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2章「冒険者になろう!」
17話 適性試験開始
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やってきたのは闘技場。
周りは壁に囲まれていて、足場は剥き出しの地面――ゲームでよくあるモンスター用の闘技場をイメージしてくれればいいだろう。
「リラ・レーヴェ。これから簡単な実技試験を行う!」
「実技だけ? 学科試験とかはないの?」
「冒険者に座学は不要。知識は後からついてくるからな。この世界では実力が全てよ」
「ふぅん……それなら良かったわ」
実力勝負であればなんとかなるかもしれない。
「さあ、好きな武器を取れ」
入り口の武器庫には沢山の武器が並んでいる。
弓、杖、大剣色々あるけれど……。
「ここはやっぱり剣でしょう」
なんだかんだ初期装備が一番手に馴染みやすい。
ただこれはゲームじゃなくて現実なので、一般的な剣でも中々の重量感があるけれど。
「リラ」
リオンが心配そうに見つめている。
「私は傍で見ています。ご武運を」
「ありがとう、リオン。わたし、頑張るから!」
ぎゅっと力強くハグをして、私は闘技場に降りたった。
「特別枠の適性試験はただ一つ」
目の前の檻が開いたかと思うと、その奥から魔獣が一体現れた。
「――その魔獣・ディーガを倒せ」
ずしん、ずしんと現れた四つ足の獣。
真っ黒な虎のような見た目。口からはみ出た巨大な二つの牙が特徴の魔獣だ。
「さすが特別枠。いきなり中級ビーストですか」
苦笑が零れた。
この魔獣。なぜか私が前世でプレイしていたゲームに出てくる中ボスと同じ見た目と同じ名前だ。
はじめたばかりの頃は瞬殺されていた。確かに初心者では敵う相手ではないだろう。
(でも、これはゲームじゃない。怪我もするし下手すれば死ぬ)
「安心しろ。これは試験だからな。死ぬ前には助けてやる」
「あはは、安心設計ね。よし、やってやろうじゃん……」
深呼吸して剣を構えた。
こんなところで負けてられない。父さんのために!
「――開始」
その一声で、魔獣は牙をむいた。
《ガルルルルルルッ》
ディーガが体当たりしてきたので、なんとか交した。
(やっぱ、現実とゲームじゃ全然違うわよ!)
なんであんな身のこなし出来るの!? 無理じゃない!?
《グルワアアアアッ!》
「っ!」
噛みつかれそうになったので、咄嗟に剣で守った。
子供の私と魔物では力がまるで違う。
例え武器を持っていても、切りつけなければ攻撃が出来ない。
「くそっ!」
そのまま倒されのし掛かられる。
頭を狙って振り下ろされた手を、首を捻って交し、胴体を蹴って相手が怯んだ隙に距離を取った。
はは、身体が小さくて助かった。
(でも、このままじゃマズイわね)
力が足りない。剣を振るっても、その隙に襲われる。
(ある程度距離を保ちながら攻撃出来ればいいんだけど――)
魔法でも使えたらなあ、なんてため息をついた。
そういえばあのゲーム、次のアップデートで新しいジョブ解放されるんじゃなかったっけ――。
確か、剣と魔法を融合させた……魔法剣士とか。
「たられば話してても仕方ない……」
剣を地面に突き立て立ち上がる。
魔獣は地面を蹴り、突進してくる準備をしている。
私は剣を構え、真っ向から勝負を挑むことにした。
「もう、どうにでもなれ!」
力はないが、知識はある。
この魔獣の弱点は頭部。突進してくる勢いで、頭に剣が当たったらクリティカルを狙えるはずだ。
ディーガがこちらに向かってくる。
「いっけええええっ!」
私はやけくそに、剣を前に突き出した。
その時だった。
《ギャアアアアアッ!》
「――え?」
魔物が吹き飛んでいた。
そして剣の切っ先からは火柱が上がっている。
「リラ……!」
「なんだよあの子、魔法剣士の適性あんのかよ!?」
「……うそん」
まさかここにきて新ジョブ解放されたようです。
周りは壁に囲まれていて、足場は剥き出しの地面――ゲームでよくあるモンスター用の闘技場をイメージしてくれればいいだろう。
「リラ・レーヴェ。これから簡単な実技試験を行う!」
「実技だけ? 学科試験とかはないの?」
「冒険者に座学は不要。知識は後からついてくるからな。この世界では実力が全てよ」
「ふぅん……それなら良かったわ」
実力勝負であればなんとかなるかもしれない。
「さあ、好きな武器を取れ」
入り口の武器庫には沢山の武器が並んでいる。
弓、杖、大剣色々あるけれど……。
「ここはやっぱり剣でしょう」
なんだかんだ初期装備が一番手に馴染みやすい。
ただこれはゲームじゃなくて現実なので、一般的な剣でも中々の重量感があるけれど。
「リラ」
リオンが心配そうに見つめている。
「私は傍で見ています。ご武運を」
「ありがとう、リオン。わたし、頑張るから!」
ぎゅっと力強くハグをして、私は闘技場に降りたった。
「特別枠の適性試験はただ一つ」
目の前の檻が開いたかと思うと、その奥から魔獣が一体現れた。
「――その魔獣・ディーガを倒せ」
ずしん、ずしんと現れた四つ足の獣。
真っ黒な虎のような見た目。口からはみ出た巨大な二つの牙が特徴の魔獣だ。
「さすが特別枠。いきなり中級ビーストですか」
苦笑が零れた。
この魔獣。なぜか私が前世でプレイしていたゲームに出てくる中ボスと同じ見た目と同じ名前だ。
はじめたばかりの頃は瞬殺されていた。確かに初心者では敵う相手ではないだろう。
(でも、これはゲームじゃない。怪我もするし下手すれば死ぬ)
「安心しろ。これは試験だからな。死ぬ前には助けてやる」
「あはは、安心設計ね。よし、やってやろうじゃん……」
深呼吸して剣を構えた。
こんなところで負けてられない。父さんのために!
「――開始」
その一声で、魔獣は牙をむいた。
《ガルルルルルルッ》
ディーガが体当たりしてきたので、なんとか交した。
(やっぱ、現実とゲームじゃ全然違うわよ!)
なんであんな身のこなし出来るの!? 無理じゃない!?
《グルワアアアアッ!》
「っ!」
噛みつかれそうになったので、咄嗟に剣で守った。
子供の私と魔物では力がまるで違う。
例え武器を持っていても、切りつけなければ攻撃が出来ない。
「くそっ!」
そのまま倒されのし掛かられる。
頭を狙って振り下ろされた手を、首を捻って交し、胴体を蹴って相手が怯んだ隙に距離を取った。
はは、身体が小さくて助かった。
(でも、このままじゃマズイわね)
力が足りない。剣を振るっても、その隙に襲われる。
(ある程度距離を保ちながら攻撃出来ればいいんだけど――)
魔法でも使えたらなあ、なんてため息をついた。
そういえばあのゲーム、次のアップデートで新しいジョブ解放されるんじゃなかったっけ――。
確か、剣と魔法を融合させた……魔法剣士とか。
「たられば話してても仕方ない……」
剣を地面に突き立て立ち上がる。
魔獣は地面を蹴り、突進してくる準備をしている。
私は剣を構え、真っ向から勝負を挑むことにした。
「もう、どうにでもなれ!」
力はないが、知識はある。
この魔獣の弱点は頭部。突進してくる勢いで、頭に剣が当たったらクリティカルを狙えるはずだ。
ディーガがこちらに向かってくる。
「いっけええええっ!」
私はやけくそに、剣を前に突き出した。
その時だった。
《ギャアアアアアッ!》
「――え?」
魔物が吹き飛んでいた。
そして剣の切っ先からは火柱が上がっている。
「リラ……!」
「なんだよあの子、魔法剣士の適性あんのかよ!?」
「……うそん」
まさかここにきて新ジョブ解放されたようです。
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