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1章「運命の幕開け」
11話 血の誓い
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「なんとなく、そろそろあんたたちが来るんじゃないかと思ってたよ。屋敷のほうが騒がしかったからね」
雨に濡れた窓を見ながらシスターは不敵に笑った。
「クランメンバーが謀反を起こした。今はここが一番安全だと思ってね」
「教会は中立地帯だ。何人たりともこの領域での戦闘行為は許さないよ。救いを求め逃げてきた者を追う者は、神の名の下に正義の鉄槌を下してやる」
シスターの腰には不釣り合いなレイピアが下げられている。。
中立地帯。戦闘行為は認められていないというのに、なんでシスターがごてごての武器を装備しているのだと恐ろしくなった。
「それで、私になんの用だい?」
そこでようやくリオンはわたしを下ろしてくれた。
「リラのことだ」
「……わたしは、教会に預けられるの?」
不安げにリオンを見上げた。
そうか、ここで私はシスターに預けられて孤児になるんだ。ああ、そうか。やっぱりリオンもわたしを捨てて――。
「そんなことするわけないだろう。私がリラを手放すわけがない。貴女は私の大切な宝物。でも、今のリラは私を心から信用してくれていない。だから、ここにきたんだよ」
私と目をあわせてにこりと微笑んだリオンは懐から小さなナイフを取り出し、自分の手のひらを出した。
掌を一文字に切ると、血が溢れだす。
「えっ、リオン!?」
「あんたなにやってんだい!!」
手のひらから血が溢れしたたり落ちてる。
だというのにリオンは涼しい顔で笑っていた。
「シスターに立会人になってもらいたくてね――さ、リラ。手のひらをだして」
「ああ、もうあんたはいつもいきなりなんだから。仕方ない。付き合ってやるよ」
いわれるがままにわたしはリオンの前に手を差し出した。
するとリオンは私の手の甲に血を垂らした。
「――誓いをここに。我リオンはリラを主とし、決して偽らず、裏切らず、生涯を主に尽すことを誓う」
「立ち会い人アクーラの名の下に、その誓いを認めここに血の誓いを刻む」
わたしたちの手の上にシスターが手のひらを掲げた。するとリオンの血が光り輝く。。
目映い光がなくなると、私の手の甲には小さな刻印が印されていた。良く見るとリオンの手のひらにも同じ刻印が刻まれている。
「これは……」
「今のは血の誓いだよ。これで契約は交わされた」
どういうことか分からず首を傾げると、呆れたようにシスターがため息をついた。
「簡潔にいうと、リオンはあんたを裏切ったら死ぬって制約を交わしたんだよ」
あっけらかんとした言葉にわたしはあんぐりと口を開けた。
「死ぬっ!? なんでそんな無茶を……」
信じられないとリオンを見ると、彼は力強くわたしの肩を掴んだ。
「私はリラに信用されないなんて死んだも同じ! この程度で君の信用が得られるならば構わない!」
物凄い熱弁されている。その勢いが凄まじい。
愛されているんだな、わたし。というかその愛が少し重すぎるような気がするけれど。
「……相変わらずぶっ飛んでるヤツだよ」
シスターは呆れて笑う。
そしてリオンは困った子犬のような表情でわたしをみつめた。
「この契約に誓って私は決して貴女を裏切らない。どうか、信じて欲しい」
「うん。信じる。わたしも酷いこといってごめんなさい、リオン」
リオンの手を握りながら謝ると、彼はようやくほっとしたように微笑んでくれた。
ああ、よかった。わたしも少しほっとした。
その瞬間、体の力が抜けていく。
「リラっ!?」
「おいおい!」
ああ、二人の声が遠くに聞こえていく。
体が動かなく。そして酷く寒い。
わたしはこのまま死ぬんだろうか。
雨に濡れた窓を見ながらシスターは不敵に笑った。
「クランメンバーが謀反を起こした。今はここが一番安全だと思ってね」
「教会は中立地帯だ。何人たりともこの領域での戦闘行為は許さないよ。救いを求め逃げてきた者を追う者は、神の名の下に正義の鉄槌を下してやる」
シスターの腰には不釣り合いなレイピアが下げられている。。
中立地帯。戦闘行為は認められていないというのに、なんでシスターがごてごての武器を装備しているのだと恐ろしくなった。
「それで、私になんの用だい?」
そこでようやくリオンはわたしを下ろしてくれた。
「リラのことだ」
「……わたしは、教会に預けられるの?」
不安げにリオンを見上げた。
そうか、ここで私はシスターに預けられて孤児になるんだ。ああ、そうか。やっぱりリオンもわたしを捨てて――。
「そんなことするわけないだろう。私がリラを手放すわけがない。貴女は私の大切な宝物。でも、今のリラは私を心から信用してくれていない。だから、ここにきたんだよ」
私と目をあわせてにこりと微笑んだリオンは懐から小さなナイフを取り出し、自分の手のひらを出した。
掌を一文字に切ると、血が溢れだす。
「えっ、リオン!?」
「あんたなにやってんだい!!」
手のひらから血が溢れしたたり落ちてる。
だというのにリオンは涼しい顔で笑っていた。
「シスターに立会人になってもらいたくてね――さ、リラ。手のひらをだして」
「ああ、もうあんたはいつもいきなりなんだから。仕方ない。付き合ってやるよ」
いわれるがままにわたしはリオンの前に手を差し出した。
するとリオンは私の手の甲に血を垂らした。
「――誓いをここに。我リオンはリラを主とし、決して偽らず、裏切らず、生涯を主に尽すことを誓う」
「立ち会い人アクーラの名の下に、その誓いを認めここに血の誓いを刻む」
わたしたちの手の上にシスターが手のひらを掲げた。するとリオンの血が光り輝く。。
目映い光がなくなると、私の手の甲には小さな刻印が印されていた。良く見るとリオンの手のひらにも同じ刻印が刻まれている。
「これは……」
「今のは血の誓いだよ。これで契約は交わされた」
どういうことか分からず首を傾げると、呆れたようにシスターがため息をついた。
「簡潔にいうと、リオンはあんたを裏切ったら死ぬって制約を交わしたんだよ」
あっけらかんとした言葉にわたしはあんぐりと口を開けた。
「死ぬっ!? なんでそんな無茶を……」
信じられないとリオンを見ると、彼は力強くわたしの肩を掴んだ。
「私はリラに信用されないなんて死んだも同じ! この程度で君の信用が得られるならば構わない!」
物凄い熱弁されている。その勢いが凄まじい。
愛されているんだな、わたし。というかその愛が少し重すぎるような気がするけれど。
「……相変わらずぶっ飛んでるヤツだよ」
シスターは呆れて笑う。
そしてリオンは困った子犬のような表情でわたしをみつめた。
「この契約に誓って私は決して貴女を裏切らない。どうか、信じて欲しい」
「うん。信じる。わたしも酷いこといってごめんなさい、リオン」
リオンの手を握りながら謝ると、彼はようやくほっとしたように微笑んでくれた。
ああ、よかった。わたしも少しほっとした。
その瞬間、体の力が抜けていく。
「リラっ!?」
「おいおい!」
ああ、二人の声が遠くに聞こえていく。
体が動かなく。そして酷く寒い。
わたしはこのまま死ぬんだろうか。
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