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現場からは以上でした
しおりを挟む「ぶはぁぁぁ!!!なにアレおもろっっ!!」
水晶玉で一部始終見ていたハリーは吹き出した。
ハリーだけではない、皇帝もロスウェルも腹を抱えて必死で笑いを堪えて、否、笑い過ぎてお腹が痛かった。
皇帝の執務室で、兵士達に水を配り、城壁のからの一連の流れを見ていた3人は皇太子の魔術に完全にハマっていた。
机の上でプルプル震えながら笑すぎで泣いてる皇帝。
「ふっ‥‥テオはっ無事に魔術を使えたなぁ!しかしなんだあれっ!!腹痛いわっ!!」
「陛下っいやぁっ!殿下は魔術師の才能がありますね!!
素晴らしい!!!ぷははははっ!!!
夢見せてくれましたね!!!!」
ロスウェルまで笑い泣きしている。
「殿下っっ‥マジで‥‥っふっ‥‥ありーなってなに?!」
現代を知らない彼らはそれが訳がわからなくても
皇太子の一挙一動がツボにハマった。
あんなサービスは見たことないのだから。
「あーーーー‥‥さいっこうだな‥‥‥アレ見たさに奇襲が増えそうだっ‥‥」
「盛り上がってくぞーーー!!!!!」
ロスウェルがその様子を真似る。
それを見て更には笑う皇帝。
アレキサンドライトは平和である。
「っ‥‥でもっ殿下どうします?」
笑いながらハリーは今後を問うた。
「あーー‥もういっそあそこに置いておきたいが‥
数も数だしな‥‥これは少しずつ奇襲してこちらを疲労させる目的か‥‥イシニスに抗議しよう。
全面的にその気ならこちらからも兵を送るとな。
帝国に影響があってはならない。」
「そうですねぇ‥あそこで殿下があーやってるだけでも防げそうですけど。殿下の魔術には限界がありますので‥」
「魔術がなくてもテオの戦闘において心配はしていないが、今回はあくまで魔術を試したに過ぎない‥‥。
イシニスに抗議し、返答次第で‥戦は避けられない。」
「‥‥2、3日滞在してもらい、あちらの動向を探りましょう。殿下に渡した血の量は多くありませんし、連続して使うのは危険です。」
「あぁ、テオに何かあってはならない‥。」
「盾魔術が使えますが、体力が削られて不意をつかれてはなりませんし‥」
そんな時だった。
扉の前に待機していた従者から声がかかった。
ロスウェルは指を鳴らし2人は瞬時にその姿を消した。
「入れ」
皇帝の声が扉の向こうに届くと、従者は慌てて部屋に入ってきた。
「皇帝陛下。リリィベル様のご実家、ダニエル•ブラックウォール辺境伯から手紙が届きました。」
「なに?どうしたんだ‥急に」
皇帝は不思議な顔をしてその手紙を受け取った。
「‥‥‥‥‥‥」
手紙を読み進めると、皇帝はその眉間に皺を寄せた。
「‥‥お前は下がってよい。」
従者に声をかけて、部屋を下がらせる。
従者が下がるとロスウェルとハリーがまた姿を現した。
皇帝はロスウェルに手紙を見せた。
「‥‥‥誰かに奇襲を受けた?」
「あぁ、だが、幸い被害はないそうだが、
連日きているようだ。そして、リリィベルに会いたいと‥」
「・・・奇襲が来ているのに?・・・」
「妙だな、娘をそんなところへ寄越してくれとは言わないはずだが。」
皇帝とロスウェルは顎に手を当てて考えた。
ハリーもそれを見る。その鋭い目で‥
「これ、本当にブラックウォール辺境伯ですか?」
「・・・・誰か別の者が書いた偽の手紙・・・」
ロスウェルがそう呟いた。
ハリーは黙ってその手紙を見ていた。
「‥陛下の元にご実家から手紙がきたら、いずれリリィベル様の耳に入ります。
奇襲が本当であったとしても、連絡を寄越すでしょうか?」
「確かに‥ダニエルなら‥」
するとロスウェルが口を開く。
「陛下、私が辺境伯の元へ行ってきましょう。どの様な事態なのか・・・・。」
「北部まで行けるか?」
「まーー・・・・・ちょっと遠いので、血を5倍頂けますか?」
「・・・・・5倍か・・・・・」
皇帝は少しげんなりした顔をしたが、ハリーがすかさず言った。
「血が足りないのは補えないので、肉食べて下さいね。」
「・・・・・・・・・ダニエルとリリィの為だ。」
皇帝は、少し引き気味で目を閉じた。
五本の指には一つずつ少し大き目な穴が開いたのだった。
「あ、なんかいつもより痛々しいので、治癒魔術かけましょう。」
ハリーが皇帝の手をぎゅっと握りしめた。
「・・・・便利だな。直してくれるって・・・。」
遠い目をして皇帝は呟いた。
たんまり血を賜ったロスウェルは、北部辺境のブラックウォールを密に訪れた。
姿は周りには見えないが、ブラックウォール家の屋敷にロスウェルはいる。
「ダニエル様!」
ダニエルの執務室に執事がくる。
「・・・・なんだ。」
「ダニエル様、一体何者でしょうか・・・。ブラックウォールのダニエル様を夜中に奇襲するとは・・・。」
ダニエルの頬には刃物で切れた跡がうっすら残っていた。
「・・・グリーンの眼をしていた男だったな。」
机の前に座り、ダニエルは考え込んでいた。
「とにかく、お前達に被害がなくて良かった。今夜も奇襲に備えよう。
騎士団を配置するから、お前たちは安心しろ。」
「私たちの事よりご自分を・・・狙われているのはダニエル様です。」
「何を言っている。お前たちの誰かが人質になったら、私はこの首を差し出さねばならないぞ?」
「何をおっしゃっているんですか!」
執事が更に慌てだす。その様子を見て、ダニエルは机に飾ってあるリリィベルの姿絵を見つめた。
「リリィが王都で殿下に守られていて良かった・・・。いつも殿下や陛下に守ってもらえて
私は安心している。私の命など、リリィやお前たちに比べればなんてことはない。」
「ですが、すでに二日も来ているではありませんか・・・。」
「私を誰だと思っているんだ?そんな弱きでは北部なんぞ守って居られるか!
北部の黒き壁は鉄壁だ。ははっ!!」
頼もしくダニエルは笑っていた。
その様子を見て、ロスウェルは静かに守りの魔術をかけたのだった。
北部までの移動距離を考えてささやかだが、誰よりも逞しく優しいダニエルへ。
ロスウェルは、皇帝の執務室に戻ってきた。皇帝がイシニスへの書信を書いているところだ。
「陛下、戻りました。」
「あぁ、どうだった?」
「はい・・・。ダニエル様は無事です。どうやら奇襲は本当ですが、リリィベル様に会いたいとは
どうやら思ってないようですよ?王都に居てくれて良かったとおっしゃっていました。」
「そうか・・・なら、これは、愚かにも私を欺きリリィベルを狙うものからの様だな。
こんな証拠となるものを送り付けるなんて。」
「あと、奇襲してきた男の特徴ですが、グリーンの眼をした男。だそうですよ?」
「・・・グリーン・・・・か、あまり珍しくはないが・・・。」
「ダニエル様にはささやかながら守りの魔術を施しておきました。」
「そうか、ありがとう。ダニエルに何かあれば、リリィベルが悲しむからな。」
皇帝はその手紙を見つめて考える。
「これは・・・イシニスの奇襲に合わせてブラックウォールを狙ったもの・・・・。
だろうな・・・・。」
「皇太子殿下が城を開け、第二騎士団が不在の間。北部へダニエル様を奇襲し、
それを陛下に知らせて、リリィベル様を連れ出そう・・・というところですね。」
「あぁ、間違いないな。・・・・どうやら皇太后が絡んでいる・・・。
ブラックウォールを狙ったのだから・・・・。だがイシニスは・・・・。偶然か・・・?」
「・・・皇太后陛下がイシニスと直接関わるのは難しいでしょう。調査が必要ですね。」
「あぁ・・・。リリィベルにはこの偽の手紙の事は知られないようにしなければ。
だが、証拠となるから魔塔で保管してくれ。」
「畏まりました。」
ロスウェルが手紙を預かり、姿を消す。
皇帝は、悲し気にその瞳を揺らしていた。
「・・・もし本当に関わったのなら・・・」
いくつ、罪を重ねる気ですか・・・・母上・・・・。
私にそんなに裁いてほしいのですか・・・。
「テオドールが居ない今、リリィベルは私達でしっかり守らねば・・・・。」
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