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ウルファの来訪
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ウルファがハレムを訪れたのは夜会の3日後だった。ウルファの訪れは前日には妃たちに知らされ、全員で出迎えた。
「ウルファさま、ようこそ」
「あら、わざわざ待っていてくれたの?ありがとう」
全員で出迎えるとウルファは驚きながらも嬉しそうに微笑んで持ってきた包みを差し出した。
「お菓子を持ってきたの。みんなでどう?」
「ありがとうございます」
微笑みながらアイーシャが礼を言う。中庭に傘をたてて日陰を作り、そこでお茶をすることになった。
「アイーシャ、体調は大丈夫なの?」
「はい、最近は落ち着いています」
「そう、よかったわ。シャロンやアランも元気そうで安心したわ」
ウルファは妃たちに声をかけては楽しそうに茶を飲んだ。
「最近はザイードの周りが騒がしいようだから、こちらにも何か手を出してきていないかと思ったけど、大丈夫のようね」
ウルファの言葉に妃たちの表情が険しくなる。シャイムだけはよくわからずキョトンとしていた。
「シャイムがハレムに迎えられたから、自分の息子をぜひハレムにという貴族が増えたのよ」
キョトンとしているシャイムにウルファは苦笑しながら言った。
「えっと、俺のせい、ですか?」
「いいえ。全くそんなことはないわ」
困惑したようなシャイムにウルファがきっぱりと首を振る。ウルファはシャイムを隣に呼ぶと優しく頭を撫でた。
「あなたのせいではないわ。ただ、久しぶりにザイードがハレムに妃を迎えたこと、それが奴隷だったこと、という理由で娘がダメならせめて息子を、って貴族たちが出てきたのよ。ハレムに誰かが迎えられるたびにあったことだわ」
「シャイムさまの前はアランさまでしたね。あのときも貴族たちもすごかった」
「でもまだ娘をハレムに、という者が多かった気がしますが、やっと陛下の女嫌いを理解したのかしら?」
苦笑しながら言うカシムにファティマがころころと笑う。シャロンは冷ややかな目をして扇で口元を隠した。
「陛下が望まれていないのに、ハレムにきたからといって受け入れられるわけでも寵愛されるわけでもないでしょうに」
「自分から辛い環境にくるって、バカなのかな?」
「きっと、ハレムに入ればさえ自分が一番になれると思っているのでしょう。このハレムに序列などないというのに」
普段は穏やかなアイーシャでさえ辛辣な物言いをする。それだけでハレムの妃たちがどれだけ貴族たちを嫌っているかがわかった。
「まあ、あまりうるさいようならアファルが止めるだろうし、それでも聞かないようなら私もいるわ。あなたたちの楽園を脅かしたりはしないから安心してちょうだい」
クスクス笑うウルファの言葉に皆は微笑みながら頭を下げた。
「でも、お母様の容態が芳しくないの。きっと、これ以上よくなることはないわ。そうなれば、私はお母様につきっきりになる。ザイードを助けてあげられないかもしれないわ」
「そういうときこそ、私たちが陛下がお支えする番です。陛下の憂いを少しでも取り除けるように勤めます」
ファティマの言葉にシャイムを含めた妃たちがうなずく。ウルファはその言葉に安心したように微笑んで「お願いね」と言った。
「ウルファさま、ようこそ」
「あら、わざわざ待っていてくれたの?ありがとう」
全員で出迎えるとウルファは驚きながらも嬉しそうに微笑んで持ってきた包みを差し出した。
「お菓子を持ってきたの。みんなでどう?」
「ありがとうございます」
微笑みながらアイーシャが礼を言う。中庭に傘をたてて日陰を作り、そこでお茶をすることになった。
「アイーシャ、体調は大丈夫なの?」
「はい、最近は落ち着いています」
「そう、よかったわ。シャロンやアランも元気そうで安心したわ」
ウルファは妃たちに声をかけては楽しそうに茶を飲んだ。
「最近はザイードの周りが騒がしいようだから、こちらにも何か手を出してきていないかと思ったけど、大丈夫のようね」
ウルファの言葉に妃たちの表情が険しくなる。シャイムだけはよくわからずキョトンとしていた。
「シャイムがハレムに迎えられたから、自分の息子をぜひハレムにという貴族が増えたのよ」
キョトンとしているシャイムにウルファは苦笑しながら言った。
「えっと、俺のせい、ですか?」
「いいえ。全くそんなことはないわ」
困惑したようなシャイムにウルファがきっぱりと首を振る。ウルファはシャイムを隣に呼ぶと優しく頭を撫でた。
「あなたのせいではないわ。ただ、久しぶりにザイードがハレムに妃を迎えたこと、それが奴隷だったこと、という理由で娘がダメならせめて息子を、って貴族たちが出てきたのよ。ハレムに誰かが迎えられるたびにあったことだわ」
「シャイムさまの前はアランさまでしたね。あのときも貴族たちもすごかった」
「でもまだ娘をハレムに、という者が多かった気がしますが、やっと陛下の女嫌いを理解したのかしら?」
苦笑しながら言うカシムにファティマがころころと笑う。シャロンは冷ややかな目をして扇で口元を隠した。
「陛下が望まれていないのに、ハレムにきたからといって受け入れられるわけでも寵愛されるわけでもないでしょうに」
「自分から辛い環境にくるって、バカなのかな?」
「きっと、ハレムに入ればさえ自分が一番になれると思っているのでしょう。このハレムに序列などないというのに」
普段は穏やかなアイーシャでさえ辛辣な物言いをする。それだけでハレムの妃たちがどれだけ貴族たちを嫌っているかがわかった。
「まあ、あまりうるさいようならアファルが止めるだろうし、それでも聞かないようなら私もいるわ。あなたたちの楽園を脅かしたりはしないから安心してちょうだい」
クスクス笑うウルファの言葉に皆は微笑みながら頭を下げた。
「でも、お母様の容態が芳しくないの。きっと、これ以上よくなることはないわ。そうなれば、私はお母様につきっきりになる。ザイードを助けてあげられないかもしれないわ」
「そういうときこそ、私たちが陛下がお支えする番です。陛下の憂いを少しでも取り除けるように勤めます」
ファティマの言葉にシャイムを含めた妃たちがうなずく。ウルファはその言葉に安心したように微笑んで「お願いね」と言った。
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