ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

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星の記憶 5 ~ 星が降る夜 ~

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「あきっ・・・・ちょっ・と、待って・・・・」
「待たねぇ」
「ダメっ・・・だよっ・・恥ずかしいっ・・・・」
「うるさい」

17歳、高校生になった暁と礼蘭は、同じ高校に進学し今年2年生になった。
いつも一緒なのは、子供のころから変わらない。

「もうキスだけじゃ足んねぇ・・・・」
暁が瞳を細めて、礼蘭を追い詰める。
「もうっ・・・・下にお父さんたち居るんだからっ・・・」

カフェの2階、礼蘭の自室で、暁は礼蘭を抱きしめ、首筋に唇を当てていた。

「知ってんだから・・・いつやっても変わんねぇっって・・・・。」
「暁、それ失格だからねっ・・・夢がないっ」
クッションをバフっと暁に当てた礼蘭だった。

「あぁ、夢か・・・・。じゃぁどんなのがいい?」
「そんなの聞かないでっ・・・・恥ずかしいからっ・・・・。」
近くにあった大きなぬいぐるみを抱きしめて礼蘭は防御していた。

「うーん・・・・・」
暁は顎に手を当てて考え込んだ。

「もぉっ・・・・・」
礼蘭は少し困っていた。付き合ってから、キスも毎日してくれて。
前よりもっと優しくて、甘くて、暁はまさに理想の恋人だった。

だが、高校生になってから、男が強くなった暁は、少し収まりがつかなくなっていた。

もちろん、嬉しいよ?暁が私を求めてくれることが・・・。
私を好きだと言ってくれる。その優しさと唇で示してくれる。

みんな知ってるからって、恥ずかしいじゃない・・・。
隠せる訳ない・・・。

「よし・・・わかった。」
暁は、何を理解したのだろうか・・・。
「なにが・・・?」
「悪かった。強引で・・・。」
「いやっ・・・じゃ・・・ないから・・・ね?」
「嫌だったら凹むわ、やめろや。」
「ただっ・・・その、家族がいる家で、そーゆうのは・・・ちょっと。」
「だよな。悪かった。」
「・・・暁・・・・?」

暁は急に正座をして瞳を閉じた。そして深呼吸した。

「なに・・・してるの?」
「・・・・精神統一・・・・」
「なんで・・?」

そう聞くと、カッと目を開いて言った。
「男は、精神統一が必要なんだよ。性だ。好きな女と一緒で気を治めるには
精神統一するしかねぇ。これだけは責めるな。」
「あっ・・・はい・・・・」

恥ずかしくなって俯いた。

そのまま瞳を閉じて正座し続ける暁は、性だと言ったが、その割には綺麗だった。
その姿勢正しい正座が、とても、欲を我慢しているようには見えなくて。

そして、そのまま暁は口を開いた。

「お前が恥ずかしさなんて吹っ飛ぶくらいにしてやるから。覚悟しとけ。」
「えぇっ・・っ・・?」
「俺は、お前と付き合って、我慢しねぇことに決めてんだ。我慢してたっていい事ねぇ。
伝えなきゃ伝わらないからな。正々堂々お前には隠さねぇ。
けど、お前に嫌がれるのはごめんだ。お前を大事にしたいのは変わらねぇ。」

「いっ・・・嫌がってないからっ・・・最初だから・・・そのっ・・・
女の子にはっ・・・色々あるのっ・・・・」
ぎゅっと力いっぱい込めてそう言った。そう言わなきゃ伝わらないから。

「あぁ、わかった。忘れられないようにしてやるよ。」
ニヤっと笑ったその顔が、まだ精神統一されてない事がわかった。



その日から半年たった。校舎の窓に頬杖をついてた下校時間。暁が迎えに来るのを待っていた。

「・・・・はぁ・・・・」

礼蘭は少し後悔していた。あれから、暁は全然攻めてこない・・・・。
キスは毎日してくれるけど、手は出してこない。
態度も変わらない。でも、それが妙に寂しく感じていた。

周りの女の子達の恋愛話を聞いて、少し焦ったりもする。

彼の部屋、とか、記念日だとか・・・誕生日とか・・・・。

「あたし達の誕生日・・・春だったからなぁ・・・もう過ぎたし・・・。」
付き合った記念日は、夏だった。

そうだ、記念日・・・・。8月10日。

今はまだ7月中旬・・・。記念日がある。

「でも・・・暁覚えてるかなぁ・・・。」
「なにが?」
「うわっ・・・」
暁が、礼蘭の後ろに立ち、礼蘭の身体を包むように窓枠に手をついた。
笑みを浮かべる暁に、礼蘭はスッと目を逸らした。

「なっ・・・なんでもない・・・・」
「そんな訳ねぇだろ?何年お前の顔見てると思ってんだよっ」
語尾と同時に軽い頭突きをされた。

「イタッ・・・・っ・・・こっ・・・・今度の花火大会っ・・」
「花火大会?知ってるけど。・・・・行きたい?」
「そりゃ・・・付き合ってからは・・・初めてだから・・・・。」
「ん?」
「ふっっ・・・二人で・・・浴衣、着ていきたいっ・・・・・」

「そっか・・・じゃあ、浴衣新調するか・・・もうみじけーからな・・・。」
「あっ・・そっか、暁また背伸びたもんね?」
「へへっ・・・・182、十分じゃね?お前、ちいせぇからな。」

「どーせ私は160もないですぅ。」
「ははっ、いいんだよ。収まりよくて。」

そう言って暁は、私を抱きしめてくれた。

暁の腕の中にすっぽり収まる私は、本当はこれでいいと思ってる。
暁が、その高い背を傾げて、キスをしてくれる姿が好きだった。時折私を抱き上げてキスする時も、
大きな手で、私の頭を包んで撫でてくれる仕草が好きだった。

全部が、大好きだよ・・・・。

本当だよ?

その日の帰り道も手を繋いで帰った。周りの女の子達が、暁を見て振り返る。
「・・・・・・・」
暁は背も高くて、顔も整ってて、優しくて、強くて、一途に思ってくれて・・・。
私は、前よりもっと、暁に惹かれていた。女として・・・。

これが女の性なら、私は十分思ってる。

暁にすべてをもらってほしい。


花火大会当日、家族に見送られて私たちは会場へ向かった。

はずだった。

「ねぇ、暁?こっち遠くない?街中に来ちゃったよ?」
「いーの。ばっちり見える所見つけておいた。」

「?」
暁に言われるまま、手を引かれて歩く。
たどり着いたのは、街中の高そうな高層ホテルだった。

「えっ・・・?ええ?」
慌てて、後退る。
「予約してる如月です。」

暁は淡々とホテルにチェックインして、呆然としている私をエレベーターに乗せて高い層まで連れてきた。

突然眼を塞がれて、後ろから押され歩く。

「ちょっとぉ、暁っ・・・見えないっ・・・。」
「まぁてって、すぐだから。」

ピピッとカードキーの音がする。
腰が引けている私を暁はぐいぐいと押して歩いた。

手の間から光は見えなくて、今どんなことになってるか分からなかった。

「よし、3・2・1・・・・うぇーい」
ぱっっと手が離れた先は、大きな窓があって、高層だから、遮るものも何もない。

部屋も暗がりで、窓の下から街の明かりが漏れてその暗さは、少しするとすぐに慣れた。

「あきら・・・」
「人込みでもないし、花火はばっちり見えるだろうし、足も痛くならねぇし最高だろ?」
「でもっ・・・あたし達高校生なのに、こんな高そうなホテル借りて、怒られない?」
「全然?予約したの親父だし、ちゃんとやった。怒られないよ?」

そう言われてほっとした時、パァァァンと花火が上がった。

高層ホテルの窓からばっちり花火が見える。遮るものは何もなくて。

窓の近くによって、花火を見ていた。
「どう?気に入った?」

暁が優しい声で聞いてきた。

「うんっ・・・・まさか、こんな高そうなホテルで、大人になったみたいっ」
「喜んでくれたんなら、頑張った甲斐があったな・・・・。」
「え・・・?」
「いや、この部屋取るのにちょっと頑張っただけ。」
「そ、そうだよね!花火大会にこんなホテルの部屋とるの・・・すごい大変だったよね?」

「いいんだ。お前が喜んでくれたんだから。」

そう言って笑った暁の横顔は、花火の光に照らされて、本当に大人みたいな顔をしてた。

「・・・・ありがとう、暁・・・・・。」


私を喜ばせようって頑張ってくれた。嬉しかった。
花火が綺麗で・・・・暁が優しくて、私は・・・・・

暁に何をしてあげられるだろう・・・・。

次々と上がる花火を眺める。花火は本当に綺麗で・・・・。
ぱっと開いて咲いて・・・・星が降るように落ちていく花火。


あぁもう・・・・。ダメだ・・・・・。


礼蘭はそっと、隣に居る暁の手を握った。
「・・・・・?どした?」
「・・・・・・・・・」

少し首を傾げた暁が、どんどん大人に見えて、
花火のように・・私を見てほしいと思ったの・・・・。

「っん・・・・・・」

めーいっぱいの背伸びをして、暁を引き寄せてキスをした。
声を漏らした暁が、ビクってしたのが伝わった。


けど、もう、いいの・・・・・。

私も、大人になりたいから・・・暁と一緒に・・・・・。


暁に抱きしめられて、片足が床から離れる。
私は小さいから、暁がいっぱい抱き寄せてくれないと、届かないの・・・・。

「っ・・・あきっ・・・・」
募った恋心を・・・全部、もらって・・・・?

唇を離した暁は、少し息が上がってた。

「・・・俺と同じ様に、欲しくなってくれたか?」

暁はそう呟いた。

答えはずっと前から決まってた。

「・全部、欲しくなったよ・・・っ・・・」

暁が、その唇で追いかけてくる。どこまでも・・・・。

有言実行だね。暁。あたしはもう、恥ずかしさなんてどこかに落としてしまったよ。

花火が流れ星みたいに落ちる夜に・・・・

たくさん、愛してほしい・・・・。


「礼蘭・・・・・好きだよ・・・・」
「うんっ・・・・・」


暁にそう言われて、ベッドに連れていかれた後、暁の肩越しに見えた。花火の星が降ってきた。

いっぱい、キスして、暁に隠すところはもうなくなったよ。
私を、いっぱい愛して・・・・。

暁に触れられるだけで、自分が特別な何かなのかと、錯覚するくらいだよ。

暁が私の追い詰めてくるから、もっと、暁が私を欲しいと思うように‥‥

暁の下で、私はたくさん、愛を伝えるの・・・。

暁の頬を流れる汗も・・・濡れた唇も全部が・・・・愛しいよ・・・・。


暁の作る波に、私はもう溺れてしまうよ‥

だから、しがみ付いて、私のその腕で抱いて離さないでね‥


「礼蘭‥‥‥愛してるよっ‥‥」


暁‥‥‥

この夜を、永遠に、忘れない・・・。

初めて見た互いの熱情は・・・もう、止まらない・・・。


初めて感じる痛みも、暁がくれるから‥‥痛くない‥

暁の、切ない顔が、嬉しい‥‥


もっと、もっと、もっと、

私を感じて、離さないでね‥‥

暁に揺らされて、
目の奥に、星がたくさん降ってくる‥‥


こんなに幸せなことなんだね‥。
部屋中、暁の愛でいっぱいだよ‥。
私は今日、こんなに幸せで、たくさん、涙が出るよ。
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