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地獄に堕ちても
しおりを挟む「っ‥‥‥‥じょうだんじゃねぇよ!!!!!!」
身体は立ち上がり、上を向いた。
「ふざけんなよっ!!!せっかくっ‥‥リリィと!!礼蘭と結婚したのに!!!!お前は俺に罰を与えるために俺に礼蘭の記憶を返したのかよ!!
お前に俺は命を握られてたのかよ!
この国の皇太子が!!妃が結婚して未亡人とか!
俺は絶対!!!認めねぇからな!!!!
地獄に行ったってマグマの下からでも這い上がって生き返ってやるくそが!!!!」
《何を言い出すかと思えば、そんな戯言を‥死んだそなたに出来ることなどない。それに地獄ではなく次の世だ。》
「うるせぇ!!!いっそ地獄にでも突き落とせこの血も涙もない神が!!!!結婚してすぐ死ぬ新郎なんて俺はならねぇ!!リリィと!!!礼蘭ともう一度ジジィになるまでずっと一緒にいるんだ!!!!
死んでなんかっ‥っ死んでなんかやるもんか!!!!
俺は死んでなんかねぇよ!!!!」
《ふっ‥‥‥ふはっ‥‥‥はははははははっっ!!!!
神に逆らうか。そなたはやはり、生粋の馬鹿だ。》
「なに笑ってんだよ!!!冗談じゃねぇよ!!!!
俺は死んでなんか居られねぇんだよ!!!」
《認めぬか、死を認めぬ霊魂となって彷徨うか?
あれは2年そなたから離れずにいたな‥‥
そなたは何年リリィベルの泣き顔を見てそんな事を言い続けるのか。可哀想な奴だ‥‥。》
「っ‥はあっ‥‥だからぁっ‥‥‥俺はっ‥‥ぅ‥‥っ2度と離れねぇって‥‥‥約束したんだっ‥‥勝手に俺を殺してんじゃ‥‥‥」
怒鳴り声はいつの間にか涙と一緒に溢れて止まらなくなる。
口にすればするほど、この言葉が、自分へと返ってくる。
突然の死
別れ‥‥‥
絶望‥‥
そんなものは‥‥もう十分だ‥‥
罰なら、せめて‥‥リリィと‥‥
「なぁっ‥‥‥帰してくれよっ‥‥‥なぁっ!!!!
ジジィになってリリィとの人生を終えた後はっ‥‥
なんでもいいっ!!!‥‥‥帰してっ‥‥‥
次は生まれ変わらなくてもいいからっ!!
もう礼蘭とっ‥‥リリィと死に別れるのは嫌だっ‥‥‥
こんな別れをするくらいならっ‥‥俺はっ‥‥
こんな風に悲しませるくらいならっ‥‥出逢わなければっ‥‥‥もぉっ‥‥‥人にはっ‥生まれたくないっ‥‥
もぉっ‥‥‥リリィを悲しませるくらいならっ‥‥
もう俺との縁は‥‥っ‥‥俺と出逢わなければっ‥‥
幸せに生きてくれるならっ‥‥
やっぱり嫌だっ!!!!!
俺は礼蘭とっ!!!リリィと幸せに生きるんだ!!!!
俺の人生勝手に決めんなっ!!!
俺は俺の悔いのない未来をっ‥‥今度こそリリィを幸せにするんだっ!!!!!俺はっ‥‥死なねぇっ!!!!」
「リリィ‥‥少しは休め‥‥‥倒れてしまう前に‥‥。」
「いやです‥っ‥‥お義父様っ‥‥私が手を離したらっ‥‥‥
テオの手がっ‥‥冷たくなってしまいますっ‥‥‥
いやですっ‥‥っいやっ‥‥‥っ‥‥ぁぁぁっ‥‥‥」
そこは、綺麗なシーツの上に横たわったテオドールのベットの端、リリィベルは何時間をそこを離れずにいた。
突然の出来事だった。
事故は予測出来ないものだ。
彼は無事に女の子を助け、自分に笑いかけた後だった。
車輪が勢いよく飛んできた。
トンと、身体を無意識に押され、気がついたら大きなぶつかる音と共に崩れ落ちたテオドールは、大量の血を流した。
どこからかやってきたハリーが、治癒魔術を施したのに、
治ったのは血だけだった。
ハリーに連れられ城へと転移した後、やってきたロスウェルと国賓としてきていたレオンがテオドールを見えない膜で包んだ。
飛んできた皇帝と皇后は、顔を青くして皇后はその場で泣き崩れた。
悔しげな顔で、ロスウェルがしたのは、この時間を遅らせその命の炎を途絶えさせない為だった。
そして、レオンとハリーが全力で治癒魔術を施した。
それなのに、テオドールは目を閉じたまま動かなかった。
「神がっ‥‥‥」
ロスウェルが悔し気に呟いた。
「神‥‥?」
リリィベルの瞳から涙が一筋流れ落ち、その言葉に疑問を抱いた。
「っ‥‥神の力にはっ‥‥抗えないっ‥‥くそっ‥‥‥っ‥‥」
「すみませんっ‥‥止めようとした車輪がっ力が阻害されてっ‥‥どうしてもっ‥‥止められなかっ‥‥‥。」
ハリーが涙目になりながら全力の魔術を放出する。
テオドールと一緒に作り上げたこの治癒魔術が、
本人に効かないなんて、認めたくなかった。
みんなを救いたいと言った彼が、ここで途絶えてはいけない。
「殿下っ‥‥っ」
「この抵抗はなんですっ?!月が彼を覆っているようだっ‥‥。」
レオンの額に汗が浮かんでいた。
トップクラスの魔術師3人が力を合わせているのに、テオドールの傷が治らず、意識が戻らない。
これは、死を意味してしまう‥‥‥。
この時を遅らせて、その身体が冷たくなってしまう前に‥‥。
「テオっ‥‥‥いやよっ‥‥」
リリィベルはテオドールに擦り寄った。
月を力をすり抜けて、テオドールの手を握った。
「!!!!!」
その何も無いようにリリィベルがテオドールのそばに近付いた事に驚いた顔をした3人だった。
その手を頬に当てて、涙を流した。
「いやよ‥‥‥っ‥‥離れないってっ‥‥2度と離れないって‥‥言ったじゃ無いっ‥‥‥。」
「っ‥‥‥どこかへ行ってしまうならっ‥‥私も一緒にっ‥‥連れてって‥‥‥っ‥‥。」
魔術師達だけが見える。テオドールは月のような丸い淡い光の中に覆われて魔術が阻害される。
そんな中に入り込み、テオドールの側についたリリィベルはやはり招かれる存在だった。
この人しか、テオドールの側には近づけない。
「くそっ‥‥」
ロスウェルはリリィベルにかけた自分の保護魔術がどんどんと小さくなるのを感じていた。きっとアンクレットも砂のように消えたかもしれない。出掛ける前にかけた魔術がなんとか残っていて彼女を守っている。
テオドールにかけた魔術は、ここに来る前、ハリーの魔術を阻害した時から無くなっていたと聞く。
「俺はっ‥‥‥あきら‥め‥‥ないっ!!!」
魔術師としての誇り、オリヴァーの宝物。
小さな頃から見守っていた。血を分けた子のように大切だったテオドール。
焼ける手の刻印が炎を上げるように熱くなっていった。
神の仕業ならば、最後まで抗ってやる‥‥。
魔力を持つ者として‥‥出来る限りを。
この、人と違う力を持って生まれて、このまま終わることは出来ない。
「‥‥妃殿下っ!!‥‥名をっ‥‥名を呼んでくださいっ‥‥。」
ロスウェルがテオドールの側で泣き崩れているリリィベルに叫んだ。
「っ‥な‥まえ‥‥‥?」
「あるでしょう‥っ?‥‥‥あなた方の‥秘密の名が‥‥‥っ」
リリィベルはロスウェルの顔を見て泣き腫らした目を見開く。
なぜ、それを知っているのか、そしてなぜ今呼べというのか‥‥
リリィベルは、震える唇で
その名を呼んだ。
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