ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

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初めまして、メテオラ王国

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 アレキサンドライト帝国の城に豪華な馬車が並んだ。
 先頭についたのは古くからの同盟国であるメテオラ王国という、東部にある王国だった。メテオラは炎の様に真っ赤な髪を持つ王族がいる。アレキサンドライトの皇帝とメテオラの国王は古くから友人で、それが代々続いており最も友好な関係が今でも続いている。メテオラ出身の王女がアレキサンドライト皇帝に嫁いだ歴史もある。けれど何故かアレキサンドライトの血筋にメテオラの血が受け継がれる子が設けられることはなく、帝国内で側室を迎え後継者が産まれる。しかしメテオラの王女を大切に守り抜いたアレキサンドライトの皇帝がいる歴史から、今でもその友好は続いている。

 そして、今のメテオラ国王には2人の赤髪の王子がいる。

 1番に辿り着いたメテオラの王子2人が帝国の城へと足を踏み入れた。

 情熱的な赤髪と少し吊り上がった目元が印象的な第一王子、そしてそんな第一王子よりも穏やかそうな目元が印象的の第二王子がテオドールとリリィベルに向き合った。

「アレキサンドライト帝国、皇太子殿下にご挨拶申し上げます。建国祭にご招待頂き光栄で御座います。」
 ハキハキのした第一王子に続き、柔らかい声の第二王子がそれに続いた。

「皇太子殿下、ご婚約おめでとう御座います。」

「オスカー!シリウス!久しぶりだな!」
 第一王子オスカー、第二王子シリウスにテオドールは笑顔で2人を歓迎した。そんなテオドールに2人も笑顔を返した。

「来てくれてありがとう。
 そうだ、オスカー、シリウス、紹介する。
 俺の婚約者のリリィベル・ブラックウォールだ。」
 リリィベルの肩を抱き愛しそうにリリィベルに目を向けた。
 そんな彼に答える様に、リリィベルも微笑んだ。

「初めましてオスカー王子、シリウス王子。リリィベル・ブラックウォールで御座います。以後お見知り置きを‥。」
 優雅な礼に、オスカーとシリウスはぼーっとリリィベルを見つめた。

「おっ‥‥これは‥‥‥」
 オスカーの額に汗が浮き出た。
「噂は本当でしたね。オスカー。」
 オスカーとは反対にシリウスは笑顔を見せた。

 2人はテオドールが城に上がってから親交がある。数少ない気心の知れた2人だった。
 だが、2人は目の前の光景が信じられなかった。先に口を開いたのはオスカーだった。

「テオドール‥‥お前、そんな顔出来るんだな。」
「あ?」
「自分の表情は鏡を見ないと分かりませんからね。」
「なんだよ。‥惚れんなよ。俺のだから。」

 テオドールは当たり前の様に2人に告げた。

 オスカーは首をボリボリ掻いて、シリウスはクスクスと上品に笑った。

「真顔でそんなこと言うなっての。盗らねーよ。そんな猛獣手懐けた女。俺らの手に負えねーよ。」
「ですね。なにせ舞踏会では氷山の如く動かないあのテオドールを溶かした女性。恐れ多くてとてもとても‥

 しかし、噂は本当でした。女神が嫉妬する程の女神だなんて実在したんですね。お美しいです。」

 シリウスの言葉にテオドールはピシッとリリィベルを抱きしめた。

「おい。惚れんなよ。」
「惚れませんて。戦争したくないです。」
 はははっと笑ってシリウスは体をくの字に少し曲げて笑った。それはやがてオスカーにも移り2人の王子は笑っていた。

「何笑ってんだよ!似た様な顔しやがって」
「兄弟ですから。」
「くくくっ‥まーじウケる。くそ真面目に言ってんぜ。
 あのテオドールがねぇー。やっべぇな。」
「俺は真剣に言ってる。いいか、お前らがいくら言おうがな。‥‥落ちるんだよ。沼の様にだ。」

 テオドールは真剣だ。高額な女となったリリィベルだ。怖いくらいに身に染みている。

「テオドール殿下、もうその辺で‥‥」
 やっとのことでリリィベルがテオドールを制止した。
 テオドールの両手を握りしめて眉を下げる。
「殿下が私をその様に思ってくださって私は嬉しいです。
 ですが古くから親交あるメテオラ王国の王子様方なのですから‥その様な事をおっしゃられては私も身の置き所がございません‥。」

「お前の身の置き所は俺だ。」
「ですから‥‥」
 リリィベルは困った顔で笑った。これは苦笑いだ。
 そんな2人にオスカーは‥‥

「ぶはぁっ!!!シリウス、マジでテオドールがやべぇぞ。背後取られねぇ様にさっさと部屋当ててもらおうぜ。」
「それが良さそうですね。お2人のロマンスを見にきた訳ではありませんから。荷物を運んでもらう間、皇帝陛下と皇后陛下にご挨拶に行きましょうオスカー。」

「ではテオドール殿下、リリィベル様、我々は皇帝陛下の元へ参りますので‥‥。続きを‥ふふっ。」
 シリウスまで最後は堪えきれずに吹き出した。

「ああ、いーぞ。行ってこい。俺達はまだ迎えなきゃなんねーから。従者についてけ。」
「へいへい。その辺は相変わらずだな。」
「そうですね。根っこは変わりませんね。」

 テオドールの事を話しながら2人は仲良く去った。そんな2人を見送りリリィベルは美しい眉を吊り上げた。

「テオったらっ!!‥‥せっかくのご挨拶なのですよ?!
 いくらご友人の様な方々とは言えっ‥‥。」
 リリィベルの怒った表情に、テオドールは真面目な顔で答えた。


「しょーがねーだろ。」
「しょうがなくありませんっ。」
「アイツらだから言えた事だ。ここからは真面目に牽制するからな。」
「えぇっ?!」
「お前に沼るのは簡単なんだ。花の蜜の香りでも出してるのか?」
「本気ですかっ?!」
「俺はいつも真面目だ。」

 そう言って正面を向かったテオドールだった。
 もうすぐ次の使者達がやってくる。リリィベルはこみかみを少し抑えた。嬉しくない訳ではない。しかし‥‥

 この後どうなることか‥‥牽制が少しでも下がる事を祈っていた。

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