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3章 悪女、呪詛!
24話 悪女、突撃
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「首尾はいかがでしたか?」
それから一刻が過ぎ、四名は水月宮の近くで落ち合っていた。
「一応、緑翠妃と接触することはできた」
「しかし、傍付の侍女がきて数分と経たずに追い出されてしまったがな」
互いに思い通りにことは運ばず、空気はどことなく沈んでいる。
「緑翠妃様は皇帝のお子を身籠もられているのでしょう?」
蘭華の言葉に、雨黒は息を呑みそしてゆっくりと頷いた。
「だとしたら、かなり状況が不味いですね。呪詛を仕掛けられているとしたら、お腹の子にまで影響が及ぶかもしれません」
「……なんとかならんのか」
苦言を呈する龍煌。
無理もない。母体に呪詛が駆けられた場合、どうなるかを身をもって知っている本人なのだから。
「呪詛の犯人を潰すのが手っ取り早いのですが、噂話に耳を傾けても犯人の情報は得られませんでした」
「それならどうするのだ」
「直に緑翠妃様にお会いし、呪詛返しをするしかございませんね。そうすれば、呪詛をかけた犯人も引きずり出せるでしょう」
蘭華はにこりと笑った。
「ま、待て待て!」
歩き出した蘭華の腕を、龍煌は慌てて掴んで引き留めた。
「無理に決まってるだろう。俺たちでさえ数分で追い出されたんだ。一介の侍女があの警備をかいくぐれるはずもない!」
「誰もこっそり忍び込もうなどと思っておりませんよ。行くなら正々堂々、正面切って入ります!」
にっこりと微笑む麗霞に、三名は目を点にした。
「一体どうやって……」
「利用できるものは案外近くにいるものです、よ」
「――やっと見つけた!」
あくどい笑みを浮かべる蘭華に、皆が首傾げていると騒々しい声が近づいて来た。
ずんずんと大きな足音を立てて近づいてくるのは、納屋に閉じ込めておいた煌亮だ。
髪は乱れ、息を切らし、真っ直ぐ蘭華の方へ向かってくる。
「龍煌、そして蘭華! 誰の許しがあって、貴様たちが奥の宮にはいっている! 今すぐ、投獄して即刻処刑だ!」
煌亮はかんかんに怒っていた。
ご丁寧に背後には警備兵を数人連れてきており、今にも蘭華たちを捕えようと殺気だっている。
「……まずいな」
ちっ、と龍煌は舌打ちをする。
「陛下、これには事情があり……」
「黙れ雨黒! お前の申し開きは後で聞く! ひとまずはこの謀反人たちを捕えてすぐ投獄してやる!」
「うわああああっ! 私の後宮人生もここで終わりなんだ……」
慧は頭を抱えながら悲痛に叫びながら、蘭華の後ろに隠れた。
巻き込まれただけの彼女が投獄されるのも可哀想だろう。
「蘭華、これもお前の仕業だろう!」
びしり、と指をさされた蘭華は一人だけ余裕綽々、平静を保ち佇んでいた。
「今なにをお話ししても殿下はお話をお耳に入れてはくれないでしょう」
「当たり前だ。お前のような悪女の話など誰が聞くものか!」
「左様ですか。それならば、悪女は悪女らしく振る舞わねばなりませんね」
にこりと笑った蘭華は、煌亮に歩み寄るとその目の前でぱんっと勢いよく手を叩いた。
「――なっ!」
いわゆる『猫騙し』というやつである。
一瞬、煌亮が怯んだ隙に蘭華はある行動をとった。
「――動かないでください」
あろうことか、蘭華は煌亮の腕を引き自らのほうに抱き寄せた。
「――な、なにを」
驚く煌亮。そして兵達もざわついた。
「私たちは紅月宮、廃太子の李龍煌、ならびにその妻の蘭華と申します」
「――なっ。廃太子だと!?」
ざわつく兵士達。
「龍煌様のお噂は、みなさまお聞きいれたことありますでしょう? 龍煌様が触れたものはどうなるか……」
蘭華は微笑みながら龍煌に目配せする。
すると龍煌はなにかを察したように、煌亮の顔の傍に大きな手をかざした。
「――っ」
煌亮が冷や汗を流した。
「なんでも、廃太子様が触れれば……触れたところから呪詛が広がり、その体を蝕み死に至らしめる……とか」
「貴様、皇太子殿下を殺すつもりか!」
「さあ、それは皆さま次第でございますよ」
蘭華はにっこりと笑いながら、周囲に目配せをする。
「おのれ、悪女めっ……」
「それは褒め言葉として受け取っておきますわ」
蘭華は笑みを絶やさず、煌亮を見下ろすと超えたかだかに叫んだ。
「さあ、道を開けてください。私たちは緑翠妃様を救いにきたのです!」
それから一刻が過ぎ、四名は水月宮の近くで落ち合っていた。
「一応、緑翠妃と接触することはできた」
「しかし、傍付の侍女がきて数分と経たずに追い出されてしまったがな」
互いに思い通りにことは運ばず、空気はどことなく沈んでいる。
「緑翠妃様は皇帝のお子を身籠もられているのでしょう?」
蘭華の言葉に、雨黒は息を呑みそしてゆっくりと頷いた。
「だとしたら、かなり状況が不味いですね。呪詛を仕掛けられているとしたら、お腹の子にまで影響が及ぶかもしれません」
「……なんとかならんのか」
苦言を呈する龍煌。
無理もない。母体に呪詛が駆けられた場合、どうなるかを身をもって知っている本人なのだから。
「呪詛の犯人を潰すのが手っ取り早いのですが、噂話に耳を傾けても犯人の情報は得られませんでした」
「それならどうするのだ」
「直に緑翠妃様にお会いし、呪詛返しをするしかございませんね。そうすれば、呪詛をかけた犯人も引きずり出せるでしょう」
蘭華はにこりと笑った。
「ま、待て待て!」
歩き出した蘭華の腕を、龍煌は慌てて掴んで引き留めた。
「無理に決まってるだろう。俺たちでさえ数分で追い出されたんだ。一介の侍女があの警備をかいくぐれるはずもない!」
「誰もこっそり忍び込もうなどと思っておりませんよ。行くなら正々堂々、正面切って入ります!」
にっこりと微笑む麗霞に、三名は目を点にした。
「一体どうやって……」
「利用できるものは案外近くにいるものです、よ」
「――やっと見つけた!」
あくどい笑みを浮かべる蘭華に、皆が首傾げていると騒々しい声が近づいて来た。
ずんずんと大きな足音を立てて近づいてくるのは、納屋に閉じ込めておいた煌亮だ。
髪は乱れ、息を切らし、真っ直ぐ蘭華の方へ向かってくる。
「龍煌、そして蘭華! 誰の許しがあって、貴様たちが奥の宮にはいっている! 今すぐ、投獄して即刻処刑だ!」
煌亮はかんかんに怒っていた。
ご丁寧に背後には警備兵を数人連れてきており、今にも蘭華たちを捕えようと殺気だっている。
「……まずいな」
ちっ、と龍煌は舌打ちをする。
「陛下、これには事情があり……」
「黙れ雨黒! お前の申し開きは後で聞く! ひとまずはこの謀反人たちを捕えてすぐ投獄してやる!」
「うわああああっ! 私の後宮人生もここで終わりなんだ……」
慧は頭を抱えながら悲痛に叫びながら、蘭華の後ろに隠れた。
巻き込まれただけの彼女が投獄されるのも可哀想だろう。
「蘭華、これもお前の仕業だろう!」
びしり、と指をさされた蘭華は一人だけ余裕綽々、平静を保ち佇んでいた。
「今なにをお話ししても殿下はお話をお耳に入れてはくれないでしょう」
「当たり前だ。お前のような悪女の話など誰が聞くものか!」
「左様ですか。それならば、悪女は悪女らしく振る舞わねばなりませんね」
にこりと笑った蘭華は、煌亮に歩み寄るとその目の前でぱんっと勢いよく手を叩いた。
「――なっ!」
いわゆる『猫騙し』というやつである。
一瞬、煌亮が怯んだ隙に蘭華はある行動をとった。
「――動かないでください」
あろうことか、蘭華は煌亮の腕を引き自らのほうに抱き寄せた。
「――な、なにを」
驚く煌亮。そして兵達もざわついた。
「私たちは紅月宮、廃太子の李龍煌、ならびにその妻の蘭華と申します」
「――なっ。廃太子だと!?」
ざわつく兵士達。
「龍煌様のお噂は、みなさまお聞きいれたことありますでしょう? 龍煌様が触れたものはどうなるか……」
蘭華は微笑みながら龍煌に目配せする。
すると龍煌はなにかを察したように、煌亮の顔の傍に大きな手をかざした。
「――っ」
煌亮が冷や汗を流した。
「なんでも、廃太子様が触れれば……触れたところから呪詛が広がり、その体を蝕み死に至らしめる……とか」
「貴様、皇太子殿下を殺すつもりか!」
「さあ、それは皆さま次第でございますよ」
蘭華はにっこりと笑いながら、周囲に目配せをする。
「おのれ、悪女めっ……」
「それは褒め言葉として受け取っておきますわ」
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