ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李

文字の大きさ
上 下
21 / 240

8歳の誕生日、の前なのに

しおりを挟む
ハリーは、何を言ってる‥

星の力で守られている?


いや、なぜハリーが‥


「テオドール王子様!ハリー!!!!」

ロスウェルが一瞬にして現れた。
びっくりしたのは俺だけじゃない。ハリーもだ。


「あっ‥ロスウェル様‥」
少し怯えた表情でハリーはロスウェルを見上げた。

ロスウェルの眼が鋭くハリーに突き刺さる。

「あの、ロスウェル‥」
俺は慌ててロスウェルに手を伸ばした。
それは予感がしたからだ。

「このっ‥魔塔へ戻れ!今すぐだっ」

パチンっとロスウェルが指を鳴らした。
「ロス‥」
慌てたハリーには名を呼ぶ隙も与えられずその姿を消された。

消えたハリーのいた場所を見つめて
ロスウェルが、グッと拳を握っていた。
「ろ‥ロスウェル‥?」

今までに感じた事ないロスウェルの空気が、
今の俺には恐ろしかった。それはロスウェルが怖いんじゃない‥


スッと悲しげにロスウェルは俺を見た。

「テオドール王子様‥申し訳ありません‥」

「な‥なにが‥‥‥」
指先が冷たくなった。

ロスウェルと向き合うと、恐怖心は増していた。
きっと、ロスウェルも‥

「私が王子様に姿を晒したのは、ハリーと同じ理由でした‥」
「っ‥」
「ですが、まさか、ハリーにも見えていたとは‥」

申し訳なく、喋り出す




やめろ‥





「テオドール様に一眼お会いした時に、星が瞬くので‥」





やめろ‥‥‥‥


「お側で見守ることに決めたのです‥」




なんなんだ‥‥‥


「テオドール様にはなにか不思議な‥」


声がどんどん遠くなっていく気がした。







俺は今でも、星に守られている‥‥‥






『あぁ‥‥まったく‥‥勘の鋭い者が2人もいるとは‥』


クラっとしたその目を開くと、暗闇の中だった。
淡く光るアレクシスの姿がそこにあった。
面白くなさげに、宙にふわふわとその身を揺らしながら
寝そべって‥いる?


「アレクシス!」
「あやつらは見えるだけだ。心配するな。』

フンっと鼻を鳴らした。それはそれは不満気まった。

『どんなに星が見えようと、あやつらにそれをどうこうする力はない、ただの魔術師だからな。余計な事を言ってくれた。』

「なんだよ‥星に守られてるって‥」

『そなた、私の事は習わなかったのか?』

「ステンドグラスにへばり付いてたな」

『あんなもので私の美しさを表すなど、幸せなやつらよな。
私は何千倍も美しいのに‥星と月の話を学んだであろう?
このムーンストーンの記憶を以前1つ返してもいる。

これは悪いものではないと言ったはずだ‥』

「分かってるよ‥‥‥」

幼い約束‥


『そなたの誕生日の願い事をした瞬間会う予定だったのに‥
あの者たちのせいで私の計画は水の泡だ。
蝋人形にしてやろうか‥‥‥』

「なら‥っ今返してけよ!!!」
俺はアレクシスに駆け寄った。

「今だって、あいつら蝋人形みたく時間止まってるだろ!?
俺は今すぐっレイラの記憶が一つでも多く欲しいんだ!!!」


『ほぉ‥?ついにその名を取り戻したか。
あんなに苦しんだのだ。良かったなぁ?名前一つその身に宿ってくれて。』


アレクシスは不機嫌だった。


『名前一つでずいぶん余裕じゃないか、あ、き、ら?』


アレクシスは身体を起こして、俺の目の前に立った。


「アレクシス‥?」

『星に守られてると聞いたであろう?』

「だからっ‥それはどうしてなのか、記憶取り戻したら
わかるんじゃないかって‥」


俺は言い訳する様におどおどとアレクシスに詰め寄った。
そんな俺にアレクシスは眉をひそめ、手を伸ばした。

ガシッ‥

俺はまたアレクシスに頭を掴まれていた。
「うっ‥アレク‥」

『自惚れるな。この半人前が。』
アレクシスの眼は怒りを醸し出していた。

「なんっ‥で‥」

『何故?今そなたが、星に守られていると言われたであろうが。理由を聞けば納得するのか?また前の様に泣き叫ぶのだろう?殺してくれとな?あぁ、これは知らないはずだったな。私はなんの為にそなたの誕生日だけ記憶を返しているのか教えてほしいか?』

冷めた眼をしてアレクシスの指先にどんどん力が篭っていく。

「ぐっ‥お前なんでいっつも俺の頭鷲掴みっ‥」

『頭の悪いそなたの言動と行動が私の神経を逆撫でるのだ‥
悲しみや涙に反応し、そなたが心を砕く度にレイラの魂を揺さぶるのだからな。

無闇にそなたがレイラを刺激し、レイラはその身を焦がすのだ。
そして私に呼び掛ける、そなたを救えとな‥。まったく‥愚かしいにも程がある。

そなたはただ、私と共鳴する時にレイラを思い出していけば良いのだ。優しく言っているうちに聞き分けろ。この馬鹿者が‥』


パッとアレクシスが俺の頭から手を離した。

「つっ‥ずいぶん不機嫌じゃねぇか‥」


『‥‥‥うまくかわせ‥なにも知らぬとな。』

不機嫌なアレクシスはジロリと俺を見た。



ホストで女に貢がせてるって言ったこと根に持ってんのか?

『あぁ、私は不愉快だ。』

「マジかよ、そんな事で俺の頭鷲掴みしやがったのかよ!』

『そなたには私の尊さが分かっておらんのだ。』

「勝手に人の声聞いといてキレてんのかよ」

『あのステンドグラスの2人は‥』


「‥あ?」

『私の天使達の姿だ。そなたも親の愛に触れ、レイラを思っているのなら、私を刺激するな。』

「へ‥‥?」

『私の可愛い天使達だ‥貢いでいるなどと愚弄してくれるな。そなたも、レイラを思い、家族を愛しているのなら、
せいぜい気をつけるのだな。次は助けてやらんぞ。』

「‥ご‥ごめ‥‥」

それは‥俺が悪かったな‥
知らないとは言え‥アレクシスにも大切な人が居るんだ。

なんな、やっぱ、ホストみたいなセリフだけど‥

私の可愛い天使達‥‥

『ホストなどでは無いわ馬鹿者が!安っぽい謝罪などいらぬわ。気持ち悪い‥』

「でも‥ごめん‥なんだかんだ言って、俺、お前に助けて貰ってんだよな‥‥‥知らんけど。」

『その軽口が余計なのだ!蝋人形にしてやろうか』

「ふっ‥」

ふと、笑みが溢れたのは俺の方だった。
そしてそんな俺を見て、アレクシスも、軽く笑みを浮かべたのだった。


誰にでも大切な者があるんだ。

遠い存在ではなかった。

アレクシスは神だけど、感情は‥人に近い存在なんだな。


俺は星に、アレクシスに守られている‥


『だがな、あんな魔術師らの言葉は無視しろ!めんどくさい!そのうち分からないようにしてやる。』

ビシッとアレクシスは俺に指を向けた。

「へいへい‥アレクシス様のご加護がありますように。」

『あぁ、いい心掛けだ。褒めてやろう』


へっ‥フリだよフリ‥‥

『蝋人形してやろうか!!!!!』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...