
「…………やる気でやったなあ!」
こうして前途多難のクラン経営+冒険者ライフがはじまったのであった。
0
お気に入りに追加
159
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
神々の仲間入りしました。
ラキレスト
ファンタジー
日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。
「私の娘として生まれ変わりませんか?」
「………、はいぃ!?」
女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。
(ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい)
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
異世界宿屋の住み込み従業員
熊ごろう
ファンタジー
なろう様でも投稿しています。
真夏の昼下がり歩道を歩いていた「加賀」と「八木」、気が付くと二人、見知らぬ空間にいた。
そこに居たのは神を名乗る一組の男女。
そこで告げられたのは現実世界での死であった。普通であればそのまま消える運命の二人だが、もう一度人生をやり直す事を報酬に、異世界へと行きそこで自らの持つ技術広めることに。
「転生先に危険な生き物はいないからー」そう聞かせれていたが……転生し森の中を歩いていると巨大な猪と即エンカウント!? 助けてくれたのは通りすがりの宿の主人。
二人はそのまま流れで宿の主人のお世話になる事に……これは宿屋「兎の宿」を中心に人々の日常を描いた物語。になる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる