186 / 240
繋いで、心 5
しおりを挟む「‥‥‥よし、正面からモンターリュ公爵邸へ行こう。」
「あの殿下、朝から?」
「おう、昼には城に乗り込んで国王の首を取り解決、帝国に帰る。」
「あの‥公爵家にもおりますよ?騎士団が。」
「だからどうした。」
テオドールはキョトンとした顔ではて?という顔だ。
ロスウェルはさすがに苦笑いした。
「殿下、私もおりますが、さすがに公爵家となれば騎士団がたくさんおりますでしょ?我々二人ですよ?」
「なんの為の俺とお前だよ。お前は魔術、俺は刀。
それで十分だろ。」
「いやいやいや、皇室騎士団くらいの量はいますよ?」
「だからなんだ。どうせこの公爵家をぶっ潰すんだ。
遠慮する必要があるか?騎士と名の付くやつはやられたって文句はないだろ。俺は無差別にやろうと言ってるわけじゃない。だがまぁ‥‥そもそも王妃を拘束した家だ。そんな事したから潰れるんだ。その後のことは王妃に判断させる。
誰を生かして、誰をおさらばさせるかは。」
「‥‥まぁ、では‥拘束しておくという事でよろしいですかね。」
「探しもんに邪魔になる奴は切り捨てる。
レティーシャ王妃が見せくれた公爵邸の見取り図だが‥‥。」
「私の魔術で辿れるといいのですが‥‥。」
ロスウェルはうーんと考え込んだ。
しかしテオドールはニッと笑った。
「なぁ、ロスウェル、お前は大事で見られたくない代物は何処に隠す?」
「え?‥‥私なら辿れない隠し倉庫とか‥‥。」
「あぁー、それじゃあ魔術使える奴にしか出来ねぇ技だなぁ。まぁその発想も仕方ねぇよなぁ‥‥。」
「殿下は何処です?」
「そうだなぁ‥‥‥誰にも見えないようになっているとしたら、何処に隠しても一緒だろ?要は、その辺に転がしておいても分からないって事だよな。まぁ、それでも隠しておくだろう‥‥‥。悪趣味野郎は、何処に隠すか‥‥楽しみだな。」
テオドールは幾つかの候補を胸の中で思い描いた。
「殿下!見当があるならちゃんと教えてくださいね!」
「お前が辿ってみるのが1番なんだがな。」
「そりゃやりますよ!魔術師の名にかけて!!」
パンと胸を叩いて強い意志を見せるロスウェル。
そんなロスウェルを見てニヤッと笑うテオドール。
「行く前に飯食って行こうぜ!あ、俺の髪黒髪にしてくれよ。変身しねぇとな街中は。」
ロスウェルの魔術で、2人はポリセイオ王都の路地裏に一瞬で転移した。黒髪になったテオドール、同じく黒髪にしたロスウェル。元々身なりはどこかの平民だ。だが、シャツに皺一つないのが少々気になるところだ。
そんな事はお構いなしにテオドールは堂々と王都を歩いた。
出店の美味しそうなパンの匂いに釣られてパンを買って頬張る姿は平民だった。妙に様になっていたのをロスウェルは横目に見ていた。
ポリセイオ王都は街中を流れる透き通った水路や噴水、水車が点々とあり涼しげで綺麗な街並みだった。冬なのに水が凍ることが無いほど、暖かい気候で、外套一つで済んでしまう。
キョロキョロ見渡してはテオドールはふむふむと感心している様子だ。
「殿下‥」
「それはやめろ。」
「失礼‥‥なんとお呼びしましょうか‥。」
そう言うと少し考えてテオドールはニッと笑った。
「テオでいいだろ。」
「あ‥よろしいので?」
「いいんじゃん?」
「ではその様に‥‥。」
「ま、テオドールなんて珍しいか?バレないぞ?」
「お忍びには付き物でしょ?」
「形から入るのは嫌いじゃねぇけどな。しっかし、あったけーなポリセイオ‥俺動いたら外套もいらねー気がする。」
最後の一口のパンを口に放り込んで、パンパンと手を叩いた。
「さて、腹ごしらえもしたし、いつでもいーぞ俺は。」
「せっかちですねぇ、相変わらず‥‥。」
ロスウェルはもしゃもしゃとまだパンを食べていた。
その隣で身体を伸ばしテオドールは生き生きしていた。
どうも戦い間近になるとテオドールの気分は上がりに上がる。
要するにすでに出来上がっている。
柔軟体操を始めて、今か今かと心待ちにしている。
そんな様子にロスウェルもふと笑った。
最後の一口を飲み込んだ所で、ロスウェルもパンクズを払いテオドールに笑みを見せた。
「では、行きましょっか?」
「おう、行こうぜ。宝探し。」
気合十分の2人、人の居ない場に出ると、
パチンと指を鳴らした。
「じゃじゃん!!!」
転移した直後、テオドールは堂々と効果音をつけた。
「ははっ、楽しそうですね。人の気も知らないで。」
「へっ、これは悪党退治だろ?」
テオドールが目の前に右手を出すと、ロスウェルは黙って隠しておいた刀を出した。それをテオドールが握る。
「よし、門番からぶっ飛ばそうぜ。」
刀を肩に引っ掛けて、テオドールはさっさと歩き始めた。
モンターリュ公爵邸の立派な門に、兵士が2人両端に立っている。
前方からやってくる不審者2人に気付くと、兵士はその様子を不審に思い身構えた。
「何者だ!」
1人がそう言うとテオドールはニヤリと笑う。
「曲者だ。」
「なっ‥‥なにぃっ?」
自分から曲者などと言って堂々とやってくる。
ゾクりとするその気迫に、兵士達は剣を抜いた。
「これ以上近寄るな!!ここを何処だと思っている!」
「へへっ、もちろん知ってるさ‥‥‥
俺達を止めてみな‥‥モンターリュ公爵の兵士達。」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【本編完結】独りよがりの初恋でした
須木 水夏
恋愛
好きだった人。ずっと好きだった人。その人のそばに居たくて、そばに居るために頑張ってた。
それが全く意味の無いことだなんて、知らなかったから。
アンティーヌは図書館の本棚の影で聞いてしまう。大好きな人が他の人に囁く愛の言葉を。
#ほろ苦い初恋
#それぞれにハッピーエンド
特にざまぁなどはありません。
小さく淡い恋の、始まりと終わりを描きました。完結いたします。
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる