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いらねーし
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「では、私はこれで‥‥」
ダニエルが城を下がる。
「‥お父様‥」
リリィベルは少し悲しげに、その胸に抱き付いた。
「リリィ、これからは皇太子殿下のおそばで、しっかり学び、皇后陛下を見習って過ごしなさい。」
「っお父様‥‥‥」
リリィベルの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「お前の荷物を送るからな。それに、会えない訳じゃない。
北部へ戻る前に、顔を見にくるよ?」
「はい‥‥お父様‥‥」
抱きしめ合う親子を、皇帝家族が見守っていた。
正面の門から馬車が出て行く。
その姿をしばらく見送った。
皇帝はリリィベルの肩に手を置いた。
「すまないな、リリィ‥父とこんなに早く離してしまった‥」
その皇帝の言葉に涙を拭って、笑って見せた。
「とんでもございません。陛下‥‥私は皇太子殿下の手を取ったのです‥‥。これは私の人生‥‥父と2度と会えないわけじゃありません。ですが、皇太子殿下の側には、望まなければいられません。どうか、これからも宜しくお願い致します。」
「リリィ、本当にいい子ね。大丈夫よ。私達がいるわ?」
皇后はリリィベルを抱きしめた。
「はいお義母様‥。」
「さぁ、部屋はそろそろ整っているはずだ。案内しよう。その後4人で夕食だ。」
皇帝の言葉で、3人は歩き出す。
その背中を皇太子は少し眺めていた。
これからは、一緒に居られる‥‥
そばで守ることが出来る‥
愛する父と母、
そして、愛する人‥
愛するリリィ。
皇太子の自室の隣の皇太子妃の部屋。
これは、皇帝陛下がマーガレットが来た際に施したのだ。
皇太子宮を夫婦の宮とした。自由に行き来出来る様に。
もちろん、続き部屋である。
「私が使ってた家具ばかりだけれど、自由に使って、
そして、そのうちにリリィの好きな家具を置きましょう?」
「お義母様!とっても素敵なお部屋です。」
「ふふっ嬉しいわぁ。」
女達は楽しそうに話している。
それを見る男達は、幸せそうな表情を浮かべていた。
「見ろ、テオドール‥これが幸せだ。」
「はい父上‥‥リリィが楽しそうで幸せです。」
「そうだろう?私も今とても幸せだ。マーガレットがあんなに喜んでいる。」
「同じくです父上、リリィが可愛くて死にそうです。」
「あぁ、わかるぞ。2人共可愛くてたまらないな‥」
ベタ惚れとは、まさにこの事か。
だが、父はスッと、鍵を差し出した。
それを横目にして、息子は父を見た。
「そんなもの必要ありません。」
「いや、まだダメだ。」
「何かあったらその鍵をガチャガチャするだけで、遅れを取ります。」
「なんの、蹴破れば良い」
「父上、私の邪魔をするんですか?」
「違う、これはダニエルの為だ。」
「‥‥‥卑怯です。」
「結婚までは1年、妃教育に入るんだ。
あのか細い腹を膨らませてウェディングドレスを着せるか?
帝国の皇太子妃が」
「ははっ‥父上。」
「なんだ?」
「父上に言われたくありません。」
「お前、言ってくれるな‥‥」
「これから私は戦いになるんです。どうぞ、私を信じてください?」
「男の欲は信じられないんだ。特に、その若さ故にな。」
「それは経験談ですかー?父上?」
「ははははは、悪いか。事実だ。私の子だ。どうだ、よく分かっているだろう?その血に流れる私の血がな!」
「マジいらねーし!」
「その口調はやめろ」
「やめねーし、しつけーし。」
「いいから言うこと聞けバカ息子」
「バカじゃねーし」
「くそが俺に歯向かう気か?」
親子はよく皇族の仮面を床に叩き捨てる。
鍵を差し出し、押し戻すと親子は繰り返していた。
荒い口調になりながら。
しかし、テオドールはふとその鍵を受け取った。
「あぁ、理解したか?テオ?」
にっこり笑った父。
「‥‥‥‥‥」
父ににっこり笑顔を返した息子。
パキンッ!!!
笑顔でその鍵をへし折った。鍵穴もグッと力を込めて曲げた。
「‥‥‥‥‥‥‥」
双方ニコニコ笑顔を崩さない。
「‥‥やったな?」
「えぇ。不毛なので」
「そうか」
「はい。父上の子ですので」
「そうか、私の子であったな。わかっている。」
父は、スッと同じ物をポケットから取り出した。
息子はそれを察した。
「安心しろ?スペアは腐るほど作っておいた。
壊れるのが鍵が先か、お前の手が先か、賭けようか?」
「はははっ、分かりましたよ。持っておけばいいのでしょう?」
ようやく、テオドールは鍵を受け取った。
「持てばよいのでしょう。」
諦めた表情を浮かべた。
「鍵をかけるかどうかは別です。」
去り際に真顔でそう言い放った。
「おいこらクソガキ」
帝国の高貴な皇族の男は、よくその仮面を破り捨てる。
ダニエルが城を下がる。
「‥お父様‥」
リリィベルは少し悲しげに、その胸に抱き付いた。
「リリィ、これからは皇太子殿下のおそばで、しっかり学び、皇后陛下を見習って過ごしなさい。」
「っお父様‥‥‥」
リリィベルの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「お前の荷物を送るからな。それに、会えない訳じゃない。
北部へ戻る前に、顔を見にくるよ?」
「はい‥‥お父様‥‥」
抱きしめ合う親子を、皇帝家族が見守っていた。
正面の門から馬車が出て行く。
その姿をしばらく見送った。
皇帝はリリィベルの肩に手を置いた。
「すまないな、リリィ‥父とこんなに早く離してしまった‥」
その皇帝の言葉に涙を拭って、笑って見せた。
「とんでもございません。陛下‥‥私は皇太子殿下の手を取ったのです‥‥。これは私の人生‥‥父と2度と会えないわけじゃありません。ですが、皇太子殿下の側には、望まなければいられません。どうか、これからも宜しくお願い致します。」
「リリィ、本当にいい子ね。大丈夫よ。私達がいるわ?」
皇后はリリィベルを抱きしめた。
「はいお義母様‥。」
「さぁ、部屋はそろそろ整っているはずだ。案内しよう。その後4人で夕食だ。」
皇帝の言葉で、3人は歩き出す。
その背中を皇太子は少し眺めていた。
これからは、一緒に居られる‥‥
そばで守ることが出来る‥
愛する父と母、
そして、愛する人‥
愛するリリィ。
皇太子の自室の隣の皇太子妃の部屋。
これは、皇帝陛下がマーガレットが来た際に施したのだ。
皇太子宮を夫婦の宮とした。自由に行き来出来る様に。
もちろん、続き部屋である。
「私が使ってた家具ばかりだけれど、自由に使って、
そして、そのうちにリリィの好きな家具を置きましょう?」
「お義母様!とっても素敵なお部屋です。」
「ふふっ嬉しいわぁ。」
女達は楽しそうに話している。
それを見る男達は、幸せそうな表情を浮かべていた。
「見ろ、テオドール‥これが幸せだ。」
「はい父上‥‥リリィが楽しそうで幸せです。」
「そうだろう?私も今とても幸せだ。マーガレットがあんなに喜んでいる。」
「同じくです父上、リリィが可愛くて死にそうです。」
「あぁ、わかるぞ。2人共可愛くてたまらないな‥」
ベタ惚れとは、まさにこの事か。
だが、父はスッと、鍵を差し出した。
それを横目にして、息子は父を見た。
「そんなもの必要ありません。」
「いや、まだダメだ。」
「何かあったらその鍵をガチャガチャするだけで、遅れを取ります。」
「なんの、蹴破れば良い」
「父上、私の邪魔をするんですか?」
「違う、これはダニエルの為だ。」
「‥‥‥卑怯です。」
「結婚までは1年、妃教育に入るんだ。
あのか細い腹を膨らませてウェディングドレスを着せるか?
帝国の皇太子妃が」
「ははっ‥父上。」
「なんだ?」
「父上に言われたくありません。」
「お前、言ってくれるな‥‥」
「これから私は戦いになるんです。どうぞ、私を信じてください?」
「男の欲は信じられないんだ。特に、その若さ故にな。」
「それは経験談ですかー?父上?」
「ははははは、悪いか。事実だ。私の子だ。どうだ、よく分かっているだろう?その血に流れる私の血がな!」
「マジいらねーし!」
「その口調はやめろ」
「やめねーし、しつけーし。」
「いいから言うこと聞けバカ息子」
「バカじゃねーし」
「くそが俺に歯向かう気か?」
親子はよく皇族の仮面を床に叩き捨てる。
鍵を差し出し、押し戻すと親子は繰り返していた。
荒い口調になりながら。
しかし、テオドールはふとその鍵を受け取った。
「あぁ、理解したか?テオ?」
にっこり笑った父。
「‥‥‥‥‥」
父ににっこり笑顔を返した息子。
パキンッ!!!
笑顔でその鍵をへし折った。鍵穴もグッと力を込めて曲げた。
「‥‥‥‥‥‥‥」
双方ニコニコ笑顔を崩さない。
「‥‥やったな?」
「えぇ。不毛なので」
「そうか」
「はい。父上の子ですので」
「そうか、私の子であったな。わかっている。」
父は、スッと同じ物をポケットから取り出した。
息子はそれを察した。
「安心しろ?スペアは腐るほど作っておいた。
壊れるのが鍵が先か、お前の手が先か、賭けようか?」
「はははっ、分かりましたよ。持っておけばいいのでしょう?」
ようやく、テオドールは鍵を受け取った。
「持てばよいのでしょう。」
諦めた表情を浮かべた。
「鍵をかけるかどうかは別です。」
去り際に真顔でそう言い放った。
「おいこらクソガキ」
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