ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

文字の大きさ
上 下
94 / 240

離れていても

しおりを挟む

「陛下!陛下にお目通りを!」
リリィベルは、皇帝陛下の執務室の前にやってきた。
従者はそのリリィベルの様子に慌てた。

「あっ・・・はい。」

従者が声をかける前にガチャっと扉が開き、皇帝が顔を出した。
「どうした、中まで声が聞こえてきたぞリリィ・・・そんなに慌ててどうしたんだ?」
「陛下!・・・少しお時間を・・・」
「あぁ・・・構わない、入りなさい。」

そう言って皇帝はリリィベルを中へと通した。扉の前にイーノクとアレックスが待機する。

リリィベルは険しい顔で皇帝の前に立った。その顔に皇帝は驚き、眉を顰めた。
「リリィ、どうしたんだ・・・?」

「先程・・・皇太子宮の廊下で・・・ヘイドン侯爵にお会いしました・・・。」
「!!なに?なぜヘイドン侯爵が?」

リリィベルは、切なげに眉を顰めて皇帝の袖を掴んだ。

「お父様が奇襲を受けたと言ったのです!陛下の元へ何か知らせは来ていますか!?」
「!・・・・何故そんな事を・・・・」
「陛下!なにか知らせはっ・・・?」
「・・・リリィ、落ち着いて・・・・。」
宥める皇帝に、リリィベルは今にも泣きそうだった。

「・・・・テオ様もいらっしゃらない・・・そんな時にっ・・・なぜお父様まで・・・・」
「リリィ・・・・」
「っ・・・イシニスの仕業ですかっ・・?イシニスの奇襲がブラックウォールまで?」

「・・・リリィ、落ち着いて、話してあげるから・・・落ち着いて。」

そう言ってリリィベルの肩を摩った。

「お義父様っ・・・・どうにかなってしまいそうですっ・・・・・・

テオ様もいらっしゃらないのにっ・・・・お父様までっ・・・・・・

私は何も知らずっ・・・お二人は戦って・・・・」

「大丈夫だよ・・・。さぁ、そこに座って・・・。」

ゆっくりとリリィベルをソファーに座らせた。そして、その頭を撫でた。

テオドールもそうだが、リリィベルもテオドールが居ないとその心はとても脆くなる。
まるで半身がそぎ取られるように・・・。

出来れば、イシニスの件が落ち着くまで言わないつもりだった・・・・。

「リリィ・・・まず、話しておく。ダニエルは無事だよ?ロスウェルが確認している。」
「っ・・では・・・奇襲は誠なのですか?」

「あぁ・・・残念ながら本当だ。イシニスにテオドールが行った翌日、手紙が届いた。
お前に会いたいとの事だったが、リリィ、お前もよくわかっているはずだ。

危険だと分かっていて、ダニエルはお前をそばに寄越せと言う男だと思うか?」


「・・・・・いっ・・・・いいえ・・・・・・。」
リリィベルの瞳から一筋涙がこぼれた。
そんなリリィベルを安心させるように、皇帝は優しく微笑んだ。

「あぁ、そうだ・・・。だから、その手紙を不審に思って、ロスウェルに北部を見てきてもらったよ?
奇襲は残念ながら本当だった。でも・・・。ダニエルは言っていた。

お前が、王都でテオドールに守られていて良かったと。北部にお前が居たら大変だった。

だから、ダニエルはそんな手紙をこちらへは送っていない。それは偽の手紙だった。

誰かが、お前をこの城の外へ連れ出そうとしたようだ。暗殺者の件も知っているだろう?
お前がこの城にいる限り、ロスウェル達の手で守られている。


それを・・・・おそらく、知って・・・外へ出そうとする・・・・・。


すまない・・・・きっと・・・・皇太后陛下の仕業であろうな・・・・・。

魔術師が居る限りお前を害することが出来ないと分かっているから、お前を外へ出そうと。

そう考えるのは、皇族の秘密を知る者のみ・・・・。

だが、安心してくれ・・・。ロスウェルがお前の実家に守りの術を施した。

だから、そんなに泣かなくても大丈夫だぞ・・・。」


皇帝は、リリィベルの涙を拭った。その優しい仕草を見て、リリィベルは顔を歪ませた。

「っ・・・お義父様はっ・・・テオ様・・・そっくりっ・・・・」

「ははっ・・・そうか・・・テオでなくてすまないな・・・。

テオドールを敵地へ送ったのは私だ・・・お前の父を狙っているのも私の母・・・。

本当にリリィには謝る事ばかりだ・・・・。私を憎んでくれて構わない・・・。」

「っ・・お義父様は何も悪くありませんっ・・・皇帝陛下でありっ・・・

私の愛するテオ様の・・・大切なお父様ですっ・・・ごめんなさいっ・・・

何度も情けない姿をっ・・・うぅっ・・・・。」


涙が溢れるリリィベルを、皇帝は少し控えめに抱きしめた。
「情けなくなどない・・・。リリィは・・・王都に来てからいろんな事を耐えて・・・・

必死に頑張っているじゃないか・・・。とても頼もしい息子のお嫁さんだよ?

不甲斐ない私を許してくれ・・・。必ず、皆が安心していられるように全力を尽くすよ・・・。

お前たちの結婚式の時には、何もかも片付けて盛大な結婚式をしよう。

私は、それが今一番の楽しみなんだ・・・。私の息子の晴れ姿と、リリィ、そなたの綺麗な花嫁姿がな。

ダニエルも一緒だ。お前の無事を願っている。心配だろうが、

どうか、私とロスウェル達を信じてくれ・・・。早くテオドールに会いたいだろう・・・。

お前の悲しみを癒せるのは、テオドールだけだろうから・・・。」


そして皇帝は、リリィベルの頭越しに鋭い瞳を浮かべた。


「私はもう・・・決意を固めている。」





しばらくしてから、カタリナに紅茶を部屋に運ばせた。
鼻先と頬を赤くしたリリィベルに、皇帝は微笑んだ。

「落ち着いたか?」
「はい・・・すみませんっ・・・陛下・・・・。」
「いいんだ。だが、理解してくれ、決して城を出てはいけないよ?
せめてテオドールが戻るまでは、踏みとどまってくれ。」

「大丈夫です・・・。口車に乗せられて・・・陛下たちの計画を台無しにしたくありません・・・。」

「ありがとう・・・。窮屈な思いをさせてすまない・・・。」


皇帝は、カタリナを下がらせた。そして指輪を三回叩いた。
「はい。陛下。」

ハリーが初めてリリィベルの前に姿を現す。
「リリィ、この子はハリーと言って、テオドールとは幼い頃から知っている間柄の魔術師だ。
いつもリリィを守っている者たちは別にいるが、ハリーが一番今はちょうどいい。

ハリー、ロスウェルに連絡を。」

「畏まりました陛下。」

皇帝は、リリィベルの頭を撫でて優しく言った。
「私たちは席を外す。・・・・こんな事でもお前の慰めになればいいと思ってな。」
そう言ったのを合図に、ハリーはリリィベルの目の前のテーブルに水晶玉を置いた。

「・・・・これは・・・・?」
リリィベルは不思議に皇帝の顔を見上げた。

「その水晶玉を見つめていろ。私が戻るまで、ここに居なさい。いいね・・・・?」


そう言って、皇帝は隣の部屋にハリーと共に消えていった。

「・・・・・・・・。」
残されたリリィベルは・・・その水晶玉を見つめた。

映った自分の顔は、目の下も、頬も、鼻も赤くなって、なんて顔をしているんだろう・・・・。


けれど、その映った自分の顔は消えて、水晶玉にはテオドールの顔が映り始める。

「っ・・・・・テオっ・・・・・」

両手で鼻先を覆い隠して、リリィベルは驚いた。

その様子に、テオドールはふっと笑みを浮かべたのだった。

【リリィ・・・・泣いたのか・・・・?】

優しいテオドールの顔に、リリィベルはまた涙を浮かべたのだった。

「テオっ・・・・本物・・・ですか?・・・」


水晶玉の向こう。テオドールから映るリリィベルは泣いていた。
ロスウェルから話を聞き、泣いているからと聞いた時、胸が痛んだ。

「・・・・・リリィ・・・・。」
案の定泣いているリリィベルにテオドールは、思わず水晶玉に触れた。



【リリィ・・・・リリィ・・・・顔を隠さないで見せろ・・・何日ぶりだと思ってるんだ?】


【うぅっ・・・テオっ・・・ごめんなさいっ・・・私っ・・ひどい顔をっ・・・・・・】


【ははっ・・・鼻を赤くしてたって、お前は可愛いよ・・・・。】


【そんっ・・そんな訳ありませんっ・・・】


【嘘じゃない・・・本当だ・・・。父君の話は俺もロスウェルから聞いた。

心配しただろ?でも大丈夫だ。ロスウェル達が守ってる。心配いらないから・・・】


【はいっ・・・・・はいっ・・・・っ・・・】


【リリィ・・・・お前は泣いてても可愛いな・・・・。

触れられないと分かっていても、手を伸ばしたい・・・・】


【テオっ・・・・・】



【泣いてるお前を抱きしめられなくて、胸が苦しいな・・・・。

すぐにでも帰りたいが・・・ここから離れる訳にいかない・・・・。

もどかしいな・・・・でも、お前は、俺の婚約者だから・・・・】


【うぅっ・・・・ぅっ・・・・】


【リリィ・・・・離れてても・・・・ずっと愛してるよ・・・・・・。


俺を見て・・・・リリィ・・・・お前の顔を見せて・・・・】



【っ・・・テオっ・・・・会いたいですっ・・・・】


【あぁ・・・そうだな・・・・。俺も会いたいよ・・・・・】



【待ってると・・・誓ったのにっ・・・・すぐにくじけそうになりますっ・・・】


【俺も同じだ・・・。お前の手紙を抱いて眠るくらいだ・・・・。】



【・・・っ私もっ・・・・抱いて眠っていますっ・・・・】


【ははっ・・・そうか、俺たちは一緒だな・・・・。文字で伝えるのもいいが・・・。

直接、その耳に届けたいな・・・。リリィ・・・・


愛してるよ・・・・。愛してる・・・・・。】


【私もっ・・・愛していますっ・・・・・】


【あぁ・・・ずっとお前だけを思ってる・・・。必ず帰るから・・・・】



【・・・・は・・いっ・・・・はいっ・・・・・っ・・・】


【安心しろ・・・俺はいつも、離れてても、お前と一緒だ・・・・。

俺達には指輪があるだろ・・・・?ずっと一緒だ・・・・・。】



「・・・・テオっ・・・・・」
リリィベルは、水晶玉のテオドールを見つめた。

映ったテオドールは、涙こそ流しては居なかったが、瞳が濡れているように見えた。

そして、左手で水晶玉の上部を掴んでいる。


【・・・・ほら・・・これで、お前の頭を撫でてるみたいだ・・・・】

「テオっ・・・・」

【今は・・これで許してくれ・・・・。】


頭を撫でているように水晶玉を摩り、そして、手が離すと、揃いの指輪に口付け微笑んだ。

【愛してるよ。リリィ・・・・。何も心配いらないからな・・・・?

な・・・?俺はいつもお前と一緒だ・・・・。】



愛を囁いて・・・その仕草が色っぽくて、テオドールにまた心を奪われていく。


「テオ・・・帰ったら・・・すぐに・・・私の元へ来てくださいね・・・・。」

水晶玉越しの愛する人に・・・愛が溜まっていく・・・・。


離れていても、吸い寄せられるようにその心へと引きずり込まれる・・・・・。


【もちろんだ・・・。俺の帰る場所は、お前だよ。リリィ・・・・・。】


【・・・はい・・・っ・・・両手を広げて・・・待っています・・・・。】
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...