ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

文字の大きさ
上 下
177 / 240

瞬き

しおりを挟む
 俺は知ってる‥‥‥

 微かな‥‥


 この星の煌めき‥‥‥



 幻のような‥‥



 涙に濡れた君の顔‥‥‥‥




「‥‥‥ぁ‥‥‥お前‥‥‥なんで‥‥‥」


 扉の前にリリィベルが立っていた。

「‥‥寝てたんじゃなかったのか‥‥?」

 喉の奥から絞り出した言葉。
 月光に照らされたリリィベルの青白い姿。


 にこりと微笑む愛する人がいる。


 音もなくただ近寄ってくる。

 座り込んだテオドールのそばに膝をついて、



 抱きしめた。


「リリィ‥‥‥?」
「‥‥‥あなたを‥‥1人にしたくなくて‥‥‥。」


 やっと声が聞こえた。

 それは、今か前世(むかし)か‥‥‥。



 テオドールは感じるリリィベルの小さな身体を抱きしめた。
 ほっとする温かい体温。


「あなたと‥‥離れたくなくて‥‥‥。」

 リリィベルの籠った力を僅かに感じて、呼吸した。
「リリィ‥‥‥。」


 感じる髪の感触と、触れる体温。
 耳元に感じる小さな息。


「‥‥目覚めたらあなたがいなくて‥‥‥

 どうしようもなくて‥‥‥


 私‥‥‥もう限界みたい‥‥‥っ‥‥‥。」


 泣き声のような言葉が胸に染み渡る。

 テオドールの瞳が揺れた。




 それからは、魂と体温と息遣いに神経を持っていかれて。

 ベッドに倒れ込んで、夢中で抱きしめた。

 月明かりで光る顔を見て、心底ほっとして、ときめいて、
 愛しくて、たまらなくて‥‥。


「っリリィ‥‥‥大丈夫だよ‥‥‥。

 俺は‥‥お前を‥‥忘れたりしない‥‥‥。」

 涙がリリィベルの頬に落ちて、その涙を受けて、
 リリィベルは、安心したように笑った。

「‥‥はい‥‥っ‥‥‥あなただけが‥‥‥

 私を探して見つけてくれるって‥‥信じてましたっ‥‥。」



 初めてこの世界で、裸で抱きしめ合った。


 心が潰れそうだ。


 確かめ合うその体温と、愛。
 どんな世界に居ても、離れる事はできない。


 溶け合う身体で、繋ぎ止めて、絡み合う唇で刻んで


 もう2度と離れたくないと願って願って願って



 言葉だけじゃ足りなくて‥‥





 この魂は、一つで出来ていると、そう思い知る夜だった。





「‥‥‥リリィ‥‥つらくないか?」


「‥‥大丈夫‥‥です‥‥‥。」


 いつもの部屋で、抱きしめた。
 直に感じる肌と肌は、最初から分かっていたように吸い付いている。

 暁色に染まる。朝がやってくる‥‥。


 テオドールは、リリィベルの汗ばんだ前髪に唇を付けて諦めたように笑った。

「へへっ‥‥‥父上に、怒られるな‥‥。」
「ふふっ‥‥‥一緒に怒られましょ‥‥?」

 後悔は少しもなかった。これが自然だから。


「‥‥‥幸せで、目が眩みそうだ‥‥‥あんなに、
 怖かったのにな‥‥‥今、幸せで怖いくらいだ‥‥。」

 テオドールの瞳に、溜まった涙がそれを示していた。

「私もです‥‥‥あなたと、こうして抱きしめ合う事が出来て‥‥‥。ずっと、包まれていたいです‥‥。」



 ずっと我慢してきた。でもきっと‥‥


 お互いに限界だったんだ‥‥。



 積もり積もった想いが、不安に弾けて大波となって押し寄せた。止まる理由を忘れてしまった。


「‥‥‥もう少し‥‥ねよ‥‥‥?」
 解放感と、疲労でテオドールの目はゆっくりと落ちていった。リリィベルも吸い込まれるようにその感覚にのまれていった。


 起きたらまた、問題はたくさんあって、

 でも。少しだけ強くなれたような気がしてて、




 離れないよって、身体を繋いだこの絆が、
 大丈夫だよって、何度も教えてくれた気がした。






「ぅ‥‥‥っ‥‥‥。」

 吸い込んだ声で漏れた。
 いつまで経っても呼ばれずに扉の前で立ち尽くすメイド達の俯いた顔。扉を開けて衝撃を受けたオリヴァーの第一声だった。


 静まり返ったテオドールの部屋。
 きっと疲れて気絶したように寝てるのかと思いきや、
 テオドールのベッドに、マーガレットと一緒に寝たはずのリリィベルと、テオドールが裸でシーツにくるまっていた。


「っがっ‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥‥‥っ‥‥‥はあ‥‥‥。」


 頭を下げて、片手で両目を覆った。


 オリヴァーはしばらく沈黙した。


「やっちまったなぁ‥‥‥。」
 小さく呟いた。


 スヤスヤと眠る2人に、そんな言葉しか出てこなかった。

 くるりと後ろを向いて、また深く溜息をついた。



「気持ちはわかるがな‥‥‥‥なぜ俺は見たしまったんだ‥‥」

 息子の諸事情を目の当たりにして、やり場のない気持ちが込み上げてきた。

 だが、どうしても本気で怒る気になれないのが情けない。


「わからない‥‥‥まだわからない‥‥‥そんなっ‥‥

 1日だけじゃ出来ない‥‥っ‥‥それはダメ‥‥だ‥‥‥

 いやっ‥‥‥例えそうでもっ‥‥いや!っ‥‥‥


 俺だって、一回じゃないっ‥‥‥‥大丈夫だ‥‥


 いや、受け入れるがな?!嬉しいがな?!


 ‥‥‥まだ子供は‥‥せめて結婚式まではっ‥‥‥


 5ヶ月‥‥いや、分かってもギリ4ヶ月っ‥‥‥。


 うぅぅんぁぁあああ‥‥‥‥。」





 ぶつぶつとした声に、返事が来た。

「うっせ‥‥‥‥。」
 寝ぼけ眼の息子からの声が。


 ギロっとオリヴァーがテオドールを見た。
 その殺気に目覚めたテオドールは、ガバッとリリィベルを隠した。

「嘘でしょ!」


 みたの?!っと言いたげな驚いた顔のテオドールがそこにある。

「それはこっちの台詞だバカ息子。」
 ニコリと微笑んだオリヴァーだった。

「ちょ‥‥っ早く出てくださいっ‥‥‥」
「なんだと?」

「気まずいでしょっ‥‥出ろって‥‥‥。」

「そんな口を聞いていいのか?」
「‥ちょっ‥‥‥ごめんなさい、とりあえず、出て‥‥

 出ててっ‥‥‥ください‥‥。出ろよマジでっ!」

 冷や汗を流してテオドールはお願いした。

 オリヴァーの頭に角でも生えそうなくらいの笑みが浮かんだ。

「パレードまで2時間だ‥‥‥。チッ‥‥‥さっさと用意しろ。

 後でじっくり話聞くからな‥‥‥‥。」

 最後の言葉だけ、とてつもなく低い怒りの声が腹に響いた。

 テオドールはゴクっと息を呑んでコクコクと頷いた。




 パタンと扉が閉められた。

 両手が勝手に胸に当てられた。
「‥こぉぉぉぉ‥‥‥‥えぇぇぇ‥‥‥‥‥。」

 すぐバレた。と言うか、こんな姿を見られた。
 最早見られた。すぐバレた。

 そんな言葉が頭を駆け巡った。

 すごく悪い事をした気分になったのは久しぶりだ。
 前世ではフルオープン生活だったはずなのに
 習慣とは怖いものだ。

 ダメだダメだと思いながら、起こったこの出来事は、
 しばらく2人の間で楽しむはずだった。


 だが、そんな予定はあっさりと破り捨てられた。


「‥‥‥‥‥。」

 テオドールは、何を思ったか、チラリとリリィベルに掛けたシーツをめくった。


「‥‥‥‥‥ぅう‥‥‥。」

 小さく唸った。
 艶めく姿に唸ったのだ。

 小さくリリィベルは身震いした。
「ごめんなさい。」

 そう言ってまたシーツをかけた。


 もっと格好付けておはようってしたかった。


 けれど、そんな朝とは無縁となったし、
 これからパレードに向けての支度が待っている。

「リリィ‥‥‥リリィ‥‥‥。」
 耳元で小さく囁いた。
 その声に嬉しそうに身じろいで、口元が笑う。

「はぁ‥‥‥くそ‥‥‥かわい‥‥‥。」

 このまま2人で過ごしていたい。

 めでたく明けましておめでとうになってしまった。

 だが、皇族と婚約者はそんな言葉で祝ってる暇はない。

 リリィベルの前髪をかき上げて、額に口付けた。
「リリィ起きてくれ‥‥‥。」
「んん‥‥‥テオ‥‥?」
「うおっ‥‥‥。」
 片目を開けて、細い腕を伸ばしたリリィベルに引き寄せられた。

 抱き寄せられて、テオドールの顔は赤く染まった。
「リリ‥‥‥すまん‥‥時間がねぇ‥‥‥。」

「ん?‥‥‥んんん‥‥‥‥。」

 テオドールの胸板が目の前に映って、リリィベルは驚いて目を見開いた。

「あ‥‥‥‥。」
「おはよう‥‥リリィ‥‥‥。」


 辛うじて上半身を抱き上げて、恥ずかしそうに呟いた。

「テオ‥‥‥っ‥‥私っ‥‥‥あの‥‥‥。」
 リリィベルの顔がどんどん赤く染まっていった。
「身体はつらくないか?」

「あ‥‥‥‥えと‥‥‥‥。」

 昨夜はかなり濃厚な時間だった。
 初めてのその時間に、テオドールも余裕かましてる思考回路はちぎれ取れていたはずだ。

「わりぃ‥‥‥体つらいだろ?‥‥風呂に長めに浸かってられるように、今すぐ起きよう‥‥な?」

「あ‥‥‥はい‥‥‥。」
「ふっ‥‥‥照れくさい朝になっちまったな。」


 そう言ったが、テオドールはリリィベルに口付けた。

 お決まりのその合図で、朝が始まる。


「んふっ‥‥‥‥おはようございます。」

 リリィベルも、柔らかく微笑んだ。
 その笑顔を見て、テオドールは満足そうに笑った。


「愛してる‥‥‥リリィ‥‥‥。」



 嬉しくて、恥ずかしい朝となった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...