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ファティマの躍り
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出席者が全員集まると音楽が奏でられ、各々が好きなように楽しんでいた。酒や料理を楽しむもの、数人で集まって話に華を咲かせるもの、王や有力貴族のご機嫌とりにあちこち移動するもの。一段高い場所にある王の席からはそんな広間の様子がすっかり見渡せた。
「シャイム、疲れたら言うのだぞ?」
「はい、ありがとうございます」
王に酌をしながらシャイムがにこりと笑う。王は顔が見えないことを残念に思いながら酒を飲んだ。
「その衣装はファティマが選んだのか?」
「よくお似合いでしょう?」
王の言葉にファティマが反応して尋ねる。王はうなずくと被った布からわずかに見える金の髪に触れた。
「ああ、よく似合っている。まるで月の精のようだな」
クスクス笑う王にシャイムは頬を染めて目を伏せた。
「陛下、ご挨拶申し上げます」
シャイムの様子を楽しげに見つめていた王に声がかかる。やってきたのは妻を伴ったアファルだった。
「アファル。奥方もよくきたな」
「お久しぶりでございます、陛下」
アファルの妻は小柄で、顔を布で隠しているが少女のようにも見えた。
「アファルにいじめられてはいないか?何かあったらすぐに俺に言うといい」
「ありがとうございます。旦那さまはとてもお優しいですわ」
冗談めかした王の言葉にアファルの妻が微笑んで答える。それを目を細めて見つめたアファルは王の隣に座るシャイムに目を向けた。
「シャイムさまにはお初にお目にかかります。陛下の補佐官を勤めております、アファルと申します」
「はじめまして。シャイムと申します」
アファルに挨拶されたシャイムが挨拶を返してほんの少し頭を下げる。アファルは城に迎えられたときにチラッと見た少年の変わりように内心驚いていた。
「ハレムの方々は陛下の癒し。どうぞこれからも陛下を癒してくださいますよう」
シャイムがうなずくとアファルは妻を連れて席に戻っていった。
それからも入れ替わり立ち替わり貴族たちが王に挨拶にやってきたが、王は親しく話をするような者はいなかった。
夜が更け、そろそろお開きというころ、王がファティマに声をかけた。
「ファティマ。お前の躍りを見たい」
「かしこまりました」
王の言葉で音楽を演奏していたものたちが一旦演奏をやめる。ファティマは上座をおりて中央に立つと侍女から鈴のついたベールを受け取った。
「ファティマさまは躍りがとてもお上手なのですよ」
何が始まるのだろうと眺めていたシャイムに声をかけたのはシャロンだった。シャイムが驚いていると音楽が始まる。鈴のついたベールを被ったファティマが音楽に合わせて踊り始めるとシャイムはその美しさに息を飲んだ。
「綺麗…」
ファティマはシャイムを妖精のようだと言ったが、今はファティマが妖精のようだった。ファティマが舞い踊るたびにベールや衣装の裾がひらひらとふわふわと舞う。音楽に合わせて鈴が鳴り、その様子はまるで本当の妖精のように幻想的で美しかった。
「シャイム、疲れたら言うのだぞ?」
「はい、ありがとうございます」
王に酌をしながらシャイムがにこりと笑う。王は顔が見えないことを残念に思いながら酒を飲んだ。
「その衣装はファティマが選んだのか?」
「よくお似合いでしょう?」
王の言葉にファティマが反応して尋ねる。王はうなずくと被った布からわずかに見える金の髪に触れた。
「ああ、よく似合っている。まるで月の精のようだな」
クスクス笑う王にシャイムは頬を染めて目を伏せた。
「陛下、ご挨拶申し上げます」
シャイムの様子を楽しげに見つめていた王に声がかかる。やってきたのは妻を伴ったアファルだった。
「アファル。奥方もよくきたな」
「お久しぶりでございます、陛下」
アファルの妻は小柄で、顔を布で隠しているが少女のようにも見えた。
「アファルにいじめられてはいないか?何かあったらすぐに俺に言うといい」
「ありがとうございます。旦那さまはとてもお優しいですわ」
冗談めかした王の言葉にアファルの妻が微笑んで答える。それを目を細めて見つめたアファルは王の隣に座るシャイムに目を向けた。
「シャイムさまにはお初にお目にかかります。陛下の補佐官を勤めております、アファルと申します」
「はじめまして。シャイムと申します」
アファルに挨拶されたシャイムが挨拶を返してほんの少し頭を下げる。アファルは城に迎えられたときにチラッと見た少年の変わりように内心驚いていた。
「ハレムの方々は陛下の癒し。どうぞこれからも陛下を癒してくださいますよう」
シャイムがうなずくとアファルは妻を連れて席に戻っていった。
それからも入れ替わり立ち替わり貴族たちが王に挨拶にやってきたが、王は親しく話をするような者はいなかった。
夜が更け、そろそろお開きというころ、王がファティマに声をかけた。
「ファティマ。お前の躍りを見たい」
「かしこまりました」
王の言葉で音楽を演奏していたものたちが一旦演奏をやめる。ファティマは上座をおりて中央に立つと侍女から鈴のついたベールを受け取った。
「ファティマさまは躍りがとてもお上手なのですよ」
何が始まるのだろうと眺めていたシャイムに声をかけたのはシャロンだった。シャイムが驚いていると音楽が始まる。鈴のついたベールを被ったファティマが音楽に合わせて踊り始めるとシャイムはその美しさに息を飲んだ。
「綺麗…」
ファティマはシャイムを妖精のようだと言ったが、今はファティマが妖精のようだった。ファティマが舞い踊るたびにベールや衣装の裾がひらひらとふわふわと舞う。音楽に合わせて鈴が鳴り、その様子はまるで本当の妖精のように幻想的で美しかった。
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