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反省してまーす
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「リリィ‥‥泣かないでくれ‥‥」
出来るだけ優しく、声を出した。
この想いが、悟られないように‥
「うっ‥‥‥うぅっ‥‥っ‥」
「俺、お前に泣かれると弱えぇんだ。
ババァに言われて傷ついたのはお前だろ・・・。お前は何も悪くない。
俺が、自分を止められないのが悪いんだ・・・。俺が、悪いんだよ・・・・。
だから・・・もう泣くな・・・・。」
きつく身体を抱きしめて、今できる精一杯を伝えた。
「私はっ平気です!!・・・っあなたと、一緒に居られるならっ・・・なんだって
誰に責められても構いませんっっ・・・私はっ・・・あなたの側に居たいだけですっ・・。
気持ちは一緒ですっ・・・もっと自由に出来たならっ・・・けれど、そうじゃないでしょっ?
あなたの座を揺るがす存在にはなりたくありませんっ・・・・私は害にはなりませんっ
皇太子として生きるあなたの、愛を・・・ちゃんと・・守りたいのですっ・・・。」
「あぁ・・・ごめんな・・・・。お前は・・・
俺よりも・・・俺の立場を分かってる・・・俺が悪かった・・・。」
どうして俺はこんなに弱いんだ・・・・。
お前の事になると・・・俺は何度も・・・・
愛しさは・・・募るばかりで・・・。
俺は・・・この世界で生きてる事を・・・忘れてしまいたくなる・・・。
やっと巡り合えたのに・・・バカなんだ・・・・。
せっかく巡り合えたのに・・・その事ばかり・・・・・。
大切な者を失わない為なのに・・・心は、止められないんだ。
「パーティーが、悪かったんだろ・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「隠しても無駄だ・・。全部聞いてる・・・。」
「俺がお前に夢中になりすぎて、お前が魔女のようだと・・・。
そうだな。俺はお前に夢中で、周りなんか見えねぇよ・・・。
それくらい、お前を愛してるよ・・・。」
それだけは、変わらないんだ。
テオドールはスッとリリィベルから手を離した。
「‥テオ様?」
「‥反省‥すりゃいいんだろ?」
「えっ‥?」
そう言って、部屋の窓下に腰を下ろした。
「テオ様っなにを」
にこりと笑み浮かべた。
「‥‥反省。」
「テオ様が反省する事などありませんっ‥」
けれどテオドールは窓下の壁に寄りかかり瞳を閉じた。
「おかしいだろ?なんでお前だけなんだ。」
「私はっ淑女としての‥」
「俺は皇太子でありながら、女神の誘惑に負けました。
綺麗な女神に魅せられて、正気を失いました。
その手を取り、身体に触れ‥‥人目憚らず、口付けをしました。反省します。」
「テオ様‥‥本気で‥‥」
「あぁ、ここは病に伏す者が来る場所だ。
俺は病だ。愛の病だ。どうだ?治せないだろ?
一生ここに居てもいい‥‥。俺はお前を愛する病気だ。
狂おしい程、女神がほしくて、欲を抑えられない。
あー‥‥大変だ。父上と母上には、後継者を今から作って貰わなければな‥‥。」
「テオ様!冗談はやめて下さいっ」
「冗談じゃねぇよ‥‥」
抗議するリリィベルに、テオドールはリリィベルを愛しそうに見つめた。
「冗談なんかじゃ‥‥ねーよ‥‥?」
「っ‥‥‥テオ様っ‥‥」
リリィベルの目に涙が溜まる。
そして、縋るように、テオドールは手を伸ばした。
「女神‥‥‥助けてくれよ‥‥‥。」
「‥‥うっ‥‥っ‥‥」
「お前しか‥‥見えねぇよ‥‥
どうか、この手を取って‥‥情けない俺を救ってくれ‥‥」
愛しくて、せつなくて、縋りつきたい‥‥。
「ぁぁっ‥‥‥」
どうしようもなくなって、リリィベルはテオドールに駆け寄りその身体を抱きしめた。
「うぅっ‥‥あぁぁっ‥‥‥」
女神が目の前に飛んできて、身体を抱きしめてくれた。
「あぁ・・・なんて幸せだ・・・俺の女神‥‥‥愛してる‥‥‥」
気が狂ってしまってる。
困らせると分かってても、喜んでいる。
俺から離れない女神がいる事を‥
この世界に産まれ、責任を持って生きてきたつもりだった。
でも俺は、女神無くして、生きていけない‥‥
これが罪ならば、構わない‥‥
俺は何度も、女神に手を伸ばす‥‥
俺こそ、女神に相応しくない。
浅はかで‥‥子供で‥‥我儘で‥‥
でも、女神が好きな俺が本当の自分なんだ‥‥。
ただ、それだけだ‥‥。
暗い窓から二人だけに光が差し込む。
「皇帝陛下。ご報告です。」
ロスウェルは呆れた顔して皇帝の前に現れた。
「へっ・・・早くないか?」
思いの外、早く戻ってきたロスウェルにビクゥっと身体は跳ねた。
「どっ・・・・どうした?」
はぁっと溜息混じりに、ロスウェルはありのままを口にする。
「殿下からの伝言で御座います。皇太子は愛の病にかかってしまったので、西の塔から出ません。
どうか後継者はこれからお二人でお励み下さい。と。」
ぽかんと皇帝は口を開けた。
「・・・は?」
ロスウェルはやけくそに口を開く。
「・・・・だからぁ・・・・リリィベル様が反省するならば2人で反省しますって!その上自分は愛の病なので、お許し頂けなければ西の塔から出ませんって!!!のんびりしてられませんよっ!
皇太后陛下に!!!直訴!!!皇太子が継承権を放棄する前に!!!!」
「あぁいつぅ・・・・・・」
皇帝は頭を抱えた。
「今から2人目作りに励みますか?」
「遅いわ!馬鹿者!あいつは小さい頃から頭もいいし!剣術だって見事な皇太子だぞ!民だって皇太子をちゃんと‥
そんな後継者を!今から作れるか!!!」
「まさしく愛の病ですねぇ・・・・。」
机に手をついて、なんとか身体を支えた。
「はぁ・・・・・ババァのせいだからな!!!余計な事を!!!!」
「もういっそ毒の件で捕まえればよろしいのでは?拘束してるでしょ?給仕係の女。」
「まだあの女は吐かないんだ!お前も知ってるだろう!!」
「まぁそうですけど。十中八九ヘイドン侯爵と繋がり、手を組んだ皇太后のせいなのに・・・。」
「それを立証するのが難しいんじゃないか!!」
「捏造でもします?」
「それを俺がやったらそれはもう正義ではないわ!!馬鹿者が!!」
声を荒げて皇帝はロスウェルに訴える。
「はぁ・・・・。この事は?どこまで知られている?」
「あぁ、殿下が皇太后のつけた兵士に・・・。」
「あーーーもう・・・・少しは考える時間をくれんのかあいつは・・・・。」
「せっかちですねぇ・・・。」
「ババァは?」
「ふふ・・・盗蝶します?」
ロスウェルが悪戯に笑う。今の皇帝には、それすら少しの慰めになった。
皇太后の私室にて、皇太后は怒りを露わにしていた。
「なぜ止めなかったの!!!2人で部屋に入られては意味がないじゃない!!!」
「申し訳ございませんっ・・・殿下に手を上げる訳にも・・・。」
「そこは全力で止めなさい!!兵士のくせに!!!なんてザマなのよ!!!」
ライリーも側でそれを聞いている。
「・・・殿下も部屋に・・・」
悔しさを隠せずに爪を噛んだ。
どこまでも気に入らない女。
きっと殿下に助けを求めたに違いない。
「もういいわ。私が直々に行きます。」
皇太后は、部屋を出て西の塔へ向かう。ライリーもその後をついて行った。
西の塔のリリィベルがいる部屋は、護衛が一人腹を抱えて辛うじて立っている。
「・・・・・申し訳ございません・・・・殿下には敵いませぬ故・・・・・。」
「お前達はもう明日は来なくてよい・・・・・。」
皇太后はその部屋の扉を開いた。
開いた先では、窓下の壁に寄りかかったテオドールとリリィベルがいる。
「皇太子、何をしているの。」
「反省してまー・・・す。」
首を傾げて、静かにそう言った。
皇太后は額の血管が浮き出るほどの怒りを感じていた。
「私は、その娘に謹慎して反省しろと言った。そなたには言っておらぬ。
皇太子がここにいたら、元も子もない。それとも、その娘が愚かにそなたに縋ったか?」
「いーえ?全然?むしろ私は追い出されそうです。」
テオドールは立てた膝に頬杖をついて、ふてぶてしく返事をした。
「ならばすぐに、この部屋から出なさい。皇太子がこの部屋にいる事は許さない。」
「・・・・何故です?」
「正気か?」
「先日のパーティーの件でしたら、リリィベルが悪いわけでは御座いません。
悪いとおっしゃるなら、反省しましょう。私も。いけませんか?私達の事ですから、一方に反省しろだなんて。
私は私の行いを反省しております。愛しすぎて、周りが見えなかったと。」
眼を鋭くさせて、皇太后を軽く睨みつけた。
「意地を張るのはお止め・・・・。この娘は皇太子の婚約者には相応しくないのよ。」
「・・・・・・・・・」
皇太子はただじっと、皇太后を睨みつけている。
「っ・・・この私を睨みつけているの?皇太子、私に逆らう気?」
「これが逆らっていると?自ら反省していますのに。」
「反省だとっ?睨みつけて置きながら!
お前っ!!誰のおかげでその地位に居られると思っているの!!!!」
「皇太后陛下っ!!!」
ライリーは後ろからその身体を押さえた。
「皇太后陛下っどうか、殿下を責めるのはお止めくださいっ・・・・。
殿下は悪くないではありせんかっ・・・。」
それを見たテオドールは、そのままライリーを睨みつける。
「ここで何してんだ。堂々と城ん中で歩きやがって・・・。」
「でっ・・殿下っ・・・・。」
ライリーはショックだった。面と向かってそんな言葉を言われたのは初めてだった。
「殿下っ・・どうか正気にお戻りくださいっ・・・皇太子殿下がそのような・・・。
その娘のせいで殿下が非難されるのですっ・・・私は殿下を心から心配して・・・・」
「で?」
「えっ・・・?」
「心配してなに?俺のこの口調がおかしい?そうか、では改めよう。
そなたには関係がない故、口を挟んでくれるな。
リリィベルにどんなに嫉妬しようとも、
私がお前のものになるなど、勝手に思うな。不快だ。
例え、リリィベルが居なくなろうとも、そなただけは、私は選ばない。
お前を迎えるくらいなら、どこからでも女を拾ってきてやる・・・・。」
殺気まで漂わせてテオドールは言い切った。
「っ・・・どうしてっ・・・・」
ライリーは目に涙を溜めた。ここまで拒絶されるなんて・・・・。
私はただ愛しているだけなのに・・・・。
なぜ、なぜ・・・・。私の存在を否定するの・・・・。
「どうしてです殿下っ・・・私が何をしたとっ・・・・。」
「お前の・・・その目だ・・・・。」
その言葉に、ライリーは涙を流しながらテオドールを見つめた。
「その欲にまみれた、独りよがりな目が、俺には不快だ。父親と同じその目がな・・・。」
「っ・・・私はっ・・・ただっ・・・あなたを・・・・。」
「俺が嫌だと言っている。体中がお前を否定する・・・・。
陛下について、皇太子妃の座を狙っているのが見え見えなんだ。醜くて見るに堪えない。お願いだから下がってくれ。」
「っ・・・・うぅっ・・・・・・。」
ライリーはその場に崩れ落ちた。
「皇太子!!!令嬢になんてひどい事を!!!」
「あなたが勝手な真似をなさるからです!!!!」
目を見開いてテオドールは皇太后に怒鳴った。
「っ・・・私にっ・・この私に怒鳴った・・・の・・・・?」
テオドールはもう口を閉ざすことが出来ない。
「黙って隠居してればいいものを・・・・。人の心を思うままに出来るなんて思って下さいますな。
私は確かに、あなたの息子の子供で、この国の後継者・・・・。
ですが、あなたの敷かれた道筋を歩いているわけではありません。私の道は私だけの物!!
私の生涯を勝手にされるのは不愉快です!!!!!
私は私の婚約者を娼婦などと言われて黙っていると思っているのですか!
反省?気に食わないのなら反省しましょう?私は愚かにも人前で婚約者を愛を囁き、
その身体を何度も抱きしめた。それが、いけなかったのですよね?
けれど、愛ある者たちは、そうやって身を寄せて生きるのですよ。今の私達のように・・・。
ご存じないのでしょう?お可哀そうな人だ。女に産まれながら、政治的にしか子を成せなかったあなたが。」
「っっ・・・お前っっ・・・・・今私にっ・・・・・。」
曲がるほど扇子を握りしめた皇太后。怒りは頂点に達している。
「私は愛するリリィベルが謹慎すると言うなら、私もここで謹慎します。
人前で口付けを交わし、皇族な身分でありながら、一人の女性を欲し、止められないのですから。
それが原因なのでしょう?娼婦ですって?彼女は私の婚約者です。
喉から手が出るほどの存在です。私とリリィベルを引き離すことなど、あなたにはできません。
どうぞ。お帰り下さい?リリィベルの謹慎が解かれるまで、
私はここを動きませんから。」
そう言って、固まっていたリリィベルを抱き寄せた。
「お前っ・・・」
皇太后が扇子を振り上げた。
しかし、パシッっとその手は後ろから押さえられた。
ぎろりと後ろを振り返る。
「・・・・オリヴァー・・・・。」
「皇太子は私の息子、皇帝は私です。母上。」
険しい顔で止める。扇子を投げつけようとした力は相当なものだった。
「お前は、皇太子にどんな教育をしたの・・・・。」
「テオドールは、昔から何をやらせても問題など御座いませんでした。」
「お前っ・・・皇太子が私を侮辱したのだ!!皇太后に声を荒げる等あって良いと思っているのか!!!」
「皇太后陛下。テオドールの人生です。ですから、これ以上の干渉はお止めください。すでに婚約発表をし、指輪も交わした仲です。皇太子妃の部屋を与えたのも私です。」
「お前が居ながらっ・・・一体なぜこんな事になるのよ・・・・。」
「テオドールは、愛する者を見つけただけで御座います。訳も分からず反対されれば反発するのは当然です。」
「私は!!!!皇太子に相応しい者を勧めると言ったでしょう!!!!」
「テオドールは相手を見つけました!ご不満はなんですか!
リリィベルは貴族。その上愛し合う者同士、なんの問題も御座いません!」
「誰のおかげでその座についていると思っているのだ!!!
この私が!!!!お前に与えた座だ!!!!私に歯向かうか!!!!」
「皇帝は私です!!!!!!!母上こそ!!!欲を出してくださるな!!!!!」
「っ・・・・なんだと・・・・?」
「私があなたを裁く前に、どうか、2人に対する妨害をお止めください。
これ以上されては、私も我慢できません・・・。」
「オリヴァー・・・。私が何をしたと言うのだ?」
「・・・・・・・・・・。」
皇帝は険しく目を細めて皇太后を見つめた。
「・・・ん?・・・私が何を・・・したと言うのだ?」
その目は自信に満ちた目だった。
「私は何もしていない。そうであろう?ただ皇太子の未来を案じ、後ろ盾のなるこの国の為に然るべき相手を勧めた。
本来はお前がするべきことだ。それなのに、私がこうして
口を出す羽目になっているのだぞ?申し開きはあるのか・・・・?
あぁ、可愛そうなライリー嬢・・・。本来ならば然るべき相手はこの娘なのに・・・。
皇太子の事を守る存在になると言うのに・・・。」
そう言ってライリーに寄り添った。ライリーはまだ涙を流している。
皇太后の眼は狂気に満ちていた。
「心配するな・・・。皇太子は今気が触れているのだ。あの娘のせいだ・・・・。」
そう言って、狂気な目でリリィベルを見た。
憎い、その目が・・・その髪が・・・・。グレース・・・・。
お前も、アドルフにいつも守られ・・・・愛を囁かれていた・・・・。
私と一緒になって居たなら、公爵家の当主になり、早死にすることもなかった。
私に・・・殺される事もなかった・・・。
それなのに、そなたの孫が、私の前に現れて私の心を乱すのだ。
「私は認めぬ・・・。ブラックウォールの者など・・・・・。」
「っ・・・・。」
リリィベルは皇太后の眼に、身体を震わせた。
それを感じたテオドールは、リリィベルの身体をぎゅっと守るように抱きしめる。
その光景は、まるでアドルフとグレースのようだ。
そうやって・・・アドルフがいつもグレースを守っていた。
私の視界から少しでも離そうと・・・・。
お前もそうだな・・・。リリィベル・・・・・。
男の腕に守られ・・・・か弱い振りをして・・・・・・。
本当は、誰よりも欲深く男を欲しがっている・・・。
「ライリー嬢、ほら・・・立って?私の部屋で休みましょう?」
急に声を穏やかにして、ライリーを立たせた。
「皇太子、お前も反省すると言うなら、そうしなさい・・・・。
どう足掻いても、お前たちの行動は皇族に相応しくないのだから・・・・。
まるで、獣と獣だ・・・。」
怪しい笑みを浮かべて、皇太后はライリーを連れて部屋を出て行った。
その姿を、3人は黙ってみていた。扉が閉まるまで、ずっと・・・・。
出来るだけ優しく、声を出した。
この想いが、悟られないように‥
「うっ‥‥‥うぅっ‥‥っ‥」
「俺、お前に泣かれると弱えぇんだ。
ババァに言われて傷ついたのはお前だろ・・・。お前は何も悪くない。
俺が、自分を止められないのが悪いんだ・・・。俺が、悪いんだよ・・・・。
だから・・・もう泣くな・・・・。」
きつく身体を抱きしめて、今できる精一杯を伝えた。
「私はっ平気です!!・・・っあなたと、一緒に居られるならっ・・・なんだって
誰に責められても構いませんっっ・・・私はっ・・・あなたの側に居たいだけですっ・・。
気持ちは一緒ですっ・・・もっと自由に出来たならっ・・・けれど、そうじゃないでしょっ?
あなたの座を揺るがす存在にはなりたくありませんっ・・・・私は害にはなりませんっ
皇太子として生きるあなたの、愛を・・・ちゃんと・・守りたいのですっ・・・。」
「あぁ・・・ごめんな・・・・。お前は・・・
俺よりも・・・俺の立場を分かってる・・・俺が悪かった・・・。」
どうして俺はこんなに弱いんだ・・・・。
お前の事になると・・・俺は何度も・・・・
愛しさは・・・募るばかりで・・・。
俺は・・・この世界で生きてる事を・・・忘れてしまいたくなる・・・。
やっと巡り合えたのに・・・バカなんだ・・・・。
せっかく巡り合えたのに・・・その事ばかり・・・・・。
大切な者を失わない為なのに・・・心は、止められないんだ。
「パーティーが、悪かったんだろ・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「隠しても無駄だ・・。全部聞いてる・・・。」
「俺がお前に夢中になりすぎて、お前が魔女のようだと・・・。
そうだな。俺はお前に夢中で、周りなんか見えねぇよ・・・。
それくらい、お前を愛してるよ・・・。」
それだけは、変わらないんだ。
テオドールはスッとリリィベルから手を離した。
「‥テオ様?」
「‥反省‥すりゃいいんだろ?」
「えっ‥?」
そう言って、部屋の窓下に腰を下ろした。
「テオ様っなにを」
にこりと笑み浮かべた。
「‥‥反省。」
「テオ様が反省する事などありませんっ‥」
けれどテオドールは窓下の壁に寄りかかり瞳を閉じた。
「おかしいだろ?なんでお前だけなんだ。」
「私はっ淑女としての‥」
「俺は皇太子でありながら、女神の誘惑に負けました。
綺麗な女神に魅せられて、正気を失いました。
その手を取り、身体に触れ‥‥人目憚らず、口付けをしました。反省します。」
「テオ様‥‥本気で‥‥」
「あぁ、ここは病に伏す者が来る場所だ。
俺は病だ。愛の病だ。どうだ?治せないだろ?
一生ここに居てもいい‥‥。俺はお前を愛する病気だ。
狂おしい程、女神がほしくて、欲を抑えられない。
あー‥‥大変だ。父上と母上には、後継者を今から作って貰わなければな‥‥。」
「テオ様!冗談はやめて下さいっ」
「冗談じゃねぇよ‥‥」
抗議するリリィベルに、テオドールはリリィベルを愛しそうに見つめた。
「冗談なんかじゃ‥‥ねーよ‥‥?」
「っ‥‥‥テオ様っ‥‥」
リリィベルの目に涙が溜まる。
そして、縋るように、テオドールは手を伸ばした。
「女神‥‥‥助けてくれよ‥‥‥。」
「‥‥うっ‥‥っ‥‥」
「お前しか‥‥見えねぇよ‥‥
どうか、この手を取って‥‥情けない俺を救ってくれ‥‥」
愛しくて、せつなくて、縋りつきたい‥‥。
「ぁぁっ‥‥‥」
どうしようもなくなって、リリィベルはテオドールに駆け寄りその身体を抱きしめた。
「うぅっ‥‥あぁぁっ‥‥‥」
女神が目の前に飛んできて、身体を抱きしめてくれた。
「あぁ・・・なんて幸せだ・・・俺の女神‥‥‥愛してる‥‥‥」
気が狂ってしまってる。
困らせると分かってても、喜んでいる。
俺から離れない女神がいる事を‥
この世界に産まれ、責任を持って生きてきたつもりだった。
でも俺は、女神無くして、生きていけない‥‥
これが罪ならば、構わない‥‥
俺は何度も、女神に手を伸ばす‥‥
俺こそ、女神に相応しくない。
浅はかで‥‥子供で‥‥我儘で‥‥
でも、女神が好きな俺が本当の自分なんだ‥‥。
ただ、それだけだ‥‥。
暗い窓から二人だけに光が差し込む。
「皇帝陛下。ご報告です。」
ロスウェルは呆れた顔して皇帝の前に現れた。
「へっ・・・早くないか?」
思いの外、早く戻ってきたロスウェルにビクゥっと身体は跳ねた。
「どっ・・・・どうした?」
はぁっと溜息混じりに、ロスウェルはありのままを口にする。
「殿下からの伝言で御座います。皇太子は愛の病にかかってしまったので、西の塔から出ません。
どうか後継者はこれからお二人でお励み下さい。と。」
ぽかんと皇帝は口を開けた。
「・・・は?」
ロスウェルはやけくそに口を開く。
「・・・・だからぁ・・・・リリィベル様が反省するならば2人で反省しますって!その上自分は愛の病なので、お許し頂けなければ西の塔から出ませんって!!!のんびりしてられませんよっ!
皇太后陛下に!!!直訴!!!皇太子が継承権を放棄する前に!!!!」
「あぁいつぅ・・・・・・」
皇帝は頭を抱えた。
「今から2人目作りに励みますか?」
「遅いわ!馬鹿者!あいつは小さい頃から頭もいいし!剣術だって見事な皇太子だぞ!民だって皇太子をちゃんと‥
そんな後継者を!今から作れるか!!!」
「まさしく愛の病ですねぇ・・・・。」
机に手をついて、なんとか身体を支えた。
「はぁ・・・・・ババァのせいだからな!!!余計な事を!!!!」
「もういっそ毒の件で捕まえればよろしいのでは?拘束してるでしょ?給仕係の女。」
「まだあの女は吐かないんだ!お前も知ってるだろう!!」
「まぁそうですけど。十中八九ヘイドン侯爵と繋がり、手を組んだ皇太后のせいなのに・・・。」
「それを立証するのが難しいんじゃないか!!」
「捏造でもします?」
「それを俺がやったらそれはもう正義ではないわ!!馬鹿者が!!」
声を荒げて皇帝はロスウェルに訴える。
「はぁ・・・・。この事は?どこまで知られている?」
「あぁ、殿下が皇太后のつけた兵士に・・・。」
「あーーーもう・・・・少しは考える時間をくれんのかあいつは・・・・。」
「せっかちですねぇ・・・。」
「ババァは?」
「ふふ・・・盗蝶します?」
ロスウェルが悪戯に笑う。今の皇帝には、それすら少しの慰めになった。
皇太后の私室にて、皇太后は怒りを露わにしていた。
「なぜ止めなかったの!!!2人で部屋に入られては意味がないじゃない!!!」
「申し訳ございませんっ・・・殿下に手を上げる訳にも・・・。」
「そこは全力で止めなさい!!兵士のくせに!!!なんてザマなのよ!!!」
ライリーも側でそれを聞いている。
「・・・殿下も部屋に・・・」
悔しさを隠せずに爪を噛んだ。
どこまでも気に入らない女。
きっと殿下に助けを求めたに違いない。
「もういいわ。私が直々に行きます。」
皇太后は、部屋を出て西の塔へ向かう。ライリーもその後をついて行った。
西の塔のリリィベルがいる部屋は、護衛が一人腹を抱えて辛うじて立っている。
「・・・・・申し訳ございません・・・・殿下には敵いませぬ故・・・・・。」
「お前達はもう明日は来なくてよい・・・・・。」
皇太后はその部屋の扉を開いた。
開いた先では、窓下の壁に寄りかかったテオドールとリリィベルがいる。
「皇太子、何をしているの。」
「反省してまー・・・す。」
首を傾げて、静かにそう言った。
皇太后は額の血管が浮き出るほどの怒りを感じていた。
「私は、その娘に謹慎して反省しろと言った。そなたには言っておらぬ。
皇太子がここにいたら、元も子もない。それとも、その娘が愚かにそなたに縋ったか?」
「いーえ?全然?むしろ私は追い出されそうです。」
テオドールは立てた膝に頬杖をついて、ふてぶてしく返事をした。
「ならばすぐに、この部屋から出なさい。皇太子がこの部屋にいる事は許さない。」
「・・・・何故です?」
「正気か?」
「先日のパーティーの件でしたら、リリィベルが悪いわけでは御座いません。
悪いとおっしゃるなら、反省しましょう。私も。いけませんか?私達の事ですから、一方に反省しろだなんて。
私は私の行いを反省しております。愛しすぎて、周りが見えなかったと。」
眼を鋭くさせて、皇太后を軽く睨みつけた。
「意地を張るのはお止め・・・・。この娘は皇太子の婚約者には相応しくないのよ。」
「・・・・・・・・・」
皇太子はただじっと、皇太后を睨みつけている。
「っ・・・この私を睨みつけているの?皇太子、私に逆らう気?」
「これが逆らっていると?自ら反省していますのに。」
「反省だとっ?睨みつけて置きながら!
お前っ!!誰のおかげでその地位に居られると思っているの!!!!」
「皇太后陛下っ!!!」
ライリーは後ろからその身体を押さえた。
「皇太后陛下っどうか、殿下を責めるのはお止めくださいっ・・・・。
殿下は悪くないではありせんかっ・・・。」
それを見たテオドールは、そのままライリーを睨みつける。
「ここで何してんだ。堂々と城ん中で歩きやがって・・・。」
「でっ・・殿下っ・・・・。」
ライリーはショックだった。面と向かってそんな言葉を言われたのは初めてだった。
「殿下っ・・どうか正気にお戻りくださいっ・・・皇太子殿下がそのような・・・。
その娘のせいで殿下が非難されるのですっ・・・私は殿下を心から心配して・・・・」
「で?」
「えっ・・・?」
「心配してなに?俺のこの口調がおかしい?そうか、では改めよう。
そなたには関係がない故、口を挟んでくれるな。
リリィベルにどんなに嫉妬しようとも、
私がお前のものになるなど、勝手に思うな。不快だ。
例え、リリィベルが居なくなろうとも、そなただけは、私は選ばない。
お前を迎えるくらいなら、どこからでも女を拾ってきてやる・・・・。」
殺気まで漂わせてテオドールは言い切った。
「っ・・・どうしてっ・・・・」
ライリーは目に涙を溜めた。ここまで拒絶されるなんて・・・・。
私はただ愛しているだけなのに・・・・。
なぜ、なぜ・・・・。私の存在を否定するの・・・・。
「どうしてです殿下っ・・・私が何をしたとっ・・・・。」
「お前の・・・その目だ・・・・。」
その言葉に、ライリーは涙を流しながらテオドールを見つめた。
「その欲にまみれた、独りよがりな目が、俺には不快だ。父親と同じその目がな・・・。」
「っ・・・私はっ・・・ただっ・・・あなたを・・・・。」
「俺が嫌だと言っている。体中がお前を否定する・・・・。
陛下について、皇太子妃の座を狙っているのが見え見えなんだ。醜くて見るに堪えない。お願いだから下がってくれ。」
「っ・・・・うぅっ・・・・・・。」
ライリーはその場に崩れ落ちた。
「皇太子!!!令嬢になんてひどい事を!!!」
「あなたが勝手な真似をなさるからです!!!!」
目を見開いてテオドールは皇太后に怒鳴った。
「っ・・・私にっ・・この私に怒鳴った・・・の・・・・?」
テオドールはもう口を閉ざすことが出来ない。
「黙って隠居してればいいものを・・・・。人の心を思うままに出来るなんて思って下さいますな。
私は確かに、あなたの息子の子供で、この国の後継者・・・・。
ですが、あなたの敷かれた道筋を歩いているわけではありません。私の道は私だけの物!!
私の生涯を勝手にされるのは不愉快です!!!!!
私は私の婚約者を娼婦などと言われて黙っていると思っているのですか!
反省?気に食わないのなら反省しましょう?私は愚かにも人前で婚約者を愛を囁き、
その身体を何度も抱きしめた。それが、いけなかったのですよね?
けれど、愛ある者たちは、そうやって身を寄せて生きるのですよ。今の私達のように・・・。
ご存じないのでしょう?お可哀そうな人だ。女に産まれながら、政治的にしか子を成せなかったあなたが。」
「っっ・・・お前っっ・・・・・今私にっ・・・・・。」
曲がるほど扇子を握りしめた皇太后。怒りは頂点に達している。
「私は愛するリリィベルが謹慎すると言うなら、私もここで謹慎します。
人前で口付けを交わし、皇族な身分でありながら、一人の女性を欲し、止められないのですから。
それが原因なのでしょう?娼婦ですって?彼女は私の婚約者です。
喉から手が出るほどの存在です。私とリリィベルを引き離すことなど、あなたにはできません。
どうぞ。お帰り下さい?リリィベルの謹慎が解かれるまで、
私はここを動きませんから。」
そう言って、固まっていたリリィベルを抱き寄せた。
「お前っ・・・」
皇太后が扇子を振り上げた。
しかし、パシッっとその手は後ろから押さえられた。
ぎろりと後ろを振り返る。
「・・・・オリヴァー・・・・。」
「皇太子は私の息子、皇帝は私です。母上。」
険しい顔で止める。扇子を投げつけようとした力は相当なものだった。
「お前は、皇太子にどんな教育をしたの・・・・。」
「テオドールは、昔から何をやらせても問題など御座いませんでした。」
「お前っ・・・皇太子が私を侮辱したのだ!!皇太后に声を荒げる等あって良いと思っているのか!!!」
「皇太后陛下。テオドールの人生です。ですから、これ以上の干渉はお止めください。すでに婚約発表をし、指輪も交わした仲です。皇太子妃の部屋を与えたのも私です。」
「お前が居ながらっ・・・一体なぜこんな事になるのよ・・・・。」
「テオドールは、愛する者を見つけただけで御座います。訳も分からず反対されれば反発するのは当然です。」
「私は!!!!皇太子に相応しい者を勧めると言ったでしょう!!!!」
「テオドールは相手を見つけました!ご不満はなんですか!
リリィベルは貴族。その上愛し合う者同士、なんの問題も御座いません!」
「誰のおかげでその座についていると思っているのだ!!!
この私が!!!!お前に与えた座だ!!!!私に歯向かうか!!!!」
「皇帝は私です!!!!!!!母上こそ!!!欲を出してくださるな!!!!!」
「っ・・・・なんだと・・・・?」
「私があなたを裁く前に、どうか、2人に対する妨害をお止めください。
これ以上されては、私も我慢できません・・・。」
「オリヴァー・・・。私が何をしたと言うのだ?」
「・・・・・・・・・・。」
皇帝は険しく目を細めて皇太后を見つめた。
「・・・ん?・・・私が何を・・・したと言うのだ?」
その目は自信に満ちた目だった。
「私は何もしていない。そうであろう?ただ皇太子の未来を案じ、後ろ盾のなるこの国の為に然るべき相手を勧めた。
本来はお前がするべきことだ。それなのに、私がこうして
口を出す羽目になっているのだぞ?申し開きはあるのか・・・・?
あぁ、可愛そうなライリー嬢・・・。本来ならば然るべき相手はこの娘なのに・・・。
皇太子の事を守る存在になると言うのに・・・。」
そう言ってライリーに寄り添った。ライリーはまだ涙を流している。
皇太后の眼は狂気に満ちていた。
「心配するな・・・。皇太子は今気が触れているのだ。あの娘のせいだ・・・・。」
そう言って、狂気な目でリリィベルを見た。
憎い、その目が・・・その髪が・・・・。グレース・・・・。
お前も、アドルフにいつも守られ・・・・愛を囁かれていた・・・・。
私と一緒になって居たなら、公爵家の当主になり、早死にすることもなかった。
私に・・・殺される事もなかった・・・。
それなのに、そなたの孫が、私の前に現れて私の心を乱すのだ。
「私は認めぬ・・・。ブラックウォールの者など・・・・・。」
「っ・・・・。」
リリィベルは皇太后の眼に、身体を震わせた。
それを感じたテオドールは、リリィベルの身体をぎゅっと守るように抱きしめる。
その光景は、まるでアドルフとグレースのようだ。
そうやって・・・アドルフがいつもグレースを守っていた。
私の視界から少しでも離そうと・・・・。
お前もそうだな・・・。リリィベル・・・・・。
男の腕に守られ・・・・か弱い振りをして・・・・・・。
本当は、誰よりも欲深く男を欲しがっている・・・。
「ライリー嬢、ほら・・・立って?私の部屋で休みましょう?」
急に声を穏やかにして、ライリーを立たせた。
「皇太子、お前も反省すると言うなら、そうしなさい・・・・。
どう足掻いても、お前たちの行動は皇族に相応しくないのだから・・・・。
まるで、獣と獣だ・・・。」
怪しい笑みを浮かべて、皇太后はライリーを連れて部屋を出て行った。
その姿を、3人は黙ってみていた。扉が閉まるまで、ずっと・・・・。
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