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星と月が出会う夜 第3夜
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パナラウラ国の使節団が到着した夜。皇帝と皇后、皇太子と使節団たちの晩餐会が始まった。
上座に皇帝、皇帝の斜め横両隣には王女と皇后、そして皇后の隣に皇太子が席に着いた。
皇太子の前にはブルックス公爵がいる。
皇帝の挨拶で始まり、料理が運ばれてくる。
「いつもありがとう、ロニー。」
俺は気を散らすように、運んできてくれた料理長にまで声をかけた。
「とっ、とんでもないです皇太子殿下!」
ははっ・・・・・。
俺は皇太子の顔を装備していた。
そんな俺の顔を見て、普段は目につかないメイドの目線まで集めていることを知った。
なんでそんなにみんな赤くなってんだよ。暑いのかこの部屋・・・。
「?」
わからねぇ・・・・。まぁいいや。
「料理は口に合いますか?クレア王女」
皇后が王女に声をかけた。
「はい、とても美味しいです。」
笑顔で答えた王女だが、チラリと皇太子を盗み見た。
そんなことも知らず、俺は静かに食事をしていた。
その目線に気付いていたのは皇后、そして、皇帝だった。
だが、俺は黙々と食事を続けた。とても優雅に。
陛下からの圧は多少感じていたが‥
王女からもなにやら視線を感じる。
話しかけられるのは厄介だな。
俺は食事の手を止めて、グラスを手に取った。
「ブルックス公爵、パラナウラ国王陛下はご健康か?」
「はい?」
「いや、私は前皇帝のお祖父様を亡くしたばかりなのでな、
パラナウラ国の王はお祖父様と同じ年頃だと聞いたので、心配したのだ。」
「我が国には、王女様の他に、王太子様がいらっしゃいます。」
「おぉ、そうであったな。確か、王太子殿下は私の父、皇帝陛下よりはるかに年上であったな。違うか?」
「左様でございます。」
「そうか、病はいつ何時起こるかわからぬ故、王太子と仲良くした方が良さそうだ。そうは思わないか?」
グラスに入ったシャンパンをゆらゆらと揺らした。
「‥‥帝国の皇太子殿下と我が国の王太子様が友好であれば、両国にとって良き事でありましょう。」
厳しい顔つきで公爵は答えた。
「そうであろうな。帝国の皇帝陛下はまだ若くご健康だ。陛下の御世はまだ末永く安寧だ。私が追い付くには相当な努力を積まねばなるまい。それにしても、王女とはずいぶん歳が離れているのだな。あぁ、パナラウラ国の側室は5人だったか・・・。王女はまだ私とそう変わらぬ歳であるし‥さぞ、大切にされている事であろう・・・」
「我が国の王女様は尊き存在で御座います。」
「そうだな。私の様な若輩者より、王太子殿下のお役に立てる方と縁があると良いな?」
「とんでも御座いません。殿下。その様なご謙遜‥」
ムッとした顔で皇太子を睨んだ。
「いやいや、謙遜などではない。私は自分の度量は弁えているつもりだ。まだまだ陛下の足元にも及ばぬ。
なにせ、陛下は、長年皇太子としてそれはそれは、偉業をなされたのでな。」
コクンとシャンパンを一口飲んだ。
「陛下は皇太子ながらも、第二継承者の謀反を止め、悪を滅したのだ・・・・。
幼き頃から皇太子として政務に携わりながら、7年もの月日を費やし、側室の子である弟、あぁ、私の叔父だったな・・・・。」
「何をおっしゃりたいのですか?殿下。」
「いや?私は偉大な父の偉業を話しているのだ。わが父上は・・・・とても素晴らしいだろう?」
公爵に俺はニヤリと笑って見せた。
〝王の側室が産んだ王女は、正当な次期皇帝の俺には相応しくない。
そして、側室の生家であるブルックス公爵と手を結び、王太子の地位を脅かすつもりはない
よって、私は王女と婚姻する事などありえない。同盟国ではない隣国ではあるが、パナラウラ国と争うつもりはない〟
「皇帝陛下は実に素晴らしいお方である事は存じております。」
公爵はグラスのワインを一口飲んだ。
「あぁ、自慢の父なのだ。つい話したくなってしまって…。私は陛下をとても尊敬しているのだ。」
〝腹違いの第二皇子、側室とその生家の悪事を暴き、処刑した陛下を誇りに思っている〟
「・・・・・素晴らしい親子関係で御座いますな。」
公爵は皇帝陛下を称賛するも、その目は笑っていなかった。
だが、それを黙って聞いていた皇帝もニヤリと笑った。
「あぁ、私の自慢の息子だ。頼もしい限りだ。今後が楽しみで仕方がない。」
「あの皇太子殿下っ!」
男たちの空気をぶち壊す素っ頓狂な声がテーブルを跳ねて向かってくる。
「・・・・なにか?」
王女に少し顔を向けて返事をした。
「殿下、私、殿下と行きたいところがあるのです!」
頬を染めながら王女はしゃべり続ける。
「帝国の中心に大きな噴水がございますでしょう?とても綺麗で、そこに行きたくて・・・
昼間通った時、たくさんの男女が寄り添っているのを見ました。なにか訳があるのでしょうか?」
「・・・・・さぁ・・・・・・・」
俺の皇太子装備はまだ崩れはしない・・・・。
「あの場所は・・・・。」
皇后陛下が、笑顔で話し始めた。
「あの場所は、男女で訪れると永遠に一緒に居られるというジンクスがございますのよ?」
その言葉に王女の顔はぱぁっと明るくなった。
「そうなのですか?」
「えぇ、私も陛下と共にあの噴水へ行ったことが御座いましたね?」
そう言ってニコリと笑って陛下を見た。
「あぁ、そうだな・・・懐かしいな。」
思い出に笑みを受けべる皇帝だった。
「ね?素敵な場所で御座いましょう?」
「はい!とってもっ」
「・・・・・・・・」
俺は黙って聞いていた。そのジンクスは・・・・・。
「殿下!お時間が御座いましたら…私を噴水へ案内して頂けませんか?」
頬を染めて上目遣いでそう言ってきた。
「・・・・あぁ・・・・時間がありましたら・・・・・。」
目線を皿に戻して、遠い目で答えた。
「ぜひ、時間を割いて頂ければいいですな。クレア王女」
「えぇ、ブルックス公爵。私とても楽しみだわ!もちろん殿下の誕生祭も!」
「「「・・・・・・・」」」
〝〝〝さっきの会話をきいてもまだこれかっ!〟〟〟
親子の心は通じていた。
「あの殿下っ、殿下は好きな食べ物はありますか?それから・・・・」
無邪気な王女はその後も皇太子に話しかけ続けた。
「・・・・・・・」
生返事で受け流していく皇太子。話し続ける王女に皇帝と皇后も敗北感を少し味わった。
「テオドール」
「はい、陛下。」
「王女を、お部屋まで・・・。」
そう言った皇帝の額には汗が沸いていた。
「・・・・・えぇ・・・・そうしましょう・・・・。」
答えた皇太子は、闇のようなオーラを皇帝に向けていた。
「嬉しいわ皇太子殿下!参りましょう!」
断りもなく、王女は今度は当たり前のように皇太子の腕に手を絡めたのであった。
皇帝がパチリと一つ目を閉じた。
「・・・・・・・」
すまん。
皇太子はパチパチと2回、目を閉じた。。
「・・・・・・・」
いえ、許しません。
心で会話する親子であった。
王女と共に部屋を出ていく皇太子。
続いて公爵も部屋を出るところだった。がしかし・・・・。
「皇帝陛下、皇太子殿下は実に聡明でございますね。」
皮肉な笑みを皇帝に向けた。
「あぁ、そうであろう。帝国の未来は明るくて私も目が眩みそうだ。」
「ははっ・・・・目が眩んでも、皇太子殿下がおりますな・・・・。
王女はパナラウラ国の第一王女で御座います。そんな聡明で勇敢な皇太子殿下に、
是非とも、誕生祭は王女をパートナーにして頂きたい。王女もそれを切に願っております。」
「あぁ・・・皇太子とよく話しておこう・・・なにせ主役なのでな・・・。」
動じず皇帝はそう告げた。
「では、とても美味しい食事で御座いました。またお会いしましょう。
滞在中は、色々と帝国を見て回りたいと思っております。パナラウラ国に良き文化は持って帰りたい。」
「左様か、帝国の騎士団を護衛につける故、ゆっくりと見て参られよ。」
「では・・・失礼致します。」
そう言って公爵は下がっていった。
「・・・・古狸め・・・・・」
皇帝は眉をひそめて呟いた。
城内の廊下にて、皇太子に向け王女は話しかけ続けた。
「殿下っ、殿下はどのようなドレスがお好みですか?」
「さぁ・・・ドレスには疎くて、申し上げられません。」
「では、女性のタイプは?」
「そうですね。タイプでしたら、物静かな女性が今は好みです。」
「そうですか!私ったら、こんなにおしゃべりしてしまって、普段は控え目な方なのにっ
殿下といると楽しくなってしまって、ついお話してしまいたくなりますわっ」
「ははっ・・・そうですか。」
ここはある意味試練であった。7年間避け続けた試練だ。
こんなに長く話す相手がこの王女だったのは、俺が小さな頃に母上に怒鳴った罰だ。
そうだ、罰だ・・・・・。そうに違いない。
「おや、部屋につきましたね。王女様、今宵はゆっくりお休みください。
どうも楽しい時間を有難う御座いました。では。」
早口でそう告げた。
「まぁ殿下も楽しかったですか?とても嬉しいです!」
「ははっ・・・では。」
〝また〟とは絶対に言いたくない。
「うふふっおやすみなさい。殿下」
にっこり笑顔を受け流し、足早にその場を離れた。
・・・・・・・・あぁうぜぇ・・・・・・・・・・
くそうぜぇ・・・・・・・
うるせぇ、しゃべんな、くっつくな、こっち見んな目が腐るんだ・・・・・。
あらゆる毒を心の中で吐きつくした。
「ッチッ・・・・」
首元のタイを緩めて、そのまま修練場へ向かって歩いた。
上座に皇帝、皇帝の斜め横両隣には王女と皇后、そして皇后の隣に皇太子が席に着いた。
皇太子の前にはブルックス公爵がいる。
皇帝の挨拶で始まり、料理が運ばれてくる。
「いつもありがとう、ロニー。」
俺は気を散らすように、運んできてくれた料理長にまで声をかけた。
「とっ、とんでもないです皇太子殿下!」
ははっ・・・・・。
俺は皇太子の顔を装備していた。
そんな俺の顔を見て、普段は目につかないメイドの目線まで集めていることを知った。
なんでそんなにみんな赤くなってんだよ。暑いのかこの部屋・・・。
「?」
わからねぇ・・・・。まぁいいや。
「料理は口に合いますか?クレア王女」
皇后が王女に声をかけた。
「はい、とても美味しいです。」
笑顔で答えた王女だが、チラリと皇太子を盗み見た。
そんなことも知らず、俺は静かに食事をしていた。
その目線に気付いていたのは皇后、そして、皇帝だった。
だが、俺は黙々と食事を続けた。とても優雅に。
陛下からの圧は多少感じていたが‥
王女からもなにやら視線を感じる。
話しかけられるのは厄介だな。
俺は食事の手を止めて、グラスを手に取った。
「ブルックス公爵、パラナウラ国王陛下はご健康か?」
「はい?」
「いや、私は前皇帝のお祖父様を亡くしたばかりなのでな、
パラナウラ国の王はお祖父様と同じ年頃だと聞いたので、心配したのだ。」
「我が国には、王女様の他に、王太子様がいらっしゃいます。」
「おぉ、そうであったな。確か、王太子殿下は私の父、皇帝陛下よりはるかに年上であったな。違うか?」
「左様でございます。」
「そうか、病はいつ何時起こるかわからぬ故、王太子と仲良くした方が良さそうだ。そうは思わないか?」
グラスに入ったシャンパンをゆらゆらと揺らした。
「‥‥帝国の皇太子殿下と我が国の王太子様が友好であれば、両国にとって良き事でありましょう。」
厳しい顔つきで公爵は答えた。
「そうであろうな。帝国の皇帝陛下はまだ若くご健康だ。陛下の御世はまだ末永く安寧だ。私が追い付くには相当な努力を積まねばなるまい。それにしても、王女とはずいぶん歳が離れているのだな。あぁ、パナラウラ国の側室は5人だったか・・・。王女はまだ私とそう変わらぬ歳であるし‥さぞ、大切にされている事であろう・・・」
「我が国の王女様は尊き存在で御座います。」
「そうだな。私の様な若輩者より、王太子殿下のお役に立てる方と縁があると良いな?」
「とんでも御座いません。殿下。その様なご謙遜‥」
ムッとした顔で皇太子を睨んだ。
「いやいや、謙遜などではない。私は自分の度量は弁えているつもりだ。まだまだ陛下の足元にも及ばぬ。
なにせ、陛下は、長年皇太子としてそれはそれは、偉業をなされたのでな。」
コクンとシャンパンを一口飲んだ。
「陛下は皇太子ながらも、第二継承者の謀反を止め、悪を滅したのだ・・・・。
幼き頃から皇太子として政務に携わりながら、7年もの月日を費やし、側室の子である弟、あぁ、私の叔父だったな・・・・。」
「何をおっしゃりたいのですか?殿下。」
「いや?私は偉大な父の偉業を話しているのだ。わが父上は・・・・とても素晴らしいだろう?」
公爵に俺はニヤリと笑って見せた。
〝王の側室が産んだ王女は、正当な次期皇帝の俺には相応しくない。
そして、側室の生家であるブルックス公爵と手を結び、王太子の地位を脅かすつもりはない
よって、私は王女と婚姻する事などありえない。同盟国ではない隣国ではあるが、パナラウラ国と争うつもりはない〟
「皇帝陛下は実に素晴らしいお方である事は存じております。」
公爵はグラスのワインを一口飲んだ。
「あぁ、自慢の父なのだ。つい話したくなってしまって…。私は陛下をとても尊敬しているのだ。」
〝腹違いの第二皇子、側室とその生家の悪事を暴き、処刑した陛下を誇りに思っている〟
「・・・・・素晴らしい親子関係で御座いますな。」
公爵は皇帝陛下を称賛するも、その目は笑っていなかった。
だが、それを黙って聞いていた皇帝もニヤリと笑った。
「あぁ、私の自慢の息子だ。頼もしい限りだ。今後が楽しみで仕方がない。」
「あの皇太子殿下っ!」
男たちの空気をぶち壊す素っ頓狂な声がテーブルを跳ねて向かってくる。
「・・・・なにか?」
王女に少し顔を向けて返事をした。
「殿下、私、殿下と行きたいところがあるのです!」
頬を染めながら王女はしゃべり続ける。
「帝国の中心に大きな噴水がございますでしょう?とても綺麗で、そこに行きたくて・・・
昼間通った時、たくさんの男女が寄り添っているのを見ました。なにか訳があるのでしょうか?」
「・・・・・さぁ・・・・・・・」
俺の皇太子装備はまだ崩れはしない・・・・。
「あの場所は・・・・。」
皇后陛下が、笑顔で話し始めた。
「あの場所は、男女で訪れると永遠に一緒に居られるというジンクスがございますのよ?」
その言葉に王女の顔はぱぁっと明るくなった。
「そうなのですか?」
「えぇ、私も陛下と共にあの噴水へ行ったことが御座いましたね?」
そう言ってニコリと笑って陛下を見た。
「あぁ、そうだな・・・懐かしいな。」
思い出に笑みを受けべる皇帝だった。
「ね?素敵な場所で御座いましょう?」
「はい!とってもっ」
「・・・・・・・・」
俺は黙って聞いていた。そのジンクスは・・・・・。
「殿下!お時間が御座いましたら…私を噴水へ案内して頂けませんか?」
頬を染めて上目遣いでそう言ってきた。
「・・・・あぁ・・・・時間がありましたら・・・・・。」
目線を皿に戻して、遠い目で答えた。
「ぜひ、時間を割いて頂ければいいですな。クレア王女」
「えぇ、ブルックス公爵。私とても楽しみだわ!もちろん殿下の誕生祭も!」
「「「・・・・・・・」」」
〝〝〝さっきの会話をきいてもまだこれかっ!〟〟〟
親子の心は通じていた。
「あの殿下っ、殿下は好きな食べ物はありますか?それから・・・・」
無邪気な王女はその後も皇太子に話しかけ続けた。
「・・・・・・・」
生返事で受け流していく皇太子。話し続ける王女に皇帝と皇后も敗北感を少し味わった。
「テオドール」
「はい、陛下。」
「王女を、お部屋まで・・・。」
そう言った皇帝の額には汗が沸いていた。
「・・・・・えぇ・・・・そうしましょう・・・・。」
答えた皇太子は、闇のようなオーラを皇帝に向けていた。
「嬉しいわ皇太子殿下!参りましょう!」
断りもなく、王女は今度は当たり前のように皇太子の腕に手を絡めたのであった。
皇帝がパチリと一つ目を閉じた。
「・・・・・・・」
すまん。
皇太子はパチパチと2回、目を閉じた。。
「・・・・・・・」
いえ、許しません。
心で会話する親子であった。
王女と共に部屋を出ていく皇太子。
続いて公爵も部屋を出るところだった。がしかし・・・・。
「皇帝陛下、皇太子殿下は実に聡明でございますね。」
皮肉な笑みを皇帝に向けた。
「あぁ、そうであろう。帝国の未来は明るくて私も目が眩みそうだ。」
「ははっ・・・・目が眩んでも、皇太子殿下がおりますな・・・・。
王女はパナラウラ国の第一王女で御座います。そんな聡明で勇敢な皇太子殿下に、
是非とも、誕生祭は王女をパートナーにして頂きたい。王女もそれを切に願っております。」
「あぁ・・・皇太子とよく話しておこう・・・なにせ主役なのでな・・・。」
動じず皇帝はそう告げた。
「では、とても美味しい食事で御座いました。またお会いしましょう。
滞在中は、色々と帝国を見て回りたいと思っております。パナラウラ国に良き文化は持って帰りたい。」
「左様か、帝国の騎士団を護衛につける故、ゆっくりと見て参られよ。」
「では・・・失礼致します。」
そう言って公爵は下がっていった。
「・・・・古狸め・・・・・」
皇帝は眉をひそめて呟いた。
城内の廊下にて、皇太子に向け王女は話しかけ続けた。
「殿下っ、殿下はどのようなドレスがお好みですか?」
「さぁ・・・ドレスには疎くて、申し上げられません。」
「では、女性のタイプは?」
「そうですね。タイプでしたら、物静かな女性が今は好みです。」
「そうですか!私ったら、こんなにおしゃべりしてしまって、普段は控え目な方なのにっ
殿下といると楽しくなってしまって、ついお話してしまいたくなりますわっ」
「ははっ・・・そうですか。」
ここはある意味試練であった。7年間避け続けた試練だ。
こんなに長く話す相手がこの王女だったのは、俺が小さな頃に母上に怒鳴った罰だ。
そうだ、罰だ・・・・・。そうに違いない。
「おや、部屋につきましたね。王女様、今宵はゆっくりお休みください。
どうも楽しい時間を有難う御座いました。では。」
早口でそう告げた。
「まぁ殿下も楽しかったですか?とても嬉しいです!」
「ははっ・・・では。」
〝また〟とは絶対に言いたくない。
「うふふっおやすみなさい。殿下」
にっこり笑顔を受け流し、足早にその場を離れた。
・・・・・・・・あぁうぜぇ・・・・・・・・・・
くそうぜぇ・・・・・・・
うるせぇ、しゃべんな、くっつくな、こっち見んな目が腐るんだ・・・・・。
あらゆる毒を心の中で吐きつくした。
「ッチッ・・・・」
首元のタイを緩めて、そのまま修練場へ向かって歩いた。
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