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お茶会への招待

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 部屋に戻ったユリアは王妃にお茶会に誘われたことを伝えた。
「メイ、明日、王妃様のお茶会に呼ばれたの。ドレスの支度をお願いね?」
「王妃様のお茶会ですか!?」
お茶会という言葉にメイが過剰に反応する。ユリアが不思議そうな顔をすると、メイはハッとして「申し訳ありません」と頭を下げた。
「王妃様のお茶会は私たち侍女は入れません。王妃様の侍女しか温室へは入れないのです。それは他のお妃様たちの侍女も同じで、お茶会は時々開かれるのですが、中でいったいどんなお話がされているのかはわからないのです」
「そうなのね。でも、私もちゃんと他のお妃様たちにご挨拶しないといけないし、心配いらないわ」
王妃の言うように、事情を知らない侍女たちはお茶会で王妃が妃たちを虐めていると本気で思っているようだった。ユリアが何度大丈夫だからと言ってもメイは晩餐の直前まで「心配です」と繰り返していた。

 晩餐の時間になり広間に移動する。すると、広間にはエリスが先にきていた。
「あら、ユリア様、お体はもう大丈夫ですか?」
「エリス様。はい、ご心配をおかけしました。お見舞いの品まで、本当にありがとうございました」
ユリアが丁寧に礼を言って頭を下げると、エリスはクスクス笑って首を振った。
「あれくらい気にしないで。私も最初は大変だったもの。無理は禁物よ?」
エリスの言葉にユリアの頬が赤らむ。エリスは「可愛いわねえ」と言いながらユリアを隣の席に呼んだ。
「晩餐の座席は特に決まっていないの。陛下と王妃様の席は決まっているけれどね。だから私たちは時々席替えをしているのよ」
「そうなのですか」
促されるままエリスの隣に座るとカリナとイリーナが広間に入ってくる。ユリアが立ち上がって見舞いの礼を言うと、ふたりも気にすることはないと笑った。
「そういえば、明日のお茶会にはいらっしゃるのかしら?」
カリナの問いにユリアはうなずいた。
「はい。王妃様にお誘いいただいたので、出席させていただきます」
「そう、楽しみです」
「前回のお茶会から少し間が空きましたしね。王妃様も楽しみになさっていると思いますよ」
イリーナの言葉にうなずきながら、ユリアは事情を知らない侍女たちはこんな会話すら曲解してしまうのだろうなと思った。と同時にもしかして妃たちはわざと誤解させるようなことを言っているのではないかとも思って内心首をかしげた。
「おや、今日はユリアもきているね」
王が広間に入ると同時にユリアに気づいて声をかける。ユリアは立ち上がると頭を下げた。
「昨日は失礼しました」
「かまわないよ。無理をするものではない。皆にも叱られてしまったしね」
苦笑する王の隣には無表情の王妃が座る。何度見ても同じ顔なのに、同じ人とは思えない変わりようだった。

 晩餐は何事もなく穏やかに終わった。食後のワインを飲んでいるとき、王が「そういえば」と口を開いた。
「明日は久しぶりにお茶会をするそうだが、私も出席してもいいかな?」
「あら」
「まあ」
王の言葉にカリナとエリスが思わず声を上げる。お茶会は王妃の主催だ。皆の視線が王妃に集まると、王妃は「…少しなら」とだけ言うと先に立ち上がって広間を出ていってしまった。
「よかった。断られるかと思っていたが。明日は私も少しだけ顔をださせてもらうよ」
「陛下、王妃様のご機嫌とりを頑張ってくださいませ」
明らかに機嫌を損ねたような王妃の様子にエリスが苦笑しながら言う。王は肩をすくめて「もちろんさ」と笑った。
「私は王妃の機嫌とりに行くが、デザートを用意させてあるから、4人はそれを楽しむといい」
「あら、珍しい」
「ありがとうございます」
王の言葉にカリナとイリーナが微笑む。ユリアはどう反応していいかわからず「ありがとうございます」と頭を上げた。
王が退室してからデザートが運ばれてくる。それは可愛らしい一口サイズのケーキだった。
「確か、今日は陛下は町の視察に行かれたのでしたよね?」
「ではこれはきっとお土産ですね」
「可愛らしいわ」
可愛らしいケーキに妃たちが微笑む。ユリアも目を輝かせてケーキを堪能した。
「では、皆様、明日のお茶会楽しみにしていますわね」
「はい。遅れないようにいたしましょう」
「おめかししないけいけませんね」
「明日はよろしくお願いします」
ユリアを含めた4人の妃たちはそれぞれの明日のことを口にして広間を後にした。そして、そんな4人に従う侍女たちはそれぞれに複雑な表情を浮かべていたのだった。
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