ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

文字の大きさ
上 下
23 / 240

運命とは

しおりを挟む
『お誕生日おめでとう、嬉しいだろぉ?』
ニヤリと笑ったアレクシス。世界は一転し、またいつものアレクシスと俺の空間だった。

「今会場入るところだったんだけど?」
『はははっ扉を開けると別世界なのだ。面白いだろう?』
「おもしろくねーよ…俺のワクワクを返せ」
『なんだ?お誕生日会で浮かれていたのか?テオドール』
「そこまでじゃねぇけどっ…今じゃねー事は確かだ」
『ほぉ?では夜そなたのバルコニーに眩く飛んで参ろうか?さぞ絵になるな、私が。』

自信たっぷりに胸に手を当てた。その指先までもが優雅だったのが異様にムカついた。

「いいよもう…お前が来るの、待ってたし…」
『そうだろう?だから来てやったのだ。』

ふふんっとニヤリと笑ったアレクシス。俺は気が抜けた顔を前面に出していた。

「じゃあ…いつもの頼んでいいっすか?」
『ははっ、プレゼントだぞ?…探せ。』

「は?」

今度こそめんどくせぇ…。

『だからお宝探しだ。宴には余興だろう?ヒントはやる』
「へいへい…もう反論するのもめんどくせぇ…」

落ちた肩はそう簡単には戻らなかった。


『なんだ、いらないのか?来年を待つか?』
「やぁぁるよ!!!!!!くそがっ!!!!」
『はっ…生意気な奴だ。』
「で!?ヒントは?!」

手を出して早く出せと態度で示した。
アレクシスはニヤリと笑った。


『蘭の花びらが彫られた指輪を探せ』


「どこからだよ」
『さぁ?どこかなぁ?お前の部屋には山ほどプレゼントが積みあがっていたじゃないか。』
「いつくあると思ってんだよ!!1日かかるわそんなもん!!」

『おや?そんな根性もないのか?』
「くそっ…やるよ!!!!探せばいいんだろ!!!」
『あぁ、さぞ、いい夢が見られるぞ?楽しみにしておけ。』

そう言ってアレクシスは消えた。

突然現実世界に放り出される。

「皆、よく来てくれた。今日は我が皇孫であるテオドールの誕生を祝ってくれ。
アレキサンドライトの輝きが続くように。」

グラスを掲げた皇帝陛下。それに続き皆がグラスを上げる。

「「「「「テオドール王子殿下に栄光の幸福を!!」」」」

わぁぁぁっと歓声と拍手が響く。

「皆、我が息子テオドールの誕生を祝ってくれて感謝する!今宵は楽しんでくれ!」

皇太子が笑顔でグラスを掲げた。

歓声はさらに続いた。皇太子妃が満面の笑みを浮かべている。
「テオ、皆に手を振ってあげなさい?」
ニコっと笑ったお母様。

俺は少し赤く染まった頬で、皆を見下ろし手を振った。

わぁぁぁっとまだ歓声があがる。



芸能人にでもなった気分だ…。くそはずい…。
顔に出すな…負けるな俺…。これが毎年あるんだ!慣れろっ!!!

和やかな雰囲気を装い、皆に手を振り続けた。

ホールの階段を降り、俺たちは上段の皇族の席についた。

そして、爵位順に貴族たちがあいさつにやってくる。
「テオドール王子殿下!おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」

この人たちは・・・・そうだ!皇后陛下の生家、そんでもって陛下の弟!公爵家!

顎鬚を綺麗に整えた気品のよい男性、皇后陛下に、どことなく似ていた。
「来てくださって嬉しいです。ブリントン公爵。」
「なんと喜ばしい事でしょう。どうかこれからも健やかに、皇后陛下がテオドール王子殿下の事を
とても可愛がっておられるのは存じておりましたが、こんなに皇太子殿下に似ていらして…。
まるで小さい頃の皇太子殿下を見ているようです。」

「あ・・・はは・・・」

公爵のあいさつは長かった。そりゃあ俺にとって大叔父様だから…


公爵に続き、侯爵家の者が挨拶へやってきた。ヘイデン侯爵、夫人と、そして同じ年くらいの女の子。
「テオドール王子殿下、お誕生日おめでとうございます。」
「あぁ、ありがとう。」

処刑された側室のエレナの侯爵家とは別に、皇太子派だったヘイドン侯爵家。
「ささやかながら、プレゼントをお送りしております。気に入って頂けたら幸いでございます。」
「ありがとう。楽しみにしているよ。」
にこりと王子的スマイルを浮かべた。

すると、ヘイドン侯爵の後ろに控えていた女の子と目が合った。

「あぁ、この子は私の娘のライリーです。陛下と同じ年でございます。お見知りおきを…」

「そう…よろしくね。ライリー嬢‥」
「よっよろしくお願いいたします。テオドール王子殿下」
可愛らしいドレスに身を包んだ。ブラウンの髪の少女だった、頬を赤く染めて俯いたと思えば、
チラリとこちらを見ておずおずとしている。


ふーん・・・・。


じっと、ヘイドン侯爵を見た。皇太子派の人間だが、その顔は少し欲が顔を出していた。
となると、侯爵家のこの女の子を、皇太子妃にしたいという事か…。

くだらないな…。



挨拶は次々と続いた。お父様やお母様に媚びうる者、好意がある者、表情を見ればどことなく感じることが出来た。

そして、俺と同じ年ごろの女の子を連れている貴族たちは皆、俺に鬱陶しい視線を送る。

俺、まだ8歳だぞ…。

お父様は…お母様と恋人で、恋愛結婚したけれど。。。。

こういうの、お父様にはあったのかな・・・・。

お母様も伯爵令嬢だったから、2人はこうやって出会ったのかな。

どんなふうに恋に落ちたんだろうな‥‥。



恋って‥どんなのだったっけ‥



誕生祭は続き、ホールの中心でお父様とお母様が仲睦ましくダンスしている。キラキラしていた。互いを見つめ、
息があった素晴らしいダンスだった。

まるでハートが飛んできそうだった‥



‥ビール飲みてぇな…


飲んでいるのはぶどうのジュースだった。

これが赤ワインだったらな‥



俺もダンスは習ったが、踊る気はなかった。
本当は誰かと踊らなければならない。

けれど、その気もないのに踊る事は気が引けた。

どこからともなく、視線はやってくる。
だが、位の上の俺に踊ってほしいと声を掛ける事は出来ない。

だから、俺は席を立たなかった。


「テオドール、お前も誰か誘っておいで?」

「嫌です‥お父様‥」

「なに?」

お父様は眼を丸くしていた。

「だって‥みんな眼が怖い」

俺の心を知ってか、お父様はははっと笑った。

「なるほど、だが、いずれ誰かと踊らなければならない日が来るぞ、今はまだかわせるがな‥」

気持ちはわかると、言いたげに息をついたお父様だった。


「お父様は、お母様といつ知り合ったのですか?」
「へ?」
「お父様も、こんな風に見られていたのでしょう?」
「あ‥そ、うだな‥‥あれは恐ろしかった。」

そう、女達は皇太子の目に留まろうと必死だった。
お父様は地位も魅力だったが、その顔やスラッとした体格、立ち振る舞いも絵に描いたような皇子様だった。

「マーガレットとは、私の誕生祭で出会ったのだ。」
「そうなんですか?」
「あぁ、私が8歳の時だった。挨拶に来てくれた時の綺麗なカーテシーをして、顔を上げたら、とても可愛いかった‥
幼心ながら、その後も髪を靡かせて歩くその姿が可憐で私を一瞬で惚れさせた。眼が離せなくなって‥私はダンスに誘った。

マーガレットはびっくりしていたな。だが、笑顔で私の手をとってくれた。それからはもう‥こういう機会が待ち遠しくて、会えば必ず声を掛けた。そしてダンスに誘った。私の気持ちに気付いてくれたのは、もっと大きくなってからだったな、マーガレットは少し抜けていて、私が皆と踊っているもだと勘違いしていたようだ。ふふっ、だから一言言ってやったのだ」

「なんて?」

「ただ、君が好きだ。と‥」

「一瞬眼を丸くしていたが、すぐ答えてくれた。

皇太子様、やっと、言ってくれたのですね?とな‥」

「え?」

「私の想いが、身体から溢れていたのをマーガレットは気付きながら、ずっと私が言うのを待っていた様だ。
気付いていないと思ってヤキモキしていたのは、どうやら私だけだったのだ‥

ふっ、小悪魔の様な台詞だが、マーガレットは私に媚びてもいない、自分から寄ってもこない。ただ、踊ったらさっさと行ってしまったしな‥
グランディール伯爵も欲のある人でもなかったし、ただ、挨拶しに来てくれるのを待っていたよ。そして、マーガレットをずっと見ていた。ダンスの時もこの眼に焼き付けるように見ていた。デビッドもいたし。過剰な反応を表に出す事が出来なかったな‥だから、マーガレットがそう言った時、私はもう彼女には敵わないと思ったよ。そして、後日言ってくれたのだ。〝私も皇太子殿下と同じ気持ちです〟とな‥
今思い出しても、胸が弾む‥あれは忘れられない‥」

ホールの中で貴族の夫人達と笑顔で会話してるお母様を愛しそうに見つめた。


「お父様は運命を、信じていますか?」

「運命か‥‥そうだな。マーガレットは私の運命の人だ。心を掴んで離さない‥私がそう思っているのだ。誰にも運命じゃないとは言わせないさ。それで答えにはならないか?」

「いいえ‥とても、素敵です‥。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

処理中です...