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いつでも俺が
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時間はあっという間に過ぎ、夕食後、紅茶を飲む4人だった。
「1人増えるだけでこんなに楽しいのね。ねぇオリヴァー様?もう1人子をもうけても良かったわね?
女の子がいいわ。」
「そうだなぁ、まぁ今からでも遅くあるまい?」
「うふふっ」
そんな会話をする両親にテオドールは嫌そうな顔をした。
「作るならもっと早く作ればよかったではありませんか!
何歳離れた兄妹が出来るやらっ‥私達が授かればもう祖父母ですよ?」
「孫と同じ歳の子か。面白いな」
クククっと笑った皇帝だった。
テオドールはそんな両親を見ながら、少し嫌気がさした顔をしていた。
その様子をリリィベルは楽しげに見ていた。
皇帝はリリィベルに問いかけた。
「リリィ、料理は口にあったか?」
「はい、とても美味しい料理でした。何より楽しかったです。」
「次はダニエルも一緒に5人で食事をしよう。」
「はい、お義父様」
にっこりとリリィベルは笑みを浮かべていた。
けれど、それが少しテオドールは気に掛かっていた。
「毎日こんな楽しい時間を過ごせたら嬉しいわ。リリィ?明日は仕立て屋を呼ぶから一緒にお買い物しましょう?」
「はい、お義母様。楽しみです。」
テオドールはそっと席を立った。
「リリィ、もうそろそろ俺たちは部屋に戻ろう?今日は疲れただろう?」
「あっ…はい殿下…。」
「違う、テオと呼べって言っただろう。家族しかいないんだ。誰も気にせん。
それにお前はもう俺の婚約者だ。母上の次に高貴なのはお前だよ。」
「あっ…はい、テオ様。」
テオドールはリリィベルの手を取り、両親の方を見た。
「リリィを休ませますので、また明日。おやすみなさい。父上、母上。」
少し険しい表情をしていたテオドール。その顔に、2人は笑顔で返した。
「あぁ、おやすみリリィ。」
「えぇ、また明日ね。」
「はい。おやすみなさい。お義母様、お義父様。」
ペコリと礼をして、テオドールと一緒に部屋を出た。
皇太子宮に戻った二人。テオドールはリリィベルの部屋にそのまま入った。
「リリィ、メイドを呼ぶから湯を浴びておいで?疲れてる顔してる。」
「テオ様…有難う御座います。」
「俺は自室にいるから、あぁ…鍵はかけないから。メイドが知らせにきたらまた来るよ。」
そう言って、テオドールはリリィベルの額にキスをした。
皇帝の鍵はそのまま闇に葬られそうだ。
「・・・・・・・」
リリィベルは、メイド達が用意してくれる湯船につかり、全身を磨き上げられた。
自宅でもそうだったが、城のメイド達はとても手際よく品があった。
誰もが優しく、丁寧だった。髪に香油を縫ってもらい、髪はさらに艶が出て綺麗になった。
清楚なナイトドレスを着せられ、ショールを肩にかけて貰った。
綺麗にされた鏡台の前に座ったリリィベルだった。
そこへテオドールがやってきた。
「リリィ、少しはゆっくりできたか?」
「テオ様・・・・はい。」
「そうか、良かった。」
そうして、テオドールはリリィの手を引き、ソファーに座り、自身の膝にリリィベルを乗せた。
「ちょっ…テオ様!重いですからっ」
「全然?羽でも生えてんのか?軽すぎる。」
そう言ってテオドールは笑った。
「もうっ…私は鳥じゃありませんよ?」
「あぁ、天使だったな。それとも、俺の為に舞い降りた女神か?」
「ふふふっ・・・・テオ様ったら・・・ふふふっ」
「・・・・・・・」
リリィベルはようやくいつもの様に笑ってくれた。
「リリィ、無理しなくていいんだぞ?」
「え?」
テオドールは優しい目をしてリリィベルの髪を撫でた。
「父親と離れてからずっとだった。気付いてなかったのか?」
「っ…私、そんな…」
リリィベルは思いもよらなかった様子だった。
寂しくない訳ないだろ?
ずっと父親と二人、屋敷の家でも使用人は居ただろうが、家族と呼べる者は・・・。
だから、父上と母上を見ているリリィベルの瞳は少し羨まし気で悲し気だった。
「私、そんなつもりじゃ・・・・」
「わかっている。自分でも気付かないで顔に出る事だってある。俺もそうだ。」
テオドールは両足の間にすっぽりハマったリリィベルをぎゅっと抱きしめた。
「俺がいる。寂しさも、悩みも、怒りも、楽しい事も、嬉しい事も俺が全部聞いてやる。
なんでも話してくれ。俺はお前が大事なんだ。何一つ見落としたくない。」
テオドールはリリィベルの頭に顎を乗せて瞳を閉じた。
「俺の身体はお前より大きいだろう?どんな事も受け止めてやるから。」
「・・・・はい・・・・テオ様・・・・・」
瞳に涙を滲ませて、リリィベルは笑った。
「私が…城で4人で食事している間。父は一人なのだと思って…胸が痛かったのです。」
「あぁ…」
「お義母様とお義父様が…とても仲が良くて、それを見て、母を亡くした父が寂しくないかと思ったのです。」
「そうだな…」
「今は私も離れて…寂しがってはいないかと…考えてしまうのです…。」
次々と零れ落ちるリリィベルの思いは涙の雫となる。
「けれど…テオ様のお側を離れられない自分が、薄情なのかと思ってしまうのです…。」
「・・・・リリィ?それは違うな。お前はこんなに父を思っているじゃねぇか・・・・」
「親というのは、子供の幸せを一番考えてくれるんだ。
俺が、城に上がるまでの事をお前は知ってるか?」
「いえ・・・あまり・・・・」
「そうだな。俺と同じ年のお前は知らないだろう。俺は、母上が城下に住んでいてそこで産まれ育ったんだ。」
「え?」
「父上は、元々母上と婚約する予定だったが、色々あってな…。
腹違いの弟と皇位争いをしていた。もちろん皇太子だったのは父上だったが、
側室の子が、父上を殺してでも、皇太子になりたかった。皇后になりたかった側室、側室の生家も
権力のある家になるため父上への謀反を企てていた。その間、父上は偽装の為別の女性と婚姻し、
7年もの間、俺たちは離れて暮らしてた。そして、弟を失脚させた父上は、俺と母上を迎えに来てくれた。
母上はいつも言っていた。父上の事が大好きなのだと。離れていてもずっと…。
俺はその話を子守歌のように毎日聞かされて眠ったよ。会えるか分からない父上だったが、
時を経て、俺は父上と母上と一緒に暮らせることになった。そして第一王子となった…。
母上はいつも言っていた。俺がいるから幸せなのだと。いつでも父上を思い出せるからと。
そう…父上を思い出して幸せな気持ちになると…。
リリィ、お前の父も、きっとそうだ。離れて暮らしてもお前が生きているだけで、
お前を思い描くだけで幸せでいてくれる。親と子はそんな存在なのかもしれないな。
子供の為に、愛する者の為に、幸せを願うだけで幸せだと・・・・。」
リリィベルは、少し笑みを浮かべた。
「私を思って、父は幸せでいてくれるでしょうか…。」
「あぁ…あんなに優しい父ではないか。優しいお前を育ててくれた。立派な父だ。
お前たちが何故北部に行ったのか理由が分かったんだ。いつか、父を王都へ移すのはどうだ?」
「えっ・・・・?」
「お前の父はとても強い。だが、お前の側でお前を見て居たいはずだ…。
侮辱している訳じゃない。すべてが済んだら、代わりに北部に騎士団を設ける。
だから…父を王都へ、な?どうだ?」
「テオ様…」
「もちろん、お前の母も一緒にだ。墓を移して、2人で王都でお前の幸せな姿を見てもらうんだ。
それくらい思っていてもいいだろう?決めるのはお前の父だ。俺は何でもしてやるぞ。
お前が望むことすべて、父が寂しいのが嫌なら側に連れてこよう。
私はお前を離すことができない。我儘だろう。俺は…。父をお前を引き離しておきながら。
俺はお前といる事をとても喜んでいる…許してくれ…ひどい男に捕まったな?」
「っ…テオ様…そこまで考えて下さるのですか…。」
「お前が悲しむのは嫌なんだ…。ブラックウォール家は元々皇太后が絡んだ話だった。
優秀な騎士団長を北部へ追いやったも同然だ…。ならば、王都へ返すことだって可能だ。
父上は、きっと正しい判断をしてくれる。だから、そんなに悲しまないでくれ…。」
そう言って、テオドールはぎゅっとリリィベルを抱きしめた。
「有難う御座います…テオ様…。」
その胸に顔を埋めリリィベルは涙を流した。
どのくらいの時間をそうしていたのだろう…。
抱きしめるぬくもりが、ひどく心を落ち着かせてくれた。
「リリィ・・・・?眠くはないか?」
「ふふっ・・・少し・・・安心したら眠くなりました。」
そう言ってふにゃりと笑った。
「私も安心してこのまま寝てしまいそうだ。ベッドに行こう?」
「はい・・・・。」
そのままテオドールはリリィベルを抱き上げて、自室へ連れて行った。
2人は自然にベッドに入り、抱きしめあった。
トクトクと優しい鼓動が安心させてくれる。
ベッドに入ったリリィベルは、温かい腕と泣いた疲れで、そのまま寝てしまった。
そんなリリィベルの顔を見て、テオドールは満足気に笑みを浮かべた。
「おやすみ・・・リリィ・・・」
目が覚めて、すぐ隣にお前がいると思うと…涙が出そうになるよ…。
お前を抱えて眠ったら、俺はどんな幸せを夢に見るだろう…。
お前はとても柔らかくて、温かくて、ずっと閉じ込めておきたいくらいだ・・・・。
このぬくもりを手に入れた。俺は…これから始まる一瞬一瞬を忘れない・・・・。
抱きしめた感触が、とても懐かしいんだ・・・。
前世でも俺はお前を抱きしめて、幸せに眠ったのだろうか・・・。
そんな気がしてならないんだ。
「1人増えるだけでこんなに楽しいのね。ねぇオリヴァー様?もう1人子をもうけても良かったわね?
女の子がいいわ。」
「そうだなぁ、まぁ今からでも遅くあるまい?」
「うふふっ」
そんな会話をする両親にテオドールは嫌そうな顔をした。
「作るならもっと早く作ればよかったではありませんか!
何歳離れた兄妹が出来るやらっ‥私達が授かればもう祖父母ですよ?」
「孫と同じ歳の子か。面白いな」
クククっと笑った皇帝だった。
テオドールはそんな両親を見ながら、少し嫌気がさした顔をしていた。
その様子をリリィベルは楽しげに見ていた。
皇帝はリリィベルに問いかけた。
「リリィ、料理は口にあったか?」
「はい、とても美味しい料理でした。何より楽しかったです。」
「次はダニエルも一緒に5人で食事をしよう。」
「はい、お義父様」
にっこりとリリィベルは笑みを浮かべていた。
けれど、それが少しテオドールは気に掛かっていた。
「毎日こんな楽しい時間を過ごせたら嬉しいわ。リリィ?明日は仕立て屋を呼ぶから一緒にお買い物しましょう?」
「はい、お義母様。楽しみです。」
テオドールはそっと席を立った。
「リリィ、もうそろそろ俺たちは部屋に戻ろう?今日は疲れただろう?」
「あっ…はい殿下…。」
「違う、テオと呼べって言っただろう。家族しかいないんだ。誰も気にせん。
それにお前はもう俺の婚約者だ。母上の次に高貴なのはお前だよ。」
「あっ…はい、テオ様。」
テオドールはリリィベルの手を取り、両親の方を見た。
「リリィを休ませますので、また明日。おやすみなさい。父上、母上。」
少し険しい表情をしていたテオドール。その顔に、2人は笑顔で返した。
「あぁ、おやすみリリィ。」
「えぇ、また明日ね。」
「はい。おやすみなさい。お義母様、お義父様。」
ペコリと礼をして、テオドールと一緒に部屋を出た。
皇太子宮に戻った二人。テオドールはリリィベルの部屋にそのまま入った。
「リリィ、メイドを呼ぶから湯を浴びておいで?疲れてる顔してる。」
「テオ様…有難う御座います。」
「俺は自室にいるから、あぁ…鍵はかけないから。メイドが知らせにきたらまた来るよ。」
そう言って、テオドールはリリィベルの額にキスをした。
皇帝の鍵はそのまま闇に葬られそうだ。
「・・・・・・・」
リリィベルは、メイド達が用意してくれる湯船につかり、全身を磨き上げられた。
自宅でもそうだったが、城のメイド達はとても手際よく品があった。
誰もが優しく、丁寧だった。髪に香油を縫ってもらい、髪はさらに艶が出て綺麗になった。
清楚なナイトドレスを着せられ、ショールを肩にかけて貰った。
綺麗にされた鏡台の前に座ったリリィベルだった。
そこへテオドールがやってきた。
「リリィ、少しはゆっくりできたか?」
「テオ様・・・・はい。」
「そうか、良かった。」
そうして、テオドールはリリィの手を引き、ソファーに座り、自身の膝にリリィベルを乗せた。
「ちょっ…テオ様!重いですからっ」
「全然?羽でも生えてんのか?軽すぎる。」
そう言ってテオドールは笑った。
「もうっ…私は鳥じゃありませんよ?」
「あぁ、天使だったな。それとも、俺の為に舞い降りた女神か?」
「ふふふっ・・・・テオ様ったら・・・ふふふっ」
「・・・・・・・」
リリィベルはようやくいつもの様に笑ってくれた。
「リリィ、無理しなくていいんだぞ?」
「え?」
テオドールは優しい目をしてリリィベルの髪を撫でた。
「父親と離れてからずっとだった。気付いてなかったのか?」
「っ…私、そんな…」
リリィベルは思いもよらなかった様子だった。
寂しくない訳ないだろ?
ずっと父親と二人、屋敷の家でも使用人は居ただろうが、家族と呼べる者は・・・。
だから、父上と母上を見ているリリィベルの瞳は少し羨まし気で悲し気だった。
「私、そんなつもりじゃ・・・・」
「わかっている。自分でも気付かないで顔に出る事だってある。俺もそうだ。」
テオドールは両足の間にすっぽりハマったリリィベルをぎゅっと抱きしめた。
「俺がいる。寂しさも、悩みも、怒りも、楽しい事も、嬉しい事も俺が全部聞いてやる。
なんでも話してくれ。俺はお前が大事なんだ。何一つ見落としたくない。」
テオドールはリリィベルの頭に顎を乗せて瞳を閉じた。
「俺の身体はお前より大きいだろう?どんな事も受け止めてやるから。」
「・・・・はい・・・・テオ様・・・・・」
瞳に涙を滲ませて、リリィベルは笑った。
「私が…城で4人で食事している間。父は一人なのだと思って…胸が痛かったのです。」
「あぁ…」
「お義母様とお義父様が…とても仲が良くて、それを見て、母を亡くした父が寂しくないかと思ったのです。」
「そうだな…」
「今は私も離れて…寂しがってはいないかと…考えてしまうのです…。」
次々と零れ落ちるリリィベルの思いは涙の雫となる。
「けれど…テオ様のお側を離れられない自分が、薄情なのかと思ってしまうのです…。」
「・・・・リリィ?それは違うな。お前はこんなに父を思っているじゃねぇか・・・・」
「親というのは、子供の幸せを一番考えてくれるんだ。
俺が、城に上がるまでの事をお前は知ってるか?」
「いえ・・・あまり・・・・」
「そうだな。俺と同じ年のお前は知らないだろう。俺は、母上が城下に住んでいてそこで産まれ育ったんだ。」
「え?」
「父上は、元々母上と婚約する予定だったが、色々あってな…。
腹違いの弟と皇位争いをしていた。もちろん皇太子だったのは父上だったが、
側室の子が、父上を殺してでも、皇太子になりたかった。皇后になりたかった側室、側室の生家も
権力のある家になるため父上への謀反を企てていた。その間、父上は偽装の為別の女性と婚姻し、
7年もの間、俺たちは離れて暮らしてた。そして、弟を失脚させた父上は、俺と母上を迎えに来てくれた。
母上はいつも言っていた。父上の事が大好きなのだと。離れていてもずっと…。
俺はその話を子守歌のように毎日聞かされて眠ったよ。会えるか分からない父上だったが、
時を経て、俺は父上と母上と一緒に暮らせることになった。そして第一王子となった…。
母上はいつも言っていた。俺がいるから幸せなのだと。いつでも父上を思い出せるからと。
そう…父上を思い出して幸せな気持ちになると…。
リリィ、お前の父も、きっとそうだ。離れて暮らしてもお前が生きているだけで、
お前を思い描くだけで幸せでいてくれる。親と子はそんな存在なのかもしれないな。
子供の為に、愛する者の為に、幸せを願うだけで幸せだと・・・・。」
リリィベルは、少し笑みを浮かべた。
「私を思って、父は幸せでいてくれるでしょうか…。」
「あぁ…あんなに優しい父ではないか。優しいお前を育ててくれた。立派な父だ。
お前たちが何故北部に行ったのか理由が分かったんだ。いつか、父を王都へ移すのはどうだ?」
「えっ・・・・?」
「お前の父はとても強い。だが、お前の側でお前を見て居たいはずだ…。
侮辱している訳じゃない。すべてが済んだら、代わりに北部に騎士団を設ける。
だから…父を王都へ、な?どうだ?」
「テオ様…」
「もちろん、お前の母も一緒にだ。墓を移して、2人で王都でお前の幸せな姿を見てもらうんだ。
それくらい思っていてもいいだろう?決めるのはお前の父だ。俺は何でもしてやるぞ。
お前が望むことすべて、父が寂しいのが嫌なら側に連れてこよう。
私はお前を離すことができない。我儘だろう。俺は…。父をお前を引き離しておきながら。
俺はお前といる事をとても喜んでいる…許してくれ…ひどい男に捕まったな?」
「っ…テオ様…そこまで考えて下さるのですか…。」
「お前が悲しむのは嫌なんだ…。ブラックウォール家は元々皇太后が絡んだ話だった。
優秀な騎士団長を北部へ追いやったも同然だ…。ならば、王都へ返すことだって可能だ。
父上は、きっと正しい判断をしてくれる。だから、そんなに悲しまないでくれ…。」
そう言って、テオドールはぎゅっとリリィベルを抱きしめた。
「有難う御座います…テオ様…。」
その胸に顔を埋めリリィベルは涙を流した。
どのくらいの時間をそうしていたのだろう…。
抱きしめるぬくもりが、ひどく心を落ち着かせてくれた。
「リリィ・・・・?眠くはないか?」
「ふふっ・・・少し・・・安心したら眠くなりました。」
そう言ってふにゃりと笑った。
「私も安心してこのまま寝てしまいそうだ。ベッドに行こう?」
「はい・・・・。」
そのままテオドールはリリィベルを抱き上げて、自室へ連れて行った。
2人は自然にベッドに入り、抱きしめあった。
トクトクと優しい鼓動が安心させてくれる。
ベッドに入ったリリィベルは、温かい腕と泣いた疲れで、そのまま寝てしまった。
そんなリリィベルの顔を見て、テオドールは満足気に笑みを浮かべた。
「おやすみ・・・リリィ・・・」
目が覚めて、すぐ隣にお前がいると思うと…涙が出そうになるよ…。
お前を抱えて眠ったら、俺はどんな幸せを夢に見るだろう…。
お前はとても柔らかくて、温かくて、ずっと閉じ込めておきたいくらいだ・・・・。
このぬくもりを手に入れた。俺は…これから始まる一瞬一瞬を忘れない・・・・。
抱きしめた感触が、とても懐かしいんだ・・・。
前世でも俺はお前を抱きしめて、幸せに眠ったのだろうか・・・。
そんな気がしてならないんだ。
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