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惹かれる運命
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ブラックウォール家タウンハウスの裏側に繋いでおいた馬の場所までテオドールはリリィベルを連れて行った。凛々しい真っ黒な鬣髪に茶色で艶のある体のテオドールの愛馬がそこで待っていた。
「馬は乗れるか?」
馬の鼻梁を撫でて、リリィベルに問いかけた。
「あ‥いえ、私ずっと、お父様に禁じられて‥」
「‥‥‥‥‥そうか。」
アレクシスの言葉が蘇る。
誕生祭の夜、願いを込めた。
暁の為に、レイラはその身を削っていたと‥
「‥テオ様?」
リリィベルが、申し訳なさそうにテオドールを見た。
「なんでもねぇよ‥乗らないのなら都合がいい。まぁ、最初から馬は一頭しかないから、
一緒に乗るつもりだったがな‥‥。こいつはアースと言うんだ。俺の愛馬だ。」
「まぁ…凛々しいお馬さんですね」
「そうだろう?とりあえず乗るぞ。」
そう言ってリリィベルを持ち上げ、アースの背の鞍に乗せた。
「怖いか?」
「…テオ様がいらっしゃるので、大丈夫です。」
その言葉にテオドールは笑顔を浮かべ、鐙に足をかけ颯爽と乗った。
そして手綱を握り、並足をさせた。
後ろからリリィベルの耳元でささやく
「大丈夫そうか?」
「っ・・はい・・・・。」
クスッと笑ったテオドールは少しアースを速足で駆けさせる。
「つらくなったらいつでも言え。いいな。」
「はいっ」
テオドールの胸にしがみ付いたリリィベルはその体温に胸を熱くさせていた。
・・・・どこへ、攫われるのかしら・・・・。
攫いに来ただなんて、テオ様は・・・困らせる天才だわ?
でも、手紙よりも、本人が来てくれて、また胸が高鳴った。
わざわざ、現れ、言った通りに手紙を持ってきてくれた・・・・。
「・・・・・」
リリィベルはちらっとテオドールの顔を盗み見た。
まっすぐ前を向いて、機嫌がいいのかその顔は笑みが浮かんでいる。
〝私と一緒に居れると、嬉しいのですか?〟
〝なぜ、そんなに…私を?〟
〝テオ様の心に…私は手を伸ばしてもいいですか?〟
「顔に穴が開くぞ?俺の。」
そう言ってリリィベルを見る。
「っ…ごめんなさいっ…」
「ははっ…構わねぇよ。俺も後で、お前を見る。お相子だな?」
「私は、見ていて楽しいものでは・・・・」
そう言って俯いた。
「楽しいだけじゃない。愛でてるんだ。これくらいで音を上げるなよ?」
「もぉっ・・・・」
くしゃっと、テオドールのシャツをさらに強くつかんだ。
もう熱は下げられない。
人気の少ない道を駆けていく。リリィベルにはそこがどこだか分からない。どれくらい経ったのかも。
けれど、テオドールは慣れている道のようだった。
広い山道を抜けると、辺り一面の花々が広がった。
「わぁ・・・・・」
リリィベルは目を輝かせて声を漏らした。
その様子に満足気のテオドールだった。
「ついたぞ、降りよう。」
一足先に降りて、リリィベルを馬から下した。
「初めてだっただろ?足が震えるだろうから、手を繋ごう?」
そう言って、テオドールは自然と手を繋いだ。そしてゆっくり手を引いて歩きだす。
花がたくさん散りばめられた中、細い道が出来ている。
その先に、二人掛けのガーデンベンチが一つ。
そしてベンチの先を見れば、帝国が遠くに広がっていく。
「ここから、帝国が一望できる。夜はとても綺麗だぞ?」
「夜に来たことが?」
「あぁ…昔幼い頃、陛下が連れてきてくれた。小さな灯りがたくさん散らばっていて。
その分だけの責任があるのだと。教えてくれた。」
風を受け2人の髪が靡く。
「そんな大切なところへ・・・・」
帝国を一望し、リリィベルはぽつりと呟いた。
「大切だから、連れてきた。それに、ここは二人きりで居られる。」
そう言って、リリィベルを見たテオドールの瞳は優しく穏やかだった。
「二人きり・・・なのですね・・・・。」
ベンチに腰掛けて、2人きり、帝国を見下ろす。
「リリィ、5日後には領地へ帰るのだろう?」
「・・・・なぜそれを?」
「俺はなんでも知ってる…なぜって?俺は皇太子だからだ。」
ふっと自信ありげに笑って見せた。
「ふふふっどこから漏れたのかしら?北部の黒き壁は高いはずなのに・・・」
そう言って笑ったリリィベルだった。
「あぁ、高くて高くて、手が届くかな・・・・。」
笑いながら空を仰ぐ。
「テオ様に届かない場所があるのですか?」
「さぁ・・・どうだろうな。届くといいのだが・・・・。」
空を仰いで風を感じ、瞳を閉じる。
二人一緒にいるだけで、心が落ち着いていく。だが高鳴る事もある。
その目をみると、どうしようもない愛しさに溺れそうになる。
「・・・リリィ・・・」
「はい・・・」
テオドールは、リリィベルの手に自身の手を重ねた。
「お前の手は小さいな・・・・。」
「テオ様の皇太子という大きな手には、私は小さな手でございましょう。」
それは、皇太子という立場を分かって言った言葉だった。
「逢ったばかりだが、俺は、お前にどうしようもなく惹かれる。
俺の手は、お前と手を重ねて居たくて仕方がないんだ。」
そう言って、少しだけ顔を傾けてリリィベルを見つめた。
「お前は、俺を見て、どんな気持ちだ?」
「・・・とても高貴な存在で・・・・ここが夢なのかと思います・・・。」
令嬢らしい、返答だった。
「俺は高貴とは程遠い・・・。俺の身はいつも守られてばかりなんだ。」
「そんな事はございません。皆がテオ様を信じ、慕っております。」
「俺は・・・お前を守れるだけの力があるだろうか・・・・」
「・・え・・・?」
「けれど、この手を離したくない・・・・」
そう言って重ねた手を今度は強く握った。
「リリィ・・・・好きだよ。」
リリィベルは本当にここが夢の中ではないかと思った。
テオドールの瞳が真剣で、それが、真実だと感じたから…。
これが夢なら、私はいつから夢を見ていたのだろう。
出会ったあの夜から?ダンスを踊った時から?
唇を重ねた時から・・・?
「テオ様・・・・。」
「俺は本気だ・・・・。俺の言葉はその身に重たいか?」
少し切なげに揺れていた。
私はその瞳に吸い寄せられる事しかできない。抜け出せない森の中のように。
だが、森を抜けると、花畑があったように、
その道の先には、あなたしか居ないと思ってしまう。
「…テオ様を…私が…独り占めしても、…怒りませんか?」
俯きながら小さく呟いた。
赤い頬は風に当たっても冷めはしない。
これが何なのか、もう気づいてしまったから。
私はこの方に出会うために、産まれたのだと…。
なぜだか、そう思うの。言葉で言い尽くせないほどの、熱い思いが…。
「テオ様…どうか、私をその手の中に閉じ込めてくれませんか?」
リリィベルは微笑んで、そう言った。
「リリィ・・・・俺の手に捉えられても、構わないか?」
「…テオ様がそう思って私を愛でて下さるなら…私は嬉しいです…。」
私も…テオ様をお慕いしております。これが夢ではないのなら、きっと…あの晩出会った時からなのでしょう…。」
そう言って笑ったリリィベルの手を引き寄せて、テオドールはその胸に抱きしめた。
「出会ったばかりの俺に…不安はないか…?」
少し戸惑いがちにテオドールは言った。
そう言われ、リリィベルはくすりと笑った。
「テオ様は…不安ですか?」
「お前が居れば、俺は何もいらない…お前は、本当に…。」
今世でも、俺だけを選んでくれるのか・・・?
躊躇いもせず・・・・。
「なんでしょう…テオ様といると、私は、あなたしか見えないのです・・・・。」
「っ‥‥‥そうか…‥‥俺も、お前しか見えないんだ…。」
抱きしめる手に力が入る。
リリィベルがテオドールの背に控え目に手を回した。
お前は、いつだって俺を見てくれるんだな‥‥。
また、俺を好きになってくれるんだな‥‥。
「…っリリィ…我儘を言う。」
「はい…」
「どんな時も、俺がお前を守るから…ずっと俺を見ていてほしい…。そして、いつの日か、俺の隣に立っていてほしい…。」
「‥‥はい…テオ様…」
瞳を閉じて、リリィベルは迷いのない返事をした。
リリィは、レイラと何一つ変わらない。
迷いなく俺を思い、俺を好きでいてくれる。
俺が言える事はもう、これしかない…。
「リリィ…愛してる…。」
涙が溢れそうなほど、心が潰れそうになる程、
俺はお前を愛している。
「私はきっと…テオ様に会うために産まれたのでしょう・・・」
「!!!!」
リリィベルの言葉にテオドールは目を見開いた。
「そう思うのです…不思議です…。だから、どんな事があろうと、
あなたのお側に居たいと思ってしまうのです…。テオ様?私の思いは重いですか?」
「・・・・っ・・・・重いものかっ・・・・・・・。
俺の方が・・・・ずっとお前を切望している・・・・・。
俺はきっと、お前を一生掴まえて離さないだろう。」
「それは女に産まれて、何より幸運な事です…。
この国の皇太子殿下にそのような想いを向けられて、喜ばない者などおりません。
テオ様に…お会いできた私は……幸せです…。」
しばらく黙ったリリィベルだったが、スッっとテオドールを見上げた。
「どうか…私をずっと…離さないでください…。」
そう言ったリリィベルの瞳に涙が浮かんでいた。
「リリィ…?」
その涙にテオドールは戸惑った。
ポロポロとリリィベルはその瞳を震わせて、想いが堰を切ったように涙を流していた。
「ずっと…あなたと一緒に生きて居たいのです…本当ですっ…
あなたと一緒に居られるなら…私は何もいりません…。
ただ、あなたの側に居たいと、心が叫ぶのですっ…。
どうか、私があなたの側を離れる事がないように・・・・
鎖で繋いで、離さないで…っ……お願いします…。
会いたかったのですっ…ずっと…あなたの側に居たいと……っ…
あなたを……あなたを愛しています…。
本当ですっ・・・・あなたしか・・・・私には・・・・っ・・・」
心が叫んでいる。どこかに閉じ込めてあった思いが、とめどなく溢れてくる。
「リリィ…俺は…お前を離さないよ……絶対……
俺も…っ…心から……愛しているっ……。」
リリィベルの涙と一緒に、テオドールの瞳からも一筋の涙が流れる。
魂は叫んでいる。
生まれ変わった世界でも、
惹かれる運命…。
もう2度と……離れたくないのだと………魂が叫んでいる。
「馬は乗れるか?」
馬の鼻梁を撫でて、リリィベルに問いかけた。
「あ‥いえ、私ずっと、お父様に禁じられて‥」
「‥‥‥‥‥そうか。」
アレクシスの言葉が蘇る。
誕生祭の夜、願いを込めた。
暁の為に、レイラはその身を削っていたと‥
「‥テオ様?」
リリィベルが、申し訳なさそうにテオドールを見た。
「なんでもねぇよ‥乗らないのなら都合がいい。まぁ、最初から馬は一頭しかないから、
一緒に乗るつもりだったがな‥‥。こいつはアースと言うんだ。俺の愛馬だ。」
「まぁ…凛々しいお馬さんですね」
「そうだろう?とりあえず乗るぞ。」
そう言ってリリィベルを持ち上げ、アースの背の鞍に乗せた。
「怖いか?」
「…テオ様がいらっしゃるので、大丈夫です。」
その言葉にテオドールは笑顔を浮かべ、鐙に足をかけ颯爽と乗った。
そして手綱を握り、並足をさせた。
後ろからリリィベルの耳元でささやく
「大丈夫そうか?」
「っ・・はい・・・・。」
クスッと笑ったテオドールは少しアースを速足で駆けさせる。
「つらくなったらいつでも言え。いいな。」
「はいっ」
テオドールの胸にしがみ付いたリリィベルはその体温に胸を熱くさせていた。
・・・・どこへ、攫われるのかしら・・・・。
攫いに来ただなんて、テオ様は・・・困らせる天才だわ?
でも、手紙よりも、本人が来てくれて、また胸が高鳴った。
わざわざ、現れ、言った通りに手紙を持ってきてくれた・・・・。
「・・・・・」
リリィベルはちらっとテオドールの顔を盗み見た。
まっすぐ前を向いて、機嫌がいいのかその顔は笑みが浮かんでいる。
〝私と一緒に居れると、嬉しいのですか?〟
〝なぜ、そんなに…私を?〟
〝テオ様の心に…私は手を伸ばしてもいいですか?〟
「顔に穴が開くぞ?俺の。」
そう言ってリリィベルを見る。
「っ…ごめんなさいっ…」
「ははっ…構わねぇよ。俺も後で、お前を見る。お相子だな?」
「私は、見ていて楽しいものでは・・・・」
そう言って俯いた。
「楽しいだけじゃない。愛でてるんだ。これくらいで音を上げるなよ?」
「もぉっ・・・・」
くしゃっと、テオドールのシャツをさらに強くつかんだ。
もう熱は下げられない。
人気の少ない道を駆けていく。リリィベルにはそこがどこだか分からない。どれくらい経ったのかも。
けれど、テオドールは慣れている道のようだった。
広い山道を抜けると、辺り一面の花々が広がった。
「わぁ・・・・・」
リリィベルは目を輝かせて声を漏らした。
その様子に満足気のテオドールだった。
「ついたぞ、降りよう。」
一足先に降りて、リリィベルを馬から下した。
「初めてだっただろ?足が震えるだろうから、手を繋ごう?」
そう言って、テオドールは自然と手を繋いだ。そしてゆっくり手を引いて歩きだす。
花がたくさん散りばめられた中、細い道が出来ている。
その先に、二人掛けのガーデンベンチが一つ。
そしてベンチの先を見れば、帝国が遠くに広がっていく。
「ここから、帝国が一望できる。夜はとても綺麗だぞ?」
「夜に来たことが?」
「あぁ…昔幼い頃、陛下が連れてきてくれた。小さな灯りがたくさん散らばっていて。
その分だけの責任があるのだと。教えてくれた。」
風を受け2人の髪が靡く。
「そんな大切なところへ・・・・」
帝国を一望し、リリィベルはぽつりと呟いた。
「大切だから、連れてきた。それに、ここは二人きりで居られる。」
そう言って、リリィベルを見たテオドールの瞳は優しく穏やかだった。
「二人きり・・・なのですね・・・・。」
ベンチに腰掛けて、2人きり、帝国を見下ろす。
「リリィ、5日後には領地へ帰るのだろう?」
「・・・・なぜそれを?」
「俺はなんでも知ってる…なぜって?俺は皇太子だからだ。」
ふっと自信ありげに笑って見せた。
「ふふふっどこから漏れたのかしら?北部の黒き壁は高いはずなのに・・・」
そう言って笑ったリリィベルだった。
「あぁ、高くて高くて、手が届くかな・・・・。」
笑いながら空を仰ぐ。
「テオ様に届かない場所があるのですか?」
「さぁ・・・どうだろうな。届くといいのだが・・・・。」
空を仰いで風を感じ、瞳を閉じる。
二人一緒にいるだけで、心が落ち着いていく。だが高鳴る事もある。
その目をみると、どうしようもない愛しさに溺れそうになる。
「・・・リリィ・・・」
「はい・・・」
テオドールは、リリィベルの手に自身の手を重ねた。
「お前の手は小さいな・・・・。」
「テオ様の皇太子という大きな手には、私は小さな手でございましょう。」
それは、皇太子という立場を分かって言った言葉だった。
「逢ったばかりだが、俺は、お前にどうしようもなく惹かれる。
俺の手は、お前と手を重ねて居たくて仕方がないんだ。」
そう言って、少しだけ顔を傾けてリリィベルを見つめた。
「お前は、俺を見て、どんな気持ちだ?」
「・・・とても高貴な存在で・・・・ここが夢なのかと思います・・・。」
令嬢らしい、返答だった。
「俺は高貴とは程遠い・・・。俺の身はいつも守られてばかりなんだ。」
「そんな事はございません。皆がテオ様を信じ、慕っております。」
「俺は・・・お前を守れるだけの力があるだろうか・・・・」
「・・え・・・?」
「けれど、この手を離したくない・・・・」
そう言って重ねた手を今度は強く握った。
「リリィ・・・・好きだよ。」
リリィベルは本当にここが夢の中ではないかと思った。
テオドールの瞳が真剣で、それが、真実だと感じたから…。
これが夢なら、私はいつから夢を見ていたのだろう。
出会ったあの夜から?ダンスを踊った時から?
唇を重ねた時から・・・?
「テオ様・・・・。」
「俺は本気だ・・・・。俺の言葉はその身に重たいか?」
少し切なげに揺れていた。
私はその瞳に吸い寄せられる事しかできない。抜け出せない森の中のように。
だが、森を抜けると、花畑があったように、
その道の先には、あなたしか居ないと思ってしまう。
「…テオ様を…私が…独り占めしても、…怒りませんか?」
俯きながら小さく呟いた。
赤い頬は風に当たっても冷めはしない。
これが何なのか、もう気づいてしまったから。
私はこの方に出会うために、産まれたのだと…。
なぜだか、そう思うの。言葉で言い尽くせないほどの、熱い思いが…。
「テオ様…どうか、私をその手の中に閉じ込めてくれませんか?」
リリィベルは微笑んで、そう言った。
「リリィ・・・・俺の手に捉えられても、構わないか?」
「…テオ様がそう思って私を愛でて下さるなら…私は嬉しいです…。」
私も…テオ様をお慕いしております。これが夢ではないのなら、きっと…あの晩出会った時からなのでしょう…。」
そう言って笑ったリリィベルの手を引き寄せて、テオドールはその胸に抱きしめた。
「出会ったばかりの俺に…不安はないか…?」
少し戸惑いがちにテオドールは言った。
そう言われ、リリィベルはくすりと笑った。
「テオ様は…不安ですか?」
「お前が居れば、俺は何もいらない…お前は、本当に…。」
今世でも、俺だけを選んでくれるのか・・・?
躊躇いもせず・・・・。
「なんでしょう…テオ様といると、私は、あなたしか見えないのです・・・・。」
「っ‥‥‥そうか…‥‥俺も、お前しか見えないんだ…。」
抱きしめる手に力が入る。
リリィベルがテオドールの背に控え目に手を回した。
お前は、いつだって俺を見てくれるんだな‥‥。
また、俺を好きになってくれるんだな‥‥。
「…っリリィ…我儘を言う。」
「はい…」
「どんな時も、俺がお前を守るから…ずっと俺を見ていてほしい…。そして、いつの日か、俺の隣に立っていてほしい…。」
「‥‥はい…テオ様…」
瞳を閉じて、リリィベルは迷いのない返事をした。
リリィは、レイラと何一つ変わらない。
迷いなく俺を思い、俺を好きでいてくれる。
俺が言える事はもう、これしかない…。
「リリィ…愛してる…。」
涙が溢れそうなほど、心が潰れそうになる程、
俺はお前を愛している。
「私はきっと…テオ様に会うために産まれたのでしょう・・・」
「!!!!」
リリィベルの言葉にテオドールは目を見開いた。
「そう思うのです…不思議です…。だから、どんな事があろうと、
あなたのお側に居たいと思ってしまうのです…。テオ様?私の思いは重いですか?」
「・・・・っ・・・・重いものかっ・・・・・・・。
俺の方が・・・・ずっとお前を切望している・・・・・。
俺はきっと、お前を一生掴まえて離さないだろう。」
「それは女に産まれて、何より幸運な事です…。
この国の皇太子殿下にそのような想いを向けられて、喜ばない者などおりません。
テオ様に…お会いできた私は……幸せです…。」
しばらく黙ったリリィベルだったが、スッっとテオドールを見上げた。
「どうか…私をずっと…離さないでください…。」
そう言ったリリィベルの瞳に涙が浮かんでいた。
「リリィ…?」
その涙にテオドールは戸惑った。
ポロポロとリリィベルはその瞳を震わせて、想いが堰を切ったように涙を流していた。
「ずっと…あなたと一緒に生きて居たいのです…本当ですっ…
あなたと一緒に居られるなら…私は何もいりません…。
ただ、あなたの側に居たいと、心が叫ぶのですっ…。
どうか、私があなたの側を離れる事がないように・・・・
鎖で繋いで、離さないで…っ……お願いします…。
会いたかったのですっ…ずっと…あなたの側に居たいと……っ…
あなたを……あなたを愛しています…。
本当ですっ・・・・あなたしか・・・・私には・・・・っ・・・」
心が叫んでいる。どこかに閉じ込めてあった思いが、とめどなく溢れてくる。
「リリィ…俺は…お前を離さないよ……絶対……
俺も…っ…心から……愛しているっ……。」
リリィベルの涙と一緒に、テオドールの瞳からも一筋の涙が流れる。
魂は叫んでいる。
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