ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

文字の大きさ
上 下
39 / 240

星と月に願いを

しおりを挟む
ブラックウォール家タウンハウスの自室でリリィベルはぼぅっとしていた。

…殿下が…

…テオドール様が…

…テオ様が…


私に‥‥口付けを・・・・・。


湯につかっても、髪を梳かしていても、あの場面が蘇る。

唇が離れる瞬間のテオドールの顔は、切なくてとても甘かった。
「・・・・・っ・・・・・」

胸が高鳴る。心がおかしくなってしまいそう…。

今日初めてこの目にした男性と、それも帝国の皇太子と・・・・。

〝リリィ、俺は…1人の男として言っている〟

そう言ったテオドールの言葉が忘れられない。

いや何もかもが忘れられない。

あの噴水で出会った瞬間、月が私を照らしたのかと思った…。

言葉を交わし、手に触れた瞬間。

手を取って、駆け出した瞬間も、寄せられた唇とささやきも・・・。


そして唇が重なった瞬間も・・・・。

すべてが、胸に溢れて壊れそうな思い・・・・。

一目見たその時から、私は、あの方を特別だと思った・・・。

何も不安などなかった。側にいるだけで、胸が弾んでいた。


「テオ様・・・・今頃、私を思い出してくれているかしら・・・・?

そうだったら、私、どうにかなってしまいそう・・・・。」


肝心な言葉はまだ聞いていない。これが、〝恋〟というものかは・・・・。
けれど、つないだ手から、声から、私の心を刺激する、もう一つの鼓動・・・。

あんなに夢見心地になるのね・・・・。

私はもうテオ様に、心を引き寄せられたのかもしれない・・・・。

「手紙‥いつ‥くるのかな‥‥」

そう呟いて、リリィベルは布団に潜った。




皇太子の寝室、テオドールは胸元にある指輪を握りしめていた。

「やっと会えた‥‥」
握りしめた手をグッと顔に当てて、この喜びを噛み締めていた。

俺の心が掻き乱される。
レイラが目の前に現れた。

やっと‥‥

「会ってすぐ‥キスするなんて‥どうかしてるっ‥」
軽薄な男だと思われていないか?大丈夫なのか?

でも‥後悔してない‥‥

触れたかった。もっと‥

でも今日初めて会ったのに‥

こんなに抑えられない‥気持ちは止まらない。


さっき離れたばかりなのに、もう会いたい‥。



『そんなに会いたかったか?私に』

「?!アレクシス?!」

目の前に突然アレクシスが現れた。

だか、いつもの空間とは違った。俺の部屋に現れたのだ。

『私が地上にいる事がそんなに不思議か?』

「そりゃ、まぁ‥いつも暗がりにいるし‥」

『あぁ、それよりおめでとう?テオドール。』

「へ?」

『レイラの魂に会えただろう?飛んで跳ねて喜んでいると思ったが‥』

「噛み締めてるぜ‥お陰様でな」
ニヤッと笑った。

『ふっ‥危機は何度かあったが、レイラがお前に会いに来たようだ。よほど、惹かれていたのだろうな』

「‥‥そっか‥‥は、‥ははっ俺に会いに?」
じわじわと喜びが湧き出て笑みを隠せない。

『認めるしかあるまい‥‥それで、どうだった?レイラ、いや、リリィベルは‥』

「あぁ‥‥星が輝いてるみたいに見えた‥‥
ずっと‥顔見られなかったのに、レイラだった。
声も顔も仕草もっ‥レイラだ‥嬉しくてたまんねぇ‥」

『お前が暁でテオドールな様に、レイラもレイラでリリィベルである。誕生日プレゼントはもう受け取ったも同然だな?』

「あぁ‥今までで一番のプレゼントだ‥」

そう言って夜空に目を向けた。



『なら、暁だったお前とレイラの記憶はもうよいな?』

「いいって‥なにが?」
テオドールは眉を顰めた。

月明かりに照らされて、アレクシスはテオドールをじっと見つめていた。

『今生で番(つがい)に出会えたのだ。いつまでも記憶に縋る事はあるまい‥テオドールとして、リリィとして生きればよい‥』

「それはっ‥ダメだ!」
『なぜ?』

「俺はっ‥この指輪のことだって思い出せてないっ‥‥
それに、お前は言った‥俺がレイラに生かされていたんだと‥‥レイラを忘れてっ‥普通に生きたと思った人生だって‥俺はそうお前に言った‥‥‥俺はレイラの何を犠牲にした?何故、お前に思い出させて貰わなきゃ、思い出せなかった?思い出さなきゃ導かれない…って…リリィはレイラと同じ顔だった。俺も思ってた‥髪を黒くしたらこの顔も暁だ‥‥‥。歳を重ねる度にそう‥思い始めた‥。俺はこの世界でリリィを苦しめたくない!

絶対もう手放したくないっ!!だから‥俺達の全てを‥」

アレクシスはスッと目を細めた。

『壊れても構わん‥それは今でも変わらないか?』

「この世界のレイラを守る為なら‥俺は‥
全部思い出さなきゃ‥‥俺は、リリィと結ばれる資格がねぇ‥」

『よく言った。全てを思い出し、リリィのそばにいることが出来るのなら、お前に月の記憶を返そう‥だが、リリィはお前の苦しみに今も共鳴しているぞ?それでもいいのか?』

「え‥?どういう事だ‥」

『お前がこれまで、レイラを思い苦しむ度、レイラはその身を犠牲にしていた。焼かれる様な苦痛を、その身に何度も‥聞いていなかったのか?体が弱かったと‥』

テオドールは少し震えていた。

「‥‥‥‥じゃっ‥‥‥じゃあ、俺が‥この世界で、レイラを思って胸が痛かった時‥‥は‥‥‥」

震える胸を押さえ込んだ。

『あぁ、ハリーとか言う魔術師に言われた時も、お前は心を乱した。それだけじゃない。お前がレイラを思い苦しむ度に、宴でお前が一眼でレイラを見つけた瞬間、心を乱しただけで、リリィは体調が悪くなって庭に行ったと言ったではないか‥‥私は言った。無闇にレイラを刺激するお前が愚かで腹が立つとな‥‥どんな時も苦しんで居たのはお前だけではない。お前の何倍も‥‥レイラは苦痛を味わい、床に臥して、起き上がる事も出来ずに暮らしていた。

だから言ったのだ。お前が強くならなければ、お前と会う事は叶わないだろうとな‥』


「な‥‥‥」

テオドールの顔が歪んでいく‥

「なっ‥なんで!なんでレイラがっ?この世界に産まれて生きてたのに!なんでリリィになってもそんなっ‥」

アレクシスの服を掴んだ。


『それが‥レイラの望みだったからだ。』

「‥‥‥なん‥‥だと‥‥‥?」


『レイラが、私に望みを掛けた。お前が暁で生きている間、その生を終えるまで、苦しませるなと‥‥助けてくれ。と』

「なんっ‥‥‥‥」
レイラの思いに、テオドールの目に涙が浮かんだ‥。

『そして今も尚、それは続いている。
共鳴している。レイラの強い思いが、リリィベルとなって生を受けても尚、お前の為だけに‥‥‥』


どうして‥‥?

テオドールの頬を涙が流れ落ちた。


『どうして?レイラの望みだと言っただろ?』

厳しい顔付きで、アレクシスは暁を見下ろした。


どうして、そこまで‥‥

俺は、俺は前世で、どんな苦痛を‥‥‥


『‥‥‥‥お前は‥‥‥‥何を知っても、

前世の様な行動を、してはいけない。それを頭に叩き込んでおけ‥‥‥』


膝をつき‥呆然とした暁。

そんな暁の様子を見て、アレクシスはため息をついた。


「‥アレクシス‥」

『なんだ?』

「お前を神として言う‥‥願いを叶えてほしい‥‥‥。

俺が前世を思い出しても‥それでどんなに苦しんでも‥‥

レイラを‥‥リリィを‥‥苦しませないでくれ‥‥‥。

俺の痛みは‥俺が全部受けるから‥‥‥

俺がどんなに胸を痛めようと、レイラを、リリィを‥‥‥助けてやってくれ‥‥。」


『お前は、神を信じないのではなかったのか?』


そうだ‥俺は、神を信じた事はなかった。


けれど、アレクシスが存在し、アレクシスはレイラの望みを叶え、俺を‥守ってくれていた。


神はここにいる‥‥‥


『‥私はレイラが可愛いから、願いを叶えたんだ。』

「‥‥‥」

その言葉に暁はギロリとアレクシスを睨んだ。

『安心しろ、女として、言っている訳じゃない。お前が嫉妬するものではないわ。』

目で物を言ってしまったようだ。


「俺は可愛かねぇだろうが‥‥‥お前が可愛がるレイラの為に‥‥‥

どうか、俺の願いを叶えてくれ‥‥‥

この瞬間も、もし共鳴しているのなら‥‥」


『あの子は、その苦しみですら‥愛しんでいる‥‥

お前は、どんなに幸せなのか‥‥測りきれんな‥‥』


「アレクシスっ‥俺‥色んな記憶をお前に返して貰って‥
だけどっ‥なぜレイラと俺が離れてしまったのか‥‥
何故レイラが、俺の人生に居なかったのか全然わかんねぇけどっ

何も思い出せてないけど、これだけは分かるんだ‥‥」


「‥‥‥レイラはっ‥‥っっ‥」

ポタポタと涙が落ちていった‥‥‥

「どんな時も‥‥‥俺を‥っ‥‥愛して‥‥くれてっ‥‥

俺は‥‥っ‥‥アイツを‥‥心のっ‥底からっ‥愛してたっ‥‥‥」


両手で自分の身体を抱きしめながら蹲った。

『あぁ、‥わかっている‥‥。だから、俺はお前達を見ていたのだ‥‥ずっとな?』

そう言ったアレクシスの顔は穏やかだった。


アレクシスの両手が、暁の頭にかざされた。

『‥‥お前の願いを叶えてやろう‥‥16歳の誕生日、お前が切に祈った願いだ‥。

レイラが、リリィベルがこれから苦しむことはない‥。』

そう告げるアレクシスの両手から、星の粒が暁の頭にキラキラと降り注いだ。


「っっ‥‥‥‥くっ‥‥‥初めて‥‥俺は‥‥‥

神を信じることが‥‥出来そうだよ‥‥‥っ‥」

泣きながら暁は笑った。


『私は慈悲深い神なのだ。崇めるが良いぞ?

いい子でいたら

黒い宝石に吸い込まれる事はないだろう‥‥』

穏やかな笑みでアレクシスは言った。

「あぁ‥‥‥信じる‥‥信じるからな‥‥‥」

月明りの下で、神は蹲るその男の切なる願いを聞き取ったのだった。




タウンハウスで眠る、リリィベルは楽しい夢でも見るように、少し弧を描いて、静かに眠っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...