ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

文字の大きさ
上 下
95 / 240

開戦 1

しおりを挟む
 
【イシニス王国へ告ぐ。そちらの提案は断固拒否する。どんな理由があろうとも、

 帝国アレキサンドライトが、イシニス王国と友好を築くことはあり得ないだろう。

 今ここに、イシニス王国へ宣戦布告する。】


 その書状は、イシニス王国に届いた。イシニスの奇襲から8日目の朝だった。

「くっ・・・皇帝め・・・・宣戦布告だとぉっ・・・・?」

 ライディン王太子はその書状をぐしゃりと握りつぶした。

「友好をっ・・・こちらから言ってるだろうがぁっ・・・・・・
 てめぇの首を撥ねる思いでなぁっ!!」
 身体が震えるほどの怒りを露わにして、その書状を破り捨てる。

「おい!!国境へ騎士団を送れ!!!全面戦争だ!!!
 必ず皇太子を打ち破り!城に押し入り皇帝の首を撥ねろ!!!!」

 従者に勢いよく告げた。


「王太子様っ・・・・・」
 従者は震えながら声を絞り出す。

「グズグズしてんじゃねぇよ!!さっさとしろ!!!!」
「そっ・・・・それがっ・・・・・」

「あぁん!?」
 ギロリと睨みつける王太子に従者は・・・・・

「すでにっ・・・・帝国アレキサンドライトの皇太子がっ・・・・・
 カドマンに送った兵士も引き連れてっ・・・王国の城門前にっ・・・・・・・」

「!!!なっ・・・・・なんだとぉっ!?」




 リリィベルとの一件があり、皇帝は速やかに動いた。
 リリィベルがテオドールと水晶玉で会話をしている間の出来事だった。

「ハリー、ロスウェルと連絡を、後でテオドールにも伝えるように・・・・・。」
 皇帝は普段の優しい目ではなく、怒りに満ちた目をしていた。
 その面持ちに、ハリーですら背筋が凍る思いだった。

「はい・・・陛下・・・。」



 リリィベルとのやり取りを終え、テオドールは、ロスウェルから告げられる。

「・・・イシニスに突入すると?」
「はい、殿下。イシニスへ宣戦布告する故、王国の王太子を捕らえる様にと。」

「・・・はっ・・・」
 皇太子はニヤッと笑った。

「・・・事が早くて助かるなぁ。」
「そして、イシニスと繋がりある人物。ブラックウォールへの奇襲。皇后陛下の毒殺未遂。
 すべての罪を明かし、処罰するとの事です。」

「では・・・疑うすべてを拘束すると・・・おっしゃったのだな?」
「はい殿下。厳しく尋問し、そのすべてを根絶やしにするとの事です。」


「そうか・・・。では皇太后陛下も・・・だな?」

 ロスウェルは少し俯いた。
「はい・・・。皇太后陛下は逃れられません。あの日記が、こちらにありますので。
 もう十分だと。おっしゃっております。」

「オリバンダーも・・・」
「はい・・・イシニスの奇襲と関わりがあると疑われるため、拘束すると。」

 テオドールは、真剣な面持ちで、ロスウェルを見つめた。
「・・・俺は必ず、イシニスを潰して、陛下に王太子を土産に持って帰るとしよう・・・。
 ロスウェル、魔術はお前が。俺は刀一本で十分だ。あとで俺の勝負服、持ってきてくれよ。」

 その言葉にロスウェルは固まった。

「・・・あ・・・・アレですか・・・・。」


 ニヤリと皇太子は笑う。

「あぁ・・・・そのアレだ。」


 イシニスの城門前、皇太子は凛々しくそこに立っていた。

「へぇ・・・初めて来たが、でけぇ国じゃねぇか。主がバカじゃなけりゃぁさぞいい国になったろうにな。」

 第二騎士団と、イシニスの兵士を連れてそこへ来た。
 イシニスの兵士たちは、皇太子の姿を見て驚いていた。

 なんとも奇妙で、防御力の低そうなその姿。
 なのに、とても威風堂々とした風貌。その姿に勝ち目など見いだせない。

「王国民には傷一つ付けないが、城は取るぞ。ロスウェルは注意していろ。」
「サーーーー!!」
 騎士団の服を着たロスウェルが嬉しそうに返事をする。
「るせぇな・・・」
 元気のいいロスウェルの声に、皇太子は耳を塞いだ。


「さぁ行くぞ。てめぇらも、気抜くんじゃねぇぞ。」
 後方に控える第二騎士団に声を掛け、その足を進めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

処理中です...