エンジョイ!さくりふぁいす

犬噛 クロ

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後編

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 なにか、変だ。
 ジラントは酒でも飲んだのだろうか。吐き出す台詞も浮かべた表情も、普段見たことがないくらい高揚し、どんどん激しくなっていく。
 キーラの困惑をよそに、ジラントは表白を続ける。

「哀れんでいるのか、からかっているのか、お前は嫌われ者の僕をそばに置いてくれた。でも僕は、お前の舎弟にはなれても、それ以上にはなれない。それでもいいと思ってた。けど……」

 尻すぼまりにつぶやき、ジラントは潤んだ瞳をキーラに向けた。

「お前は父上であるラプシン様を、本当は慕っている。そんなお前が、姉さんのことを知ったなら……。もう僕とは、一緒にいてくれないだろう?」
「そんなこと……は……」

 ジラントに圧倒されながら、キーラは弱々しく否定した。
 今日のジラントには目ヂカラがあるというか、いつものようにバカにしたりふざけたりして、逃げられる気がしない。

「ちょっと成績が良いだけの僕と違って、お前はいつもキラキラと輝いて……。僕では釣り合わないって、知ってる。――もしかしたら僕は、ラプシン様がお前を捨てようとしていると知ったとき、喜んだのかもしれない。このチャンスに、お前を僕だけのものにできるかもしれないから……。僕はクズだ……」

 泣きそうな顔をして、ジラントが近づいてくる。
 キーラは動けなかった。
 上から目線で大上段に構えて、襲いかかってきてくれれば、反撃してボコボコにすることは容易い。
 が――。
 心の奥までさらけ出し、本音を前面に出されては、逃げられない。
 今回の短絡的な思考と行動は、本来のジラントには似合わず、愚かだ。
 だが、ただ一点。

「ジラントは本当に、わ、私のことが、好きなの……?」
「心から愛してる。ずっと前から、好きだったんだ……」

 その理由のみで、どうでもよくなってしまう。
 キーラの顔はカーッと赤くなった。――気が遠くなりそうだ。
 自分が歪んでいるのは分かっている。愛されたことがないから、人から好意を向けられると、なんでも許してしまうのだ。
 それも相手は、ジラントで――。

 ――私だって、ずっと……!

 だがそれを伝えるのは、照れくさくて、できそうにない。

「キーラ……」
「う……」

 二人は見詰め合って。
 ――見詰め合って。
 数秒後。
 ジラントは急にぶるぶると震え出した。

「じ、ジラント……?」

 体調でも悪いのだろうか。心配するキーラの前で、ジラントは再び豹変した。
 着ていたチュニックの前を勢い良く開き、ズボンと下着を脱ぎ捨て、突然素っ裸になったのだ。

「な、あ、あんた、なにやってんの!?」

 幼馴染のオールヌードを見るのはこれで二度目だが、そう簡単に慣れるものではない。ジラントの愛読書のように、局所を修正しておいてくれればいいのにと思いながら、キーラは彼から目を逸らした。

「なんか変だ、僕……。さっきから、体が熱くて。――でも、気持ちがいい! 言いたいことを言う! なにも隠さない! それがこんなに快感だったなんて! 最初から、こうしておけば良かったんだ!」
「――は!?」
「そうだ、僕は最低最悪だ! 人面獣心の男だ! だが、反省はしても諦めない! キーラのことが好きだから!」

 今のジラントに、ドSになりきろうとした前回のような、ぎこちなさはない。だからこそ余計、謎だった。
 いったい彼は、どうしてしまったのか。

 ――もしかしたら……?

 キーラが考え込んだその隙に、一気に距離を詰めたジラントは、彼女の服に手を掛けた。

「ぎゃああああ! なにしてんの!?」
「キーラ、僕を見るんだ! そしてキーラも、僕に見せろ! ありのままのお前を! 服なんて取っ払って! 気持ちいいから! 心も体もオープンに! サイコー!」

 ジラントは自分の行動が常軌を逸しているとは、露とも思っていないようだ。
 この異常な様子は、発狂したのでないのならば、まるで魔法や呪いでもかけられたような――。

「やっぱり……!」

 キーラは服を剥がれ、ところどころあらわになった肌を隠しながら、先ほどのジラントとユランのやり取りを思い出した。
 ジラントの鼻先を、尻尾で撫でたユラン。足枷の鍵を外してくれたときと同じ、あれは魔法をかけるときの動作ではなかったか。
 野狐であるユランの持つ能力は「解錠」。あの仔ぎつねは言っていた。「戸口だろうが金庫だろうが、心だろうが、人間どもがどれだけ厳重な鍵をかけようとも、打ち破ってやる」と。
 つまりジラントは、理性という鍵を外されてしまった。今の彼は、己の秘密をダダ漏れさせている状態ということか。

「あんた、ユランの力で露出狂になってる! 正気に戻って!」
「キーラにも、この気持ち良さを教えてあげたい!」

 ジラントは満面の笑顔だったが、爛々と輝く瞳と吊り上がった唇に、狂気を感じさせる。彼はキーラをベッドに押し倒し、残った衣服や下着を剥ぎ取った。

「やっ、やだあああああ!」

 キーラは叫び、抵抗するが、ジラントは赤子の手をひねるがごとく、やすやすと彼女を裸にしていった。
 もともとこれだけ腕力の差があったのだろう。ジラントが乱暴なことや嫌がることを絶対にしなかったから、キーラは彼とつるんでいても、やりたい放題できていただけだ。
 厄介なことに、今のジラントは善意に取り憑かれている。己を曝け出すことは気持ちがいい、素晴らしいことだと、心から思っている。この悦楽を、キーラにも味わって欲しい。その一心で彼女を辱めているのだ。

「ああ、すごく綺麗だ……」

 自ら裸にひん剥いたキーラを組み敷き、ジラントはうっとりと彼女を鑑賞した。

「バカあ……! あとでギッタギタにしてやるからな……!」

 茹だったかのように全身を赤く染め、キーラは涙のにじむ目でジラントを睨んだ。

「キーラも言いたいことを言えばいい。僕のことが嫌いだとか、殺してやりたいとか」
「……なんでそう、ネガティブなんだよぉ」

 呆れているキーラに、ジラントは口づけた。

「う……」

 口の中を舐め回され、舌を絡め取られ――。ジラントの舌が動くたび、キーラの頭の中に閃光が走った。
 眩しくてクラクラする。体からは力が抜けていった。

「ああ、いい匂いだ……」

 ジラントはキーラの肌をまさぐり、優しく愛撫する合間に、甘ったるい睦言を囁いた。
 愛しい男に、宝物のように大切に扱われて、気持ち良くないわけがない。キーラの息は上がっていく。
 ジラントはキーラの股を大きく開き、その中心に顔を寄せた。

「こんな風になってるんだ……。思ってたより、ずっと卑猥な形をしてる……」
「見、ない、で……!」

 キーラの懇願はもちろん聞かず、ジラントは彼女の性器を舐め始めた。陰核の皮を剥き、味見をするようにしばらく慎重に舐めたかと思うと、やがてがっつくようにしゃぶりつく。

「いやらしい味がする……!」
「やっ……!」

 貪られる、食い散らかされる。初めての感覚に、キーラの体はびくびくと痙攣するように震え、正直に反応した。
 ジラントの舌はまるで炎のようで、それで肉芽を舐められるたび、炙られたように熱くなるのだ。キーラの秘部は溶かされてぐずぐずになり、内側は潤んで、大量の蜜を垂れ流した。
 花弁が開かれ、隠していた窪みに、硬いものが入ってくる。ジラントの指だ。
 キーラは呻いた。

「んっ……」
「痛いか……?」
「へいき……」

 初めて受け入れる異物なのに、なんの抵抗もなく飲み込んでしまったことが、キーラは自分でも意外だった。
 ジラントの指は丁寧に、だが迷いなく奥へ進んでいく。苦痛よりも気持ち良さが勝っているのも、自分が淫乱な気がして、キーラは恥ずかしくなった。
 そんな彼女の戸惑いを感じ取ったのか、ジラントは余裕たっぷりに講釈を垂れた。

「僕、初めてだけどな。でもちゃんと、事前学習しといたから」
「あの大量のエロ本のこと言ってんの!? 二次元と現実は違うからね!?」

 反論したものの、実はそのとおり、猥雑本も侮れないかもしれない……と、キーラは思った。それくらい、ジラントは巧みだったのだ。
 膣に挿し入れた指で壁を撫でるのと同時に、ジラントはキーラの陰核を唇で吸った。そのまま舌で、すっかり硬くなったそこを嬲る。

「やっ、や、あああっ!」

 肉洞でジラントの指を強く噛みながら、キーラは昇り詰めた。

「あ、あ……」

 初めて絶頂を経験し、キーラは呆然となった。
 激しくなった呼吸が元に戻る頃、汗がどっと吹き出る。

「イッてくれたんだ、キーラ。可愛い……」

 ジラントは誇らしげに微笑みながら、手首まで垂れたキーラの愛液を嬉しそうに舐めた。
 キーラは飛び起きて、ジラントを止めた。

「やっ、やめろー!」
「こんなに感じてくれて、嬉しかったんだ……」

 ジラントはキーラを抱え、再びベッドへ倒すと、すっかり準備の整った彼女の膣口へ、陰茎の先端を充てがった。

「あ……」

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